著作:アーリーハッチ 著者: 社団法人 日本DIY協会認定 DIYアドバイザー 首藤浩昭  著作開始日 2003.12.16

著作掲載対象:アーリーハッチホームページ http://www.hatchan.com/subtop.htm

2003.12掲載分 2004.1掲載分  2004.2掲載分  2004.3掲載分  2004.4掲載分   2004.5掲載分  2004.6掲載分(本ページ)  2004.7掲載分  2004.8掲載分  2004.9掲載分  2004.10掲載分  2004.11掲載分  2004.12掲載分


■木工欲について 2004.6.1 (第169回)
趣味としての木工愛好家には、その制作スタイルとして2つのタイプがある。ひとつは、木取りや大まかな切断はホームセンター等のカットサービスを利用し、曲線カットや穴あけ加工、面取り、組み立て、塗装等を楽しむタイプ。工具も限定されたもので済み、より手軽に木工を楽しむ人に向いている。もうひとつは、定尺の木材のまま購入し、すべての作業を自分で行うといったタイプ。必要工具が多く、同時にその工程も自ずと増えるため、まさに木工そのものを楽しみたいといった人向けだ。元来、木工と言えば後者タイプがほとんどであったが、DIYブームや、ホームセンター等のサービス機能向上により、前者タイプが急増している。趣味としての世界も、「浅く広く」というか、「ひとつのことに打ち込めない」というか、悪く言えば、「じっくりと腰を据えて物事に取り組めない」という、現代の象徴的ライフスタイルと、もっと言えば、作ることの楽しさよりも、作品そのものを得ることの充足感の方が、自らが作り出す喜びよりも勝るという、我々を含め、いわば飽食時代の申し子が、そうした環境を作り出しているがため、より高尚と言える「手作りを楽しむことの意味」が理解され難い世の中となっているのが実情。そうした時代変化により、以前のように「木工作業そのものを楽しむ」ことの利益は、現代には高尚すぎて理解され難いため、より手軽に「作ること」と「作品を得ること」双方の楽しむには、前述の前者タイプがお勧めとなる。「精神的な達成感」は、同時にその成長を助け、「物質的な満足感」は、精神的成長を終息させる。とは言え、「欲しいものはいくらでもある」というのが、物質欲で生き長らえる、現代人の構造的欠陥でもある。そうした意味で、「木工」は良薬と言える。


■ネジ釘の使い分け 2004.6.2 (第170回)
木工作品の組み立てには「ネジ」や「釘」を使用する。以前にも解説したが、その選択については、作品サイズや実用家具等での使用頻度、必要強度等が関係する。ネジを使用する方が、基本的に接合強度は高く、特に「反り」や「変形」の多い無垢材の場合は、接合時における、その矯正作用の面からも、ネジ接合での意味は大きい。さほど強度や実用性のない、小物家具や雑貨等については、「釘」を使った接合でよく、逆に「ネジ」を使用した場合の「ダボ仕上」などの面倒もなく、見た目にもシンプルで、うるさくない仕上がりとなる。オールド系の物にいたっては、ネジ仕様の作品よりも、「つぶし釘」を使用していたりなど、時代を感じさせる味のある作品が好まれる。そうした観点から、作品の組み立てに、「ネジ」を使用するか、「釘」を使用するかの選択を考える場合のアドバイスとして、「ひとつの作品で、両方を使い分けること」を推奨したい。つまり、作品を組み立てる際において、必ずしも、「ネジ」「釘」のどちらかのみで仕上げなければならないということはない。例えば、ダボ仕上げのない、シンプルな釘仕上げで作品を作りたい場合には、「見える部分」としての「正面材」は釘を使用し、それ以外はネジを使用する。また逆に、強度や反り矯正が必要な大型作品の場合でも、釘打ちで済ませられる細工部分も多い。当店作品においても、一見して釘仕上げのシンプルな作品でも、底板の裏側や背面などの見えにくい部分にはネジを使用しているものが多い。「ネジ」の利点は、組み立て時における、反り矯正や強度保持の即効性があり、「釘」の利点は、材表面の美しさを損なわず、手軽な作業で仕上げられるということがある。その双方の利点を生かし、ひとつの作品を仕上げる工夫も大切。どちらか一方にこだわる必要はまったくないという訳だ。

■子供が受ける玩具の影響 2004.6.3 (第171回)
皇太子ご夫妻が、愛子様のために、玩具としてご用意された木製カントリー家具を、テレビ等でご覧になった方も多いと思う。誰が作ったものかは影響が大き過ぎるので、その点には触れられないが、その後、「テレビチャンピオン」等など、玩具としてのカントリー家具を取り上げるメディアも目立つ。基本的に「玩具」は2系統に分類される。ひとつは、大人が使うそれを模した作品。もうひとつは、音や動作、抽象的な形状で、子供の関心をひく作品に分かれる。後者が生後1年未満の幼児向けなのに対し、前者は2〜3才までの比較的長期に渡って利用される。つまり、幼児期においての思考的発育に適ったものが好まれる訳だ。大人の行動に興味を抱き、それを真似る動作というものは、良きにつけ悪しきにつけ、その後生涯に渡って親子関係を象徴する一種の絆となる。宴もたけなわな中東における揉め事も、その親が成した湾岸のそれを、子が模したようなものだし、武器を持ち愛国を誓う尖兵も、幼児期には戦争ごっこに励んだろう。ままごとに遊んだ女の子も、大人になった今では、真剣にレトルトの献立に頭を悩ませている。子が子である世界から抜け出し、大人の作った無責任なネットワールドに引き込まれ、モニター内で繰り広げられる無制限なデータの羅列に狂わされ、成長期に見合った持つべき道具が凶器に代わり、模擬の世界が現実のそれと相対し、人を殺める悲惨な「事故」を誘発する。親が子に与えるもの、または、大人が子供に与えるものは、「模した形」で済ませてはならないと思う。そして与えればそれで終わりであってはいけないと思う。きっと、現代の大人が一番考える心配事は、子に対しての影響よりも、「不要になった場合の処分方法」だろう。現代の子供たちは、そうした意味、不幸である。そして近い将来、不要になった大人の処分方法を、子が悩む。


■木栓用ビットのすすめ 2004.6.4 (第172回)
ネジを使用して制作するカントリー家具に欠かせないのがダボ仕上げ。その正攻法は旧来より、ネジを入れたダボ穴に対し、同径の丸棒を打ちこみ、余分な部分を鋸で切り落としサンディングするというもの。この作業における難しさは、余分な部分を鋸で切り落とす際に、鋸の種類や使い方を誤ると、家具本体に鋸傷をつけてしまうということ。その後、当店が積極的に推奨した「あらかじめ4mm程度に切断したダボを使用する方法」が普及。そして今注目されているのが、「木栓用ビット」だ。すでに当店でも、この仕上げ方法へと移行し始めている。どういうものかというと、この「木栓用ビット」(8・9・10mmなどがある)は、ダボ(木栓)を制作するためのビットで、筒状となっている。従来の木ダボは丸棒を基本とするため、繊維方向に長い。つまり、作品本体の材が「面」に対し、ダボの正面となる側は「木口」となり、オイル塗装時には、その吸収特性により、ダボ面のみが黒ずむことになる。しかし、この木栓用ビットで制作したダボ(木栓)は、材の面を正面側として作られるため、基本的に作品本体と同じ木面となり、塗装後も、その色調差は少ない。また、丸棒にはなかった「木目」があるため、作品のそれと同じくすれば、なお美しい仕上げとなる。本来なら廃棄される端材を利用して制作できるメリットも大きい。ただし、基本的にその板厚分の長さでしか制作できないため、仕上げ時の切断方法については旧来のままということになる。当店においては、丸鋸盤を利用して、4mm程度の厚み(パイン材使用、幅19mm)の棒状にしたものを、大量にカットしておくという方法をとっている。これにより、ボール盤に装着した木栓用ビットを一回下げることに、厚み4mmのダボが1個出来る。おおよそ1秒に1個という具合だ。1個ごとに出来あがったダボが飛び散るという面倒さはあるが、前述のメリットを考えれば、相殺してなお、お釣りが来る。この木栓用ビット、価格は2千円以下と安いが、切れ味の寿命は、他の木工ビットに比べ極端に短い。ハードな生産をする当店では、約2週間でその切り口が鈍った。市場での需要頻度からも、超硬ビットの発売は期待できないが、それでもなお、お釣りがある。


■木工用ビットとダボ用ビットの相違点 2004.6.5 (第173回)
木工のための穴あけビットは、おおよそ6mm以上から各サイズが揃えられている。それ未満のサイズについては「金工用」が代用してくれる。木工用ビットの特徴と言えば、その切削屑を効率よく材の外へ巻き上げるためのラセン構造であり、同径の金工用と比べれば歴然としている。さらに、その先端部には、木ネジ先端のようなスクリュー状のガイドスクリューがあり、力で押し込むことなく、回転作用のみで、材内部へ誘導される。この木工用ビットで注意すべき点は、切削穴を途中で止めるような加工には、基本的に向かないということ。これは、ネジ状のガイドスクリューが、常に材の中に食いついた状態であるのと、切削穴の底面が平らには加工されないということだ。つまり、基本的に木工用ビットは「貫通穴」を想定したものであるためだ。また、こうした木工用ビットは、穴あけが楽な分、そのガイド穴の食いつきにより、思う以上に進行しすぎるため、うっかりすると、敷き板(捨て板)をも貫通し、作業台にまで及ぶことがあるため、そうした特性を熟知している木工家は、そのガイドスクリュー部を研磨して、食いつきをあまくしたりする。一方ダボ用ビットは、同径の木工ビットと比べ、一見して見分けが付かないが、その大きな違いは、先端部がスクリューしておらずに、鋭い突起状であるということ。また、止め穴加工となるため、その底面を平らに切削する形状の刃となっている。ダボ穴用にと購入したものが、木工用ビットであったため、うまく加工出来なかったとか、作業中に見分けを誤り、木工用ビットを使用してしまった、などという話をよく聞く。木工趣味が進むにつれ、ビット類の数も増えていくもの。必要の都度に買い揃えるタイプの人は、そうした違いを判断できるが、始める前にコレクションしてしまうタイプの人は、それら個々の特性と意味がわかりにくいといった傾向がある。そういった方には、技術的な説明を施しても、往々にして理解され難く、むしろ煙たがられる。「とりあえず揃えてしまえば何とかなる」というのが理屈らしいが、必要なものが何であるかを知らないで作られた作品の出来映えは、作者の性格がよく反映されたものとなる。穴あけビット類は、その径の違いや種類から、「セット物」が安価で販売されているが、大半のサイズが使用する機会もなく錆び付いてしまうのがおちなので、必要の都度に購入すべきである。並べ立てた数十本のビットを前に、毎回どれにしようか悩んだあげく、結局はいつも限られたものしか使う機会がないのは明らかで、満足すべきは、適切で限られた道具を使って作られた「作品」とその「価値」であって、子の背負うランドセルの膨らみ具合や、勉強時間に費やす割合で、将来に徳望を抱くどこぞの親達の目論見のような、低次元の満足であってはいけない。物作りとはそうしたものだと、ビットを前にして思う。


「カントリークラフト夏号」P60解説 2004.6.6 (第174回)
明日6月7日、日本ヴォーグ社より「カントリークラフト夏号」が発売される。カントリー系のクラフト雑誌としては、群を抜く存在であることはご存知のとおり。今回も多ページに渡り、アーリーハッチが編集協力している。本日は、同誌P60〜61の当店作品について解説したい。「明るい窓辺のディスプレイ」をテーマに、計3点の作品を提案している。出窓に置かれた「置き型シェルフ」は、背板をなくし、光を遮らないデザイン。「ビューローラック」は出窓の高さに合わせた、圧迫感のない作品だ。そのとなりの「ボックス付きシェルフラック」はh1500の大型作品。ボックス収納と吊り下げ収納を兼ねた自慢の作品。背板はSPF材を使用してみたが、パイン材と比べ、色調差もなくマッチしている。同ページ内に木取り図と組立図も掲載されている。複雑な構造ではないので、ぜひチャレンジしてみて欲しい作品だ。なお、SPF材については、既成寸法(1x4:ワンバイフォー)で90mmとなっているが、市販の材によっては、90mmを切る寸法の場合(88mm等)もあるので、そうした際には、ボックス部のw寸法を調整してもらいたい。「ビューローラック」については、側板の木端が正面に現れるため、木取りの際には良質部分が木端になるよう注意したい。また、扉板の幅は219mmであるが、小型扉であるため、あえて反り止めは付けていない。その分、扉の遊びを4mmにしてあるので、膨張時でのぶつかりもないと思う。構造的にも単純なので、当教室でも大人気の作品だ。同社「簡単カントリー木工2」発売直後でもあり、木工関連は少々物足りなさを感じるが、実に厳選された内容となっている。ぜひ、書店に足を運んで欲しい。


「カントリークラフト夏号」P63解説 2004.6.7 (第175回)
昨日に引き続き、表題誌の解説。なお、同誌は、本日より全国一斉発売となる。今回は、P63の「キャビネットを作ろう」について。顔写真付きで紹介されているのは、当店木工教室代表。カメラマンのご好意により、美的修正を施されたものか、または公衆衛生的なご配慮か、普段より幾分見栄え良く写っている様子。さて、手順をおって紹介されている制作工程については、さすが木工についての認識が深い、同社編集担当により、完璧にまとめあげられている。まったく違和感を感じさせないプロセス紹介のため、つい読み飛ばしがちだが、ここには非常に大切な木工の基本が数多く書かれている。列挙すれば、「型紙を写す時には、曲線部分は外側に、直線部分内側に」「組み立て以前でのトリマーによる面取りと、組み立て後の面取り部分」「2mmのドリル刃による内側からの下穴と、外側からのダボ穴」「木工ボンドは接着面の中央に」「扉同士の間は4mm程度の隙間が必要」「塗装は塗りにくいところから」などなど、作品の制作指導を熟知した公認アドバイザーである当店代表と、同様に木工に対する認識の深い同社編集担当者の息の合った、読者へのアドバイス色の強い内容となっている。また、「知っておくと便利、木工ABC」のコラムは非常に面白い。ここに書かれている「蝶番の向き」についてのアドバイスなど、まったく知らないで取りつけていた人も多いのではないだろうか。こうした正しい基本的知識を正確に掲載してくれる担当者に敬意を表したい。DIYの世界は、ともすると、その情報量の少なさや、情報を伝える側の認識不足により、ビギナーは不正確な情報や自己流に走りがち。「趣味の世界のことだから」と安易な言い訳をするメディア担当者も多いが、ビギナーが行う世界だからこそ、専門家の正しい知識を、その情報に反映してもらいたいと思う。お金を出して本を買うのも、作品を作るのも、読者自身なのだから。そうした意味、このページは手前味噌ながら参考になる。


■カントリー木工に使用する釘について 2004.6.8 (第176回)
釘の種類は驚くほど多い。ホームセンターの品揃えを見ても、呆れるほどの数だ。建築金物のジャンルにおいて、その最たる基本金物となるのが、この「釘」である。話はかわるが、私が某商社で家電仕入れの担当をしていた若かりし頃、その発注をミスして、一部の「電池」の在庫を切らしてしまったことがある。数千アイテムの家電製品の中の、たった1種類の、それも「たかが電池」であったため、さほど気にもしなかったのだが、上司から「電気屋が電池を切らしてどうするんだ!」と、しこたま怒られたことがある。つまり、多種な建築金物(家具金物も含め)の品揃えや陳列を考える際、その意地的な根底となるのが、この「釘」の充実した品揃えとなる。それにより、その店のポリシーが表れる。しかし結果として、一般ユーザーにとっては、感心や困惑こそすれ、決して選びやすいとは言えない。私は後に、某DIYセンターに勤務し、建築金物の担当を数年勤めたが、数千アイテムの金物群の使い道をすべて理解するのに、かなりの年月をようしたものだ。ところで、カントリー木工に使用する「釘」は、極端に限られた物となる。そもそも、その開発過程から言えば、「ネジ」の出現は「釘」よりも後のことなので、その道を極める勇気のある人は、「釘」にこだわった作品に執着するのもおもしろい。時代を感じさせる作品には、一般に「つぶし釘」が多用される。釘の頭(この場合の釘とは、丸釘を指す)を横方向からつぶしたもので、釘頭が作品の木目に沿って沈められるもの。ちなみに、俗に言う「釘」とは、「丸釘」のことを言う。何の特徴もない普通の釘だが、まさにこれが釘の元祖となる。価格も一番安い。なかには、「どうせ買うなら」と、ちょっと奮発して「ステンレス釘」を選ぶ人もいるが、小物雑貨以外の家具には向かない。釘は錆びてこそ、その引き抜き強度を増す。大工が口に釘をくわえる動作は、釘の錆びを早めるためのもの。将来、家具表面に錆びが浮くのはけしからんという作風を好む人(カントリー系が嫌いな人)は、普通のステンレス釘ではなく、ステンレス製の「スクリュー釘」を選ぶことをお勧めする。これにより、本来であれば「釘の錆び」によって強化される引抜強度が、抜けにくいスクリューによって補われる。(もっと面白い話が明日へ続く)


■カントリー木工に使用する釘について 2004.6.9 (第177回)
(昨日より続き)小物雑貨等の作品では、時折「真ちゅう釘」も見かけるが、装飾的意味合いでの「金色の釘頭」は、妙に違和感があり、カントリー作品というよりも、「子供工作」といった感が否めない。また、打ち込み後に頭の部分を取り除く「隠し釘」もあるが、釘は本来、その「頭」で材を押さえ込み固定させるもの。そのため、通常この「隠し釘」は、一般の釘に比べ、細身に出来ており、頭が見えると美観が損なわれるような「住宅内装材」(ウォールパネル他)の固定や、実用的強度を必要としない、超小物作品等に使用される。引き抜き強度は、画鋲の如く、著しく弱い。狂いの激しい材や、実用作品等には使用しないこと。既述の「丸釘」や「ステンレス釘」(スクリュー釘含む)だと、その頭が妙に大きく、確実に見た目が悪い。そこで木工ファンに人気のあるのが「フロア釘」。その名のとおり、フローリング材(サネ式床材)を固定する目的の釘で、頭が極端に小さく、しかも抜けにくい構造を持つ。頭の中央にへこみがあり、センターポンチを使用することにより、材へ沈められるようになっている。融通と工夫と応用性にかける典型的日本人型の方からは「床材用の釘を家具に使うなんて」といって怪訝がられるので、いっそ「家具用釘」という名称でパッケージしたものを売り出せば、たちどころにベストセラーになること間違いなしと思う。金物業者さん、どうでしょう。(さらに明日へと続く)


■カントリー木工に使用する釘について 2004.6.10 (第178回)
(昨日より続き)そうした「釘」を使用する場合においてやっかいなのが、狂った材の接合だ。木材は、多かれ少なかれ「狂い」がある。この場合の「狂い」とは、寸法のそれではなく、「反り」や「歪み」「ねじれ」といった、いわゆる「暴れ」だ。特にパイン材などの無垢材は、そうした狂いが顕著。ネジによる接合の場合は、そのねじ込みによって、大方矯正出来るが、釘の場合には、隙間が出来たりするもの。そのため、「クランプ」や「ハタガネ」などの圧着工具で締め付けながら釘打ちを行い、接着剤の乾きを待ってから取り除くのが良い。ネジ接合の場合は、木栓(ダボ埋め)による仕上げが好まれるが、釘の場合でも、その頭を「釘しめ」等を使って材に沈めた後、「木工用パテ」を埋めて均すと言った方法もある。その場合、ペンキによる塗装であれば、その位置さえも判別できないほどきれいな仕上がりとなるが、オイルフィニッシュやステイン仕上げだと、ある程度下地が透けて見えるので、材とパテの色調を合わせることが必要。また、パテの中には、塗料の上塗りが出来ないものもあるので注意が必要だ。


■自分サイズにアレンジする方法(初級) 2004.6.11 (第179回)
木工作品を、「木取り図」や「組立図」付きで紹介している木工誌やカントリー雑誌が増えている。まったく同じ物を模造する場合は大いに利用できるが、こと「自分サイズにアレンジする」と言った場合、初心者にとっては結構悩み所も多いもの。ちょっとしたサイズの変更であっても、どこをどうしたらよいものか考えてしまう。そうした「既成図面」をもとにサイズ変更をする場合の一番のポイントは、「既成図面上にある各部材の縦横方向」の理解だ。「自分で作る」ということは、当然木材を購入して、カットし組み立てることになる。「どれだけの木材を必要とするのか」「どんな寸法でカットするのか」が分からなければ、材料の買出しも出来ない。献立が決まらないのに材料は用意出来ないのと同じ。木工では、そうした「献立表」さながらの「木取り図」が必要になる。漠然としたイメージだけでは(もちろんそれも大切だが)、作品は完成されない。もととなる「木取り図」には、「天板」「側板」「底板」「扉板」など、各部材の「名称」が必ず書いてある。自分サイズへのアレンジということは、「横幅」や「高さ」「奥行き」の変更が主であるから、それぞれにかかわる部材の寸法を調整することになる。例えば「横幅」の変更であれば、「横」に関わる部材の寸法を変えれば済むのだが、単に木取り図を見ただけでは、その部材の「方向」が分からない。つまり木目方向が横になるのか、縦になるのかといった具合だ。既成の木取り図を分析する場合は、まずその点に着目する。つまり作図とは、「木目方向の理解」に始まる。それさえ認識できれば、あとは小学校レベルでの「足し算・引き算」の世界だ。それでは、具体的な作品を例に取り、そのサイズ変更を紹介する。お手元に「簡単カントリー木工2」(日本ヴォーグ社)があれば、ご用意いただきたい。(明日へ続く)


自分サイズにアレンジする方法(初級) 2004.6.12 (第180回)
昨日の文末にて「お手元に簡単カントリー木工2(日本ヴォーグ社)があれば、ご用意いただきたい」と言いながら、実は自分の手元にないことに気づき慌てた。さて、同誌p38に掲載の「ロングスツール」を例に、その初歩的なサイズ変更を考えてみたい。部材の少ない簡単な作品なので、容易かと思う。p87の木取り図も合わせご参考いただきたい。仮に、w600の既成サイズを400に変更し、さらに高さ400の既成サイズを350に変更するとした場合を例にとる。すべては、「木取り図」を書くことから始める。白紙ではなく、必ず方眼紙に書くことを習慣付けよう。まず「天板」の幅600を400にする。次に「側板」の高さだが、天板を含めた高さを350としたいので、「350-19(天板厚)=331」となる。つぎは「棚板」だが、この場合のポイントは、側板に対する天板の「出」(耳という)をいくつにするかだ。既成作品では、「棚板幅532+側板厚19+19=570」となるので、天板の「耳」は15mmずつとなっているようだ(と言いながら、私がデザインした作品だった)。全体の幅をつめることにより、この耳も同率で詰めるかどうかは、各自の判断だが、この場合は、同様に15mmずつの耳がデザイン的に良しとして、変更後の棚板幅は、「天板400−両耳30=370」から「両側板厚38」を引いた332となる。「飾り板」は棚板のように側板の内部に入り込むのではなく、かぶるようにつくので、側板同士の外寸と同じなので370となる。高さが変わるので飾り板の高さも短くしたくなるが、曲線やハートのくりぬきなどを考えると、同率での縮小は考えないほうがよい。ということで、トータルして注意すべき点は、「部材の縮小拡大は一律で行うものではない」ということだ。あすは、中級となる、同誌p43の「ミニカップボード」のサイズアレンジについてお話する。なお、デザイン・製作者である「首藤かをりさん」の許可は取っていない。


■自分サイズにアレンジする方法(中級) 2004.6.13 (第181回)
昨日の解説では、そのポイントとして「部材の縮小拡大は一律で行うものではない」ということをお話した。本日は「簡単カントリー木工2」(日本ヴォーグ社)p43〜45に掲載されている「首藤かをりさん」デザイン・製作の「ミニカップボード」のサイズアレンジについて解説する。昨日のポイントと合わせ参考にしていただきたい。さて、この作品の既成サイズは「w600d310h1400」となっている。これを例えば、wが500、hを1200にサイズアレンジしよう。p90〜91の組立図や木取り図を合わせてご参考いただきたい。まずwについてのポイントは、「縦枠」の幅をいくつにするかだ。既成では70mmと、少々広めに設定しているようだ。どっしりとした印象の作品にするのであれば、w500でも60程度は欲しい。そこでこれを60に設定する。これにより扉幅が自ずと確定する。計算式は「w500(全体幅)−(縦枠60x2)−4(扉の遊び)÷2」で、扉幅は一枚あたり188mmとなる。ここでの「扉遊び4mm」も重要なポイント。ほとんどすべての扉は、この4mmの遊びが基本となるので覚えていて欲しい。それ以外のwに関する部材については、単純に計算できる。次はhに関する項目。高さを低くするからといって、同率での縮小とは言えないことを、昨日のポイントとして説明したが、この場合も「飾り板(上)」のデザインをどのようにするかと、既成では750に設定されている「中天板」の高さをいくつにするかによってかなり違ってくる。この程度のサイズ変更であれば、飾り板は既成サイズと同様で良しと思う。問題は中天板の高さに限定される。あくまで自分の使い勝手を考慮すべきだ。ここでは仮にその高さを700にする。中天板下の「上つなぎ板」(30幅)は、ストッパーを取り付けるなどの関係上、30のまま設定したい。そうすると、縦枠の長さは「700(中天板高さ)−19(中天板厚)−30(上つなぎ板幅)=651」となる。あわせて扉板の長さは「651(縦枠長さ)−50(床面から扉までの遊び=601」となる。この場合の「遊び50」については、既成サイズでの遊びを踏襲している。つまり、底板のくる高さ位置は、側面図にあるとおり90としている。「側板」の長さについては、上部の飾り板デザインをそのままにするので、既成サイズが全高1400に対し1300となっているので、同様に1200から100mm短くして1100とする。このように、やはり「同率縮小」が通用しないことがお分かりと思う。全体サイズが変わったとしても、部材としてのサイズに変更のないものや、使い勝手による位置決めからくるサイズ変更、バランスを考慮したサイズ決定など、その要素は多々ある。なお、今回の作品のアレンジ解説については、そのデザイン・製作者の承諾のもとに行った。明日は「木ネジとドリルドライバー作業時の留意点」についてお話する。


■「顧客本位の木ネジ」 2004.6.14 (第182回)
中型から大型のカントリー家具、つまり小物雑貨類以外の家具制作においては、木ネジによる組み立てが主となる。この「木ネジ」、あくまで総称的名称のため、例えばホームセンター等に行って「木ネジ」の名称で探すと、ものすごい種類が陳列されている。日本工業規格で言うところの「木ネジ」とは、頭部形状は主に「丸・皿・丸皿」の3種に分かれ、ねじ山角度や太さ、十字穴の長さ、全長等、事細かにその寸法が規格されているものとなる。そのため、原則として、その商品パッケージに「木ネジ」と表記されているものは、この「規格品」であって、それ以外のものについては、別名称を使用している(あくまで原則論)。さて、カントリー木工作に使用される「木ネジ」が、まさにこの「規格品」としての木ネジの使用が妥当かと言うと、実は悲しいかな「ほとんど使用出来ない」、もっと正直に言えば、まったく使えない(あくまで個人論)。木取り図や組立図、必要材料等を詳しく解説したクラフト系カントリー雑誌等でも、数ありすぎるこの木ネジ(この場合の木ネジとは、規格外品も含む)の種類の指定が出来ず、あえてその誌面上での表現は、単に「木ネジ」としているようだ。私の言う「規格品の木ネジが使用出来ない」理由は、まず第一に「ネジ頭が大きい」ということ。カントリー木工作に使用する木ネジは「皿頭タイプ」のみとなる。そしてその必要全長は、主に30〜50mmが主体となる。さらに、ネジ頭を隠すための「ダボ仕上げ(木栓仕上げ)」となるため、必然的にそのネジ頭の直径は、ダボ(木栓)より小さくなくてはいけない。例えば、ダボ径が8mmとすれば、少なくともネジ頭は6mm以内が好ましい。重ねて言えるのは、その「太さ」についてである。一般にその全長が長くなればなるほど、太さも比例してくる。つまり長いネジは、それなりの太さのものとなる。一般に販売されている「規格品の木ネジサイズ」では、確実に「太すぎる」のである。太すぎる場合においての支障は、「ねじ込み時における材の割裂」という致命傷がある。そうした融通性に欠如したとも言える「お役所ネジ」は捨て置いて、実顧客を大切にするメーカー各社は、次々に新案的ネジを販売している。過去にも推奨してきたが、「先割れ細ネジ」や「細軸コーススレッド」「Fビス」などがそれである。ネジ山を含めたその太さに対し、ねじ山を除いた軸部分を細身とし、さらにネジ先端部には錐状の刃を備えたタイプで、更には皿頭の直径を極力小さくしているものである。これら工夫により、前述での「規格品の木ネジ」の短所をことごとく解消している。さすが金物メーカー。向くべき方向を心得ている。この姿勢、井の中の蛙で老いる老獪も、溶ける前に気づかぬものか。

■ドリルドライバー作業時の留意点 2004.6.15 (第183回)
釘による家具制作時に限らず、ネジを使用してのそれにおいても、基本的に「下穴」(案内穴とも言う)を必要とする。昨日解説の「先割れ細ネジ」や「細軸コーススレッド」「Fビス」等、家具制作に適する木ネジにおいては「下穴を必要としない錐構造」を持つが、これはあくまで、「下穴がなくとも、材の割れを防止出来る」目的であって、必要とする「下穴」の意味はそれだけではない。お気づきと思うが、それは「垂直なネジ打ち」のためでもある。もちろん、下穴自体が曲がっていては意味がないが、ボール盤やドリルスタンドを使用せずに垂直な下穴をあけることは、同様に木ネジをねじ込むことに比べ、はるかに正確な作業が出来る。垂直である必要性の意味は、その仕上時における「ダボ」(木栓)に関係する。下穴は、同時に「ダボ穴」(木栓用穴)の加工も伴うため、仮にこの下穴が曲がってしまうと、ネジ込みの際に、ネジ頭がダボ穴を損傷させる可能性がある。ダボ穴が痛むと、見た目の仕上がりが汚くなる。このことについては、同様にドリルドライバー作業時の工具角度にも言えることだ。垂直を維持したドリルドライバーの作業姿勢は結構難しい。これまで数千人の作業姿勢を見てきたが、半数以上の人は少なからず傾きがある。下穴が垂直であれば、少々ドリルドライバーに傾きがあっても、その押込力でネジ自体は垂直を維持したままねじ込まれる。問題なのは、ネジ頭がダボ穴内部に入り込む際、傾いたドリルドライバーのビット部が、ダボ穴を損傷させることだ。ねじ込み途中での少々の傾きはかまわないので、ダボ穴付近にさしかかったら、特に意識して注意しよう。また、このドリルドライバーの傾きに関連する留意事項として、その押さえ込みの力加減がある。本来ドライバービットとネジの関係において、その噛み合わせに間違いがなければ、さほどの押さえ込みの力は要しない。ところが前述のように、垂直に立つネジに対し、ドリルドライバーに傾きがある場合、この押さえ込みの力が働かないとならない。その場合に起こる災難は、力を入れすぎたあまり、ドリルドライバーがネジ頭から外れ、材本体を傷つけてしまうことだ。経験ある方も多いのではないだろうか。ドリルドライバー機能に関する留意点では、その回転速度の選択だ。一般に高回転による締め付けは、材同士の圧着が甘くなる傾向がある。これは、押し込み力による材の密着性を維持する間もなく、締め込みが終了するために起こる。同時に、墨線とのずれを補正する間も与えず完了するので、特に初級者の家具制作には向かない。また、高回転がため、ねじ込み過ぎたり、あるいはそれを意識し過ぎて浅かったりと、やはりかなりの慣れがないと、不正確な作業に終始するきらいがある。回転速度は低速を選択すべきだ。

■主役を活かすコーディネートの有効性 2004.6.16 (第184回)
室内空間を、あるテーマに基づいて演出することは、インテリアコーディネートの基本である。そして、その物的バランスの上に成り立つ「主役」と「脇役」の調和が、もっとも重要な要素となる。などと難しく始まったが、言いたいことは、お部屋の中で主役となるのは、やっぱり「家具」だと言うこと。カントリー調の演出の場合、ともすれば「小物雑貨」のオンパレードになってしまい、言い方は悪いが、乱雑で幼稚な印象を与える演出となってしまう。それをまとめるのが「家具」となる。逆の言い方をすれば、カントリー家具のみが置いてある部屋というものは、なんだか味気なく、色気もなく、おもしろみもなく、妙にそれが浮いて見えるもの。そこに脇役として、彩りのある「小物雑貨」が調和することで、バランスのあるカントリー空間が完成すると言える。これを自然空間に例えれば、カントリー家具は「木々と緑」であって、小物雑貨は「四季折々の花と蝶」となる。時間的表現をすれば、前者は数十年という長い年月をかもし出す存在であり、後者は季節単位の華やかさを演出する。そうした要素を意識的に踏まえた空間は、見るものを感心させ、感動させる。さらに先を行く人は、そこに「におい」の要素まで追加している。ただ、あまりにこだわり過ぎると、まるで生活観のない、雑誌の一ページのような空間になってしまい、なんだか居心地の悪い場所になる。突き詰めると、「ナチュラルであれ」ということは、不自然であってはならないということであり、普段の生活環境を無視してまで作り出すものではないということだろう。もっとも高度な演出とは、他人の視線を意識しない、自分や家族にとって居心地の良い空間が、結果としてすでに存在している場合にのみ言える。

■ちょっといっぷくシリーズ「ままごと」 2004.6.17 (第185回)
「最近のワンポイント講座は難しいことを書きすぎる」との声が多いので、表題のシリーズを2〜3日続けたい。さて昨日、某カントリー誌編集部の取材撮影が行われた。こうした取材撮影は、ほぼ毎月のように行われるため、年中行事のひとつになっているのだが、今回のテーマは「おままごとキッチン」。もちろん、編集部指定のテーマである。なにせ、子供の頃より、おままごとに誘われた経験がないし、ましてや「男子厨房に入るべからず」をモットーにした家庭に生まれ育ったがため、このテーマを与えられた時、「店長、急性胃炎で即入院」との仮病で逃げようとしたが、私の性格を熟知する編集担当者に、まんまと先回りされ、承諾を余儀なくされた。5月放映の「TVチャンピオン」の審査員を命じられた時から、いやな予感はしていた。ご覧になった方も多いと思うが、同番組内の予選で、このテーマがすでに取り上げられていた。なにしろ、この番組テーマを企画した張本人が、この編集担当者本人であったのだ。と言うわけで、逃げ切れないと悟った私は、「ままごとキッチン」のプロセス撮影に駆り出された訳であるが、過去の撮影では、すべて当店美人スタッフをモデルとして行われて来たため、今回もそうであろうと思っていたのだが、なぜか私にお鉢が回ってきてしまった。それでも家具職人の習性か、組み上げる毎に、なんらいつもと変わらない、ひとつの「家具」として真剣に取り組んでいる自分に気がついた。出来あがってみると、なんだか新鮮な感動さえ覚えた。ひとりっきりの場が与えられたら、こっそりこの作品で、おままごとをしてみたくなった。この模様は、「カントリークラフト秋号」(9月発売 日本ヴォーグ社)に掲載される予定だ。
次回はぜひ「R指定」の作品もテーマにして欲しい。

■ちょっといっぷくシリーズ「性格が出る得手不得手」 2004.6.18 (第186回)
正直に言おう。いばる訳ではないが、私は糸ノコが苦手だ。「下手」な訳ではない。どんなラインであっても、正確に切り抜く自信はある。つまり、性格的に「苦手」という意味だ。昨日のTVチャンピオンでは「糸ノコ先生」とあだ名される選手が登場していたが、はっきり言って尊敬する。力を入れすぎると刃が折れてしまい。結果、恐る恐る切り進むことになる。公明正大で後ろめたいことのない私は、同時に「お化け屋敷」と「ホラー映画」が嫌いなため、こうしたいわば消極的な工具については、なるべく避けて通ることにしている。逆に、もっとも得意とするのが「ジグソー」だ。自称「神業的達人」として店内のみで有名である。時折りその腕前を、無理やり披露して迷惑がられるが、まるで「蝶が舞う如く」といおうか、「蛇がのた打ち回る」といおうか、いずれにしても、1円玉程度の円は垂直を維持したまま見事にカットできる。自慢はさておき、こうした工具類の得手不得手には、その人の性格が反映さえている。糸ノコが得意な人は、良く言えば「几帳面」、悪く言えば「神経質」で、ジグソーの好きな人は、良く言えば「パワフル」、悪く言えば「おおざっぱ」となる。いいえて妙である。両者相対で言いかえれば、糸ノコ派はジグソーのパワフルさを怖がり、ジグソー派は糸ノコの繊細さを苦手とする。私は後者の派閥に属することになるが、決して糸ノコ派が嫌いなわけではない。どんなに得意でも、ジグソーには出来ないカットもある。もちろんその逆もある。とは言え、強がりを言っておこう。アーリーハッチ創業以来、毎月提供し続け、数十アイテムとなる「今月のおすすめ作品」のデザインは、すべて私が担当してきた。そして、そのすべての曲線カットは、ジグソーのみでカットが可能だ。和解の日は遠いか。

■ちょっといっぷくシリーズ「師匠の醜態」 2004.6.19 (第187回)
私ごときを、お世辞でも「カントリー木工の師匠」といってくれる「舎弟」が、北は北海道、南は九州(沖縄は未確認)と、全国各地にいらっしゃる様子。それでは本日も、正直に告白しよう。私は「カントリー」を良く知らない。しかも、私の家には、アーリーハッチ家具の見本制作品を払い下げした2〜3点のカントリー家具しかない。ましてやカントリー雑貨とは無縁の、殺伐とした室内を自慢とする。こんな生活環境で暮らしながら、「カントリー木工とはなんぞや」などど、偉そうな能書きをたれるのは結構怪しいと、自分で思う。つまり「カントリー」という概念や姿勢にはとんと無頓着ではあるが、ジャンルを限定しない「木工」については、少々の「知識」と、もっと少々の「技術」を持つ。実はその「技術」についても結構怪しいもので、過去の木工歴の中で、幾度となく身体障害者になりかけた。鉄工用の切断機で金属切断中に、何を思ったか「指」まで金属に見えて、白い骨まで露出させたり、トリマーで指を面取りして、同じく骨とのご対面。ジグソーでは、板といっしょに膝までカットし、丸ノコ盤では弾けた材が額を直撃。ドリルで指に穴をあけたりもした。そんなことを繰り返しながら、危険防止のためとして、現在の技術の根底となっているらしい。本当のプロは、たとえば木材を運ぶ際には「皮手袋」をする。作業音の激しいところでは、イヤーマフをかける。ホコリの多い作業室内では防塵マスクをする。「ちょっとの作業で、なにもそこまで」とか、「面倒くさい」とか、「ダサイ」とかいうのは、あきらかに「素人」の証明で、プロとは、本当の怖さを知っていると同時に、つまらぬ怪我や、恥ずかしい失敗を絶対にしないという自負と余裕がある。そしてなにより、「素人方のお手本となれ」「本物であれ」というプロ意識がある。無駄と隙のない作業には、素人にとっては遠回りとも見える、絶対の準備がある。私もこのところ数年、怪我をしていない。書道の達人は、墨一滴も散らさぬという。師匠もまだまだ、中華料理のテーブルマナーの域を越えない。

■本物を知らない人への偽物の横行 2004.6.20 (第188回)
単刀直入に言おう。明らかに最近、木材名を偽ったと思われる作品が数多く出回っている。ターゲットになっているのは「パイン材」だ。このパイン材には多種存在するが、松系の木材、または「松が混入している掛け合わせの木材」、または見た目が似ている木材を「パイン材使用」とか「ポンデロッサ使用」として制作販売している業者がいるようだ。法律的なことはよく知らないが、作品を購入する側に、それを判別する知識や技術がないにしても、その材質名を購買のポイントとしているのであれば、あきらかに制作販売する側の詐欺行為であろう。もっとも多いと思われるのが「SPF材」(スプルスパインファー材)をパイン材と偽っている作品。パイン材に比べ、スプルスの白身が強く、妙に粘りがなく乾いた感のある木材で、パイン材特有の油身が少ない。オイルフィニッシュしてしまえば判別がつき難いようだが、正義の我々にはよく分かる。SPF材を含め、スプルス材ホワイトウッドなど、価格的にもパイン材に比べ安い。輸入牛肉を国産と偽って消費者を呆れさせた馬鹿者もいたが、カントリーの世界にも商魂豊かな愚か者が多いようだ。「どうせ、わかりゃしない」と思っているようだが、そいつこそ自分の立場と商売の意味を分かっていない。早々に挫折するのを祈るばかりだ。カントリーの世界では、「海外より直輸入」とうたった商品に魅力を感じる人も多いようだが、「中国」も「台湾」も海外である。なかには、新潟や千葉あたりも「海外」と思っている低俗業者がいるらしい。老舗カントリーショップが、そうした商いをしているのは悲しい。やはり、自分自身で生み出す世界が一番安心できる。

■3種の「箱物」を知る 2004.6.21 (第189回)
キャビネットやラックなど、物を収納する目的の作品を、通称「箱物」と呼ぶ。読んで字の如く、その形状からの例えであるが、まさに木工作品の基本形とも言える。正面開口(扉板は構造に含めない)の立方体であるこの箱物の基本構造は、おおむね3種に分かれる。第一は、「天板」「棚板」「底板」を同寸法とし、それを「側板」が挟みこむ形状。木取りが楽な反面、水平方向のみでの接合による揺らぎへの弱さと、天板部への加重限界が低いという欠点がある。第二は、「棚板」を挟んだ「側板」によるH形状を、同寸法の「天板」と「底板」(この場合は地板という)で挟み込む形状。力学的な観点からは、この構造が一番強いと思われる。ただ、「底板」が床に直接当たるため、下部への「飾り板」を好むカントリー系作品には比較的少ない。第三は、「棚板」「底板」を同寸法とし、それを「側板」が挟みこみ、「天板」を上部から接合する形状。カントリー系では、この構造が一般的となる。天板を上部から取りつけることによって、その両端や前方(耳と呼ぶ)を突き出すデザインが可能となり、天板上での演出幅が広がるという利点があり、下部への飾り板も可能となる。これから手作り木工にチャレンジするという人は、まずこの「箱物」の制作から始めよう。

■背板について 2004.6.22 (第190回)
本棚やシェルフなど、扉のないオープン式の作品で、ワンランク上の仕上げにしたい場合、その背板の工夫がポイントとなる。背板全体に一枚の板を使用するのは、コスト的にも重量的にもナンセンス。面積が大きければなおさらだ。そこで、ビギナー向けとしてお勧めなのが、市販のパネリング材。通常この材は、室内壁用の内装材で、「ウォールパネル」として販売されている。厚みは9mmから12mm程度、幅は90mmが主流となる。カントリー家具の背板にはうってつけのサイズである。薄板のため、重量的に問題もなく、幅90mmもしっくり来る。それもそのはず、90mmとは、材の基準を示すサイズで、外来工法でいうところの「4インチ」(計算上は約100mm。2x4材等の呼び寸法では約90mm)となり、パイン材になじんでいる方には受け入れやすい寸法と思う。さて、このパネリング材。代表的なのはニュージーランドパイン(ラジアタパイン材)使用のもので、長さは1800mmや2400mm。無節で木目が少なく癖がない。そのため、逆におもしろみがないとも言える。パネリング式のため、木端には凹凸の溝(本ザネ矧ぎ工法)が施してあり、はめ込むと、実寸85mmとなる。つまるオスサネ(凸側)の出は5mm。節有りの材質を使用した比較的硬木のパネリング材では、背面に2本程度の筋溝が彫ってある。これは、材の反りによるひび割れを防ぐ目的と、下地への「食いつき」(接着増強:ボンド道とも言う)を良くする目的がある。こうした演出効果をも含む背板であるが、簡単な市販のパネリング材よりも、手作りを好む方も多い。そうした場合には、パネリング材のような、難しい「本ザネ」加工よりも、「相欠き矧ぎ」(L字型に組む工法)がお勧め。その場合、材に伸縮による融通を持たせるため、互いの接着はしない。加工には「ルーター」や「トリマー」を使用する。パイン材の場合には、加工部に節がこないよう注意が必要となる。

■オイルフィニッシュの色選び 2004.6.23 (第191回)
カントリー家具の仕上げとして代表的なオイルフィニッシュ。木材に浸透して凝固し、内部より木材を保護するものであることは、これまでにも解説してきた。今回は、その色調についてお話する。アーリーハッチでは、創業以来、このオイルフィニッシュとして「ワトコオイル」を使用している。カントリー系雑誌や木工誌をみても、このオイルが一番人気のようだ。着色効果を併用しているため、色の種類は豊富に用意されている。その中でも「ミディアムウォールナット」がダントツ人気だ。当店も誌面等に作品を掲載する場合には、すべてこの色を使用している。また当店「木工教室」では、「ミディアムウォールナット」「ダークウォールナット」「ナチュラル」の3色を用意し、お客様にお選びいただいているが、その割合はおおむね、ミディアムが8割、ダークが2割で、極まれにナチュラルを選ぶ方がいらっしゃるという具合。ミディアムの人気の理由は、その明るさにある。不自然な着色感を与えない自然な色合いで、白地の木材を2〜3年放っておき、自然に焼けて来ると、この色に近づく。床置き家具の色は、特に木目を生かしたものである場合、床の色よりも明るく、壁の色よりも濃いものが好まれる。つまり、床より濃い色だと、家具が重く見え、圧迫感が出る。また、壁より薄い色だと、家具が浮いて見えるものだ。逆に室内の空間が広く、家具を際立たせたい場合には、ダーク系も似合う。また、狭い室内を広く見せるために、あえてナチュラル系や薄い色の家具にすることにより、圧迫感を抑えるといった演出もある。いずれにしても、木材への着色は、あくまで人為的なものであって、素材の持つ特徴を充分に活かしたものでなければならないということを、オイルフィニッシュの基本として認識しておこう。

■使用者本位の家具であれ 2004.6.24 (第192回)
当店の既成作品をご覧になったお客様から、「この作品は何に使うものですか?」とか、「ここには何を入れるんですか?」といった質問を時々受ける。そんな質問に対し、当初は「それは使う方の自由です」とか、「多目的です」といった返答をしたものだった。引出しの中に何をしまおうが、棚の上に何を置こうが、扉の中に何を入れようが、そんなことは使う人が決めることだと自然に考えていた。しかし、やっと最近に至って、そうした考え方が、実は誤りであったことに気づいた。アーリーハッチは、既製品の販売には積極的でない。むしろ消極的とさえ言える。それは「買うなら自分で作ろう」というDIY精神を活動の基本として、お客様に示しているからだ。月間200名を超える参加者が集う木工教室を活動の中心としている訳であるが、そうしたお客様と接するうち、みなすべてが、カタログ品であれ、オリジナル品であれ、作品の使用目的を持って参加していると言う、しごく当たり前のことにようやく気づいた。言いたいことはこうだ。既製品というものは、あくまで個々のお客様の使用目的・目的収納・設置個所等を想定・提案したものでなければならず、決して「作品にお客様が合わせる」といったものではいけない。おかげさまで当店の既成完成品は「作れば必ず売れる」という人気ぶりではあるが、そこには「お客様が作品に合わせてくれている」という、隠れた部分においての「作品を使用する側の妥協」が存在する。つまり、お客様は、結構な「無駄」を承知で作品を購入して下さっているのだ。こうした「作る側の甘え」を反省し、今後当店作品は、使用目的提案型の作品を重視していくつもりだ。当店の木工教室では、参加者オリジナル作品が3割を占める。その極一部を「今週の注目作」のページで紹介しているが、こうした使用者の目的に適った作品こそが、本当の意味においての「家具」である。オリジナル作品であれということではない。妥協や無駄がなく、満足のいく使い勝手が適ってこそ、日々生活の中で活きる家具といえると思う。もちろんスタイル重視で、それに合わせた収納や演出を好むといった考え方も、お客様の満足が適うのなら素晴らしいこと。家具は使うものであることに大きな価値と存在理由がある。

■梅雨時期における木工作業の注意点 2004.6.25 (第193回)
木工作業にもっとも適さない時期が「梅雨時」である。ご存知の通り木材は、湿気により水分を吸収し膨張する。膨張してサイズが大きくなっている状態で木取りをすると、乾燥時には驚くほどサイズショートする。具体的には、膨張した状態で接着接合された作品は、乾燥の際の収縮により、ひび割れを起こしやすい。木取りの基本は、木材が完全乾燥している状態で行うのが鉄則である。という訳で、今の梅雨時はよほど天候を気にしながら作業を行わざるを得ない。余談であるが、こうした木材の伸縮特性は、室内環境維持においては、見事な効能を発揮する。つまり、室内の湿度が高くなればそれを吸収しようとし、逆に、乾燥すれば蓄積している水分を室内へと放出する。結果、室内の湿度バランスに一躍かっている訳だ。木材家具の素晴らしさはそうしたところにもある。ところで梅雨対策の続きだが、木材伸縮以外にも難点はある。例えば「ニス仕上げ」を降雨時や高湿度の時に行うと、仕上表面に気泡が出来やすく、そのまま凝固して大失敗となる恐れがある。また、油性系塗料(オイルフィニッシュ含む)であっても、その乾燥時間と溶剤の揮発時間にも影響を与える。さらに細かく言えば、湿気吸収した木材表面は、目に見えない程度の「毛羽立ち状態」になる。いつもより丁寧なサンディングを施せば問題はないのだが、そうした状態のままで塗装をすると、手触り感にざらつきを持たせる結果ともなる。この時期、「屋外木工」は当然不可能となり、どうしても室内作業となるのだが、湿度面では内でも外でもさほどかわりない。むしろ密閉された空間に頼らざるを得ない場合での諸問題(換気・防塵他)も多々ある。怖いのは、梅雨時期に制作された作品の良し悪しは、梅雨明け後に判明するということだ。

■過信にご注意 2004.6.26 (第194回)
いまさら言うのもなんだが、過信は怖い。木工作業では、さながら「慣れ始めた人」に言える。初めて電動工具や刃物工具を手にした時の恐怖感。その後使ってみれば何のことはなく、コツさえつかめば容易に作業できる。そこで発生するのが思わぬ怪我である。これこそ「道具に対する過信」「自分に対する過信」が成せるわざと言える。「道具」には、使用者を気遣ってくれる心などない。また「人」には道具ほどの頑丈さも実直さもない。道具はそれであると同時に凶器にもなる。人も作業者であると同時に迷える子羊でもある。往々にして、過信がゆえの怪我をこうむってから、始めて道具の道具たる所以に気づき、自身の迷いと油断を反省し成長する。さて本日、日頃から木材を切ったり貼ったりしている自分が、木工とは無縁の物体を相手に、切った貼ったの「過信」をやらかしてしまった。救急車の乗り心地はさほど良くない。と言うわけで、今日は短文で失礼する。

■カントリー家具の流通事情 2004.6.27 (第195回)
「カントリー」という言葉が、物や生活スタイルの中で、ひとつのジャンルとして認知され始めたのは、比較的最近のこと。一般に「カントリー家具」と言えば、そのほとんどがアメリカンカントリーのスタイルを指す。古き良き時代の素朴な手作り感が、その人気のもととなっている訳だが、では母国アメリカにおいてのそれは、ブーム的人気として注目されている日本ほどの扱いはされていない。こうした母国から見たアメリカンカントリー人気は、おそらく海外では日本が一番ではないだろうか。広義としてアメリカンスタイルの影響を色濃く受けているのは、その占領統治を受けた諸外国が中心であり、一時的であれ、その国の過去の文化や思想を否定された国々において、「古き良き時代」よりも、そうした統治による洗脳効果の方が明らかに根強い。さて、日本におけるカントリー家具の流通は、ブームに乗って加速している訳だか、大手のメーカー・家具ショップは、その生産をアジア各国に請け負わせ始めている。中国・東南アジアがほとんどで、無塗装状態での輸入により、日本国内で塗装(オイルフィニッシュ)を行う。最終工程を日本で行うため、「メイド・イン・ジャパン」ということだろうが、なんだか悲しい気分になる。商売としての海外生産におけるメリットとして、コスト的に非常に大きいのはまぎれもない事実であるが、その気持ちのこもった手作り感を尊び、古き良き時代を彷彿させる作品が、販売者の手によるものでないところに、ひとりのカントリー家具職人の立場としてのやるせなさを感じてしまう。アーリーハッチは、「物」の売り買いよりも、それを作り出すことに魅力を感じている。しかるにアーリーハッチ作品は、これからも「メイド・イン・サイタマ・ジャパン」である。

■電動工具の購入順 2004.6.28 (第196回)
手作りカントリー木工に興味を覚え、電動工具の購入をお考えのビギナーのために、その購入順について説明したい。こと、お金に余裕があり、家族の理解がある人ほど、必要な道具を一斉に購入してしまいがちであるが、お金と理解には縁遠い私から言わせると、根拠はないがそうした人ほど飽きっぽい。という訳で、私と似た境遇の人向けに、私自身の電動工具購入順の歴史を押し売りする。一番最初に購入した(と言うより、やっと購入出来た)ものは「ドリルドライバー」だった。もちろん、これだけで木工は出来ないが、なによりその汎用性に着目した。「ネジが回せる」「穴があけられる」という訳で、結構日常生活の中で、そのお披露目機会が多い。つまり簡単に言えば、大蔵大臣である細君を説得しやすい。けなげな陳情効果もあいまって、購入に成功出来た訳だ。そうして日々「ドリルドライバー」の優秀性をアピールしながら、次の作戦へと進む。木材を切る道具として「ジグソー」が欲しい。単に切るだけなら、「丸ノコ」が適しているが、ジグソーは自由な曲線も切れる。ガーデニング小物制作や、ちょっとした日曜大工作業にも、大いに活躍出来る。「これがあればノコなんていらない」などと言う嘘方便で、まんまとゲット。次は「糸ノコ盤」に狙いを定める。すでにジグソーの威力を実証済みのため、「ジグソーでは切れないような可愛いハートも切り抜ける」などという誘いで、財布の紐を緩めさせた。この辺まで来ると、もはや生活必需品としての誘いは、あらかた通用しなくなる。という訳で、既成事実をもとに、「あとはトリマーさえあれば、素晴らしい木工作品が出来る」との押しの一手。賢きかな、すでにおおかたの企みはバレバレで、敵もそうした木工にはまり始めているのが幸いし、以後ずるずると必要に応じて、「サンダー」「丸ノコ」「ボール盤」「卓上丸ノコ」「丸ノコ盤」「スライド丸ノコ」といった順で、ほぼ完璧に揃ってしまった。後に木工が生業となり、幾度と機種を代え、その台数も増えた。血のにじむような(というか、実際に血も出た)電動工具購入作戦についてのご相談には、そうした「家族攻略法」も含め、ぜひご相談あれ。押し売りはしない。

■誰も教えてくれない作業姿勢「電動工具全般編」 2004.6.29 (第197回)
今回からは、表題の件について、詳しく解説していきたい。序章は「電動工具全般編」ということで、ACコード式の電動工具の作業姿勢について。コード式とは「充電式以外」のものであるので、基本的にはほとんどの手持ち工具を指す。「トリマー」「ジグソー」「丸ノコ」「ドリル」「サンダー」など、たくさんある。当店木工教室参加の方で、比較的古くに木工をかじったと思われる諸先輩方に見られる作業姿勢に、「コード担ぎ型」がある。ACコードを肩に担ぐような姿勢で作業するもの。誰がどう教えたものか、結構多くの方が行っているので、由緒ある文献か、工具メーカーの説明書にでも推奨されているのかも知れない。しかし、この作業姿勢は危険防止の面を優先する場合、間違いと言わざるを得ない。旧来の考え方として、刃物工具や回転工具での作業中、誤ってACコードがビットやブレードに触れて、コードを切断しないようにするための姿勢、つまり「コード損傷防止」を優先しているのである。簡単に言えば、「工具を壊さないため」の作業姿勢だ。時代はかわって、現在優先して考えるべきものは、「作業者本人、及び周辺の人」となる。つまり、「物より人」という考え方だ。コードを肩に担いで作業した場合での危険性は、作業中、本人または周囲の人が、誤ってコードを踏んでしまった場合、工具本体が身体側に手繰り寄せられる状態となり、大きな怪我のもととなる。ましてや、そこは肩の付け根の「首」である。その危険性が想像出来よう。もちろん、ビットやブレードにコードがあたるような態勢は避けなければならない。しかしそれは、目で見て確認できること。背後からコードを引かれる怖さとは比べ物にならないはずだ。さて明日からは、個別の工具毎に、その作業姿勢を解説する。手始めは「ドリルドライバー」から。(明日へ続く)

■誰も教えてくれない作業姿勢「ドリルドライバー」 2004.6.30 (第198回)
(昨日より続き)昨日はコード式工具の作業姿勢について解説した。本日は「ドリルドライバー」。その形状から、どうもピストルや拳銃の印象があるためか、片手で構える人が比較的多い。弾が発射される訳ではなく、先端が回転する。その回転反動から、ドリルドライバー本体もねじれるようになる。そうした場合、必要な「押し込む力」に加え、「回転反動を抑える力」も必要となる。これを片手で作業すると、その反動力をすべて「手首の力」によって制御しなければならない。一度回転し始めれば、抑えこむ力加減が分かるので、さほど苦労しないように思えるのだが、その回転に負荷が加わった場合には、一気にその手首へと負荷が連鎖する。難しいことはどうでも良いが、つまり「両手で作業しなさい」ということだ。サポート側となる左手を、ドリルの後方部に添え、「押し込み力」と「ドリル本体の安定」を保つようにする。「私はけっこう力があるから」とか「慣れているから」という「片手操作派」の人もいるが、その作業を見ると、やはり押し込み力不足や、回転反動からくるドリルの振れや、ネジ締込み時のガタガタ音がある。また手首のみで回転反動を抑えているがため、回転が止まった瞬間に、手首がねじれる。基本動作を理解していない人、無理をしている人は、その姿勢からも下手に見えてしまうもの。上達の一歩は、やはりその姿勢にある。明日は危険度の高い「トリマー」の作業姿勢について述べる。