著作:アーリーハッチ 著者: 社団法人 日本DIY協会認定 DIYアドバイザー 首藤浩昭  著作開始日 2003.12.16

著作掲載対象:アーリーハッチホームページ http://www.hatchan.com/subtop.htm

2003.12掲載分  2004.1掲載分  2004.2掲載分(本ページ)  2004.3掲載分  2004.4掲載分   2004.5掲載分  2004.6掲載分  2004.7掲載分  2004.8掲載分  2004.9掲載分  2004.10掲載分  2004.11掲載分  2004.12掲載分


「デザインを楽しもう!」 キャビネットの構造  2004.2.1
いわゆる「箱物」と呼ばれるキャビネット類。その構造は比較的簡素で、これからカントリー木工にチャレンジするかたには、取り組みやすい作品の一つと言えます。このキャビネットの基本構造は、2枚の「側板」に対して、「底板」及び「棚板」「天板」を接合するものですが、作品を正面からみた場合、2種類の仕上方法があります。一つは、「側板」の木端(コバ:繊維方向側の切り口のこと木口)をそのまま正面材とする方法。つまり「側板」に対し、「底板」「棚板」を、扉の厚み分だけ奥行きを狭くして、「側板」と「扉」をツライチ(段差のない状態)とし、丁番を正面付けするものです。この方法は、部材が少なくて済むため初心者向きと言えますが、作品の縦バランスを見せる両サイドの縦枠を、薄い木端としているために、貧弱さが否めません。もう一つの方法は、同様の基本構造に対し、正面材として、「上枠(上つなぎ)」「縦枠」「下枠(下飾り:前板とも言う)」を付けるもの。「側板」や「底板」「棚板」は同寸法の奥行きとなり、同じ厚みの「枠材」と「扉」でツライチになります。上枠と縦枠の幅は、作品全体の幅を400mmとした場合40mm以上が理想。つまり、10分の1以上となります。特に「縦枠」の幅を広く取ることによって、デザイン的な重厚感や安定感を表現出来ます。特殊丁番(スライド丁番・アングル丁番他)を使用して、故意に金物を隠した近年の家具類(洋服ダンスや吊戸棚類)とは異なり、あえてナチュラルな木材と、装飾丁番を正面付けするカントリー家具類は、シンプルな作りの中に、その構造のすべてをデザインとして表現するおもしろさがあります。まず箱物からチャレンジしてみましょう。

「デザインを楽しもう!」木工誌に惑わされるな 2004.2.2
いよいよ本格的なカントリー家具に挑戦するという場合、カントリー系の木工雑誌を参考にするかたも多いと思います。おおよその誌面構成は、「我が家自慢」風な実例ページに始まり、簡単なコラム形式の制作手順、人気アイテムの木取り図・写真付き制作手順、Q&A的な木工ノウハウ、教室・ショップ案内、といった具合でしょう。そして読者の9割以上が、自分の木工技術と、誌面紹介されているレベルの極端な違いに、ため息をついているはずです。カントリー木工の訴求と普及に力点を置いて編集されたものが、実は逆に手作り木工の世界を遠いものにしていることに、当の出版社は気付いていません(もちろん当店がお付き合いしている出版社には、そうしたところはありませんが)。「我が家自慢、これなら出来る簡単木工!」などという副題で、超大型カップボードを紹介し「3週間で作りました」などというコメントを入れたり、「これならチャレンジできそう!」と文字を躍らせたと思ったら、いきなり大工もびっくりのホゾ組みを紹介したりと、おそらくジグソーすら使ったことのない担当者が編集しているケースがほとんどでしょう。読者のため息欲しさに編集しているとしか思えない誌面内容に愕然とします。お宅紹介の取材先は、自宅裏で家具の販売でも兼ねていそうなセミプロです。「ご主人は休日を利用して制作を・・」と言いながら、平日は工房に勤めていたりします。制作手順にいたっては、すべてプロが編集協力しています。プロは自分の技術と知識を誇示したがります。ゆえに自然と「アマチュアには真似できない」部分がにじみ出てきます。こうして出来上がった雑誌が、手作り木工の世界、さらには手作りそのものを、理由無く遠いものにし、狭くて深いジャンルに陥れます。将来木工で生計を立てたいと言う人は別ですが、醜いプライドだらけの本職顔負け作品を作ることが、木工ではありません。出版各社の編集担当者に提案します。手作りを訴求する本を編集するなら、その知識・技術はもちろんのこと、企画・構成・取材・編集・撮影・出版・販売までの作業を、すべてひとりで手がけてみて下さい。そうすれば、本当の「手作り本」の素晴らしさが訴求出来ます。少なくとも読者のほとんどは、皆さんが編集した本に目を輝かせながら、たったひとりで手作りにチャレンジしているのです。

「デザインを楽しもう!」難しいことはしない  2004.2.3
「簡単木工」という見出しで、その内容が本当に簡単かどうか非常に疑わしい昨今の木工誌については先日お話しました。付録の「木取り図」や「展開図」を分析すると、どうしても「職人根性」が見え隠れしている部分が多くあるのが実情。簡単な例では、キャビネット等の背板部分の仕上げ方。通常こうした「箱物」は、壁に付けて置きます。つまり背中は見えません。しかも正面は「扉板」のため、内部は見えません。それなのに、背板は高価な「シナ合板」(ラワンベニヤの表裏にシナ材を張り付けた合板)で、しかも「側板」に溝を彫ってはめ込み式にしたものが多く掲載されています。これらは明らかに、販売用の「商品」としての見栄えを考えた工法です。編集協力しているのは「制作販売の商人」なので当然といえば当然ですが、「手作り」を訴求する目的の本としては、いかがなものでしょう。背板は3mm程度のラワン合板でOK。はめ込みは無用。全体サイズからマイナス5mm程度の大きさにカットして釘で打ち付けます。「はめ込み仕上」なら30分かかる工程も、2分で済みます。背板の合板の価格は6分の1以下です。難しい技術も道具もいりません。商売人が持つノウハウを「正しい基準」として掲げてしまうと、どうしても簡単な工法は「妥協」として受け取られてしまいます。しかし、これは「手抜き」ではなく、正直で正当な「手作り」なのです。高価な工作機械のフライスマシンでハートの切り抜きをすれば完璧なカットが出来るでしょうが、その投資代金はしっかり上乗せされるでしょう。仕入単位が膨大な量の海外木材の仕入で必ず出る大量の「はずれ品」(質のよくない品)の木材を、アンティークペイントした家具で売り出せば、流行と信じたユーザーが喜んで購入するでしょう。そうした商売人の世界が、自由で素朴な手作りの世界まで染め始めています。

地震災害を考える    2004.2.4
日本建築学会が発表した「阪神淡路大震災 住宅内部被害調査報告書」によると、住宅内部被害による怪我の原因のうち、「家具等の転倒落下」によるものが実に約半数を占めている。物理的に、奥行きが浅く高さのあるものほど転倒しやすい。また、上下が分離できる構造で簡易ジョイントしているものや、重心の高いものも転倒落下しやすい。既存の家具への対策は、L型金具類による壁面や柱への固定だが、これから家具を制作するといった場合にも、そうした災害への対策も考えるべきである。米国や欧州産を真似たカントリー家具類では、インテリア演出として、物を飾って見せるオープンラック形式のスタイルが多い。たとえばカップボードなど、ほとんど地震災害のない大陸で生まれたものであるがゆえに、そうした形状ができているが、地震大国日本の場合、震度4程度なら明らかに棚内部の食器類は飛散する。食器類や割れ物は、しっかりと扉や戸でしまえる場所に収納すべきだ。そして高さのあるオープンラック形状のものへは、落下しても破損しないものや怪我をしないものを収納するようにしたい。上下分離型の家具は、単に乗せるだけでなく、ずれたりしないよう金具で固定する。また、ガラス扉式の家具にも注意が必要。ガラスの扉ということは、内部に収納しているものを「見せるため」あるいは「見えるため」に使用している。そのため「食器類」や「書籍類」が多く収納されている。つまり、比較的重量のあるものであって、地震災害時には、ガラスを飛散させながら、激しく落下し、大きな怪我の原因ともなる。手作り木工では、小さな作品からはじまり、次第に大きな家具の制作にチャレンジしていく人が多い。「人や環境に優しい」というフレーズで無公害のオイル塗料も流行しているが、なにより、構造や制作・設置による物理的な災害対策を忘れてはいけない。そうしたことを意識しない作品は、やはり素人細工の域を出ない。

奥行きに対する扉幅について    2004.2.5
通常、無垢材としてのパイン材の最大幅は、約280mmと狭い。ただし、特殊な収納物を除き、このサイズであれば、A4版の雑誌も収納出来る奥行きが確保可能であるし、無意味に奥行きのある家具にくらべ、むしろ「使い勝手の良い作品」が制作出来る。今回は、作品の「奥行き」に対しての「扉幅」について解説する。例えば、「側板」281mmと「枠材」19mmで、合計300mmの奥行きの作品に対し、「扉板」の理想幅は300mm以内となる。つまり、「扉幅は奥行き寸法以内が理想」ということである。これは「デザイン上のバランス」と、「構造上の安全面」からなっている。デザインについては各々の主観なので深入りしないが、特に「構造上の安全面」については、よく認識して欲しい。例えば、奥行き300mmの作品に、1枚の幅が400mmの観音扉(2枚扉)を付けて、その扉を前方へ平行に開いてみれば容易に理解出来る。内部や上部に収納物がない場合、その作品は前方に倒れる。家具そのものの「構造的なバランスの悪さ」とも言い換えられるこうした作品は意外に多い。物理的なアンバランスは、自然と「デザイン上のバランス」にも繋がっている。矧ぎ(板を張り合わせ、大きな幅を作る)をして面を確保するのは簡単だが、こうしたバランスを考慮した作品ほど美しいものである。

丁番取付け時の注意    2004.2.6
「丁番」と言っても、かなりの種類があることは、ホームセンターの金物売場を見ればよくわかる。カントリー家具制作でよく使用されるのは「正面付式」のアンティーク丁番。この「正面付」は、丁番を折り込むことなく、扉と本体枠の正面から直接取付ける方法で、丁番が露出するため、そのデザインを楽しむことが出来る。そして、この方法は、数ある丁番の取付け方でもっとも簡単な方法である。ただし、簡単と言っても注意すべき点は多々ある。まずひとつは「垂直に取付ける」ということ。あらかじめネジを打つ場所に「錐」等で、下穴をあけてから取付けることが鉄則であるが、この際、木材繊維が邪魔をして微妙な位置ズレがおきる場合が多い。特に、「丁番自体の穴」が「丁番ネジの太さ」に対し「遊び」(丁番穴、対、ネジ太さの余裕)があるものであれば、少々の位置ズレがおきても、ある程度補正できるが、中にはこの「遊び」がまったくない丁番もある。その場合、あらためて正確な位置にネジを打とうとしても、微妙なズレであるがため、既にあいてしまっている穴に誘導されてしまい、なかなかうまくいかない。いったん穴を埋めてから再度やり直すのが通例ではあるが、もともとが木材繊維が邪魔をしてのズレなので、結果はほとんど同じことになる。心得のあるプロの場合は、その繊維を直行に断ち切るような下穴あけの作業をするが、ビギナーには難しい。用心深く下穴をあけるとしか助言出来ない。また、この下穴は、なるべく深く、垂直にあけることが望ましい。マーキング程度の下穴だと、位置としては正確でも、ネジが進行するための下穴誘導がないため、自然と木目方向に誘導されていくためだ。この場合、ネジがどの方向に曲がって入るかは、その木材の「木口」の木目(年輪跡)を見れば推測出来る。この木目に沿って、ネジは傾斜していくはずだ。やはり心得のあるプロの場合、この小口から見た木目の走りを計算に入れてネジを逆方向にやや傾斜させながら入れ込み、最終的にはまっすぐに収まるという技も使う。「下穴」は、大工用語で「案内穴」とも言い、その名の通り、ネジを正しい方向に案内してくれるためのもの。緻密な作業だからと言って面倒がらずに作業することが、結果的に美しい仕上がりとなる。また、アンティーク系の丁番の附属ネジは、鋳物である場合が多いため、締め付け過ぎると「ネジ首」の部分から、もろくも折れてしまう。きつく締めたつもりはなくても、湿気の多いある日突然、ネジの頭部分が予告なく弾け飛ぶといったこともある。これは湿気により木材が膨張すると同時に、ネジの頭部分を押し上げるため。特に、締め付け加減が伝わりにくいドリルドライバーを使用しての取付け時に多いので注意が必要。

■「超基本シリーズ」木材の買い方   2004.2.7
木材を購入する際に、「材木店」を利用する人は少ない。一般的に「材木店」とは、工務店との繋がりによって建築用材の供給を主な生業としているため、「木工作」や「家具制作」に適した木材は取り扱っていない場合がほとんどである。それでも現在進行形の不況により、この業種も例外なく厳しい状況にあるのが実情で、色気とやる気のある社長などは、そうしたインテリア系木材の小売にも乗り出している。「1枚から売ります」という看板を掲げたりしていて、「20枚買います」などど声をかけると、後日社長が菓子折りを持って参上したりする。20年前なら、たちまち「バラ売りはしねえよ!」と追い払われたものだが、こうした場合、不況とは意外と弱者に味方するものだと感心する。とは言うものの、そうした色気のある「材木店」は、途端に少量販売による手間の多さに愕然として「これじゃあ合わない」の職人用語を思い出し、いつの間にか設定価格が、社長の虫の居所による「時価」に変貌したりする。そういった訳で、実際に木工作の材料を購入する場合、ほとんどの人はホームセンターを利用することになる。もちろん、必要となる他の材料も同時購入出来る利便性もあるが、なにより価格に信用性がある。ホームセンターで木材、特に無垢材を購入する場合、充分な量の陳列がされているかの確認も大きなポイント。木材は「生もの」と同じ。例えばスーパーで「お刺身」を買う場合に、ガランとしたスペースに2〜3個しかなかったら、何だか残り物のようで買いたくなくなるものだ。木材であっても、陳列量が少ないということは、他のお客さんがはじいた買い残しであるか、常時新鮮な入荷が極端に少ないと思ってよい。つまり、よく売れている商品で、鮮度が命の商品は、自ずと陳列量も多くなるのが商売の理屈。冬場に店内販売している薄板木材は、暖房による超乾燥状態で、激しく反りが発生するものも多い。そんな中でも、より良質な木材を手に入れたい場合は、その木材の入荷日を教えてもらうこと。通常ホームセンターの物流は、週一入荷が多い。つまり毎週決まった曜日に入荷してくる。それさえ確認していれば、余り物の購入を余儀なくされる無念も解消される筈だ。

■作業における安全性への配慮   2004.2.8
木工作業には危険が伴います。誤った道具の使い方をしたり、また注意を怠ったり、さらには粉塵や溶剤、電動工具の激しい作動音等による健康被害も忘れてはなりません。現実的には多少無理があるかもしれませんが、今回は立場上「正しい」とされるセーフティー対策の観点からお話します。トリマーやジグソー、丸ノコ等、素材を切削切断・各種加工といった類の作業をする工具を使用する場合、その作業時に起きる「素材の飛散」から身体を保護するため、「作業用メガネ」を装着します。またこれら電動工具全般に、その作動音による聴覚への悪影響対策として、「イヤーマフ」も装着します。また切削作業時や、長時間の室内作業時には「防塵マスク」をつけることで、粉塵吸入による健康被害を防止します。また皮手袋などを装着し、不意の怪我を予防します。人体に悪影響を与える溶剤や物質が混入されている塗料や接着剤等を使用する場合には、それと認められた専用マスクを装着します。これらすべての安全対策は、どれもそのとおりで、私自身そうしたことを、正しくアドバイスしなければならない資格者でもありますため、否定するつもりもありません。それでもなぜか笑ってしまいます。想像してみて下さい。「イヤーマフ」を耳に付け、防護メガネをかけて、防塵マスクやガスマスクを装着し皮手袋をはめて電動工具を持った人を。どこから見ても、かなり怪しい身なりです。そのスタイルで街中を闊歩したら、間違いなく通報されるでしょう。私も時々そうした格好をしますが、とても息苦しく、平行間隔も怪しくなり、視野も狭まり、いつもの自称「神業テクニック」は披露不可能となります。とにかく、「安全のための知識」だけは、しっかり認識しておきましょう。

■「家具の機能性」棚ダボについて  2004.2.9
キャビネットなどを制作する場合、内部の棚板を収納物に合わせて「可動棚式」または「取外し可能棚」にするといった、「機能性」を重視する作品が増えてきた。「よりシンプルで素朴なデザイン」を概念とするカントリー家具類では、本来こうした「小細工」はあまり似合わないのだが、より使い勝手のよい家具として、永く生活をともに出来るものであれば、積極的に取り入れるべきと思う。「可動棚式」にする場合、2つの方法がある。ひとつは、両サイドの「側板」の内側に、細身の角材を任意の間隔で取付け、それを「棚受」とする方法。注意する点として、「棚受」となる角材の間隔が狭い場合、当然「棚板」は前方にスライドさせて取り外すことになるため、「正面材」(扉や枠材)がある構造では、それが妨げとなって取り外せない。つまりその場合、「棚板」を傾斜させて取り外す必要があるため、「棚受」の間隔は、「棚板が傾斜可能な程度の間隔」で決めなければならない。「正面材」のない、オープンラック式の場合には、前方へのスライドに妨げがないため、こうした注意は不要だが、あまり「棚受」の角材が多いと、デザイン的な美観を損ねる場合もある。もうひとつの方法は「棚ダボ式」。これは「正面材」のある構造の作品に多く使用される方法。「メスダボ」を、「側板」の任意の場所に、好きな間隔で打ち込んで、「棚受」となる「オスダボ」をねじ込んで使用する方法だ。「オスダボ」は、実際に「棚板」が設置される部分にのみねじ込むため、未使用の「メスダボ」部分はツライチ(フラットな状態)で、「棚板」を傾斜させて取り外す際の妨げにならないという利点がある。この「棚ダボ式」の場合、「正面材」のないオープンラック式の作品では、2+2=4点の「オスダボ」で「棚板」を支えているため、衝撃などによる「棚板」のズレが起きた場合に、「棚板」が外れやすいという欠点がある。こうした場合、「棚板」側の「オスダボが当たる部分」に半月の掘りこみを入れてズレを防止する方法もあるが、4点が均一の深さでないとガタツキが起きる。かなりのシビアな加工となるので、それなりの覚悟が必要。これらふたつの方法ともに、「棚板」の寸法は、「側」対「側」の内寸に対して、マイナス3mm以上が好ましい。当然、内寸と同寸法では、取外しが出来ない。また「木材の伸縮作用」を考慮した場合、いかに伸縮のすくない「繊維平行側」とは言え、1尺に付き±1mm程度は想定しなければならないので注意。また、オープンラック式の形状で、「棚板」の厚み分のみを可動間隔として、「棚板」を遊びをなくした作品も見受けられる。これは「棚板」の上部にくる「棚受用の角材」が、「棚板」の持ち上がりを防ぐ意味で有効なデザインとも思うが、間隔を「棚板厚+3mm以上」にしないと、棚板の「反り」「ゆがみ」「厚さの伸縮」により、取外しが出来なくなる場合もあるので注意が必要だ。


■作業時の安全性 異論編  2004.2.10
この解説が、所属する協会関係者諸君が閲覧していないことを期待する。正しいとされる、作業時の安全性においての「材の保持」について、異論を展開したい。ビギナー向けの各木工誌では、板材を「ノコギリ」、あるいは「ジグソー」、「丸ノコ」で切断する場合、また「トリマー」で加工を行う場合に、作業時の安全性の観点から、「材料をクランプで固定して作業をする」ことを、当然のことのように解説している。たしかに、材料がクランプ等で固定されていれば、余り手で支える必要もなく、道具の操作に集中出来て、より正確で安全な作業が可能なように思える。しかし、これには個人的に異論がある。それは材料固定に対する過信による、工具操作の危険性である。例えば、角材をノコギリで切断する場合に、左手で材料を支え、右手でノコを挽く。ノコは、ただ力任せに挽けばいいものではない。大工に聞けば良くわかるが、絶妙な「加減」というものがある。その「加減」の目安となるのが、実は材料を支えている「左手」である。ノコ挽きによって、己が力で支えている材料が引きずられるようであれば、これこそがノコの挽き方に無理があるということ。つまり、据置工具以外の、手で持って作業する工具の場合、その作業をコントロールするのは、実は「工具を持っていない側の手」ということだ。ノコギリの場合、まれに両手で持ってノコ挽きをしたりするが、その場合でも、足を材料にかけたりする。材料を固定する目的もあるが、そうすることで、挽き具合を足で感じとり、また安定した姿勢をも保っている。このことは、「ジグソー」でも「丸ノコ」でも「トリマー」でも同じことが言える。保持する左手が感じるからこそ、その操作の「加減」がつかめる。完全にクランプに頼った場合の危険性をいうならば、「固定のあまさ・過信」での事故や、固定された材に対する、無理な作業姿勢による事故もある。もちろん、クランプ固定が無意味という訳ではない。固定はあくまで補佐の補佐、つまり「左手」の力学的な補佐と考えて作業すべきなのである。人間の感覚とは不思議なもので、主役である右手の役割に対し、必ず左手がその補佐をする。この補佐がなければ、たちまち主役は不器用な大根役者になる。固定するだけの目的なら、たしかにクランプにも出来る。しかし主役を案ずる脇役の感性までは真似できまい。「他人に頼むなら、自分でやっておけば良かった」。そうした後悔は、よくある世の常である。

■正しい接着剤の付け方  2004.2.11
木工作品制作の場合に接着剤が不可欠な理由は、「12.18」の講座で説明しました。今回は、その付け方を具体的に説明します。基本的に、板を矧ぐ(木端どうしを接着して広い板にする=いも矧ぎ、平矧ぎ)場合を除いて、カントリー家具制作時の接着では、「一本塗り」(塗り広げることなく、材のセンターに軽く盛るようにして一本のラインを引くように塗ること)が原則です。接着では、物理的に「材どうしが隙間なく圧着」される訳ですから、本来厚みを持った接着剤が入る余地はないのです。つまり、接着面となる材の全体に、均一に塗り広げた状態で圧着すると、必ず接着剤がはみ出します。そして、全体に塗ったにも関わらず、はみ出しがないとすれば、それはあきらかに塗布量が少なく、接着効果がないという証拠です。接着剤のはみ出しは、オイルフィニッシュでの致命傷であることはご存知の通り。つまり、こういうことです。材のセンター付近に、盛るようにした一本塗りをすることで、材を圧着した際に接着剤は押しつぶされながら広がるが、材からはみ出すことはないのです。この塗布方法は、「縦対横の構造材」つまり、「側板」対「棚板」「底板」でも、「側板」対「天板」でも、「構造材」対「正面材(枠材)」でも有効です。よく、指を使って接着剤を塗り広げる光景を見ますが、こうした意味で、それは間違いであるということです。ただし、冒頭部の「板を矧ぐ」場合には、隙間なく圧着面のすべてを接着する必要があるため、接着剤のはみ出しを前提にして、あえて全体塗布を両面に行い、はみ出し部を水拭きします。なお、この水拭きは、間髪いれずに行うことが鉄則です。1分以内には行わないと、接着剤の配合成分が、含まれている水分と共に木材内部に浸透してしまうため、表面が拭取られていても、オイルフィニッシュ時に、オイルの吸い込みムラが生じてしまいます。また、「一本塗り」での注意は、「量の加減」は経験で学ぶとして、「材による塗り位置」を調整することです。「センター付近にラインを引くように」と言っても、その時の「虫の居所」や「ニコチン切れ」、場合によっては「アルコール切れ」といった症状をお持ちの方の場合、ラインが「蛇行運転状態」になったりします。そのための賢い塗り方は、「はみ出しを予測した塗り位置」を考えることです。「天板」対「側板」であれば、死角となる内側になら、最悪はみ出してもOK。「本体」対「枠材」であれば、同様に外側にははみ出さない位置に、「側板」対「底板」なら、上部側にはみ出さないように、などの意識を持ってラインをコントロールすることがポイントとなります。  


■「マスターしよう!」スライドレール   2004.2.12
比較的容易に制作出来る「箱物」(キャビネットやラックなどの箱型家具)の次にマスターしたいのが、機能性を持たせた家具です。その場合に必要となるのが、専用の「家具金物」類です。これまでにもお話した通り、手作りカントリー家具の概念は「いかにシンプルに、素朴さを表現出来るか」というところにあり、「100年前であっても作れる構造」であることが理想です。とは言うものの、実生活のなかで「便利」に、そして「有効」に活用できる家具であればこそ、その利用価値が広がる訳ですので、あえて否定する必要はありません。「家具金物」のなかで、最近その利用度の高まっているものに「スライドレール」があります。「パソコンデスク」制作時のスライド式キーボード棚や、「レンジ台」制作時のスライド式炊飯器棚、比較的重量物を収納する「引出し」制作時などに利用されています。この「スライドレール」には、大きく分けて2つの種類があります。ひとつは「ベアリング式スライドレール」。多数の小さなベアリング(金属の玉)の作用により、なめらかでスムーズなスライドが特徴です。比較的重量物の収納用に向いています。欠点は、制作時の取付け方がやや難しいことや、可動部の取外しが面倒なこと、長期使用時のベアリングのサビなどです。もうひとつは、その取付け方が容易なことで、カントリー家具類に多く使用される「ヨーロピアンスライドレール」。金属レールに対し、ナイロンの車輪で可動する構造で、可動部は引き出した状態から、引き上げることで取外しができ、ナイロン車輪のため、磨耗による寿命のほかはサビの影響もありません。また「ベアリング式」ほどの、取付け時の精密さを要求しない比較的ラフな構造のため、手作りカントリー家具に向いていると言えます。このおすすめの「ヨーロピアンスライドレール」。収まり状態でのサイズは、「300、350、400、450、500mm」などがありますので、取付け部分(側板)の内寸や、可動棚の寸法に合わせ用意します。注意しなければならないのは、このスライドレールのサイズに対して、実際に引き出せる「移動距離」です。400mmのスライドレールだからといって、400mm引き出せる訳ではありません。あくまで収納状態の寸法で、400mmの場合は、約290mmとなります。それぞれのサイズから、マイナス100mmと考えてください。制作時の留意点では、このスライドレールによって可動する棚のサイズは、「側板」対「側板」の内寸から、マイナス24mmが目安となります(メーカーによって異なる場合あり。レール説明書を必ず参照)。つまり、両端それぞれ12mmずつの「レール用のスペース」が必要となる訳です。さらに注意しなければならないのは、可動棚の「横幅」が広ければ広いほど、そして奥行きが浅ければ浅いほど、その動きが鈍くなるということです。これはスライドレールの「遊び」(取付構造上、余裕を持たせてある隙間)からくる物理的な作用です。難しいことはとにかく、作ってみるとおもしろいです。


■本格派を目指すための切断工具   2004.2.13
これまでの講座でお話したように、手作りカントリーのための切断工具で欠かせないのは、「ジグソー」と「糸ノコ盤」です。ただし、これら工具は、あくまで「曲線」や「切り抜き」など、どちらかと言うと「加工用」のため、大きな木取りの切断には向きません。既成サイズ(例えば285x1820など)の木材を購入して、そこから「木取り図」に従って切断をしますが、これをホームセンターなどの「カットサービス」を利用しないで自ら行うという場合には、「丸ノコ」を使用することになります。しかし、この「丸ノコ」も、直線カットのための「ガイド」こそ附属していますが、基本的には「ジグソー」と同じく、切断ラインを目で追いながら作業する「簡易切断」の工具と言えます。そこで、これから本格的にカントリー家具制作を楽しむ方々には、「丸ノコ盤」と「スライド丸ノコ」の使用をお奨めします。まず「丸ノコ盤」は、専用スタンドに丸ノコのノコ刃が上向きに付いた形状の据置工具です。切断幅にゲージをセットして、材をガイドに合わせ押していくことで、均等幅に切断出来ます。最大300mm幅までの切断用が一般的。主に繊維方向への長尺カットに使用します。「スライド丸ノコ」は、「丸ノコ」を切断機風に上から押し下げることで材の切断ができ、さらに手前から奥に向かってスライドさせることで、ノコ刃径よりも広い幅の木材を切断出来ます。さらには、切断角度が設定できる(マイターゲージ)ため、作品の幅が広がります。最大300mm幅までの切断用が一般的。主に繊維と直行する方向のカットに使用します。この「丸ノコ盤」と「スライド丸ノコ」を使用すれば、正確な木取り作業が可能となります。例えば、285x1820mmのパイン材から、270x900mmの「側板」2枚を取る場合は、まず「スライド丸ノコ」で材のセンター(910付近)をカットし、切断木口側から900mmのところで2枚同時にカット。これで285x900の材が2枚完成。次に、「丸ノコ盤」のゲージを270mmに合わせ、2枚をカットすれば出来上がりです。これから本格的に木工を楽しもうと言う方には欠かせない工具になります。


■「マスターしよう!」テーブルの構造    2004.2.14
カントリー家具の基本形は「箱物」と呼ばれるキャビネットやラック類であることは、これまでに解説してきました。構造が比較的単純で、特殊な金物類も必要としないため、初心者でも取り組みやすい作品と言えます。カントリー家具制作のなかで、その真髄と呼ばれるのが「テーブル」や「椅子」といった実用家具類です。「箱物」と大きく違う点は、「耐荷重」を想定した構造設計と、「4本脚」における精度です。それだけ難易度の高い作品と言えます。今回は「テーブルの構造」についてお話します。「引出付のダイニングテーブル」を例にすると、その木材としては、「天板」「脚(4本)」「幕板(4枚)」「幕板止め角材(4本)「引出部材」「引出用レール」となり、特殊金物は「ハンガーボルト」「座金ナット類」「コーナー金具」となります。とは言っても、通常ホームセンターで市販されているレベルの部材です。また、構造そのものは、「コタツ」などと同じですので、お持ちの方は参考にして下さい。制作手順は、まず「脚」(この場合、幕板を突き合わせる上部100mm程度は角脚であることが必要)の上部から、「幕板高さ÷2」の糸面(木材の辺の部分)の1辺に、角材の軸芯に向け下穴をあけ「ハンガーボルト」をねじ込みます。このボルトは、ねじ込むための頭がありませんので、6角レンチで回せるように、2個のナットで仮の6角頭を作る「ダブルナット」という技法を使いねじ込みます。次に、4枚の「幕板」に、「コーナー金具」を取付けるための溝(位置や深さ、溝幅は金具によって異なる)を入れます。次に「幕板」の天板と接する側(内側上部)に「幕板止め角材」を取付けます。この角材により、後に「幕板」と「天板」を接合することになります。4本の「脚」と「幕板」を逆さにレイアウトして置き、それぞれ「コーナー金具」をはめ込み、座金・ナット類で「ハンガーボルト」を締め付けます。この状態で、「天板」のないテーブルを逆さまに置いた状態の「仮組み」が出来上がりました。(続きは明日のこのページで)


■「マスターしよう!」テーブル構造その2 2004.2.15
昨日の続きです。逆さに設置した「仮組み」状態から、次は「コーナー金具」を「幕板」にビス固定します。これにより、「幕板」4枚が、「コーナー金具」を介して四角の枠となります。次に、「幕板」の内寸を測り、「引出用レール」をその長さにカットして「幕板」に取付けます。「コーナー金具式」の取付構造では、計算上の「幕板内寸」と「実側」とでは、微妙に異なるため、このように「出来上がり寸法」を計測してカットするようにします。次に、逆さに置いた「天板」の上に、出来上がった「脚」付きの本体を乗せ、「幕板」内側に取付けてある「幕板止め角材」から「天板」にネジ固定します。あとは「引出」を制作して完成となります。なお「脚」は、「ハンガーボルト」のナットによって取外し可能ですので、塗装の際は「脚」を外して塗ります。使用後1週間程度で、再度「ハンガーボルト」のナットを締め付けます。「脚」が「ハンガーボルト」によって「幕板」に引き寄せられて固定する方法では、木材同士がなじむことで、若干のゆるみが生じるため、初期の頃はこのように再締め付けが必要となります。また、「ハンガーボルト」には、「ナット」「平座金」の他に、緩み止めとして、必ず「スプリングワッシャー」を使用することを忘れずに。このように、「引出し付きテーブル」制作では、技術というよりも、事前に構造の知識を持っているかどうかがポイントとなります。技術的には、既述の「軸芯に向けてのハンガーボルトのねじ込み」、「ダブルナットの技法」、そして幕板への引出開口部の切り抜き程度です。「箱物」オンリーの家具作家が多い中、このテーブル制作を身につければ、さらに作品の幅が広がります。


■「マスターしよう!」引出の作り方  2004.2.16
「引出を作るのは難しいですよね?」という質問が多い。単なる「箱物」よりも、引出の付いたものの方が実用的でもあり、見た目にも格好が良い。それでも自分で作るとなると、何だか難しそうに思えるのは良くわかる。日本人的に考えると、どうしてもその構造は「酒マス」のように複雑な「組み接ぎ」を想像し、水をもこぼさぬ精密なものを連想してしまう傾向がある。手作りカントリーにおける「引出」は、そんなだいそれたものではない。だからといって、粗末なものでも決してない。そこで今回は、この「引出」について解説する。引出を収納する本体側の構造については割愛するが、基本的には本体の「引出収納部の開口幅、開口高さ」に対し、それぞれマイナス4mmが「引出の外寸幅、外寸高さ」とするのが無難。少し空き過ぎの感もあるが、パイン材等の伸縮を考えると、これだけの余裕があればOK。基本的な引出構造は2種類。ひとつは、「正面板」「後板」「側板x2枚」の計4枚に対して、「底板の合板」というもの。「正面板」と「後板」は基本的に同寸法。この場合、正面側に「側板」の木口がくるのはおかしいので、当然「側板」を、「正面板」と「後板」が挟み込む格好になる。ということは、「正面板」にネジ穴があくので、「ダボ仕上」をすることになる。もう一つの方法は、この4枚の板に対し、さらに正面に「面板」を取付けるもの。例えば「正面にダボ仕上を見せたくない」という場合や、本体と引出をツライチ(平らな状態)にするのではなく、正面にくる板のみサイズを大きくして、本体にかぶさるような構造の場合使われるもの。内側の「正面板」から、表側となる「面板」に対してネジ固定するので、面板正面にはネジ穴はなく、綺麗な仕上がりになる。この場合、ひとつ目の方法のように「側板」を前と後ろから挟み込む必要はないので、逆に「側板」が「正面板」と「後板」を挟む構造の方が見た目にも良い。「底板の合板」をはめ込むための溝は、トリマーにストレートビットを装着し、それぞれの板の「下から5mm」をあけて彫る。トリマー附属のガイドを使用すると、「彫り終わり」近くで、ガイド中央の部分がINに入り込むため、溝が曲がる可能性がある。そのため、まっすぐな板などを引出の材にあててガイド代わりとし、トリマーシュー(ベース部分)を密着させながら掘り進む方が無難。またトリマーを逆さまに固定し、材の方を動かす方法の「トリマースタンド」の使用も便利。4枚の引出材での「溝の出会い」の精度を考え、2.5mm厚の合板であれば4mmビットがお奨め。これにより、多少のズレもカバー出来る。

■「デザインを楽しもう!」作業性を考えた曲線 2004.2.17
大胆な「曲線」や「くり抜き」は、カントリー家具の大きな特徴のひとつ。家具そのものへのこうした加工は、他にあまり類を見ない。日本の和家具を見れば解るが、基本的に曲線カットはないし、ましてや「ハートのくり抜き」など似合わない。こうしたカントリー家具ならではのデザイン特性を考える上で、「曲線デザイン」は作品そのものの象徴といって良い。大胆な曲線といえば、上置き用のシェルフなどの「側板」が代表的。オープンデザインのカップボードなども同様である。これらの曲線デザインのポイントは、実はカットに使用する「ジグソー」の特性と関係する。波打つような「側板」の曲線ラインが、初めから終わりまで「折り目のない曲線」の方が、よりナチュラルなイメージを与えることが出来る。逆に「折り目のある曲線」は、人間臭さを与えると言われる。「ジグソー」でのカットは、「折り目のない曲線」であれば、最初から最後まで、そのラインにそって進めるが、途中に折り目があると、その角で一旦停止して、今度は逆方向から切り始めることになる。その場合でも、「折り目が一箇所」であればその方法で良いが、途中2箇所以上ある場合には、切り落とされ「捨て板」となる側のあちこちから、刃を進めたりすることになる。つまり、「ナチュラル」な印象とは、加工時の作業性の複雑度に大きく関係していると言える。無理することなく、より短時間の作業でなめらかに加工出来たデザインのものと、複雑な作業と時間を要した作品とでは、見た目の印象がまるで違う。前者の場合は、見た瞬間に自然と受け入れられるのに対し、後者の場合は、複雑がゆえ、理解するのに時間を要するし、場合によっては「大変だったね」という同情が付い来たりする。これは「折り目」が悪いということではない。「折り目」を多用しながらも、自然に受け入れられるデザインであれば、美しい作品と言える。簡単に言えば、お化粧が「うまいかどうか」というか、「似合うかどうか」というか、「薄いか厚いか」ということで、もっと言いにくいことを言えば、まれに遭遇するが「しなくても美しいか」というか、「仕方を間違えていないかどうか」ということだろうか。


■「デザインを楽しもう!」ハートはシンボル  2004.2.18
アーリーハッチの作品に限らず、ほとんどのカントリー家具には、基本的に「ハート」のくり抜きがあります。この「ハート」のくり抜きには様々な由来があるようですが、その作品が商売用に作られた「既製品」ではなく、自らが自らのために作り上げたものである一つの「証し」とも言えます。この「ハート」をデザインする上でのポイントは、その作品に見合った「大きさ」です。存在感たっぷりの大きなハートは、制作者自身の強い自己主張のあらわれとなり、小さすぎると消極さを表します。つまり作る人の性格がしっかり出ている訳です。いい加減なようで、実は絶妙な大きさというものがある訳ですが、ではその大きさはというと・・・、文字で表現するのは難しいので、アーリーハッチの作品をご覧下さいね。縦長だったり横長だったりという、かたちの違いもあります。これも制作者の好みですが、当店の木工教室に参加される方々のオリジナル作品を長年見てきて気付いたのですが、その形は、なぜかその人の風貌に近いんですね。「縦長のハート」はスリムな人だったり、「丸みのあるハート」はぽっちゃりした人だったり・・・。「大きさ」と「かたち」、そう言うことを意識して、カントリー雑誌などに載っている作品を見ると、結構おもしろいものです。アーリーハッチの作品はと言うと、中肉中背の平均的な日本人型となっています。こうして、いつの間にかしっかり定着した「ハートのくり抜き」。おもしろいエピソードがあります。カントリー家具とは無縁の「とあるショップ」が、その人気ぶりに驚き、それならうちでもと、つまらぬ商魂をあらわにして「カントリーっぽい」作品を売ることにしたが、いまでも天動説を信じて疑わないようなその店主は、「ハートはありきたりだから、クローバーとスペードにするべい」といって、困惑する業者に無理やり大量に作らせた。結果ひとつも売れなかったそうで、その的外れな商売の考え方を感じ取った普段からのお客様も、ついには足を退く結果となり、そのお店は衰退していったそうです。「ハート」のありようとは、そうしたものです。


■室内作業で欲しい「集塵機」   2004.2.19
木工作業での弊害と言えば、切削時の「切り屑」や「粉塵」、電動工具などの「作業音」、油性塗装時の「臭い」など意外と多い。隣家に影響がないほどの立地であれば、当然屋外作業がベストであるが、こと住宅密集地やマンション住まいなどの場合には、どうしても屋内での作業を余儀なくされる。簡単な木工作であれば問題ないが、「ジグソー」や「トリマー」、「サンダー」などを使う木工作業では、かなりの粉塵が室内に舞い上がる。また塗装作業でも同様だ。当然、そうした需要を考え、各電動工具メーカーは、それぞれの工具に「集塵」のための機能を付加している。「糸ノコ」や「ジグソー」「ルーター」「オービタルサンダー」「ランダムアクションサンダー」など、主要な電動工具には、そうした集塵のための装置があるが、注意しなければならないのは、これらの工具での集塵は、「ランダムアクションサンダー」を除いて、別売の「集塵機」が必要になるということ。つまり、これら工具は、単に集塵するための吸込み口が付いているというだけで、自力では吸塵することが出来ない。つまり工具のみでは、「本体のない掃除機の先端」と同様なのだ。そしてこの「集塵機」が意外と高額で、しかも安価で小型のものほど、ものすごく作動音が大きい。しかも、電動工具と同時作動でなければ吸塵の意味がないため、隣家への「音」に配慮した室内作業のつもりが、集塵機を使用することによって、逆に騒音が倍増する結果ともなる。それでもこうした集塵装置は欠かせないもの。「集塵機」を買い求める際は、どのくらいの作動音なのか、実際に動かしてみてから購入すべきだ。私の知人には「週末はお風呂にこもって木工をする」という、かわいそうなお父さんもいる。


■ひとつは用意したい「カンナ」  2004.2.20
手作りカントリー木工で用意したい手工具に「カンナ」がある。「カンナ」と言うと、大工が木材表面の仕上げをするため、まるで鰹節を削るがごとくの、見事なカンナさばきをする光景が目に浮かぶかもしれないが、そんなだいそれた使用法ではない。そもそも「カンナ」にはかなりの種類がある。一般的に使用されるのが「平カンナ」と呼ばれるもの。片手で使える小型のものから、両手を添えてひく大型のものまである。さらにこの「平カンナ」には、刃物部分である「カンナ身」に「裏金」(怪しい献金のことでなはい)を合わせた「二枚カンナ」と呼ばれるものもある。特殊なものでは、段を付けた面取りが出来る「際カンナ」や、丸く面取り出来る「内丸カンナ」(面取カンナ)、船底のような湾曲した凹面を削る「反り台カンナ」「四方反りカンナ」など、あげればきりがないほどの種類があり、一種の芸術ともいえる道具の世界である。それはそうと、我々手作り愛好家にとっての「カンナ」とは、あくまで仕上げ用の補助道具なので、マニア的なものは必要ない。小型の「平カンナ」ひとつあれば充分だ。機械工具に頼りすぎるのもどうかとは思うが、たいていの面取作業はトリマーで行えるし、木材表面も市販品についてはすでにプレーナー処理(出荷段階でのカンナ掛け)がされている。ではどのような時に使用するかというと、まずは「面合わせ」。例えば、キャビネット類を作る際に「側板」に対し、正面から「枠材」を取付けたとする。この時、外側となる「側板」と「枠材」の合わせ部分は「ツライチ」(段差なく平らなこと)になるはずだが、どうしても微妙なズレがおきる。サンドペーパー等での研磨で済む程度ならよいが、0.5mm以上の誤差の研磨は容易ではない。そうした場合に「カンナ」を使用すると便利。また、トリマーをかけるほどではないような、簡単な面取りにも重宝する。「カンナ」作業での留意点は、かける際の方向。カンナ身(カンナの刃のこと)進行方向に対して、木目も下向きに進んでいると、カンナ身に深く入り込もうとするため、カンナが引っかかったり、汚い仕上がりになったりする。カンナをかける場合は、木端の断面を読み、カンナの進行方向に対し、先に行けばいくほど木目が上向きになっているかを確認すること。そして当然のことだが、基本的に「木目と直行する方向」でのカンナがけは出来ないので念のため。カンナは切れなくなれば研ぎが必要なため、替え刃式のものも販売されているが、釘でもひっかけて刃をこぼさない限り、こうした利用法ではまず4〜5年はメンテの必要がない。アーリーハッチでさえそうだ。


■3種類あればよい「釘」   2004.2.21
あきれるほどの種類がある「釘」。用途別の種類に加え、各々に長さの種類まである。建築金物の販売に携わっっていた私でさえ、戸惑ってしまうくらいの量だ。より接合強度がある「ネジ」の出現で、今やその利用度は少なくなったとは言うものの、「接合の歴史」は、「釘」なしで語れない。そこで今回は、私たち手作りカントリー木工愛好家に、最低限必要な「釘」を紹介する。「ネジ」を使って接合する作品というのは、「より強度を必要とする作品」となる。基準は「実用品」。「雑誌類を収納するもの」(重量)や、「扉の付いたもの」(使用頻度)、「高さのあるもの」(自重)、「重いものをのせる作品」(耐荷重)などとなる。そして「釘」を使用して組み立てるのはそれ以外の作品、つまり「小物」が対象となる。お奨めなのは「フロア釘」。本来、サネ式のフローリング床材に使用されるものだが、抜けにくくするためスクリュー状になっていて、頭も小さく目立たない。長さの基準は「板厚の2.5〜3倍」が基準だが、スクリュー形状なら2倍で良い。19mmのパイン材なら、38mm長を選ぶ。一部マニアは、「つぶし釘」という手法を使うものもいる。釘の代表である「丸釘」の頭を、金属の台の上で横から叩いてつぶして作る。これを木材に打ち込んで行き、沈む前に、横に平たい頭を木目に沿わせしめる。味のある仕上がりとも言える手法だ。あらかじめつぶしてあるものも市販されている。次に、キャビネットなどの背板となる「ベニヤ」を打ち付けるための釘。「ベニヤ」はせいぜい3mm厚程度なので、なんでもよさそうなものだが、これが意外と落とし穴。長年の使用により、収納物に押されて釘が抜けやすくなったり、頭の小さいものを使うと、同様の作用でベニヤが突き抜けたりする。おすすめは、「ボードスクリュー釘」。スクリュー形状で、頭は平らで薄い。長さは25mm程度の一番短いもので良い。次に、背板などに使用される「パネリング材」(はめ込み式のウォールパネル)の本体への打ち付けには、「ケーシング釘」がお奨め。細身で頭が小さく目立たない。長さは25mm程度。余計なことの嫌いな「アーリーハッチ」。その教室や制作工房には、特別に必要としない限り、「フロア釘」「ボードスクリュー釘」「ケーシング釘」(それぞれ長さは一つのみ)の、3種類しか用意されていない。それ以外は必要ないからだ。あれもこれもと数を増やさず、本当に必要なものを「定番」として決めるのも、木工の大きなポイントとなる。


■基本ネジは「3種類」だけ用意する  2004.2.22
昨日のタイトルは「3種類あればよい釘」でした。今日は「ネジ」についてですが、カントリー木工作では、やはりこれも基本的に「3種類」を用意すれば事が足ります。種類そのものは、軸が細く、頭が小さいタイプ。長さを3種類だけ用意するというものです。「ネジとダボの関係について」(12.20)で一度触れていますが、今回はやや詳しくご案内します。用意するのは、前述の条件を満たす「先割細ネジ」「細軸コーススレッド」「Fビス」などという商品名のネジとなります。メーカーによりその呼称の違いがありますが、基本的に同じもの。通常の「木ネジ」と異なり、ネジ先端部が、木材に食いつきやすくするため、鋭角な切り込みがあり、錐状になっています。また皿頭のテーパー部分には、ネジ頭が木材に沈む際に生じる割裂を防ぎ、きれいにえぐるよう、凸上の放射ラインがあります(メーカーにより異なる)。頭のサイズは、ネジ太さにより差異がありますが、おおよそ7mm未満を基準にします。これは、ダボ仕上げの際に、8mmダボの使用を可能とするため、8ミリ以上のネジ頭だと、ダボ穴を壊してしまうためです。最近安価に市販されている、一般的な「コーススレッド」とは異なるので注意が必要です。このネジは、接合力を強化するため、頭が極端に大きく(約10mm径)、ラッパ状の皿頭なので、そのままパイン材等にねじ込むと割裂します。基本的に用意する長さは、「30mm」「35mm」「40mm」の3種類。用途別に紹介すると、ダボ穴を必要としない部分での接合時は「40mm」。「側板」対「棚板」などの、構造部でのダボ仕上げ部分では「35mm」。作品正面から取り付ける「枠材」などのダボ仕上げ部分には「30mm」。また「扉板」対「反り止め」など、厚み同士で接合される場合(ダボ仕上げなし)も「30mm」を使用します。長さの基準は19mmパイン材の場合です。ネジ選びの基本は「板厚の2倍」。そのため、ダボなしでの接合は「19x2」で40mm。ダボ仕様だと「-5mm」と考え35mm。枠材は強度保持の意味合いが薄く、また別位置から直行して入るネジ(例:上枠のネジと天板のネジ)のバッティングも考慮して30mm。反り止め等は「19+19」で、しかも突き抜け厳禁なので35mmだと勢い余る場合を想定して30mmとしています。それぞれが「たった5mmの差」ですが、すべてに長さの根拠があります。この3種類の長さをそろえておけば、まず困ることはありません。それ以外は必要な時に最小単位で購入することです。


■オイルフィニッシュ時の色合いについて  2004.2.23
自然な木目を生かした仕上げとして、カントリー家具に好んで使用されるオイルフィニッシュ。その特徴については「カントリー家具のオイル仕上げについて」(2003.12.16)の講座や、「基礎シリーズ木工」(日本ヴォーグ社)でも詳しく解説されています。今回は、そのオイルフィニッシュ時での「色の出方」について解説します。「塗ってみたけど、見本とは色合いが違う」とか「場所によって色の出方が違う」、なかには「缶の中味が違っているのでは」などという声を聞きます。「思ったとおりの色合いには決してならないのが、その特徴」とでも言えるくらい、このオイルフィニッシュは「自然派塗料」の代表です。「素材の持つ特徴を最大限生かした作品」が、手作りカントリー木工であるとすれば、この「思い通りにならない」オイルフィニッシュは、まさにうってつけ。ただし誤解してはいけないのは、「オイル自体に変わりは無い」ということ。つまり、色の出方そのものは、「木材の種類や部位」によるということです。色の出方を想定した木材選びがポイントとなる訳ですが、簡単な見分け方としては、「固いものほど、オイル浸透が少ない」=「色合いは薄くなる」ということ。逆に「柔らかいものほど、オイル浸透が多い」=「色合いは濃くなる」ということです。パイン材を選ぶ際では、「赤みがあって重く感じるもの」、これは「心材」といって、年輪の中心部に近く、他の部分より固い素材になっています。オイルの吸い込みが弱い分、均等な色合いとなります。逆に「白っぽくて軽く感じるもの」は「辺材」といって、木の外側に近い部分。柔らかいため、オイルの浸透が良い分、色の濃淡が極端な形で出る場合があります。「オイルフィニッシュ」と「木材」との相性。長くその仲を取り持ってきた私ですが、その特性から感じるに、「オイル」は男性、「木材」は女性、と言ったところでしょうか。今では目をつぶったまま木材を持ってみると、その染まり方がはっきりと想像できます。


■「ハケ」について   2004.2.24
本日は、オイル塗装に使う「ハケ」について少々。このハケもまた多種多用なもので、多品種を揃えることに悦を感じるホームセンター等では、博物館の如く陳列されています。ペンキ塗りと違って「オイルフィニッシュ」などという、おしゃれな塗装には、さぞや特殊なハケを使うのではとお思いの方には残念ですが、簡単にいえば「一番安いもの」でOKです。とは言うものの、それでは話が終わってしまいますので、もう少し詳しく説明すると、「水性・油性両用、万能型スジカイ刷毛」という名称になります。基本的に刷毛には「水性用」「油性用」があり、耐油性や塗料の含み具合、配り具合等が考慮されています。また「ニス用」や「ステイン用」などの種類や、その形状・サイズなどにより、たかが刷毛、されど刷毛というくらいの種類が存在します。「塗ってから拭取る」という手法であるオイルフィニッシュ時に適したものというと、結論は何でもよく、強いて言えば、油性系であるがため、「油性」が表記されているもの選びますが、「油性専用」にすると、それこそ「高級国産馬毛製品」など間違って購入したりしますので、ここでは「両用型」を選びます。特殊な塗り技法や繊細さも必要ない塗装ですので、単純に「持ちやすく」「塗りやすい頭の角度」がついたスジカイ刷毛を選びます。これら条件を満たすものを探すと、おそらく刷毛売場のもっとも目立つところに「お買得品」と銘打った、一本百円程度の可愛そうな刷毛に行き当たることとなります。「オイルフィニッシュ」などど横文字でいうと立派ですが、もっとも単純明快な塗布方法は、オイルを満たしたドラム缶に、作品ごと10秒間付ける「ドブ漬け」というやり方です。つまり、そんなに大量のオイルを用意するのも、ドラム缶を準備するのも大変なので、しょうがなく刷毛で塗るということなのです。これまで刷毛選びに苦慮されていた皆様、お疲れ様でした。


■糸ノコ盤の刃について    2004.2.25
糸ノコ盤の刃は当然のこと消耗品です。電動工具のなかで、これほど寿命の短い消耗品はありません。そしてこの刃には、カットする素材により、いくつかの種類があります。すでに糸ノコ盤をお持ちで、その適した刃をお使いの方はお解りだと思いますが、今回は、これから糸ノコ盤を購入する方、あるいは、持ってはいるが、どれが適した刃なのかをお解りでない方のために解説します。糸ノコ盤の刃には統一規格がありません。基本的に、そのメーカーの「純正品」を買い求めることとなりますが、実際に「刃」を製造するメーカーというのは限られています。結果、自主統一とでもいうような形式となり、ホームセンター等で販売されている「刃」も、第三者メーカー品や、ハードメーカーのうちの一社製品のみを陳列している筈です。しかし、かつての「VHS対ベータ戦争」のような構図も残っていて、その取付け方式の違いにより、いまだ完全統一されていない現状です。今回は、その普及度から「VHS」とも言える「旭工機タイプ」「リョービタイプ」で説明します。この刃には木材用として「万能用」「硬木用」「軟木用」などがあります。「使ってみれば解る」とでもいうようなパッケージ表示は、さすが工具・刃物メーカーの体質です。これが家電メーカーであれば、それぞれの適した木材名を記入することでしょう。さて「パイン材」はどれに適するのでしょうか。比較的柔らかい素材なので「軟木用」かと思いきや、この刃でカットすると、目指す墨付ラインに定まらず、さしずめ「飲酒運転状態」とでもいうような蛇行を余儀なくされます。これは「硬木用」でも同様の結果です。そしてもっともラインに沿って切りやすいのが「万能用」(NO.1表記)です。これは厚さ20mm程度の木材すべてに言えることです。どうやら、この「○○用」という表示は、「その木材が限りなく良く切れる」という意味のようで、切れすぎることによって、かえって「ラインどり」が難しくなるということには気付いていないか、お構いなしかのどちらかだと思います。もちろん「万能用」以外の刃に使い慣れ、かえって他のものは使いづらいという方は、それで結構です。アクセルを普通に踏むと時速100kgが軽く出てしまう車と、普通に踏んで40kg程度の車。市街地でのアクセルワークが楽なのは後者です。「本職」は、その経験と知識から、細かな説明を必要とせず、与えられた道具を使いこなします。しかし、ビギナーは、製品表示の情報を第一として使用します。工具メーカーは、これまでの「本職向け」の頭から、「ビギナー向け」の頭に切り替え、製品開発や販売を行って欲しいものです。


■私の愛読書  2004.2.26
私もかつてそうであったように、手作り木工の世界に目覚めると、例外なくその参考書となる木工誌を求める。ところがこれが意外と少ない。というか、あるにはあるのだが、職人用語を並べ立てた難解でマニアックなものであったり、いかに不変的な世界と言えども、すでにセピア化したネガを焼き付けたかの如くの、取材資料の年代を感じさせるものであったり、逆に女性向けの簡単な物のようではあるが、内容を追うと、どうも編集する側のほうが、読む側より素人であることが明らかなものであっとりとか、木工というよりも、工具メーカーとタイアップしての押し着せ内容にうんざりするようなものであったりと、なかなか「夢中になれる手作り木工」の本が見つからなかった。そして唯一「これだ」と感じたのが「手づくり木工事典」だった。会社勤めの合い間に、穴のあくほど夢中になって読んだ。「いつかはこの誌面で紹介されたい」などという、はかない夢を持ちながら日曜木工に励んだものだった。私の座右の銘ともなっている、この創刊号の最初のページに書かれている文章は、今もそらんじる。ここで紹介したい。
「太古の昔から、木は私たちの身近にあり、常に暮しを共にしてきました。青々とその葉を茂らせた木陰では、旅人につかの間の休息を与え、豊穣の秋には果肉あふれる木の実をもたらし、山にあっては雨や雪をせきとめ、伐り倒されては家の柱や家具に、古びては薪となって私たちを暖めてくれました。
木は私たちの暮しを何も語らないままに育み、守ってくれています。今、求めようとすれば、何不自由なく満たされる時代だからこそ、あえて、手づくりに挑戦することが、本当の贅沢なのかもしれません。」
1989年5月の創刊以来、14年に渡って私たち手作り木工家を楽しませてくれたこの木工誌は、2003年1月の発行元倒産により、ついに絶版した。
夢かなって、アーリーハッチが紹介されたのは、さかのぼる事2001年10月のNo.49であった。


■テクニックシリーズ 「ジグソー」  2004.2.27
手作り木工の作業のなかで、もっともテクニックを必要とし、またデザイン的な個性が出るのが「ジグソー」です。「ジグソーの選び方」については2004.1.3の講座で解説しましたが、今回は、そのテクニックについてお話します。ジグソーは、もともと「曲線」をカットする工具です。そのためブレード(刃)は細身に出来ており、細ければ細いほど「極曲線」のカットが可能となります。逆に幅があるほうが切断進行方向に対しての安定性があるため、比較的「ゆるい曲線」向きということになります。ここでのポイントは、そのラインの「R度」(カーブ加減)によってブレードを使い分けるということです。なぜなら、極曲線用のブレードの場合、直進性に不安定さがあるため、いかに材の表面側「墨付けライン」に忠実にカット出来たとしても、材を裏側をみると、切断ラインにゆがみがでる場合があります。これが「極曲線用ブレード」の弱点で、細身であるがゆえに、「切断中でのブレードのねじれ」が出るためです。木材用ブレードには「直線・曲線用」(注:治具なしでの完璧な直線は不可能)と、「極曲線用」の2種類に大別されます。そしてそれぞれに「粗切用」と「仕上用」があります。「仕上用」の方が若干高額ですが、切断面が綺麗で、材表面に出る「バリ」も少ないので、特にカントリー木工作にはお奨めです。作業中でのポイントは「途中で止めない」ということ。切断途中で一旦止めて、再度切り始めると、その部分に段差が残ります。連続した曲線は、最後まで止まらずに切断することです。特に、きついカーブの途中での中断は厳禁。カーブ切断時は、ブレードが「カーブ方向に対してねじれている状態」で、ブレードが材に食いついているため、再度切り始めようとすると、ジグソー本体が跳ね上がる場合があります。やむを得ず中断し、再度切り進む場合は、ブレードが材に食いついていないかを確認するため、スイッチを入れない状態で、ジグソー本体を上下に動かしてみます。この時、抵抗なく上下出来れば、そのままの位置で再開しますが、材に食いついているようであれば、抵抗のないところまで戻って切り始めます。いずれにしても、中断は余計な仕事を増やすことになりますので、常に切り始めの際には、最後まで切り通せるための「材の位置」と、「自分の立ち位置」の関係をシュミレーションすることが大切です。


■テクニックシリーズ 「トリマー」  2004.2.28
トリマーの特徴については、「今や必要不可欠なトリマー」(2003.12.22)の講座でお話しましたが、今回はその使用におけるテクニック等について、簡単に解説します。トリマーの基とも言える手工具は「カンナ」です。木材には、その木目方向によって「順目」と「逆目」があります。「逆目方向」にカンナをかけると、刃が食いついて「先割れ」がおきたりして、削り口が汚くなります。そのため、カンナがけの基本は、「順目方向」に進むことになります。しかし、この「トリマー」による切削の場合、刃の回転方向(時計まわり)が定まっているため、おのずと材での進行方向は「順目・逆目」に関係なく確定しています。材の「外側」をかける場合は「反時計まわり」で、材の「内側」をかける場合は「時計まわり」となります。逆向きでかけても良さそうなものですが、切り口が「ささくれ状」になってしまいます。ただし、この場合でも、もう一度正しい方向でかけ直すことによって、「ささくれ」はきれいに取れます。トリマーの正しい持ち方は、「出来るだけ下の部分を持つ」ことです。トリマーでの切削は、「トリマーシュー」と呼ばれるベース部分が、材に対し傾きなく密着していなければなりません。傾くことによって、切削が浅くなったり、またはまったく削れなかったりします。持ち手が材に近ければ近いほど、材への密着度が手に伝わります。もっとも注意するのは「材の角」の部分、つまり「かけ始め」と「かけ終わり」の部分です。トリマーのベース中央部(ビットが出ている部分)は、直径3cmほどの穴になっています(通称ブラックホール)。「かけ始め」の際に「右側、または手前」に傾くと、材の角が、このブラックホールに入り込み、大きくえぐれてしまいます。また同様に「かけ終わり」でも、「右側、または進行方向側」に傾くことで、えぐれてしまいます(それぞれ、材を左手でおさえ、右手のトリマーで押す方向で説明しています)。そのため、常に材との並行を保つように注意します。ただし角のない、材途中での傾きは、すべて「浅く削られる」ため、再度正しくかけなおせばOKです。また、「木目直行方向」での切削時には、その「かけ終わり」に要注意。勢いよく切り抜けると、材の角が木目に沿って割れをおこします。ゆっくりと徐行しながら切り終わるようにします。「木目方向」での注意は、同「直行方向」よりも切削抵抗が少なく、かけやすく感じるため、ついつい進行スピードを早めがちですが、材が「逆目」の場合で、特に乾燥時期には、「カンナ」と同じく「先割れ」という、材の割裂が起きる可能性がありますので、あせらず慎重に進めます。


■テクニックシリーズ 「糸ノコ盤」  2004.2.29
手作り木工では欠かせない「糸ノコ盤」。細かな曲線カットで活躍する工具ですが、「うまく切れない!」という方のために、簡単なアドバイスを少々。うまく切れない問題点のポイントは3つあります。ひとつ目は、「刃が折れそうな恐怖感」です。糸ノコの刃は、その名の通り「糸」のように細く出来ています。そのため、「折れるんじゃないかな」という恐怖感で、いわゆる「腰」がひけてしまい、「ライン取り」よりも「恐怖感」が優先して、正確なカットが出来なくなります。一見頼りなげな刃ですが、そこは刃物。「非鉄金属用」までラインナップされるほどですので、「細さゆえの恐怖感」は不要です。なかには不幸にも、すでにこれまでの使用により、すでに金属劣化している状態で使い始めた途端に刃が折れ、恐怖感を植えつけられるといった可愛そうなケースもあります。ふたつ目は「材を押しすぎること」。強く押さなくては切れて行かないという「あせり」から、推し進めるスピードが速すぎると、ライン通りに切れないケースが多いようです。もちろん慣れてくると、絶妙なスピード加減が身に付きますが、最初のうちは、あせらずゆっくりと、鉛筆ラインを削り消すつもりで切り進めることです。三つ目は「材を回しきれないこと」です。曲線カットは、思った以上に、材を大きく取り回します。肩と手元に力が入りすぎたり、「刃元」のラインばかりに集中していると、次に続いていく曲線への対応が大きく遅れ、ラインの外側へと脱線して行きます。刃元への集中はもちろん必要ですが、曲線全体の走りを頭に置きながら、早め早めの取り回しがポイントになります。糸ノコの切断機能の構造は、常に「刃のある位置」を「点」として切り進んで行きます。この「刃元」が支点となって描かれる曲線は、どんな細かなデザインのカットをも可能にします。すべてはあせらず「道具」と付き合うことでしょう。