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著作:アーリーハッチ 著者: 社団法人 日本DIY協会認定 DIYアドバイザー 首藤浩昭 著作開始日 2003.12.16
著作掲載対象:アーリーハッチホームページ http://www.hatchan.com/subtop.htm
2003.12掲載分 2004.1掲載分 2004.2掲載分 2004.3掲載分(本ページ) 2004.4掲載分 2004.5掲載分 2004.6掲載分 2004.7掲載分 2004.8掲載分 2004.9掲載分 2004.10掲載分 2004.11掲載分 2004.12掲載分
■テクニックシリーズ 「サンダー」 2004.3.1
仕上作業に便利な「サンダー」。その特徴については、「仕上げに重宝なサンダー」(2004.1.1)の講座で解説しました。今回は、その効果的な使い方テクニックについてお話します。「サンダー」には大きく分けて2種類あります。市販のサンドペーパーを装着し、バイブレーション効果で研磨を行う「オービタルサンダー」。そして、マジックテープ式の円形専用ペーパーを装着し、ランダムな回転作用で研磨を行う「ランダムアクションサンダー」です。塗装前の下地調整用として、木材全体をまんべんなくサンディングするのは「オービタルサンダー」です。スイッチを入れてから材にあて、木目にそって一定の速度でゆっくり進めていきます。ポイントは、常に材に対してペーパー部分がかたよって浮き上がることなく、全体を均一な押さえ込みでサンディングすることです。効率的にサンディングしようとして、作動音が下がるほどの強い力で押さえ込み過ぎると、モーターに無理な負荷を与えることになるばかりか、サンディング効率が逆に劣ります。作動音が材にあたっている時でも、「空運転時」(材にあてていない状態での作動)のときと同じ音での作業が、もっとも効果的な状態です。また、一定位置を集中的にサンディングすると、その部分にサンディングむらが出来ることになりますので注意が必要です。仕上用としての装着ペーパーは#240でOKです。「ランダムアクションサンダー」は、集中的なサンディングに効果的。「傷消し」や「マーキング消し」、「極度の汚れ」等に適していますが、材全体への仕上げ研磨には不向きと言えます。操作ポイントは、回転部分が材にあたる瞬間に注意することです。回転動作により接地しますので、傾きがあると、その瞬間に部分的な「回転傷」が付きます。材へあてる際は、回転させながら水平におろし、目的の研磨部分の状態に合わせ、軽く回転部手前を浮き上がらせるようにして、前方側に力点をおきながらサンディングをします。ペーパーが装着される回転ベース部分はラバー製ですので、その「しなり」を利用しながらサンディングする訳です。部分的な目的研磨が出来たなら、再度水平に戻し、慣らし研磨をして、不均等なえぐれを目立たなくして行きます。いずれにしても、「ランダムアクションサンダー」は、その操作に慣れが必要です。見た目にはきれいにサンディング出来たように見えても、オイル等の着色仕上げを行った場合に、逆にサンディングの際に生じた回転傷が大きく目立ってしまう場合があります。理想的には、この2台を使い分けることがベストですが、まず「オービタルサンダー」を使用して、仕上サンディングの効果を充分認識した後、必要であれば「ランダムアクションサンダー」の購入を検討すれば良いと思います。
■テクニックシリーズ「ドライバードリル」 2004.3.2
手作り木工、特に実用的作品や、中型・大型作品の制作で、メインの電動工具として活躍する「ドライバードリル」。木工に限らずとも、初めて手にする電動工具といえば、まずこれでしょう。この「ドライバードリル」、その名の通り、先端ビットを取り替えることにより、ネジ回しのための「ドライバー」機能と、材に穴をあけるための「ドリル」機能をあわせ持ちます。当店木工教室で、お客様からのご質問としてもっとも多いのは、「ドリルであけた穴が斜めになる」「ネジを締める際に、ドライバーが噛み合わず、ガタガタいう」ということです。これらはすべて「ドリルドライバー」が、材に対して垂直に位置していないために起きる現象です。本人は垂直にしているつもりでも、人ぞれぞれによって傾き方の「癖」が必ずあります(私もそうです)。これを完璧にこなすプロさえもまずいないといって良いでしょう。一番多いのは、その作業姿勢から、ビットの先端を凝視しようとするあまり、「ドライバードリル」の持手部分が前方にやや傾くこと。つまり、それによってあけられるドリル穴は、手前に向かって傾斜しながら入り込むことになります。「ネジ締め」の際の「ドライバー機能」の場合、ネジそのものは既にドリルによってあけられている「下穴」に沿って進もうとしますが、構えているドリルドライバー本体が傾斜していると、ネジ頭の溝にドライバービットが密着せず、そのため歯車が噛み合わないような「ガタガタ音」が出ます。この傾きを解消するために、もっとも効果的なのは、その作業を誰かに立ち合わせ、傾き具合を指摘してもらい、「自分の癖」を認識することです。この場合の人選は、「お世辞の言えない友人」や、「最近冷たい配偶者」などが打ってつけです。その指摘に合わせ、以後それを意識しながら操作するようにします。不思議なもので、そうした意識を持った上で、「うまくいった場合」の感触というものは、しっかりと体が覚えてくれるものです。ところで、材に対してあける「下穴」は、本職の常識として、実は「故意に傾斜させる」ものなのです。これは、特に「釘による仕上げ」の作品に用いられます。下穴を傾斜させることにより、そこに打たれる釘類は、材への垂直方向での「引抜強度」が増し、より強固な作品となります。これは、建築物の力学構造でも用いられる技法です。そうした意味で、ドリルドライバーが傾斜してしまうことは、それ自体そんなに落胆することでもないのですが、「意識して行えること」と、「無意識のうちにそうなってしまうこと」の差は、指摘してくれる人の、自分への友情や愛情の「装い具合」以上に著しく相違します。
■木材の補修について 2004.3.3
作品の組立てをしようとする際、木材に「へこみ」や「欠け」、「傷」などが見つかり、それがたまたま、その作品の目立つ部分だったりすると、ものすごくがっかりしてしまいます。豊富なストックがあれば取替えも出来るでしょうが、ほとんどの人は、必要な分の材料のみで購入しているはず。そこで今回は「木材の補修」について解説します。比較的浅い「傷」「へこみ」の場合、「サンドペーパー」や「サンダー」を使ってサンディングしてみます。ただし特にサンダーを使用する場合、部分的なへこみが出来るほどのサンディングは、かえってマイナスになりますので注意が必要。多少の経験さえ積めば、その「傷」や「へこみ」を見た段階で、それがサンディングにより解消されるものかどうかの判断がつきます。明らかに深く、サンディング処理の範囲を超えているものは、「水」を使います。その部分に少量の水をたらし、半日ほど放置します。急ぐ場合は、さらに濡れたウエス(ボロキレ等)をあて、アイロンで軽く加熱します。つまり、水分による「木材の膨張作用」を利用して復元させる方法です。これでも修復出来ないもの、例えば、極端な「エグレ」や「欠け」「抜けフシ」などは、「木工用パテ」を使用します。このパテで注意するのは「肉やせ」です。パテを埋めた時点で、平らに仕上たつもりでも、それが硬化するに従って、徐々にへこんでいきます。そのため、硬化後さらにパテを補填する必要があります。また、比較的浅い症状に対して使用した場合、パテそのものも薄く充填されます。そのため、パテの保持力が弱く、簡単にはがれてしまう場合もありますので注意が必要。そうした場合、思い切ってその部分を若干深めにえぐってからパテ埋めしたり、粗目のヤスリで傷を入れ、パテの食い付きを良くさせます(度胸がいります)。また、オイル仕上げの場合、当然下地が透けて見えます。パテには、色の種類があります。種類によっては、塗料の上塗りが出来ないものもありますし、出来るものであっても、そのまま下地として見えてしまう訳ですから、あらかじめパテの色と仕上色を、同系のものにする必要があります。
■「ドライバードリル」対「インパクトドライバー」 2004.3.4
「木工には、ドライバードリルとインパクトドライバーのどちらが適しているか?」との質問が多い。個人的な見解としていうなら、答えは「ドライバードリル」である。家具制作としての木工作業の場合に、ドライバードリルが受け持つ作業は、「下穴あけ」「ダボ穴あけ」「ネジ締め」等である。しかし、これら作業は、インパクトドライバーでも、もちろん可能だ。ではなぜドライバードリルの使用を推挙するかというと、元来インパクトドライバーは、その駆動に対する負荷が大きくなった際に、回転方向への連続打撃(インパクト機能)が働き、より強力な締め込み能力を発揮する工具である。さらにそのパワーを確実なものにするため、無断変速機能のギア比を高めに設定してあるため、ロー回転からフル回転までの駆動速度は、ドライバードリルのポジションでいう「HI」に匹敵する。つまりこうだ。より強力なパワーを発揮するために、回転の速度を上げ、さらに加速を付けて、一気に締め込もうとするのである。では、なぜインパクトドライバーを家具制作に推挙しないかというと、ひとつには「無駄にパワーがありすぎること」。よく例に挙げる「フェラーリで、市街地を時速30kg走行すること」と同じ。やったことはないが、そのアクセルワークは、ことのほか苦闘するであろう。ふたつ目には「ビットのコスト」。12mm径以下のものは、ほとんど何でもくわえることの出来るドリルドライバー。その先端ピットは大変豊富である。一方、六角軸のみしか装着出来ないインパクトドライバーの場合、ドリルビットを含め、その価格は比較的高額。ドライバービットでさえも、その打撃機能に耐え得るものでなければならないため、「インパクトドライバー対応」という表示を確認しなければならない。フェラーリは、たしかに「かっこいい」。しかし、それを乗りこなすためのテクニックと、パーツのコスト、融通性も考慮しなければならない。目的を考えた愛機選びが大切である。愛すべきは、「かっこが悪くても、力持ちでなくても、なんでも地道にこなせる器用なヤツ」ということである。
■SPF材について 2004.3.5
近頃、ホームセンターやDIY店で、その価格競争の目玉ともされている「SPF材」。もっと親しみやすく、解りやすい名称で販売すればいいようなものだが、相変わらずそうした旧来の「業者中心的」な頭は固いままのようだ。木肌が白っぽく綺麗な「スプルス材」と、繊維に粘りがあって木目の綺麗な「パイン材」、そして「ファー」(サワラ)をかけ合せた木材を総称して「SPF材」と呼ぶ。その使用目的は建材(2x4工法などの構造材)であり、近頃のDIYブームにより、一般ユーザーも好んで大量買いしている。価格競争の所以はここにある。大型DIYユーザーの場合、その木材以外にも、工具・道具であるとか、ビスや塗料、その他、一式をそのショップで購入する。つまり木材の安売りを犠牲にして、その付帯効果を狙いとしている。職人の購買でも、少量陳列では鼻で笑われるだけで、二度と足を運ばない。ゆえに大量陳列を見せる必要がある。そうした理由で、各ショップとも、ほとんど利益のない価格設定で競争しているというわけである。我々手作りユーザーにとっては、願ってもないことなので、せいぜい談合せずに低価格を維持してほしいものだ。木工家具に利用するには、SPFのなかでも「1xサイズ」(ワンバイサイズ)だろう。厚みが約19mmで、幅は90mmなどさまざま。束売りしているところもあり、価格は笑ってしまうほど安い。品質はというと、スプルス材の特徴である「白さ」が出ていて、見た目も綺麗。木目も安定していて、小物制作にはほどよい。パイン材の「赤み」はない分、浅くはあるがオイルフィニッシュ時の吸い込みも均一で、結構綺麗な仕上がりになる。強度はもともと建材にも使用されるほどなので問題ない。伸縮による割れ・ヒビは防ぎようがないが、それは木材全般に言えること。もう少しパイン材のような「粘り」があれば、カントリー風の独特な風合が出るのだが、その分均一な質感の良さで相殺できよう。トリマーによる面取りや曲線カット時には、粘りがない分、繊維方向に対しての「先割れ」が良く起きるので、特に「逆目」方向の加工時には速度を緩め、慎重にすると良い。
■「初めての木工」夢は大きく持とう 2004.3.6
この「ワンポイント講座」を連載する中、話の内容がどうしても難しい方向に進んでしまう傾向に少々反省して、今回から「初めての木工」シリーズと題して、初めて木工に挑戦しようとする皆様のためにお届けしたい。同時に、熟練の皆様も初心に戻ってお読みいただきたいと思う。手作り木工に興味を持つ動機といえば、おそらくは、木工雑誌やカントリー雑誌、あるいは友人知人の影響など様々と思う。物作りの楽しさは、その制作過程はもちろんだが、なんといっても完成した時の喜びが格別。私などは毎朝一番、その作品の前に立ち、にやにやしていたことを思い出す。手作りの楽しさは、その継続性にあると言われる。つまり、一つの作品を作って完結するのではなく、一つ一つの経験を積み重ねることによって、技術的にも精神的にも充実していくというもの。そのためには「いつかはこんな作品を」という大きな目標を持つことがポイント。「絶対こんな作品、自分には出来ないだろうなあ」というくらいの大きな夢を持って始めると、確実に夢が夢でなくなっていく「自分の成長度」が楽しいほど実感できるはずだ。物作りのおもしろさというものは、自分自身の楽しみのみならず、教育的にも非常に効果的なもの。お金を出して物を手に入れること自体は、「物と金の仕組み」の教育にこそなれ、みずからの創意工夫と、技術と努力を以って生み出すという、人としての内面的な成長には寄与しない。そうした意味で、物作りを楽しむ親の姿が、その子供に与える影響というものは、文部科学省推薦に値する。そうした自信をもって、いよいよ手作り木工にチャレンジしよう。明日は「初めての作品」と題し、その制作ポイントや必要最小限の道具を紹介する。
■「初めての木工」最小限の道具をそろえよう 2004.3.7
(昨日よりの続き)いよいよ木工を始めるにあたり、必要最小限の道具を購入しよう。ポイントは「欲張らない」ということ。いくら「お買得」だからといって、「セット物」には手を出してはいけない。その時必要としないものが道具に混在しているだけで、作業に迷いが生じるもの。また、「形から入る」と、お金を出して道具を購入することに満足感を覚え、本来木工趣味の目指すところの「自らが生み出す喜び」を半減させることになる。この手のパターンはよくある。何を間違えたか、木工を楽しむはずが、いつのまにか「道具コレクター」と化し、使えもしない高価な工具類を、飾り物におとしめて喜んでいる衒いはあまた存在する。ところで、まず手始めに挑戦するなら「小型の箱物」。コンテナやキッチンで使えるスパイスラックなど手ごろ。コンテナは「正面・背・底・側x2」の計5枚の板で作れる。スパイスラックなどはその応用。最初から「扉式」は避ける。組立てには「釘」を使用。初めから「ネジ式」はお奨めできない。木工作の基本品は、こうした「箱物」。図面上は、単なる「足し算・引き算」で片付くが、実際形にするとなると、どんな誤差が生じるかを、この「箱物」で体験する。さらに釘打ちすることにより、木材の「堅さ・癖」などの特徴を、じかに感じることが出来る。デザインなどは、雑誌などを参考にすればよい。最小限の道具としては、まず「ゲンノウ」。柄のくびれた部分から若干上を持ち、スナップをきかせ軽く振ってみて、「ちょっと重いかな」というものを選ぶ。小物制作なので、メインの工具は「糸ノコ盤」。これは将来に渡り使用するので、くり抜きにも便利な「フリーアーム式」を選ぶ。カントリー雑誌に広告宣伝やタイアップ掲載しているからといって信用するのは愚の骨頂。通販でしか手に入らないようなメーカー品は避ける(どことは言わない)。近郊ショップで販売している国産メーカーのものにする。接着剤は「速乾用」以外のものを選ぶ。サンドペーパーは、曲線カットの修正用に#80、木材表面研磨用に#240。釘は38mmのフロア釘がお奨め。塗装はお好みだが、カントリーならオイルフィニッシュで「ワトコオイル」など。これだけの道具工具があれば、かなりのものが出来る。明日は、もう少し便利になる工具類と制作ポイントを紹介しよう。
■「初めての木工」工具に慣れる、そして性格を再認識する 2004.3.8
(昨日よりの続き)手作り木工では、もっとも身近な電動工具のひとつである「糸ノコ盤」。実は、これこそ「木材の性格」を理解するために、もっとも適した工具と言える。「糸ノコ盤」はその名の通り、糸のように細い刃で木材を自在にカットする。しかし、細いがゆえに、力加減によって、その刃は簡単に折れてしまう。その恐怖感から、糸ノコ操作の技術が停滞してしまう人もいるほど。これほどに「もろく」そして「敏感」な刃で、厚さ20mmをも超える木材をたやすくカットしてしまうポイントは「攻守の理解」。つまり攻める側の「道具」を知ることと、攻められる側の「木材」を知ること。目の前で「風船芸」を見ている時に、おっかなびっくり、いつ割れるかと、耳をふさいで恐怖した経験があるだろう。当の芸人は「風船」の持つ「限界力」を理解しているため、平気で芸を続ける。「糸ノコ盤」の操作が上達する最大の近道は、木材をカットしながら、どんどん刃を折って見ること。そうすれば、刃の持つ「限界力」を知ることが出来る。それにより、「木材、対、糸ノコ刃」の力加減がおのずと理解出来る。あとの技術は慣れのみだ。糸ノコ盤をある程度使いこなせるようになると、その弱点である、比較的大きな材料のカットに目が行く。そう、ジグソーの登場だ。「あんな本格的なものは・・」という人もいるが、使ってみれば糸ノコのほうがよっぽど怖い。そして糸ノコより価格も安く、種類も多い。糸ノコほどの「極曲線」に対する小回りはきかないが、「これぞ木工」という実感を味わえる。筆者などは、ジグソーのみの切断工具で、建坪10uの「2x4工法ログハウス」を建てたほど。それほど「使える工具」である。もちろん「丸ノコ」ほどの正確な直線カットは期待出来ないが、そのカットラインは、自らの手さばきによる表れとなるので、実に楽しいものだ。この「糸ノコ盤」と「ジグソー」に慣れ親しむことこそが、「木材」を知る上で、そして「木工」を楽しんでいく上での大きなポイントとなる。あとは、そうした「趣味・興味」に対する、本人の「性格」に係わる持続性と言える。「道具や木材の性格」を知ると同時に、自分自身の性格も再認識出来るはずだ。
■ホゾ組みの極意 2004.3.9
手作り木工、特にカントリー家具類では、基本的に「ネジ・釘」と言った金物をその接合方法とし、使用工具に至っても「電動ドリル・丸ノコ・ジグソー」といった電動工具を必要とする「欧米型」の手法。真の意味で、「建築」をその基としている「木工」は、本来屋外のどんな場所でも可能でなければならない。つまり「電気のない場所」ということ。こうした「木工」において、その接合方法の基本となるのは「ホゾ組み」である。釘・ネジ・金物等を使用しないで材を組み上げていく作品を経験すると、合理的且つ効率的な「欧米型手法」も、単なる幼稚で強引な自己中心的占領主義者に見えてくる。難しいことはさて置き、椅子などの作品に見られる、このホゾ組みは、手作りカントリーにおいても、一ランク上の作品として認められる。このホゾ組みは、雄側である「ホゾ」と、雌側である「ホゾ穴」からなる。基本的に「ホゾ」はノコによる加工となり、「ホゾ穴」はノミを使用する。ノミの種類は、その加工面の寸法により数本必要になる。この精度が要求される「ホゾ組み」。ポイントとなるのは「正確な墨付け」だ。本格的になれば、小刀のように切り込みを入れながら墨付けをする「シラガキ」と「ケヒキ」を用いるが、最初のうちは鉛筆でも可能(逆の意味で墨付けの精度が認識できる)。「ホゾ」側は、特に相手側表面に当たる「肩」(根本部分)の正確さに注意。接合時にその合わせ面が露出する部分なので、見た目にも大切なところ。加工後はゲンノウにより、ホゾのまわりを叩いて「木殺し」する。「ホゾ穴」側では、鉛筆書きしたラインの内側をノミで彫る。墨付け精度にもよるが、ラインを消すように彫ると、接合時に緩みが出る。切り過ぎたものは戻しようがないが、きつい場合は削ることが可能だ。「通しホゾ」(ホゾ穴が突き抜けているもの)の場合は、材の両面に墨付けし加工する。また、ホゾ穴をすべてノミにより加工するのは大変なのでドリルを使用して大まかな穴をあけるとよい(やっぱり電動が出てきたか・・)。また、悔しいかな、「角ノミ」という、手軽に正確なホゾ穴加工が出来る電動工具(ちょっと高額)もある。この「ホゾ穴」側については、「ホゾ」が肩付きであれば、その切り込み口は隠れるため、垂直さと密着ささえ維持できていれば合格。いずれにしても、「ホゾ組み」加工は、精度が要求される技法だけに、集中力が必要。それだけ、自分の技術をさらけだし、真剣に「木」に向かい合うことが出来る、本当の木工スタイルを経験できるはずだ。
■プロトラクターについて 2004.3.10
たとえば、「チェアー」や「ベンチ」の背もたれ部分など、「任意の傾斜角度」を墨付けする場合に必要となるのが、「自在定規」や「プロトラクター」だ。「自在定規」とは、それ自体に「目盛」はなく、測定機能はないが、既存角度や任意角度の複写に使用出来る道具。一方「プロトラクター」は、畑を耕す農機具のことではなく、形としては、「分度器」に角度基準点を支点とするスケールが付いた、指定角度の墨付けや測定に用いられる道具だ。この「自在定規」と「プロトラクター」。両方あればもちろん便利だが、「プロトラクター」があれば、「自在定規」の機能もまかなえる。具体的な使用例で言うと、「チェアー」や「ベンチ」の背もたれ部分に傾斜を付ける場合、その「枠材」または「側材」に対し、背もたれ接合部の墨付けをすることになる。角材を使用した「枠材」であれば「木端側」、板材を使用した「側板」でいれば「上部木口側」より、任意の傾斜角度に設定した「プロトラクター」を使用して墨付けを行う。これにより、左右の角度を合致させることが可能となる。この作業を「プロトラクター」なしで行うのは至難の技。というものの、こうした道具の存在を知らずに、サシガネ等で測定しながら、左右の傾斜を墨付けしている方も多いのではないだろうか。最近は、作品の仕上がりをわざとアンティーク風に崩してみたり、満身創痍の重態患者の如くの作品が重宝がられたりする。しかし、でたらめで良いのは、そのデザイン・仕上げについてであり、唯一「墨付け」においてのみは、1mmの狂いも見逃してはならないし、またそうであって欲しいし、そうあり続けて欲しい。
■接着材を使ってはいけない接合について 2004.3.11
家具制作の組立時には、そのほどんどの工程で「木工用接着剤」を使用する。接着目的もさることながら、大型家具の場合では「きしみ音」をなくす効果も持つ。キャビネットの正面材である「横枠」対「縦枠」のぶつかり部においても、極力接着剤を塗布した方が、横揺れ時に起きるこの「きしみ音」を無くすることが出来る。本格的な木工、特に「実用大型家具」における接着基本では、知らない人はショッキングかもしれないが、「繊維方向が直行する接合部は、接着剤を用いない」ことが原則となる。キャビネットを例にとると、その構造部となる「天板」「側板」「棚板」「底板」のいずれも、「同じ繊維方向」による接合となる。つまり、この場合はすべての接合部において、接着剤を使用する。問題の「繊維直行方向での接合」を持つ家具構造というのは見つけにくいものだが、「テーブル」の天板や、「椅子」の座板の接合なら解りやすい。天板の受台となる「幕板」や「台輪」の繊維方向に対し、その「天板」や「座板」の繊維方向は、必ず二辺が直行する。そのため、この「天板」や「座面」に接する部分には接着剤を使用しない。理由はこうだ。木材はその使用環境(特に湿度)により伸縮を繰り返す。特に「繊維と直行する方向」への収縮が激しく起こる。接着された材同士の繊維方向が同じなら、互いに伸縮できる。しかし、それが直行している場合だと、片方の材が伸縮しようとしても、もう一方の材は伸縮せず、これにより、伸縮しようとする材側に「ゆがみ」や「割れ」「ヒビ」「反り」を発生させることとなる。そのため、こうした場合は、「面」としての完全接合となる接着剤の使用は行わず、「点」による接合となる最小個所でのネジ固定や、特に大きな伸縮が予想される場合は「金折甲板」(コマ止め金具)などを使用する。つまり、これにより伸縮への遊びを作ってあげることになる。特に「金折甲板」(コマ止め金具)には、楕円のネジ穴があいており、「横穴」と「縦穴」の2種類がある。この楕円の向きと、材の繊維直行方向を同じにして、その収縮に対応させることが出来る。この「接着剤を使用してはいけない接合」は、比較的広い材の場合に有効であり、小型家具等、場合によっては、接着剤を使用しても差し支えない部分もある。
■木工「三つの基本」 2004.3.12
木工をおこなう上での「材」や「道具」、「加工例」や「構造」等、必要な道具や知識について、これまであらゆる面から解説してきたが、それらを総括する意味において、もっとも大切な「木工、三つの基本」をお話する。あまりに当たり前すぎて、つまらなく思う方もいるかもしれないが、私個人、木工作業を行う場合に、いつもそれを思いおこしている。まず一つは、「正確な木取り」。つまり、定尺の材からの正確な部材の切り出し。これがいい加減であれば、どんなよい道具を使っても、また上等な知識を持っていたとしても、出来上がる作品は不具合なものになる。基本的な作品である「箱物」の出来は、これで決まると言ってよい。極端な話、ひとつの部材に狂いがあれば、すべてにそれが影響する。木材の購入先がカットサービスを行っているホームセンター等であれば、それを利用するのが賢明と言える。二つ目は、「正確な墨付け作業」。木取り後の加工や組立ては、すべてこの墨付けに従って行われる。墨付けがいい加減であれば、おおよそ、その仕上がり具合は察しがつく。木取り同様、もちろんミリ単位の正確さが要求される。「墨付け作業」は、組立てのシュミレーションとなる。線や印を付けながら、頭の中で組立てを行うのだ。三つ目は、「適切な加工と技術」。垂直な穴あけやダボ処理、ネジ釘の選び方や用途にあった道具の使用、正しいサンディングや、塗装法など、この部分に木工のおもしろさが多くあると言ってよい。ただし、本当におもしろくするためには、正しい知識の裏付けがあってのこと。技術そのものは、いわば「慣れ」の積み重ねであって、字面や能書きから窺うことではない。「正確な木取り」「正確な墨付け」「適切な加工と技術」。当たり前の木工手順であるが、私が人に伝えられる「木工」とは、この「3つの基本」でしかない。
■「故障シリーズ」序章 2004.3.13
アーリーハッチが使用する電動工具は、すべてホームセンター等で販売されている極一般的なものばかり。毎月200名からのお客様が参加する木工教室がその主体であるため、あえて特殊なものは使用しない。本職にしか購入出来ないような道具で木工を学んでも、何の役にも立たないからだ。ところで、そうした道具・工具類に付き物なのが、故障やメンテナンスだ。販売店の店頭に陳列されている工具に、もし「この工具は○○の部分が故障しやすい」と表示されていれば参考になるのだが、そうした度胸とサービスの行き届いたお店はないようだ。そこで今回をその序章とし、「故障シリーズ」と題して、ランニング実証には最適環境であるアーリーハッチが、工具別にその「壊れやすい部分」と「壊れやすい使い方」をお届けする。基本的に電動工具には保証書がない。家電品のような「自然運転」ではなく、使用方法による負荷のかけ方で、その寿命が決定付けられるため、「期間」という時間的な保証が出来ないためだ。もっと簡単に言えば「壊れるのは使い方の問題」という旧態依然の殿様体質が、いまだ健在しているというところだろうか。ただし、さすがCSを理解している、工具関係では後発参入である一部家電メーカー「M社やT社」などでは、家電品同様に「1年間保証」をうたっている製品もある。故障の原因が、構造的な弱点であっても、使用方法によるものであっても、どちらにしても我々ビギナーにとっては丈夫で高性能なものがよいに決まっている。これから工具類の購入をお考えの方には、ぜひ参考にしてもらいたい。まずお目見えするのは、当店でも年に4〜5回、入退院を繰り返すほどの働き者「トリマー」から紹介しよう。(明日へ続く)
■「故障シリーズ」トリマー篇 2004.3.14
アメリカ木工様式における「影の主役」と言えるトリマー。面取り・溝加工・穴加工・切断等々、何でもこなしてしまう働き者だ。しかし、「ルーター」を手軽にした性格上、その小柄なボディで元祖をはるかにしのぐ、電動工具トップクラスの「R.P.M.30000」(回転数)という超高速で作業する。つまり、モーターパワーを回転数のアップにより補っていると言って良い。こうした働き者は人間界にも多い。そうした場合、えてして無理がたたり、あちこちガタが来るもの。当店のトリマーたち(4台在籍)も例外ではなく、つい先日、サービスセンターから退院して来たものもいる。当店では1台につき、平均年間2回ほどの入退院を繰り返す。もちろん生まれは、国産の一流メーカー品である。さて本題に入るが、このトリマーの故障個所はというと、まず「ベアリングの磨耗」。もちろん構造的欠陥ではなく、働き過ぎがゆえの消耗だ。修理代金は一般的に3〜4千円。次に多いのが「ACコードの断線」。作業中、誤ってそのビットにコードが触れ損傷したり、また原因不明の接触不良(主に本体付根付近)もある。後者については、使用後丹念にコードを縛ったりすることが、逆にコード自体に負担をかけている可能性もある。修理代金は3千円程度。次は落下による「トリマーシュー」(透明のプラスチックベース部分)の破損。これはよくある。取り寄せで3千円弱。またビギナーにはあまり知られていないのが「カーボンブラシ」の磨耗。モーターを駆動させるのに必要な消耗パーツで、必ず寿命がある。本体モーター付近の外装部に、十円玉で回せるようなフタが2箇所あるはず。それを外すことによって、自分で交換出来る。寿命はかなり長いが、使用頻度によるので期間的に説明できないが、当店では3年に1回程度。最終的な故障は「モーター」、言わば心臓部で、修理というよりもモーター交換になる。移植手術のようなもので、保険のきかない電動工具では、もはや新品購入と同程度の入院費を必要とする。つまり寿命という訳である。このモーター寿命、無負荷回転(空運転状態)なら驚くべき長寿なのだが、例えば、スイッチを入れてた後、回転が安定する前に即座に材にあてたり、また極端に負荷のかかるような作業を連続させたりすることで、短命を誘うこととなる。また基本的に電動工具には「定格時間」がある。つまり「連続運転の限界時間」だ。機種により様々だが、この定格時間を超える作業は過労となる。労使交渉の出来ない電動工具に労働基準法もないし、労働基準局による監視もないので、オーナーのなすがままに無言で作業を続ける。さて、こうした故障は、すべて使う側の労わりや注意によって防げるものが多いということがお分かりと思う。また、そうした働き者がゆえに、得体の知れない馬の骨の雇用については要注意ということも、同時に理解できよう。
■「故障シリーズ」糸ノコ盤篇 2004.3.15 (第91回)
昨日のトリマーに続き、今回は糸ノコ盤の故障について説明する。なお以下指摘内容については、当店使用の「R社」「A社」機種についての記述であり、メーカーにより異なる場合もある。トリマー同様、細かな曲線を多用する手作り木工で、糸ノコ盤は絶対欠かせない工具のひとつ。当店では5台を所有するが、年間合わせて4〜5回は入院を余儀なくされている(本日現在も、ひん死の状態で入院中なのが1台)。もっとも多い不具合は、糸ノコ刃を止めるための「上下2箇所の蝶ボルト」のツマミ部分(プラスチック)の空回りによるもの。これはメーカーにより異なる。当店使用の「R社」製は、金属のボルトに対し、ツマミ部分のみプラスチックを利用している。そのため、刃の取り替え作業を繰り返すうち、このプラスチック部分のみが空回りするというもの。その原因は、「ネジの締め過ぎ」ということも考えられるが、時折ゆるすぎて、作業中に刃が外れるケースも多々ある。説明書には「しっかりと締める」こととなっているので、力学的に、人力によるものが「締め過ぎ」に値するとは思えない。そのため当店では、この「蝶ボルト」のスペアを常時20個ほど用意しているほどだ。メーカーによっては、ツマミ部分も含め、すべて一体化した金属製のものもある。そして、それに相対する「受け側」の部分の損傷もある。つまりボルトに対する「本体メス側部分」で、これは鋳物製のため、意外にもろく「ねじ山」が壊れる。結果、ボルトそのものが空回りしてしまうといったもの。次に多いのが「スイッチ部の破損」。当店ではとにかく多い。スイッチレバーがプラスチック製で、そんなに力持ちはいないのだが、以外にもろく折れてしまう。前述の蝶ボルトのように、スペアは用意できないので、1週間ほどの入院を余儀なくされている。入院費用は3〜4千円程度。これは痛い。メーカーによっては、金属製や、表面にゴムカバーをしているところもある。また連続使用等によるモーター停止という症状もあるが、この場合「管ヒューズ」を採用している製品は、ヒューズ交換により回復する。電気店等で購入し、自分で取り替え出来るが、本体ごと販売店に修理依頼する人が多いようだ。現在多くの機種(信頼のおけると思われるメーカー品を対象)では、管ヒューズではなく、一時的に作動停止状態を維持した後に復興する回路を装備しているので、そうした機種では管ヒューズ自体が存在しない(説明書参照)。片手で頭上まで持ち上げられる程度の重量の製品(つまり小型モーター搭載品)では、そうした「定格時間」(トリマー篇で解説)が短いといってよい。また「トリマー」「ジグソー」「丸ノコ」など違い、糸ノコ盤のような「据置工具」の場合、ACコードの被覆構造(特に本体付根部分)はさほど配慮されておらず、我々ビギナーのように、狭いスペースでの作業により台への固定が出来ず、作業後いちいち退かさなければならない状況での使用は、コードの抜き差しや、束ね動作により、コードに結構な負担がかかる。そのため、コードの保護皮膜の損傷も意外に多いのが事実。なお余談ではあるが、「スピード調整機能」をうたった「奇特」な製品もあるが、お解りのとおり、特にそれが必要となるのは「木材以外の切断の場合」だ。不必要な付加価値の分、上乗せされた代金と、その不具合発生の可能性までも負担しなければならないことをお忘れなく。
■「故障シリーズ」ドリルドライバー篇 2004.3.16 (第92回)
シリーズ第3回目は、いよいよドリルドライバーの登場。これまで紹介の電動工具と比べても、その普及率はだんとつ。ゆえにメーカー修理依頼台数もおそらく一番であろう。私個人、以前そうした工具関連の仕事に従事していた関係からも、痛いほどよくわかる。その修理依頼内容は、大きく2つに分類できる。簡単に言おう。「安物の不良」と「良い物の故障」である。前者の場合はほとんどビギナーの持ち込み。ハードな使用をした訳でもないのに動かなくなったとか、甘い作りのボディーがゆえの破損であるとか、あきらかに初期不良と思われる配線系統の不具合などが多い。後者の場合については、欠陥的不良とは異なり、ハードな使用による故障や、消耗的故障など、つまり立派に仕事をこなした上での入院要請ということである。さて今回は、もちろん後者側での解説となるが、故障として多いのが「トリガースイッチ」の故障。もちろん構造的欠陥ではない。ネジをスクリューさせる動作では、物理的にその回転方向とは逆の向きに本体が反作用する。それを持ち手の握りで抑えるのと、「ネジを押し込む」という作業から、かなり強い力で本体を握り込んでいるため、トリガースイッチには、どの電動工具よりも強い「握りの力」がかかっている。もちろん、そうしたことを考慮した材質や構造ではあるが、やはり磨耗的な修理扱いの部類になろう。充電式では「バッテリーの寿命」。故障や修理ではないが、本体の一部として考えれば、パーツの交換とも言える。機種にもよるが、プロ用で500回、ビギナー用で300回程度が充電可能回数。なかには、どこからみても作業現場から直行して来た職人風なのだが、「動かなくなった。不良品じゃないか」と言って持ち込んできたドリルドライバーをみると、明らかにバッテリーの寿命だったりする。メーカー品でも「バッテリー2個付き9800円」というお買得なドリルドライバーもあるが、バッテリーのみの価格で1個5000円だったりして驚かされる。なお、バッテリーはものすごく水に弱い。弱いどころではなく、水に濡れることで発火する場合もある。屋外作業では注意したい。モーター直結による駆動方式のため、ハードな負荷作業をすればするほど、モーター寿命が極端に短くなるのも大きな特徴。価格は心臓部ともいえるこのモーターの出来によって決まる。欧州語や英語や日本語の話せない、安価な電動工具全般には注意が必要。
■「故障シリーズ」ジグソー篇 2004.3.17 (第93回)
いよいよ今回はジグソー篇。糸ノコ盤同様、曲線を多用するカントリー家具には不可欠な電動工具。このジグソー、ハードな切断作業をこなすわりに、一般に故障は少ないようだ(もちろん信頼のおけるメーカー品においてだが)。とはいうものの、当店に在籍する「B社」4台のジグソーのうち、入院歴のあるものが2台、現在入院しようかどうか迷いながらも作業に従事しているものが1台、すでに余命いくばくかとの診断を下されながらも最後の奉公に勤めるものが1台と、生まれ3〜4年にもかかわらず、それぞれ脛に傷を持つ。「B社」と言えば世界有数ブランドで、機種もプロ用。やはり連日のハードな作業によるものだが、逆に言えば、ビギナー使用に置き換えた場合、その症状はランニング検証にあたいする。早期に表れるのは「グリス切れ」による不具合。症状としては「ノック音」の増大。早まって粘度のまるで違う「クレ556」など注油してはいけない。内部シャフトや回転パーツ等の洗浄とグリス塗布となるため、やはり修理扱いとなり病院行き。そのまま使用を続けると、金属磨耗によりクランク部等がお釈迦になる。また、先日のドリルドライバー同様、トリガースイッチ系統の不具合も多い。始動系統でいうと、安全性を配慮した「スロースターター方式」(上級機種)が出回っているが、その分、不具合の発生要因の可能性をも含む。ほとんどの機種には、連続使用による遮断回路(加熱によるモーター及び電気系統保護)を持つが、長期使用での誤作動が否めない。極曲線の連続使用による、ブレードへの垂直延長となる「シャフト部の切断進行方向」のズレは顕著。自己調整が不可能なため、やはり修理扱いとなる。人間と同じく、「故障は少ない」と言いながらも、必ずそれは付き物。丈夫がとりえと自称するものほど、あっけなく重病になったりする。電動工具に限らず、その修理代金は高額なもの。販売政策として行われる「価格競争による市場売価」は、決して修理を含めた「アフターサービスの価格設定」とリンクしない。へたをすると、購入価格を上回る「修理代金」が請求されたりする。賢いユーザーは、あらかじめ「修理代金の見積り」を依頼後、その金額により修理の可否を決めるが、主客転倒したメーカーや販売店は、「修理見積り有料化」を公言し始める。この世界も構造改革が必要なようだ。
■「故障シリーズ」終章 2004.3.18 (第94回)
「トリマー」「糸ノコ盤」「ドリルドライバー」「ジグソー」と4回に渡ってお届けした、この「故障シリーズ」。総じて電動工具全般に言えることは、自然動作における無負荷回転で、その寿命の見当がつく家電製品と違い、常にモーターや構造パーツに対し、直接的な負荷をかけ続けながら動作する性質ということだ。そのため一般に電動工具の寿命は、盲導犬の寿命が通常のものよりはるかに短いのと同様、家電製品のそれと比べ著しく短い。そうしたなか、少しでも長く愛用するためには、使用前後における日常メンテナンスや、ビットやブレードなど、刃物の切れ味や磨耗の点検、また、必要以上に無理な負荷をかけない正しい作業方法などについて、使用者本人がよく理解し実践していくことが大切だ。素晴らしい作品を生み出す人や、上手な仕事をする人は、その道具の扱いについても例外なく丁寧で正しい。逆に道具の扱いがいい加減で乱暴な人ほど、その作品や仕上がりはお粗末このうえない。「道具」とは、その人の「指先の延長」であり、「技術の進化」である。人から離れ、「道具」を単なる「機械」として貶めれば、それは「道具」と呼べない。「道具」を使うのは「人」であり、「人」なくして「道具」は生きない。己が技術に頼れずして道具の活きようはずがない。つまり、道具に無理強いするような作業をする人は、自身の技術を過信しているか、あるいは技術のない人だと言える。と日々反省する。明日からは、これら工具についての「長生きの秘訣」について、詳しく述べようと思う。
■「長生きの秘訣」トリマー篇 2004.3.19 (第95回)
道具を乱雑に扱う人は、己が手先を粗末にするといった小言は、昨日の講座でお話した。今日からは、正しい使用法によって、その寿命を延ばし、長く木工を楽しむための秘訣を解説する。第一回は「トリマー」から。「長生きの秘訣は、使わないことだ」、または「時々しか使わないから長持ちするだろう」と思っている方は大間違い。当然のこと金属パーツ部やパッキン関係、潤滑系統など、使わなければ「劣化」や「腐食」もおきる。さて、「故障シリーズ」で説明のとおり、トリマーの動作異常で代表的なのが「ベアリングの磨耗」。使えば使うほど磨耗する、潤沢な回転動作をつかさどるパーツではあるが、自然動作を比較した負荷操作としては、「切削時の進行方向へ進むスピード」。回転音が著しく下がるような押し進め方は、回転するビットに対して横方向からの圧力が強くかかる。そのためビット軸と直結するベアリング部の磨耗を早める。ゆっくりすぎても、材を焦がしてしまうため、ほどよい動作が大切となるが、材の堅さにも関係するので一概には言えない。やはり回転音の変化を感じることがポイントであろう。心臓部であるモーターへの負担を軽減するのは、スイッチを入れてから材に当てるまでの時間的な間隔。高速回転の電動工具全般に言えることだが、起動後回転音が安定する以前に材に当てるとドロップがおきて、結果モーターを傷める。「冬場でのエンジン始動時」や「準備運動を忘れた寒中水泳」と言おうか、「日本の経済」同様に、「安定」が必要だ。「たいしたことではない」とお思いの方もいらっしゃると思うが、おおよそ寿命が半分になると言えば蒼白だろう。意外に見落としがちなのが「ビットの切れ味」。切れ味が悪ければ、それだけ切削時にモーターへの負担がかかるのだ。使い込んだビットと、新品のビットで試してみると、その切削音でよく理解出来る筈。ビットは高額なため、なかなか買い換えるのは億劫だが、本体の寿命を考えたランニングコストから見れば、作品の仕上がりも踏まえ、こうした刃物の点検も重要だ。いずれにしても、すべての症状は「モーター音」に表れる。この「音」を理解することが、最大の「長生きさせる秘訣」だろう。聴診器をあてがう医者のように。
■「長生きの秘訣」糸ノコ盤篇 2004.3.20 (第96回)
先日、某学校での出張講習のおり、その教室に備品として用意してある十数台の糸ノコ盤のうち、つごう5台は「故障中」との張り紙がされ「心肺停止状態」だった。チェックしてみると、うち3台は「ヒューズ切れ」で、残り2台は「ブレード止めネジ」の欠落だった。長い間そのままだった様子で、かなりホコリがかぶっていた。トータル千円もあれば、すべて再起だろうに、どうも重病患者の扱いをされているらしい。電気回路保護のために「ヒューズ」を使用している機種の場合、定格を超えた長時間作業や、極度の負荷をかけ続けた作業をすると、ヒューズが切れる。またヒューズをなくして、一時的な心肺停止状態を経過後、当事者が充分反省したころに、自動的に復旧する機種もある。このように、無理な作業を強いられると、自らが防御する機能を兼ね備えるのが電動工具である。ところで、老体化した糸ノコ盤に見られる一連の症状とは「激しいノック音」である。この音に嫌気がさし、「うちの糸ノコはぼろいから」などと言い訳する人もいるが、それは、糸ノコ盤では必要不可欠なメンテである「注油」を怠ってきた明らかな証拠であり、「ぼろい」のは糸ノコ盤ではなく、その人自身である。継続的な注油を長期で停滞し、後に注油を再開しても、この激しいノック音は収まらなくなる。糸ノコ盤は、軸ブレのない精密な上下運動が必要のため、上下シャフトの駆動部は、「グリス」ではなく「ミシン油」を必要とする。それだけ密着度が高く、注油をおこたると、金属磨耗がおきてしまう。使用前使用後は、必ずこの注油をする。おそらくお使いの機種には、親切にその注油位置が示してあるはずだ。つぎには、ブレードを止めるための上下ネジの締めすぎに注意。固く締めたつもりはないのに、外そうとしたら、固くて外れなかった経験はないだろうか。これは、駆動による振動での締まりや、ブレードの加熱による金属膨張が影響している。手で外れないと、ペンチを使ったりするが、これを繰り返すうちに、ネジの破損や、鋳物である本体側受け部をも破損する結果となる。曖昧な表現だが、「適度な強さ」での締め付けを心がけよう。また、作業時にでる「切り屑」、特にシャフト下部に出る「切粉」は、使用後には出来得る限り取り去ることだ。単に綺麗好きということではなく、もっとも激しい駆動をするシャフト部を覆ってしまうため、熱をこもらすことになる。同時に注油部でもあるため、せっかくの油が、この切粉に吸い取られる。緻密な作業を得手とする道具には、緻密なメンテも要求される。それに応えればこそ、機械共々ぼろくはならない。
■「自分サイズの棚づくり」発刊にエール 2004.3.21 (第97回)
4月10日、初心者向け木工誌「自分サイズの棚づくり」(雄鶏社 定価1000円)が発刊される。発売に先立ち、昨日私の手元にも届いた。アーリーハッチが編集に係わっているかどうかは別にして、その内容は非常に解りやすく、何よりセンスが良い。雄鶏社初の木工誌ということもあって、「初心者が親しめる内容」という、その発刊の意図がよく伝わる。編集担当者が誌面企画を持ち込んできた時、「初心者が、自分サイズの収納家具を、難しい道具を使わずに、しかもひとりで作れるということをアピールしたい」という企画内容に共感した。カントリー系も含め、初心者向けをうたった木工誌は多々ある。ところがその大多数は、初心者向けとは名ばかりで、「トリマー」「ジグソー」「ドリル」「糸ノコ盤」他、お金と技術と知識と相談相手の必要な、あらゆる道具と手間を駆使して作るものばかり紹介されている。聞こえるのは読者のため息ばかり。初心者向けとは、つまり「初心者がみて羨ましがるもの」もしくは「本を作ったのが初心者」という意味なのかもしれない。この「自分サイズの棚作り」誌では、「ジグソー」「糸ノコ盤」「トリマー」などの曲線カットや切削工具はいっさい使用しない。電動工具は「ドリルドライバー」のみ。主にカントリー作品を手がける者にとって、このデザインは辛かった。逆に「曲線さえ多用すればそれなりの見栄えがする」と思い込んでいた自分に反省もした。初心者が「必要な家具」を、「最小限の道具と材料」で、そして「ひとり」で作るための参考になる、非常に有効な内容だ。他誌に見られるような、無駄で余計な解説の羅列もなく、ポイントをしっかりおさえたハウツーに、辛口の私も脱帽して推奨したい。おそらくその編集に駆けずり回ったであろう、担当N女史にお疲れ様を言いたい。また、表紙に私の作品を選んで頂けたことにも感謝する。
■おさらい篇「丁番の取り付け」 2004.3.22 (第98回)
「簡単そうで、実はよくわからない」という、何気なく見過ごしがちな基本的部分について、「おさらい篇」として解説しよう。まず今回は「丁番の取り付け」について。建具には、丁番を取り付ける「基準位置」というものがある。全体の高さに対しての割合で算出される。ただし、「重い扉」もしくは「横幅のある扉」での丁番位置は、基準位置よりも丁番間隔を広げ、その「下がり」を防ぐ。例えば基準位置が上下端から150mmだとしたら、それを100mmにするといった具合だ。極端に重い扉の場合は、丁番を3箇所にしたりする。これはあくまで「建具」であって、手作り家具の「扉」や「フタ」の場合は、それほど神経質になる必要もない。取り付け位置は、見た目のバランスで決めて良い。ただし、横幅が350mmを超えるような大型扉の場合は、建具の理屈同様、若干丁番間隔を広げることをお奨めする。さて、丁番は通常「左右対称」のデザインだが、必ず「向き」がある。右と左が違うのだ。賢明な方はお気づきだろう。丁番軸に対しての合わせ部分が違う。例えば軸に対して、片側は3箇所でつながっていて、もう片方は2箇所でつながっているという具合だ。「つながりの多い方」が枠側、「少ない方が扉側」に向ける。どうでもいいようなことだが、統一することにより「見た目」もいいし、実は何より「吊元強度」に影響する。丁番の元祖は「ヒジツボ」という簡素な金物。その構造は、支柱側の上下2箇所に「L字型」の金物を打ち付け、扉側も同様に先端が小さな輪になったヒートン型の金物を上下に打ち付ける。このヒジツボを使い、扉を支柱に引っ掛け、開け閉めする。これでお分かりと思うが、つまり丁番軸に対して「つながりの多い方」は、必ず丁番つなぎ目の下側にあり、「相方を支える」役目をしている。これが「ヒジツボ」で言うところの支柱側である「L字型」の金物に相当する。本当にどうでも良いようなことだが、知っているのと知っていないのでは、後の応用にも影響する。この吊元原理は、玄人と素人の見分けにも利用される。
■おさらい篇 「扉」 2004.3.23 (第99回)
おさらい篇の第2段は「扉」について取り上げる。比較的こだわりのない自由なカントリー家具ではあっても、その基本的な構造はしっかりつかんでおきたいもの。「扉」は家具の「顔」とも言える大切な場所。堅苦しそうではあるが、せめて参考として留め置いて欲しい。以前にも解説したが、最低180mm幅を超える扉の場合、その裏側に、幅40mm程度の「反り止め」を取り付ける。長さは「扉幅」に対して-30mm(両端より15mmずつ短くする)とし、上下2箇所への取り付けが一般的。問題はこの先。木工の基本で言えば、実はこの場合「接着剤はつけない」のが正しい。以前「接着剤を使ってはいけない接合について」(3/11)で解説したが、繊維方向が直行する接合、特に相方が広い面の場合、接着固定することにより、木材の平均的な伸縮作用が損なわれ、結果、部分的な亀裂やゆがみが発生する。解りやすく言えば、接着固定された部分は、その伸縮が強制的に抑えられるが、固定されていない部分は伸縮をする。その場所的差異により、材のゆがみや亀裂が発生する訳だ。つまり、この「そり止め」は、その名の通り、材の反りを止める目的とし、接着剤なしのネジ固定のみによる「点固定」として、材の自由伸縮をなるべく妨げないよう取り付けられるものだ。しかし、狂いや伸縮の激しい「パイン材」を多用するカントリー家具では、「反り止め効果」のみならず、「隙間の確保」を目的とした「伸縮止め」のために取り付けられる。そのため、矛盾はするが、接着剤を使った取り付けが妥当とされる。つまり扉が膨らんで開かなくなるといった不便さよりも、「亀裂やゆがみは覚悟済み、それもまた味のうち」という訳だ。しかも塗装は、材の呼吸を妨げないオイル仕上げが一般的。木工の基本からいえば、樹脂コーティングを施し、材を窒息させることで伸縮を抑え、その精度を維持することが当たり前の理論だが、ナチュラルな変化を楽しむカントリー系家具では、その行為はおそらく犯罪に値することだろう。この「反り止め効果」。まさに子供の教育にも、そのまま合致すると気付く人は、悲しいかな意外と少ない時世である。明日は連載の第100回を迎える。祝電はいらない。
■おさらい篇 「ネジ固定数」 2004.3.24 (第100回)
よくまあ続いているもので、今回が連載100回目、つまり本講座をスタートして100日目になります。こうした生業の関係で、その題材には事欠かず、まだまだお伝えしたいことは山ほどあります。いったいどれほどの皆様にご愛読頂いているかは皆目見当がつきませんが、自らへの確認の意味でも、こうした木工についての基本を文字にすることは非常にためになります。ところで今回は、「ネジ」を使用して組み立てる手作り家具での「ネジ固定数」についておさらいします。パイン材を使用した作品をケースに、その一般的な基準としてお話すると、「側板」対「底板・棚板」では、板幅(奥行)180mm以内であれば2箇所、位置はそれぞれ木端より30mmとします。180を超える場合は同様の位置に対し、そのセンターも含め、3箇所固定となります。最大幅280とすれば、それ以上の固定数は不必要です。ただし、230mm程度で、材(特に側板)に大きな反りがなければ、180mm同様2箇所固定でもかまいません。実は、パイン材最大幅280mmでのネジ固定数は、接着剤併用での強度上、2箇所でも充分なのですが、接合以前での材の狂いを想定して3箇所を推奨している訳です。建築の世界でも、「素人細工ほど無駄に丈夫に出来ている」と言われます。それは、解体業者がよく口にすることです。つまり、必要な施工強度の認識が薄いため、必要以上に頑丈に作るためです。壊れやすいよりもいいようなものですが、それだけ、余計な手間と時間とお金をかけていることにほかなりません。なお、作品の正面材(枠材等)では、ネジ間隔250mmから300mmを基準にします。両木口からそれぞれ30mmの位置と、あとは全体の長さから均等位置を割り出すようにします。
■木材の保管 2004.3.25 (第101回)
これまでの講座で解説してきたように、木材はその環境により伸縮し、場合によっては、激しい反りやゆがみ、亀裂等が発生する。伸縮が顕著なのは集成材であり、反り・ゆがみ・亀裂は無垢材に多く見られる。特にパイン材の場合は、その繊維特性から、板材のままの状態では、驚くほどの「暴れ」が発生する。しかし、いわゆる「一点物」である無垢材の場合、好みにあった物を購入出来るチャンスというものは少ないのが実情。良質のものが販売されていれば「買いだめ」したくなるが、前述の通り「板状」のままでは長期保管が出来ない。そこで今回は、適切な保管方法を解説する。良質な状態での保管期間の限度は、季節にもよるが、せいぜい頑張って1カ月。保管の基本は、「材を寝せる」こと。立て掛けてはいけない。物理的に、平均的な圧力(重力)が加わらないためだ。そして、均一的な「重石」をする。保管場所は、出来るだけ「屋外環境」に近ければ良い。雨風に当てるということではなく、家庭の室内は、暖房や冷房、加湿・乾燥の差が激しいためだ。暗所な物置があればもっとも良い。材は人間と同程度の日焼けをするので、たちどころに変色ラインが出る。ただし、常時カビが発生するようなところは、逆に多湿であるため向かない。暗くて風通しがよく、夏場はそれほど暑くならない場所が適切だ。「レコード盤」時代の方々には、よくご理解いただけると思う。板材が好む場所とはそういうもので、身の回りにも、同じようなタイプの人間がいるのではないだろうか。つまり暗い場所が好きで、けっこう神経質、でも不健康といったほどではないが、長期で機嫌を保つのは難しい人。私のことではない。
■色の調合について 2004.3.26 (第102回)
塗装の際、よく聞かれることに「もう少し薄い色にしたい」や「ちょっと濃くしたい」という要望がある。ペンキ・ニス・ラッカー・ステイン・オイルフィニッシュなど、すべての塗料には、その既成色が多数用意されているが、自分の好みにあった色がないという場合も多い。そこで「調合」が行われる訳だが、これがまた難しい。何が難しいかというと、「本人が持つ色のイメージ」に対し、どの色を混ぜれば良いかという「配合割合」の難しさと、作りあげる全体量や、その混ぜ方の「技術」についてだ。子供の頃、図工の授業などで、絵の具を混ぜながら、なかなか好みの色が出来ず、混ぜれば混ぜるほど、好みの色どころか、どんどん遠のくばかりで、そのうち正体不明の色になってしまった経験はないだろうか。作品の大きさによるが、パレットの上での模索とは違い、木工塗装にはかなりの量を使用する。また仮に好みの色が出来上がって、塗装を始めところ、途中で足りなくなったような場合、まったくの同色を追加配合しなければならない。それが完璧に出来るような配合割合を、正確に書きとめておく必要もある。また多量の配合では、その「混ぜ方」についても、時間をかけて徹底的に行わないと、完全に混ぜきれず、色ムラが出てしまう。こうした難しさがつきまとう「調合」。よく間違った解説を目にする。それは、「水性系の塗料を薄い色にするには水を混ぜ、油性系の場合は薄め液を混ぜる」や、「濃くしたい場合は何度か塗り重ねる」ということだ。言っていることが解ぬでもないが、言っている人の真意と経験具合が解らない。くだらぬ否定はしないが、カントリー系作品に多用されるオイルフィニッシュ(油性系)で言えば、薄くしたい場合、濃い既成色に対し、やはり既成色である「ナチュラル」や「クリア」色を混ぜる。材への保護成分である樹脂割合を減らすような「薄め液」による調整はしてはならない。もちろん同じメーカーの同じ種類のオイルであることが前提だ。濃くしたい場合は「2色混合」が基本。素となる薄い側の既成色に対し、濃い既成色を少量ずつ混ぜながら作る。混ぜる場合は、「とことん混ぜる」「時間を忘れて混ぜる」「我を忘れて混ぜる」というくらい、徹底的に混ぜる。缶等に入れてフタをして、16ビートの曲かサンバのリズムを口ずさみながら行うのがもっとも好ましい。もともと、下地である木目が透ける仕上げの場合の色調というものは、ペンキのそれと違い、同じ塗料であっても、二回と同じ色合いは出ないというくらいおもしろい。色合いを作るのは、塗料というよりも、「材」そのものの特性にあるといっても過言ではない。同じ材であっても、その部位によって色の出方は様々。ナチュラルを塗っても、まるで「ダーク」になったりもする。しかも、年月により色合いが変化していく。それがオイルフィニッシュの良さでもある。着色は「人の都合」であり、それ以上に「材」は自然である。結論を言おう。「もう少し薄い色にしたい」「ちょっと濃くしたい」という程度の仕事なら、「材」自身が笑って引き受けてくれる。
■ちょっと寄り道「ネジの規格について」 2004.3.27 (第103回)
ネジの規格をご存知だろうか。ネジと言っても「木ネジ」ではなく、細かなネジ山のある、いわゆる「ボルト・ナット」類のこと。何かのネジを欠落し、ホームセンター等に行って、同じ太さのネジを買い求め、ねじ込んでみようとしたら、ネジ山が合わずに、入らなかった経験はないだろうか。太さが合っていてもネジ山が違う。これがネジの規格違いということ。ネジの元祖規格は、欧米発祥の「インチ規格」というもの。一般に「インチネジ」と言い、建築職人の間では「分ネジ」(ブネジ)と呼ばれる。その規格基準は結構ラフ。それぞれの太さに対し、「ネジ山の数が1インチ間に○○山あれば良い」と言った具合。つまりネジ山間隔そのものの規定はなく、その分、よりスムーズにネジ込めるよう、ボルト・ナット間の「遊び」(隙間)も大きい。そのため、保持力(接合強度)が曖昧なため、「JIS」(日本工業規格)が、ネジ山数を更に細かくし、その間隔を規定した規格を打ち出す。これが「JIS規格」というもの。現在で言う「旧JISネジ」である。世界に名だたる工業立国の日本。そのうち「ISO」(国際標準化機構:146カ国会員、次期会長には日本人田中氏が第22代ISO会長)により、世界的な別規格が打ち立てられる。もちろん既存の「JIS規格」とは異なるもの。ということで、現在、我々の身の回りに存在する、いわゆる「規格ネジ」は、「インチ規格」「旧JIS規格」「ISO規格」の3種となる。もちろんあくまで「規格もの」であって、メーカーが独自に生産したものを加えれば、相当数ある。規格化の目的のお題目には「消費者保護」が祭り上げられてはいるものの、結局は消費者が振り回される結果となり、こと建築業界では、ISOの求める標準化には消極的といわざるを得ず、いまだ「インチネジ」を使い続けているところが多い。別世界の話のように思われるかもしれぬが、例えば「引出」や「扉」の取手やツマミのネジにも、「ISO」や「旧JIS」「インチ」がある。今ひとつ統一されないのは、破損や紛失時の「取り替え品」として、それら過去存在した規格物が、永遠と販売され続けられてるからだ。標準化の先導となるべく建築業界に、行政的な指導が行き届かないように細工している陳情効果も疎ましい。
■部材の呼び名を覚えよう 2004.3.28 (第104回)
作品制作のための図面を書く場合に、それぞれのパーツに、その名称を記入する。手作りカントリー誌や木工誌などを見て感じるのだが、それぞれに同じ部材であっても、様々な呼び方をしている。呼び名の統一規格が存在しないための結果ではあるが、これから手作り木工にチャレンジしていくかたのため、アーリーハッチが推奨する呼び名を明記するので、参考にして欲しい。と同時に、各編集部の皆様方も、作品設計者の額面どおりに受け取らず、せめて同じ誌面内での呼び名統一に努めていただきたいと願う。キャビネットを例にすると、まず「天板」は字の如く、一番上の板。上部が飾り棚式になっていて、下部が扉式のようなものでは、扉上の天板部分を「中天板」と呼ぶ。両サイドの板は「側板」。「底板」「棚板」はその名の通り。ただし、底板が上げ底でなく、床に付くような構造の場合は「地板」と言う。扉回りの枠材では、扉上の横に渡す板を「上つなぎ」、縦の部分は、縦框といきたいところだが「縦枠」でよい。扉下に飾り板がつく場合は、それを「下飾り」という。最上部に飾り板があれば、それを「上飾り」。また、扉内等で、中を仕切る板を「仕切板」と呼ぶ。引出部材では、正面を「前板」、両サイドは「側板」、奥が「向板」となり、4枚構造に加え、さらに正面に板を取り付ける場合は、それを「面板」と呼ぶ。背中の板は「背板」でよい。蛇足だが、本来木材名称としての「背板」とは、丸太を割った場合での皮付き板のことである。作品そのものは、舶来デザインがほとんどだろうが、その呼び名の素は、日本の伝統家具の「タンス」構造から来ているのもおもしろい事実だ。もちろんタンスほどこだわりのある設計ではないため、そのうち呼び名までこだわりなく遊びまわるようになった。
■既成寸法を押さえよう 2004.3.29 (第105回)
「思い立ったが吉日」で、いざ作品構想に取り掛かる際、市販材料の既成寸法を認識しているか否かが、「やる気」の幻滅に強く影響する。いちいちメジャー片手に出かけていって、売場で材料の確認をしていたのでは、最初に沸いたイメージが、どんどん薄れていくもの。そこで「賢い手作り愛好家」には、「寸法表&価格表」の準備をお奨めする。もちろん木材のみならず、丁番・ツマミ・取手・キャスター・ネジ・釘などなど、日頃贔屓にする材料について、事前にその情報を表にまとめるのだ。同じ幅の木材であっても、長さ違いの物もあったり、厚み違いもあったり、例えば「285mm幅」のパイン材から140mm幅を裂くよりも、140幅2枚のほうが割安だとか、別の面での賢い買い方や木取りも見えてくる。キャスターなどもそうだ。その「取付高さ」解らないために、図面が引けなかったりする。価格についても、表にまとめる「律儀さ」があればこそ、別の販売店での売価にも目が行くというもの。4月1日よりの「消費税総額表示」を期に、「寸法表&価格表」を手がけよう。
■ワックスの必需性について 2004.3.30 (第106回)
一般に出回る「カントリー系家具類」の仕上げには、主に「オイルフィニッシュ」「ワックス仕上」「オイルフィニッシュ+ワックス仕上」「ステイン仕上」「ステイン仕上+ワックス仕上」の4種がある。この場合、木製品を樹脂で覆いつくす「ニス仕上」は、個人的観点から「邪道」、あるいは「駄作」として、取り上げていない。この4種の中で、色調効果のみの仕上げは「ステイン仕上げ」。職人用語でステインのことを「泥水」と言い、木材保護効果のない、単なる安上がりな着色仕上剤に位置する。なぜか某大手カントリー家具メーカーが好んで使用する。「オイルフィニッシュ」については、ご存知の通り、着色と同時に、木材内部へ樹脂成分が浸透凝固し、木材を内部より保護する効果を持つ。市販価格は割合として高額(一般のペンキの3倍)。この「オイルフィニッシュ」と「ステイン(オイルステイン・ポアステイン・ミネステイン他)」を混同する人も多いが、効能的にも価格的にも比較にならない別物だと「オイルフィニッシュ」が激怒している。ところで文中に出る「ワックス」についてだが、基本的に「オイルフィニッシュ」へのワックスは、ロウ成分を基本とした配合成分により、撥水効果を促す。「ステイン」へのワックスは、樹脂成分を配合したものが推奨される。材の表面を覆い保護するという意味では、ニス類と何ら変わりないように思われるが、それそのものが強固な物質と化し、下地材構成の一部(塗布後は劣化しても剥離しにくい:つまり剥離させることを考えていないもの)としてなる「ニス」に対し、あくまで「使い捨て雨合羽」の如く、一時的な外敵遮断での自衛隊的存在なのが「ワックス」である。元来、家具類でのワックス効果とは、日常使用による「手油効果」や、木材自身が持つ「表面変化(樹脂の浮き上がり効果による表面保護効果)」等により、時間はかかるが、任せておいても自然にかもし出されるものであり、即効的、あるいは自己満足的、または己が見た目を重視するという、その自然封鎖を実感したい場合のみ、人工的手段として「ワックス」を購入塗布することとなる。そうした即効性のあるワックスではあるが、なにせ「使い捨て雨合羽」であるため、その寿命は短く、しかも日を重ねるごとに劣化し、悲しいかな前述の「自然ワックス効果」との融合を拒絶するため、効果切れに近づくほどに、「ぼろ蓑」へと変化する。逆に手油等「自然ワックス効果」の場合は、その効果の進捗度合いに即効性は無いものの、自然変化を妨げることなく、むしろ促すかの如く、確実、且つナチュラルに、材への保護効果に厚みを持たせ続けていく。それが本当のワックス効果と言える。
■熟練者は3度組み立てる 2004.3.31 (第107回)
本職も含め、木工制作に熟練した人の、その手際良さに驚かされた経験はないだろうか。不慣れな人にとっての作業は、その場その場の思案や困惑の連続で、実際に完成したものとイメージしていたもののギャップに泣かされるケースは、ままあるもの。この熟練者の手際良さは、もちろん知識や技術などの経験の積み重ねからくるものではあるが、もっともその裏づけとなるのが、よく言う「3度の組立て」ということだ。何のことかというと、まずイメージした作品を「木取り図」や「展開図」といった図面に落とし込む際に、頭の中で、具体的なその組立て手順を、映像として思い浮かべている。次には、材への「墨付け作業時」に、更に具体的な組立てイメージを持つ。そして最後が実際の組立てとなる。つまり、1作品を作るために、イメージを含めた、この3回の組立て作業を行っているといって良い。そのため、逆に熟練者には、思い込みによる大きな失敗がよくある。最初の組みたてイメージの時点での思い込みによる工程違いが、そのまま最終段階である実際の組立て時まで受け継がれてしまう。そのため、間違いに気付くのが、不慣れな人の場合よりもいっそう遅く、しかもその失敗原因にさかのぼってたどり着くまで、かなりの時間を要する。こうした場合の被害は、往々にしてかなり大きい。つまり、不慣れな人の失敗に比べ、確実にその3倍はダメージを受ける。本人が言うのだから間違いない。やはり、初心のとおり、石橋を叩くのが正当と言うべきか。