著作:アーリーハッチ 著者: 社団法人 日本DIY協会認定 DIYアドバイザー 首藤浩昭  著作開始日 2003.12.16

著作掲載対象:アーリーハッチホームページ http://www.hatchan.com/subtop.htm

2003.12掲載分 2004.1掲載分  2004.2掲載分  2004.3掲載分  2004.4掲載分   2004.5掲載分  2004.6掲載分  2004.7掲載分(本ページ)  2004.8掲載分  2004.9掲載分  2004.10掲載分  2004.11掲載分  2004.12掲載分


■誰も教えてくれない作業姿勢「トリマー」 2004.7.1 (第199回)
(昨日よりの続き)本日は比較的危険度の高い「トリマー」の作業姿勢について。その構造のほとんどがモーター自身とも言うべき「筒状」の工具。ドリルドライバーやジグソー、丸ノコといった工具と比べ、決定的な違いは、スイッチにある。前者工具類は、すべて「トリガー式」(引き金)であるため、トリガーを引かなければ作動しないが、トリマーは、単純な「オン・オフ式」のため、よくある事故として、スイッチがオンの状態のまま電源コードをつないだ瞬間に本体が転がり、身体に触れ怪我をしたというケースが報告されている。ボディが小型なため、工具箱等に収納した際に、他の収納物に触れ、誤ってスイッチがオン側へ入る場合もある。基本的なことではあるが、コードを差す場合は、必ずスイッチの状態を確認する習慣をつける必要がある。また、本体が筒状であるがための事故もある。それは、スイッチを入れた瞬間、モーターの回転反動により、手から滑り落ちるといったもの。最近の機種では、自動的に低速回転からスタートする「ソフトスタート式」を採用しているものもあるが、ほとんどの機種は、スイッチをいれた瞬間に超高速で回転をする。そうした心構えで、しっかりと握り、スイッチを入れよう。面取り作業においての進行方向は、外周は半時計回り、内側は時計回りである。逆方向に進めると、切り口がささくれ立つばかりか、ビットの回転方向に連鎖して、思いがけず本体が移動方向に走り出してしまい危険である。切削屑が激しく飛ぶという特徴もあるため、基本的には「保護めがね」と、「防塵マスク」の着用が必要となる。鋭利なビットでの高速回転による切削作業であるため、仮に怪我をした場合の被害は大きい。ゆえに添手である左手は、可能な限り本体から離すこと。むろん、材をしっかりと支えられる範囲である。かなりの割合の人は、ビットを覗き込むようにして作業しているが、一般的な面取りや溝彫りでは、そうした過度な覗き込みは不用。面取りは「コロ付きビット」であるため、ベースの密着さえ確保されていればよいし、溝彫りについても、ガイド等の治具を使用するので同様である。むしろ、窮屈な覗き込み姿勢によって、かえってベースの密着度が不安定になったり、切削屑の飛び散りが顔にあたる場合がある。またスイッチを切った後は、ブレーキ的に回転が停止する訳ではなく、しばらく惰性回転が続く。回転が停止したことを確認して、手から離すよう心がける必要がある。私もトリマーに対する不注意から、過去幾度か自分の骨を見た経験を持つ。怪我をするのは自由だが、肉をえぐるので、なにより痛い。

■誰も教えてくれない作業姿勢「ジグソー」 2004.7.2 (第200回)
今回が連載200回目となる。まさか第1回から通読されておられる方は皆無と思うが、一日も休むことなく200日間連載出来た。これもひとえに、メールや掲示板等にいただく「励ましのお言葉」や「ご意見」「ご感想」、はたまた「売り込み」「ご忠告」「圧力」「挑戦」等々、そのすべてが活力となって、ここまで掲載を続けられたものと感謝する。なお、この「ワンポイント講座」は、366日目が最終回となる。私事はさておき、今回は「ジグソー」の作業姿勢について。過去、ジグソーの基本操作で解説してきた通り、その最たる基本は、「切断面の垂直維持」にある。つまり、ブレードを上部のみで固定しているがため、特に曲線切断時におけるブレードのねじれに起因した「ブレード下部の外方へのずれ」を、いかに抑えるかにある。直線用ブレードは厚みがあるため、垂直維持は容易だが、曲線用ブレードはカーブでの抵抗を減らすために、厚みと幅を小さくしているため、 そうしたずれが起こりやすい。それを克服するポイントは、やはり作業姿勢にある。切断時は、常にジグソー本体のブレード部分を支点として切り進んでいる。右利きの人は、どうしても「ジグソー本体の左側」から覗き込むような姿勢で切断する傾向があるが、特に曲線カット時(直線でもそうだが)には、なるべく、本体真上からブレード部分を見るような姿勢を維持すること。さらに、カーブでは、本体前方でラインを追うのではなく、本体の後方を振ってカーブする気持ちで切り進む。口で言うのは容易だが、実際のところ、これがすべてである。どうしても切り口が斜めになってしまう方は、ぜひアーリーハッチの木工教室へいらして頂きたい。たちまちにして、ロダンと子羊が消え去るはずだ。

■緊急報告「ロットによるワトコオイルの色調変化」 2004.7.3 (第201回)
塗料に限らず、製造物には生産ロットによる微妙な違いが発生し得ることは、過去にも解説した。本日は、当店も推奨しているオイルフィニッシュの代表的製品である「ワトコオイル」の最近の色調変化について緊急報告する。記載する内容は、販売代理店を通じて確認をとった内容である。塗料の工業会等が示す「色番号」等による、統一された規格的色調の存在しない、海外輸入品である同オイル。あくまでその色調については、使用環境や下地木材により変化するのはご承知の通りだが、ここ3カ月ほど前から、同オイル「ミディアムウォールナット色」が、かなり薄くなっていた。当店では同色を「業務用18L缶」で購入(月数缶)しているが、当初は一時的なロットによる変化と認識していた。ところが最近購入したものは、逆に正常時より濃い色となった。つまり「正常色」「薄い色」「濃い色」の3段階の色調変化があったことになる。この事実を販売元に確認したところ、当初薄くなった時点で、同様の意見がユーザーより多数発生したため、本国(イギリス)へ状況報告をしたところ、今度はその調合を濃い目に調整し直したらしいとのこと。イギリスらしいといえばイギリスらしい。良く言えば実直、悪く言えば融通性のなさが特徴の日本人にとって、こうした変化は受け入れ難い。数十年という時を考えれば、人為的な着色によるミディアム色程度の行き着くところは、当初の「濃い・薄い」の差などなくなり、結果的に同色となるのだが、今日明日の性急な結果を求めるものと、成熟した大人の文化との違いが、こうした面にも表れて来る。という訳で、現在市場で流通している同オイルの同色については、当面の間、この3段階の色調により不安定なものとなることは明らか。ただし、当店は製造元にクレームなどつけない。下地を透かすオイル着色に、色出の仕上がり具合を問うほど分からずやではない。木材同様、変化があるほど面白いから。

■ワックス塗布の賛否について(前編) 2004.7.4 (第202回)
オイルフィニッシュへのワックス塗布の必要性については賛否両論がある。基本的に材表面への塗膜を形成しない同仕上げは、木材の呼吸を妨げないという、長期使用を見据えた上での利点と、ナチュラルさを尊重する塗装法である。同時に「水回りに弱い」という面もある。つまり、水分が付着する可能性のある場所で使用する作品の場合、水滴が「染み」となって表れる。無論、屋外での使用は禁物となる。そこでもっとも質問の多いのが、「テーブル」での仕上げ方法。商売を前提とした即時効果の説明(長期効果やメンテナンス面を省いた、その場限りのやり逃げ法)で言えば、教科書通り「専用ワックス」の塗布を薦めることとなる。たしかに無難で正しい方法ではある。オイルフィニッシュへの専用ワックスは、基本的に「ロウ成分」が主となる。材表面にロウによるコーティングを施し、撥水性能の発揮する。当然手触りについても「スケートリンク」と称されるほどツルツルになる。ところがそれは、あくまで一時的な効果であり、いったんワックス塗布をした後は、使用頻度にもよるが、連続した「3カ月に1回の再塗布」が必要となる。これを怠ると、ワックスが剥離した部分への「生活汚れ」の浸透により、明らかな色調の濃淡が、ムラとなって表れる。つまり、ワックスは永久的なものではなく、磨耗頻度の高い部分から順に剥がれていき、裸となったその部分は、生活環境、及び自然効果により変色を始め、ワックスが残っている部分はコーティング効果を継続するということだ。故に「ワックス塗布法」は、そうした再塗布のサイクルを理解し、維持出来る自信のある人のみに推奨される。(明日へ続く)

■ワックス塗布の賛否について(後編) 2004.7.5 (第203回)
(昨日より続き)ワックス塗布は、その目的から言っても必要不可欠なものであるが、問題となるのは、「効果の継続と確認」にある。つまり、完成した「新品の作品」であるが故の「施し」であっては意味がなく、末永く生活を共にする家具としての実用効果でなければならない。私が推奨するのは、「ノーワックス」である。人為的な市販製品としてのワックスは塗布せずに、連続した生活使用を続けることで、あらゆる物質が日々の拭き掃除等により研磨され、また浸透していく。これにより、自然なワックス効果が確実に得られる。完成したての作品にワックスを塗布して「ワックス仕上げにしました」と胸を張る人も、3カ月も使用すれば、とっくにその効果がなくなっていることに気づかない。「ノーワックス」の場合は、使い始めのころは、コップや茶碗の「輪染み」や「汚れ」が目立つ。しかし、使用を続けることによって、前述の効果により、そうした形跡は材内部に吸収される。もちろん、数カ月・数年を要するものであるが、木材のそうした特徴は、人の「記憶」同様、年月を経るごとに、薄らぎながら「為」となって吸収され蓄積され、そして消え去る。急ぐことなかれ。生物は短命だが、家具としての木材は永遠に生きる。

■知っておくと賢いシリーズ@「木ネジの長さ表示」 2004.7.6 (第204回)
市販されている木ネジを購入する際に、最もその目安となるものは「長さ」になる。一部の特殊ネジを除き、基本的に同種のネジの場合、「長さ」に比例して「太さ」が決まってくる。つまり、「太さ」を基準として見る必要はない訳で、その「長さ」さえ注視すればよい。木ネジには複数の種類が存在するが、基本的にはその「頭の形状」により大別されている。頭が平らで、材への収まりがよい「皿ネジ」、逆に頭の付け根部分が平らで、頭の上に丸みのあるのが「なべネジ」、この2種が代表的。そこで注意するのが、長さ表示の基準となる。「皿ネジ」の場合で言う「長さ」とは、「頭の頂点から先端までの長さ」を指し、「なべネジ」の場合は、頭の付け根から先端までの長さ」をいう。そのため、同じ長さ表示のものであっても、並べて見ると、実際の長さに違いがある。この「長さ表示の基準」について分かりやすく言うと、「材への入り込みの長さ」を原則としている訳で、つまり「皿ネジ」であれば、平らである頂点部分が、材に対しフラットになるようねじ込まれるため、その全体の長さが、イコール「長さ」として表示される。「なべネジ」の場合は、その頭の付け根部分までが材の中にねじ込まれ、頭のみが材より出っ張るため、頭の付け根から先端までが、「長さ」と表示される訳だ。我々消費者にとっては、「このネジは、材に対して何ミリ入り込むものか」を示した長さ表示を目安に出来るため、非常に便利な表示法であると言える。なお余談だが、工業規格では、長さや太さによって違いがあるが、「0〜-2.5の許容差(表示誤差)」を認めている。つまり、表示サイズを超える誤差は許していない。「足りない場合の影響」より、「超える場合の影響」のほうが、支障をきたすケースがあると認識しているためだ。明日は「釘の太さ・長さの表示」について説明する。知っておくと賢くなる。

■知っておくと役立つシリーズA「釘の太さ・長さの表示」 2004.7.7 (第205回)
昨日の「ネジ」に続き、本日は「釘」について。疑問に思ったことのある方もおられると思うが、その「太さ」をミリ単位で明記している「ネジ」に対して、基本的に「釘」については、これを表示していないことにお気づきだろうか。釘のパッケージを見ると、例えば「#13x45mm」などと表示されている。「45mm」は長さであるが、実はこの「#○○」という表示が「番手」と呼ばれる「太さ」を表す数値となる。「#13」と書いてあるから「13mm」という訳ではない。工業規格で言うところの呼び方では、厳密性を求めないものに関する表記を、こうした「番手」を使って表す。つまり「おおよその数値範囲」を括ったものである。そんなことは、当の消費者には関係ないことであって、何の数字か分からないようなものを、商品パッケージに表示せざるを得ない仕組みは理解に苦しむ。釘の太さを厳密に求める消費者も少ないとは思うが、この「番手」について、ミリ数値に置き換えて見るので、必要な方はご参考頂きたい。
「#17=約1.47mm」 「#16=約1.65mm」 「#15=約1.83mm」「#14=約2.11mm」「#13=約2.41mm」「#12=約2.77mm」「#11=約3.05mm」「#10=約3.40mm」等となる。一見何の役にもたたないように思われるが、釘の下穴のためのドリルビットを選ぶ場合などに参考となる筈だ。
長さの表示については、「全長」となるため、「ネジ」の場合のような、種類によっての基準位置はない。

■知っておくと役立つシリーズB「木ネジの構造」 2004.7.8 (第206回)
「木ネジ」は、その名の通り、木材に対してねじ込むもの。その構造を良く見ると、渦巻き状のスクリュー部分は、ネジ頭の付け根までは切られていないことにお気づきだろうか。何だか中途半端な位置までしかネジになっていない。その訳を知っている人にとっては当たり前のことなのだが、知らない人にはまったく持って意味不明だと思う。工業規格では、この部分を、「全長に対して約2/3の長さ」としている。つまり、完全にネジが切られていないのは、決して手抜きではなく、工業規格が触れるほどに意味を持つことなのだ。「木ネジ」の役割とは、本来「木材同士を接合するためのもの」と定義されている。仮に「A」という木材と、「B」という木材を「木ネジ」で接合するとしよう。「A」の側から木ネジをねじ込むとした場合、この「A」にはネジのスクリュー部分が効いていても意味がない。つまり、「A」の側には、ネジが抵抗なく入り込むための「下穴」さえあればよく、実際にネジのスクリュー部分が食いついて接合効果を出さなければならないのは「B」の側となる。よって、ネジ頭の付け根部分(全長に対して約1/3)が、「A」側の「厚み」の基準となるのだ。木ネジの長さを選ぶポイントを「板厚の2倍から3倍」と表現するのは、こうした構造からも裏付けできるだろう。ネジの中には「タッピングネジ」という、一見して木ネジと見間違えるネジがある。大きな違いは、ネジ頭の付け根まで、めいっぱいスクリューになっていること。「タッピングネジ」とは「鉄部用のネジ」で、基本的に「鉄同士の接合のため」に用いられる。ネジを持って接合する金属というからには、ミリ一桁の極薄鉄板を指す。これを前述の「木材AB」の説明に当てはめてみれば、なぜ付け根までネジが切られているかお分かりになると思う。もちろん、鉄板に効くくらいなので、木材にもねじ込むことは可能だ。しかし、その場合、「A」の側に、その太さを超える「下穴」があいていない場合、「A」と「B」強力に圧着出来ないことがお分かりだろうか。つまり、いくら締め付けても、ネジ山が「A」と「B」
を平行に切り進むだけで、「木ネジ」のように、スクリュー部分の食いつき効果によって、「B」の木材を「A」の側に引き込む(圧着)することが出来ないのだ。木材専用のネジの中にも、「コーススレッド」のように、付け根部分までネジが切られているものもある。これらは当然工業規格が定める「木ネジ」には当たらない規格外品ともいうべきものであるが、それもまた「下穴」の必要性を前提としている。もっとも、正確にはカントリー家具制作において、規格で言う「木ネジ」はほとんど使用不可能である。その意味は、明日この場所で。

■知っておくと役立つシリーズC「木ネジが使えない理由」 2004.7.9 (第207回)
続きで読まれていない方には、意味が通じないタイトルで失礼する。昨日の文末で「カントリー家具制作において、規格で言う木ネジはほとんど使用不可能である」と結んだ。本日は、その理由について説明する。工業規格(JIS B1112)が定める「木ネジ」では、その太さに対して、長さの種類が定められている。その内容を見ると、当然と言えば当然だが、「細い物ほど短く、太い物ほど長い」という原則がある。まずここに第一の「使えない理由」がある。それは、家具制作において必要になる「長さ」を基準に木ネジを選ぶと、必要以上に「太いネジ」になってしまうことだ。市販の「木ネジ」を見れば分かるが、例えば「長さ40mm以上」のものだと、通常「太さ4.1mm以上」のものを選ぶことになる。これば明らかに太すぎる。かと言って細いものだと、長さが足りない。また、工業規格では、ネジの「頭の太さ」(皿ネジ)についての定めもある。それは「ネジの太さの2倍」となっている。これが第二の「使えない理由」。前述例の場合で、仮に「太さ」について妥協し、「4.1mm」の太さのネジを購入したとしよう。ネジ使用には「ダボ仕上げ」(木栓)が関係してくる。太さ4.1mmの木ネジということは、その頭の部分の太さは「4.1x2倍=8.2mm」となる。つまり、この木ネジを使用した場合の「ダボ穴」はそれを超えるものでなければならない。丸棒使用なら、もっとも細いもので「10mm径」を利用せざるを得ないことになる。これでは美観的にも不似合いだ。さらに同規格では、ネジ山の「角度」、及び「間隔」(ピッチ)、「深さ」にも触れている。実は、それらひとつひとつに、「使えない理由」があるのだが、身の危険から、これ以上は触れまいと思う。かわりに、ではどんなネジ(当然、規格外製品)がお勧めかについてを、明日の講座で解説しよう。なお、お勧めするにあたって、業者との癒着などない。念のため。

■知っておくと役立つシリーズD「家具制作に適したネジ」 2004.7.10 (第208回)
昨日の講座で、工業規格が定める「木ネジ」が、実はカントリー家具制作に適していない理由を説明した。本日は、当店がお勧めする「適したネジ」である「先割れ細ネジ」について解説しよう。ネジを使った家具制作において、もっとも気を使うのが、「締め込み時での木材の割れ」である。本来、ネジであれ釘であれ、打ちこむ際には、割れを防ぐために「下穴」(案内穴とも言う)をあける。しかしこの穴は、接合する2枚での「手前側の板」に対して行う。つまり、2枚同時に下穴をあけることは基本的に考えられない。「割れ」が起きる可能性は「奥側の板」と、充分な太さの下穴があいていない場合の「手前側の板」となる。規格ネジであれば、19mm厚の板を接合しようとすると、実に太さ4.1mm以上の木ネジを選ばざるを得ないことになるので、当然下穴も同程度となる。更にネジ頭が8.2mm径以上となるなどの弊害は、昨日説明の通り。「先割れ細ネジ」の場合、最小の長さ25mmをかわきりに、5mm刻みで長さ75mmまである(75mmの上は90mm)。そして特筆すべき点は3つ。まず第一に、長さ25mmから50mmまで、その太さはすべて3.3mm径と実に細い(55mmから75mmまでは、太さ3.7mm径)。規格ネジでは、太さ3.1mm径での最長は25mm、3.5mm径の最長が40mm、逆に長さ75mmだと太さが5.5mm以上であることからも、「先割れ細ネジ」は「細くて長い」ということがお分かりだろう。この細さ故に、木材の割れに対する影響を少なくしている。細いが故の利点は他にもある。それはドリルドライバーによる締め込み時の低抵抗だ。ネジを締め込むということは、物理的には「材を押し広げながら掘り進む」ことであるため、ネジが細ければ細いほどに、その抵抗が少なく、楽に締めることが可能になる。第二には、ネジ先端部に錐状の刃が付いていること。これによって、単に材を押し広げるのではなく、切削しながら掘り進むため、前述同様の低抵抗が実現するのと同時に、材の割れを防止している。第三は、皿頭の裏側に付いた6本の放射線状の突起部。これによって、ネジ頭が木材表面に入り込む際に起きる「ささくれ」や「割れ」を防ぎ、まるで「皿ぎり」(あらかじめ木材に対し、皿頭をおさめる目的で、専用錐によって行う加工)をしたかのように、驚くほど綺麗なおさまりを見せる。こうした様々な利点のある「先割れ細ネジ」。すでに多くのカントリー家具作家が愛用している。(尚、製品名称は、販売元によって異なる。参考として「Fビス」「細軸コーススレッド」「内装ビス」他の名称もある」

■知っておくと役立つシリーズE「木材選びのポイント」 2004.7.11 (第209回)
材木店やホームセンターなどで木材を選ぶ際のポイントについて、木工の教科書では、乾燥度合いについて「なるべく軽い物を選ぶ」とあります。また、木肌のきれいなものとして「節のないもの、またはあっても小さいものを選ぶ」としています。カントリー家具制作において使用されるパイン材の場合、まず前者に関しては間違い。もちろん、軽いほどに、乾燥している証拠ではありますが、逆に木油(樹液)が完全に抜けきって軽くなっているものは、オイルフィニッシュの際、まるでスポンジの如くにオイルを吸収し、不自然な着色具合を現します。つまり水分の過度な残存については問題ですが、適度な木油を持つものが、その仕上がり感に優れます。また同時に、その手触り感で、表面にかさつきを覚えるようなものは、油の抜けきったものである場合が多いようです。この適度な重さと手触り感によって選ぶのがポイントとなります。また後者については、好き好きとも言えますが、ナチュラルな変化に富む木材を楽しむ上で、印象的な木目や節を作品のポイントにするのが「上手な演出」と言えるでしょう。節のない木材を選別しているうちは、カントリー家具の良さを理解することは当分出来ないと思います。よく、原木の木材を水に浮かべている駐留場がありますが、あれは、木材を長期間、水につけておくことで、木材内部の樹液と水を自然に交換させ、後の乾燥をしやすくする効果があるためです。樹液が抜けきり完全乾燥したものは、割れが少なくなる反面、前述のようなオイルフィニッシュの際の、独特の味もまた犠牲になります。

■知っておくと役立つシリーズF「接着剤」序章 2004.7.12 (第210回)
ホームセンター等の接着剤売り場を見ると、その種類の多さに飽きれてしまう。飽きれることの出来る人はまだ良いが、大方の人は「何を買ったらよいのか」を迷ってしまうだろう。おそらく小売店に言わせれば、「お客様により多くの選択肢を提供するため」などという答えが返ってきそうだが、「適剤適所」がもっとも影響する接着剤の多種類において、同等品である複数のメーカー製品を平行販売することが、より消費者の選択肢を複雑に印象付けさせている原因であり、そこには「売る側」としての主体性のなさが、買う側の迷いを助長させるという要因が存在する。まさか「たくさんの種類を置けばたくさん売れる」などという低次元の発想があるとは思えぬが、たかだか「木工用の接着剤」を購入するのに、10数アイテムが並ぶ木工用接着剤の陳列棚の前で、何を選んだら良いのか分からず困り果てている一般客を見るに付け、どうしてもそうした売る側の姿勢に、どこか疑問を感じてしまうのは私だけだろうか。一消費者の立場として言わせてもらえば、少なくも陳列するからには、それを薦める理由がある筈で、あえて同等品を並べるならば、その効能的違いについて、メーカーとしてのそれではなく、売る側としての説明を明記してもらいたいものだ。同時に、「中身は同じようなものですから、どちらでも好きなほうをどうぞ」というような、低レベルな接客は勘弁して欲しい。物作りをより複雑なものにしているのは、そうしたところにも要因がある。話が反れたが、明日は本題へ・・

■知っておくと役立つシリーズF「接着剤」大別編 2004.7.13 (第211回)
いよいよ本編に入る。接着剤という大枠で言うならば、おおよそ次の4種に分類される。「水分の蒸発によるもの」「溶剤の揮発によるもの」「化学反応によるもの」「空気に反応するもの」。これを系列名で言えば、「水性系」「ゴム系」「エポキシ系」「瞬間接着系」となる。「水性系」と言えば木工用接着剤が代表的。難しく言えば「酢ビ・エマルジョン系」という名称がある。水分の蒸発を待ちながら、じっくり硬化を始める気長なタイプ。個人的には大好きなタイプだ。「ゴム系」とは、あの黄色いネバネバした接着剤が代表的で、溶剤(シンナー)が使用されており、両方に塗った後、インターバルをおいて圧着するタイプ。硬化中に圧着部を叩くことによって、さらに接着力を増す。多少癖や匂いはあるが、烏合による連帯感で互いに同じ試練を慰め合いながら安心感を得るという人々によく似ている。色んなもの同士の接着に使える万能性はあるが、完全硬化しないので木工には不向き。エポキシ系は、「2液タイプ」という別名があるように、2種類を混ぜ合わせることによる化学反応で強力に硬化するもの。耐水性と硬度が自慢。肉痩せしない特徴から、充填剤としても使用され、硬化時間を調整した様々な種類がある。硬度が高い分、強い衝撃に
は意外と弱い。つまりそうした過度のショックでは、「剥がれる」というよりも「割れる」という現象を示すことから、昨今の夫婦関係にも似ている。「瞬間接着系」は、言わずと知れた「瞬間接着剤」。テスト問題では「シアノアクリレート系」という正式名称を暗記する。容器から出した途端、空気に反応して、たちまち硬化を始めるという気の短いタイプ。微量でも一度くっ付いたら簡単には剥がれない特質性はあるものの、融通性のなさにおいては致命的となる場合が多い。量の割りには価格も高い。気が短くて融通性がなく、プライドも高いが、ちょっとしたことでは利用価値が高いという面では、結構知り合いが思い浮かぶのではないだろうか。明日は「木工用接着剤」の正しい使い方を解説したい。

■知っておくと役立つシリーズG「木工用接着剤の使い方」 2004.7.14 (第212回)
木工用接着剤と言えども、何やらその種類は多く、どれを使ったら良いものか迷ってしまいがちですが、代表的なものは「ボンド」のCHシリーズでしょう。基本的に、ネジ釘を使わず接着剤のみで仕上げるような、超小型の雑貨類以外、「速乾タイプ」は避けるようにします。速乾を使用しない理由は3つ。ひとつは、硬化速度が早すぎ、比較的広い面などで使用すると、接合する前に接着剤が乾き始めてしまうため。二つ目は、通常タイプに比べ、硬化後での白濁があること。3つ目は若干価格が高いこと。そうしたことでの裏づけとして、木工用速乾タイプの増量品はあまりなく、販売されているのは、子供工作にでも使われるような少量タイプがほとんどです。基本的に水性系の接着剤は、含有される水分が、接着成分を導きながら、木材内部に浸透吸収されながら凝固するため、接合部を含め、材と一体化します。そのため硬化時間にはある程度のゆとりが必要となるのですが、速乾タイプでは、そうした浸透吸収を待つ時間を省略する代わりに、接着成分の接着力増強でカバーしている。つまり、接合される材と材との間に、そっくりと存在しており、通常タイプで言う「材との一体化」とは異なるのです。ところで、「材の矧ぎ」(板を接着することで、より広い板を作る作業)においては、その接着部分には、余すことなく接着剤を塗布する必要がありますが、「木口(こぐち)」や「木端(こば)」に塗布する組み立て工程におけるネジや釘との併用接着時においては「一筋塗り」がベストです。よく指を使って接着剤を塗り広げる人を見かけますが、ほとんどの場合接合時に、はみ出してしまいます。圧着された状態で、材からはみ出ない塗り方を考えれば、この一筋塗りの利点が理解できると思います。仮にはみ出してしまった場合には、硬化する前に、絞った布でふき取ります。放っておくと、硬化後には透明になるため、そのはみ出し部分が確認できなくなり、オイル塗装をすると、その部分のみがオイルをはじくため、見事な素人作品となってしまいます。そうした場合、耐水ペーパーによるサンディングで、若干は修正出来ますが、前述の「浸透吸収」の特性から、材内部に入り込んだ成分により、完全な形での修正は不可能となります。また接着剤は、接合目的以外にも、材同士のきしみ音をなくす効果もあるため、一部例外を除き、なるべく塗布するようにします。明日はその「一部例外」についてお話します。

■知っておくと役立つシリーズH「接着剤を使ってはいけない理由」 2004.7.15 (第213回)
このテーマは、過去の講座でも解説済みですが、確認の意味で再度説明します。基本的に、材同士の接合には、接着剤を使用します。「ネジや釘を使うから、接着剤は不要なのでは?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、ネジや釘での接合は、あくまで「点」によるものです。いかにネジ釘が丈夫な金属といえども、「点」であることに変わりはなく、「面」による接合である「接着接合」にはかないません。そうした意味で、特に木工における材の接合は、「接着剤によるもの」が主役であって、ネジ釘は「その補助的役割」といって過言ではありません。つまり、接着剤のみでの接合でも充分なのですが、硬化時間や一時的な圧着の必要性から、ネジ釘との併用接合が行われるのです。逆に、点による接合である「接着剤を使わない組み立て」をした場合に起こる現象には、材の伸縮による接合部のずれや狂い、歪み、きしみ等があります。つまり、接着剤を使わない、「点」のみでの接合のため、湿度の影響による木材の伸縮作用が比較的自由に発生するため、おのおのの部材にずれや狂いがおきるのです。ただし、すべてにおいて、この接着剤使用が必要である訳ではありません。木材は「繊維と直行方向に大きく伸縮する」という特性があります。つまり、木目方向への伸縮は微々たるものですが、木目直行方向では大きくおこります。この伸縮比率は、繊維方向を1とした場合、その直行方向は5〜10と言われています。そのため、「伸縮度合いが大きく異なる部分の接着接合」をした場合、片方の板は伸縮しようとしても、もう片方はそれに合わせた伸縮がおきないために、割裂が発生したり、不自然な歪みがおきたりします。例えば、一般的な箱物作品では、「天板」「側板」「棚板」「底板」、それぞれの接合部分は、みな「繊維同一方向」なはずです。つまりそれら部材は、「作品の奥行き方向」に対して同時に伸縮が起きるため、接着剤を併用した組み立てとなり、また同時に構造強度を保ちます。接着接合が不向きな部分としては、テーブルやデスクの天板、椅子の座板など、比較的広い面積の板材が中心となります。これは、材が広ければ広いほどに、その伸縮幅も大きいため、それと接合される材との接着を行うと、自由な伸縮が抑えられ、前述の弊害が発生します。また同様の意味で、比較的広い面同士での「繊維直行方向」の接着は避けるようにします。カントリー系家具では、扉板の裏側に「反り止め」と呼ばれる板を取りつけますが、これも良く見ると、「繊維直行方向」での接合です。そのため、本来であれば、扉板の伸縮による割裂を防止するため、接着剤は使用せず、ネジのみでの接合が基本となるのですが、こうした家具の場合、「反り止め」は、同時に「伸縮による寸法差異」を抑える役割も担うために、接着剤を使用しています。ただし、比較的大きな扉板(特に高さのあるもの)の場合、上下2箇所程度だと、接着された「反り止め」による「抑え効果」の及ばない部分で、反動的な伸縮とも言える激しい狂いが生じることになるため、複数箇所への取りつけが必要となります。また、幅の少ない扉板への「反り止め」は、伸縮幅も小さいことから、あえて「反り止め」のみの効果とし、伸縮を抑える意味での接着剤使用は控えるようにします。

■キャスターの選び方のポイント 2004.7.16 (第214回)
家具を自在に移動することの出来るキャスター。その機能性から、作品への利用が高まっています。本来なら、作品的には移動する必要のないようなものでも、キャスターを取りつけることにより、掃除の際に移動出来る利便性であるとか、配置換えの際に楽であるといった、いわば付加価値的な意味合いでの取りつけが多くなっています。このことは、室内環境として、旧来のカーペットや畳といったものから、木質系床材(フローリング)にかわったことが、大きく関係しています。つまり、カーペットや畳では、車輪が沈み込んでしまうため、当然のことキャスターは使用不可能ですが、フローリングは硬質であるために、キャスターの便利さが発揮される訳です。さて、キャスターは基本的に「自在式」と「固定式」に分けられます。自動車で例えれば、移動方向へ自由に車輪が向けられる前輪部にあたるのが「自在式」、前後のみでの移動となる後輪部にあたるのが「固定式」です。前後のみ(または左右のみ)での平行移動となる作品、例えば「キャスター式の隙間家具」などの場合は、「固定式」を使用します。もし、これに「自在式」を使用すると、動きが定まらず、無駄な動作をしてしまい、かえって使いづらくなります。逆に、360度自由な方向に動かしたい作品の場合は「自在式」を使用します。また、比較的長い距離を安定して移動させたい作品には、自動車の車輪配置同様に、「自在式」「固定式」をそれぞれ2つずつ取りつけるようにします。キャスターの車輪部分は「ゴム製」や、ナイロン等の「プラスチック製」があります。「ゴム製」のものは、移動の際の音が静かで、床に傷がつきませんが、重量物を乗せるような作品(テレビ台他)や、移動せず長期間静止した状態で使用することにより、車輪部が作品の重さで変形する場合もありますので注意が必要です。逆に「プラスチック製」のものは、ゴム製に比べ、移動の際の音が大きく、硬質であるが故、床に傷がつく可能性がある反面、車輪の変形がないため、主に重量物の作品には適しています。いずれにしても、作品の用途によって、使い分けることが大切です。


■ヤニに思う 2004.7.17 (第215回)
「松ヤニ」という言葉があるくらい、松系の木材に付き物なのが「ヤニ」です。ご存知のとおり、カントリー家具の材料として代表的なパイン材もこの松系。そもそもが家具の材料といえば広葉樹なのですが、あえてその節や癖のある木目、加工のしやすさなど、よりナチュラルで身近に感じることの出来る針葉樹の良さを素材として選ぶからには、その自然な変化や現象に対して、こころよくつきあうことが大切です。反りやひび割れ、変形、変色等も当たり前の自然な現象。そうした「ナチュラル家具」としての根本を理解出来ずにいる人は、どうかアルバムを紐解き、若かりし頃の容貌と現在のそれを比較し、さらにこの先数十年後の老いて消え行くそれを想像して、いきとしいけるものの変化の美しさというものを実感していただきたいものです。相変わらず話がそれましたが、「ヤニ」もまた、そうした現象のひとつ。木材内部に「ヤニツボ」(ヤニ溜り)という、ヤニが一括して溜まっている空間がある場合、生木であれば粘度を保った状態で存在しますが、一般に乾燥製材された板材では、こうしたヤニは、内部で凝固硬化しています。またそうしたツボがなくとも、木材繊維の中に微量なヤニは点在しているもので、使用環境が一定範囲の温度になると、材表面に浮き出て来る場合があります。これを汚いもの、または毒害的なものと思い眉間にしわを寄せる人は、やはりアルバムを紐解く必要がある訳で、こうした現象は、人が汗をかくかの如く、松系木材には当たり前のものであり、その面倒を見るのも、ナチュラル家具とつきあう楽しさのひとつです。メンテナンス方法は、市販の「ペイント薄め液」を含ませた布でふき取ることで簡単に落とせます。当然除去出来るのは、材表面に浮き出た部分のみです。一般に内部のヤニが完全に出しきられるのは3年程度と言われています。こうした現象の可能性がある家具を「不良品」と思う方は、どうかスチール家具かプラスチック家具、または表面を完璧に樹脂コーティングされたものをお選びいただきたいと思います。少なくも自然を愛するナチュラル家具は、そうした変化に富んだ、人間味のあるものです。人間界では介護制度がもてはやされるほどに、面倒なことは他人任せにする愚かさが露見しています。愛するものと永く付き合うことの尊さは、消え行く方向なのでしょうか。だとすれば、人間には帰るところがありません。

■美しい作品について 2004.7.18 (第216回)
自慢ではないが、年間約2千人の木工教室参加者たちの作品を見続けてくると、「美しい作品」と「そうでない作品」の違いというものが、はっきりとわかる。もちろんあくまで主観的な印象が基となる。木工作品に限らず、「美しさ」を感じるものというものは、一瞬見るものの目を止めさせ、次に何かを語りかけてくる。そして無意識なこちらからの問いかけに、その答えを語り始める。つまりそこには心の通じ合いがある。寸分たがわぬ完璧な作品には何の魅力も感じない。なぜなら、そんなものは技術のある人なら誰でも作れる。ハートの切りぬきひとつにしても、コンピューターで描いたもののように完全なものなら、フライスマシンでもルーターの型抜きでもスイッチひとつで出来る。「へたなら良いのか」ということではない。仮に完璧な出来映えの作品であっても、作り手の想いが、しっかりと込められているものと、そうでないものの違いは歴然としている。では「美しい作品」とはどういうものか。結論を言えば、「作ることの楽しさが表現されている作品」ということになる。もっと簡単に言えば、「物作りを楽しみたい」という気持ちと、物としての作品を「欲しい」「作りたい」という気持ちを持って作り上げたものは、不思議とその作風に、魅力的な美しさが表れるということだ。言いかえれば、本当の美しさというものは、その出来不出来には関係なく、作り手本人が、素直に自分を表現し、そして素直に感動出来るかにある。自分の作り上げた作品に至らなさに、悔しさを感じている人がいるとすれば、その人はまだ、その美しさに気付いていない。

■ワンランク上の扉装飾法 2004.7.19 (第217回)
木工家具、特にキャビネット等の箱物で、その大きなポイントとなる「扉」。
手作りカントリー木工作品においては、作りやすさや技術的な意味から、板材にハートなどの型を抜くスタイルが一般的。そうした工法に物足りなさを感じ始める手作り愛好家も多い。今回はそうした方のために、ワンランク上の装飾法について解説する。手持ちの道具で比較的簡単に行えるのが「溝装飾」だ。トリマーに「U溝ビット」を装着し、先端をベース面から3〜5mm程度出す。トリマー本体には平行ガイドを装着し、好みの間隔にセットする。一般にはビット中心から40mm程度がバランスとして良い。なぜなら、扉にツマミ類を取りつける場合に、その程度の間隔がベストとなるからだ。この「溝装飾」は、扉を立体的に見せ、よりグレード感を強調出来る。さらにワンランク上は「框式」。つまり「枠組み式」だ。枠組みの中には「金網」や「布」をあしらったりするタイプ。枠の組み立てはネジで行えるので、さほど難しくはない。枠の中に板材を使用するスタイルを「鏡板式」と言う。本格的工法では、枠の裏側や内側に「欠き」や「サネ」を作り、さらにそれにはめ込まれる合い欠きやサネを板材(鏡板)にも施す。枠の接合には、「留め」と呼ばれる45度での組み立てがよしとされ、技術的にも、使用工具からも、上級工法となる。簡易的工法として、枠の内寸通りの板材をはめ込み、後方より「反り止め板」等を利用して止める方法もあるが、理想的には、鏡板の伸縮を考えての「遊ばせ」が必要で、やはり「はめ込み」がベストとされる。ガラス板の使用も、同様の方法で行われる。

■ワンランク上の面取り装飾法 2004.7.20 (第218回)
面取り装飾と言えば、トリマーに頼るところが大きい。使い方によっては万能的機能を併せ持つ同機であるが、一般的には、単純なボーズ面(丸い面取り)での利用に甘んじる場合が多い。トリマービットの種類は非常に多く、面取り目的以外にも、溝加工用や切断用、継ぎ手加工用など様々だ。仮にそのすべてを使いこなせる人がいるとすれば、「ひま人」か、もしくはメーカーの開発者くらいのもので、多用な可能性は秘めているものの、そのすべてが同時に必要なわけではない。つまり、それだけ奥のある面白い工具であることに間違いはない。面取り装飾に注目すれば、単純なボーズ面に飽き足らない人は、「コロ付きギンナン面」等の段付き加工のビットで遊んでみると良い。フレーム系の作品や、天板装飾などでは、おしゃれな印象を醸し出す効果のある加工が実現する。また、常用するボーズ面用ビットでも、トリマーシュー(ベース部)の調整により、段をつけることが可能だ。これら段付き装飾時での注意事項は、その切れ味。単純なボーズ面であれば、多少のささくれは、サンドペーパーによる修正が容易だが、装飾系では難儀する。また、切削抵抗も大きいため、トリマー本体を進める速度は、一般のボーズ面より、やや遅めにするとことが大切である。

■リクエストシリーズ「スライドレールについて」 2004.7.21 (第219回)
今回からは、比較的質問の多い事項について、「リクエストシリーズ」として解説したい。手始めは「スライドレール」について。過去の講座でも触れているが、おさらいとして確認していただきたい。付加価値的な実用家具が多くなっている昨今、スライドレール仕様の作品は、その機能性に多くの注目を集める。キーボード棚をスライドさせるパソコンデスクや、レンジ台などが代表的。また、スムーズな出し入れを目的とした引出への利用など、その応用範囲は広い。取りつけが容易で、取り外しも可能なタイプが「ヨーロピアンスライドレール」。もっとも一般的に利用されるタイプだ。手軽で安価な反面、プラスチックローラーの磨耗や、稼動遊びもある。シビアなスライドを望む場合や、重量物への利用、使用頻度が極端に高いものには多少問題がある。レール長さに対して、実際に引出せる長さは「−100mm」という点に注意も必要。最もレールの短いタイプは300mmであるため、物理的に考えても、それ未満の奥行き作品に対しては使用出来ない。最長は500mm。そして、このヨーロピアンスライドレールの弱点を克服しているのが「ベアリング式スライドレール」だ。出し入れ時のブレや遊びもなく、耐荷重も大きい。多数の金属製ボールベアリングを使用しているため、磨耗にも強く、動きもなめらか。2段式スライドと3段式スライドがあり、前者はヨーロピアンと同じ「−100mm」の移動距離に対し、後者はレール収納時の長さと、出し入れ出来る長さがほぼ等しいため、取りつけられた「棚」や「引出」を、完全に引出せるという特徴がある。あえてベアリング式の欠点を言えば、その取り外しがやや困難なこと。ヨーロピアン式が、結構ラフな採寸でも稼動可能なのに対し、ベアリング式はシビアな設計採寸が必要になることにも注意が必要だ。

■リクエストシリーズ「丁番あれこれ」 2004.7.22 (第220回)
丁番についての講座は、過去いろんな点から解説をしてきたが、今回は総集編として重要な部分を列挙したい。文章的なつながりはないのであしからずお読みいただきたい。基本的に丁番は、ネジ3点止めのものより2点止めの方が、曲がり難く、取り付けやすい。付属ネジは、鋳物である場合が多く、締めすぎることで頭の付け根から破断しやすい。また、湿気による木材膨張により、ネジ頭が飛ぶ場合もある。一見左右対称に見える丁番も、取り付け方向がある。丁番軸に対し、組み込みの多い方が枠側で、少ない方が扉側になる。丁番取り付け位置は、そのバランスから、扉高さの上下それぞれ10分の1をあけるのが好ましい。よく、扉の高さが長いことで、丁番の耐荷重を気にする人もいるが、建具でも同様に、扉の大きさとは、すべてその「扉幅」で決まる。幅がさほど広くなければ、いかに高さのある扉でも、荷重的になんら考慮すべきところはない。つまり、吊元にかかる重量とは、高さよりも幅が影響する。一般に扉幅が350mmを超える場合は、丁番間隔を広げることで、 物理的な荷重限度を高めることが出来る。「丁番」対「枠」の隙間は、ハガキ1〜2枚程度あける。丁番付属のネジは、通常「+No.2」の十字頭だが、薄口丁番などでは、「+No.1」の十字が多い。そのため、使用するドライバーも、それに合わせたものを使用する。特に「+NO.1」のネジは、ドライバーの差し口が薄くもろいため、用心しないとなめてしまう(なめる=ネジ山が壊れてカラ回りすること)。丁番ネジの取り付けの際は、必ず「錐」や「目打ち」などで、しっかりと下穴をあけることで、曲がりを防げる。特に「節」にあたる場合は、2〜2.5mm程度のドリルビットを使い、しっかりとした下穴をあける。カントリー系家具の丁番は、「面付け」がほとんど(面付け=丁番を開いた状態で、正面から取り付ける方法)。装飾的意味合いも強いが、なにより、折込式より取り付けが容易なため。(折込式=ドアなどで行われる取付法。枠と扉の間に丁番を折り込んで取付けるため、外部に出るのは丁番の軸部分のみ。無機質な金属を隠すことと、扉を閉めた状態から丁番ネジを外せないという防犯的意味合いもある)さて、おさらいになったであろうか。(リクエストシリーズへの「リクエスト」募集中です!)

■リクエストシリーズ「ダボ仕上げ総集」 2004.7.23 (第221回)
「ダボ仕上げ」とは、ネジを使用した組み立ての際に行われる、ネジ頭を木栓によって隠す仕上げ法。その基本的な手順は、「8mm径、深さ5mmのダボ穴」をあけ、ネジ締め後、適当な長さに切った「8mm径の丸棒」に接着剤を塗布したものを打ちこみ、余分な部分をノコで切断し、表面をサンドペーパーで整えるというもの。「8mm径」が6mmでも10mmでもよく、ネジの頭が確実に入り込む太さであればかまわない。このやり方は、30年前の木工本や、試験問題にも記載されている、いわば杓子定規的方法で、実はこの通り行っている木工家は、山椒魚に近い。現在もっとも一般的なのは、当店が推奨している「事前カット法」、つまり、あらかじめダボ穴より若干短めに切断された木栓を用意する方法だ。これにより、余分な部分を切り落とす際での、ノコによる本体への擦り傷をなくすことが出来、研磨も容易になる。一般の丸棒だと、ラミン材などの、比較的硬質な素材のため、その切断や研磨に苦労するが、当方法では、柔らかい市販の木ダボを使用する。この木ダボの側面には「ボンド道」と呼ばれる、接着剤の食いつきを良くするためのキザミが引いてあるため、あえて「木殺し」(木材を叩いて圧縮させることで、後の復元作用により抜け難くすること)の必要もなく、接着剤の水分で膨張する特性も持つ。また最近では、「木栓ビット」という、板面から木栓を制作するための専用ビットも販売されている。着色時の吸い込みが激しい「木口」が正面となる「丸棒方式」や「木ダボ方式」にくらべ、家具本体の板面と同じ繊維方向となるため、違和感のない仕上がりとなる。当ビットの欠点は、早期で切れ味が鈍ること。

■リクエストシリーズ「木の表裏」 2004.7.24 (第222回)
無垢の木材には表裏がある。丸太の状態で言うと、年輪の中心に近い側を「木裏」と呼び、樹皮に近い側を「木表」という。「木口」を見ることによって、その弧を描いた年輪により、明らかに判別できるものを「板目板」と呼ぶ。年輪の中心から外側に向かって長手方向に製材されたものは、「木口」を見ても年輪の目が平行に刻まれている。これを「柾目板」と呼び、表裏のない板材として重宝される。なぜ重宝されるかというと、表裏のある「板目板」の場合、反りや狂いが必ずおこるが、「柾目板」ではそうした狂いが極少なためだ。よりナチュラルさを求めるカントリー系家具の場合、材表面に出る木目の美しさを好むため、木目の平行に走る「柾目板」は面白みのないものとされ、あえて狂いを承知で「板目板」を尊ぶ。「木裏側」より「木表側」の方が艶がありなめらかで、作品の表側に向けられるとされるが、カントリー系家具制作においては、むしろ、「木目の美しい側」「将来の反りの方向」等を考えて、表裏を選ぶとよい。反りの出方は、あらかじめ決まっている。「木口」で確認できる年輪の弧のラインが、直線になろうとする方向に反る。つまり、「木表側」で言えば、その両端が浮き上がるように反り、「木裏側」で言えば、中央が浮き上がるように反る。作品の「顔」とも言える「扉板」には、より良質とされる「木表」を外側に向けたくなるが、そうすると、扉の両端が浮き上がるように反りが発生するため、丁番によって固定されていない側が、大きく浮き上がるようになり、見た目でも使用上でも支障をきたす。そのため、扉板の場合は、木目の美しさに問題がなければ、「木裏」を表側にするのが好ましい。木目の好みにより、木表側を正面に選ぶ場合もあるが、その際は、将来の狂いをある程度納得の上とし、扉裏に「反り止め板」を渡す。ただしこれはあくまで「激しい狂いを止める」という補助的なものであり、完全に止めることは不可能だということも承知すること。特に「観音開き」(2枚扉)の場合、左右の扉は、必ず「木表・木裏」を統一する。なぜなら、閉めた状態での合わせ面に、反りによる大きな段差が想定されるからだ。

■知っておきたい木工用語シリーズ 序章 2004.7.25 (第223回)
私自身、知らず知らずのうちに、木工の専門用語を、注釈もなく偉そうに多用してしまっていることに気付き反省し、今回のテーマとした。木工用語などといっても、ようは勝手な「職人用語」であり、たくさん知っているからといって偉い訳でもないし、逆に用もないのに知りすぎている人ほど、鼻持ちならない口先三寸のオタクが多い。つまり己が技術と目的に見合った言葉さえマスターしていればよく、手の動かない用語など犬も食わない。こうした用語は、木工雑誌を紐解けば、50音順に国語辞典のごとく既述されているのだが、あまりに「知らなくて良い」役立たずが大半を占めるため、かえってやる気を損なう。しかも、どんな難解な書物を丸写ししたものか、まるで大工や家具職人を想定したような、しかも説明文そのものの単語の意味さえ索引したくなるようなものが多い。最近ではありがたいことに、色んな編集部で私の解説を誌面上に取り上げていただき、ずいぶんとビギナー向けの分かりやすい説明がされ始めていると感じる。そこで今回のシリーズでは、あえて「手作りカントリー木工」に必要と思われる用語を、私なりに抜粋し、出来るだけ具体的に解説していきたいと思う。明日より本編に入る。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その1」 2004.7.26 (第224回)
(昨日より続き)こうした用語の説明にあたり、50音順に並べても芸がないので、作品の制作順を想定したもので追っていく。私の場合、専門書を紐解いたり、引用したり、丸写ししたりする時間と才能はないので、あえて自分なりの解釈が加わっている。そのため、どこぞで正しいとされる意味解釈を学ばれた方にとっては、「教えられたことと違う」という部分があるかもしれないが、そもそも正式回答などない職人用語からうまれたものであるため、抗議や挑戦の類はご遠慮頂きたい。なお、このシリーズは、今までにない長丁場となる。
「木取り」=木材から各部材を切り出すこと。当然、図面もなく、いきなり木材から切り出す人はいないと思う。そのため、あらかじめ既成の板から、どのような配置で効率よく各部材を切り出すのかを書いた図面を「木取り図」と言う。この図面は、まさに制作における大元となるもので、後々同じ物を制作する場合必要となるし、また、材料代の算出にも必要となるので、正確なものにしたい。
「墨付け」=木材に、カットするラインや穴あけ位置、他の部材との接合位置などの線や印を付ける作業。昔は墨壷という道具を使っていたため(今でもあるが)、こうした呼び名になっている。「シラカギ」や「ケヒキ」などという、傷を付けて墨付けを行う道具もあるが、カントリー木工作においては、自由曲線の多用もあるので、書いても消せる鉛筆によるものが好ましい。
「木口」(こぐち)=木目と直行した切り口側を言う。市販の木材の木口は、必ずしも直角に切られているとは限らず、また運搬や、立てかけの陳列の際に痛んでいる場合が多いため、そのままの状態で木口を利用してはいけない。また木口は、木材の繊維(導管)を輪切りにした状態なので、塗装の際の吸い込みが多く、有色の場合、他の部分より黒ずんで着色される。
「木端」(こば)=木目方向の切り口側を言う。一般に既成木材の長い側の方向。木口ほどに痛んでいることはまれだが、反りや歪みによって直線が出ていない場合もある。よく職人が、木材を目元に寄せてライフルを覗くしぐさは、この木端の直線の出を見ているもの。切り口をそのまま作品に使用しても差し支えないが、角の痛みが影響するような部材には注意が必要。また、抜け落ちそうな「節」にあたっている場合でも同様に注意する。
「面取り」(めんとり)=面とは、板の平らな表面を指すが、この表面を取ることではなく、その角を削ることを言う。トリマーやヤスリなどで行う作業。糸のように鋭いため、この角のことを「糸面」とも言い、木端同士を貼り合わせて大きな板を作る場合などは、この鋭い切り口がないと、くぼみが出来てしまうため、「糸面を出す」などと表現する。
(明日へ続く)

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その2」 2004.7.27 (第225回)
(昨日より続き)
「下穴」(したあな)=案内穴とも言う。板材に釘やネジを直接打つと、木材にヒビ割れがおきたり、曲がって打ちこまれたりする失敗を防ぐため、あらかじめあける貫通穴を言う。年代を感じさせるような木工書の類には「錐」を使うよう説明されているが、それはまるで縄文人の火起こしを思わせる。現代では、電動のドリルやボール盤に、ネジ釘の同径、または若干細めのドリルビットを装着して行うのが通例。当然のこと、この下穴は、打ちこまれる「手前」の板材のみにあける。「奥側」の板まで貫通穴をあけてしまうと、ネジ釘が効かなくなり、意味をなさないので注意。一般的には、組み立て前のパーツ状態で、すべての下穴あけを完了すること。
「ダボ穴」=本来は、木材同士を接合する場合に使用する木片(木ダボ)のための穴を言う。カントリー系木工作では、ネジを使用した組み立ての際に、その頭を隠すための技法を「ダボ仕上げ」と呼び、正式には「丸棒」を打ちこむことで行うもの。「木栓仕上げ」とも言う。このダボ穴は、使用するネジの頭を隠すもののため、それに使用するダボ(丸棒・木栓)は、当然のこと、ネジの頭より太いものとなる。一般的には8mm径が多用されている。深さは4〜5mm程度であるが、それほどシビアなものである必要はない。電動ドリルで行う場合は、ダボ用ビットにテープを巻くなどして、その深さの目安にすると良い。深度が設定出来る「ドリルスタンド」や「ボール盤」を使用すれば、深さやブレによる失敗も少ない。
(明日へ続く)

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その3」 2004.7.28 (第226回)
(昨日より続き)
「無垢材」(むくざい)=人工的な貼り合わせをしていない木材のこと。一般には板材を指し「一枚板」とも表現する。板幅が広ければ広いほど、それだけ太い材木が必要となるため、集成材と比べ割高。貼り合わせがない分、自然な印象を与える作品の材料として用いられるが、集成材に比べ、反りやひび割れ、狂いなどが多く、やはり「自然」な現象に対して理解が必要となる。
「集成材」(しゅうせいざい)=幅の小さな小片を貼り合わせることで幅をもたせた板材。無垢材のように、必要幅の材木は必要ないため、比較的安価で販売される。反りや歪みが少なく、また強度もある。一方、貼り合わせ部分の印象から、ナチュラルさを損なうという見方もあり、特にカントリー系作品においては、敬遠される帰来がある。しかしながら、あらゆる「現代の利器」である各種電動工具を駆使して作品制作することを考えるに、見た目のみにナチュラルさを求め満足するというこだわり方は、個人的に賛成しない。見た目も大切だが、不具合なく実用されてこそ、永く愛用できるもの。集成材を嫌う人ほど、ひび割れや狂いを許せないという矛盾が多く見られるもの事実。
「パイン材」=カタカナ名だと好印象のようだが、つまり「松」のこと。一般には安価な輸入材に対し呼称される。日本名で「赤松」というと、思いっきり和風だが、「レッドパイン」というと、なんだか具合が良いらしい。松科の木材の呼称であるため、実際にはその産地によっても異なった名称となる。ブランド的には「ポンデロッサパイン材」が良しとされ、他にも「ロッジポール」「メルクシ」「ラジアタ」などなど、たくさんある。人の顔をみても出身地はわからぬように、一般にその道を極めた人以外、ほとんど見分けはつかないのが事実。松科の板材は、くせのある独特の木目や節、ひび割れ、反りなど、本来は家具用材として不向きといえるが、安価なことと、比較的容易に手に入るという環境の中から、手作りカントリー家具の材料として重宝されてきたもの。つまり、この樹木に対し、将来に渡り寸分違わぬ精密度を求める人は、「三保の松原」を観光してみると、たいへん勉強になる。
(明日へ続く)


■知っておきたい木工用語シリーズ 「その4」 2004.7.29 (第227回)
(昨日より続き)
「矧ぎ」(はぎ)=2枚の板を貼り合わせること。張り合わせ方によって、いろんな呼び方がある。カントリー木工で行われるものには、何の加工もせず接着剤で貼り合わせる「いも矧ぎ」や、互いを欠いて合わせる「相欠き矧ぎ」、木ダボをかませる「ダボ矧ぎ」、また舶来では、ビスケット型の木片をかませる「ビスケットジョイント」などが代表的。これら「矧ぎ」は、既成サイズの板幅を超える作品の場合、必ず行われる作業なので、ぜひマスターして欲しい。まさに作品の幅が広がる。
「ハタガネ」=前述の「矧ぎ」の際に、材同士を接着固定させるための圧着工具。基本的には3本で1セットと考え、材に対して表裏交互にセットし圧着する。正しい接着は、この圧着の良し悪しで決まる。「矧ぎ」と「ハタガネ」は必ずセットで考える。直接圧着すると、材にヘコミがついてしまうので、必ず不要な板等をかませて行うこと。価格は少々高いが、いろんな長さのものが販売されている。自作する木工家も多い。
「面イチ」(ツライチ)=段差がなくフラットなこと。代表的職人用語。指先で触って確認することから、「さすり」とも言う。逆に段差が出てしまうことを「目違い」と言う。まさに「面イチ」という言葉は、木工を行う上での「正確さ」を表現する基本用語とも言える。
「ビット」=木工では、主に取り替え可能な電動工具の先端部を指す。ドリルドライバーでは、ネジ回しのための先端部を「ドライバービット」と呼び、また穴あけ用のものを「ドリルビット」呼ぶ。トリマーでは、その名の通り「トリマービット」。逆に鋸刃や刃物は「ブレード」という。「ジグソーブレード」などがそれだ。基本的にこれら「ビット」「ブレード」は消耗品であり、様々なサイズ・形状・用途が用意されている。ちなみにこれら先端部がないと、いかに高価な工具でも、またいかに優秀な腕前があっても、まったく用をなさない。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その5」 2004.7.30 (第228回)
「長手・妻手」(ながて・つまて)=角度をなす2辺において、その長い側を「長手」と呼び、短い側を「妻手」と言う。例えば「さしがね」(直角の定規)は、長い側と短い側があるが、同様に「長手・妻手」の呼び名を使う。板材などでも、長い辺の側を「長手方向」などと表現する。家具制作には関係ないが、屋根形状にも「切妻」という名称もある。主役である「長手」を支える役割として、夫婦関係でいう「妻」という言葉を利用したものかどうかは良く知らないが、少なくとも現代のそれには当てはまらない。
「継ぎ」(つぎ)=幅を確保するために、2枚の板を貼り合わせることを「矧ぎ」と呼ぶことは先日説明したが、逆に、2枚の板を直角、もしくは角度を持って接合することを「継ぎ」という。何ら加工することなく、ネジや釘で打ちつけることを「平打ちつけ継ぎ」といい、木ダボを使って接合することを「ダボ継ぎ」、互いの材を差し込み式に加工して行うのを「ホゾ継ぎ」という。こうした「継ぎ」や「矧ぎ」には、その加工形状や方法によって無数の呼び名があり、高度な技術をようするものが多い。したがって、はまり過ぎると、芸術的世界に迷い込んでしまい、本来の目的を見失う場合が多い。昔はそうした仲間内が比較的多かったため、互いに己が技術を披露しあえ、満足を得られたものであるが、現在それをすると、大変浮いてしまい、「だからどうしたの?」ということになり、自然と陰湿的にオタク化する傾向が強い。木工界は、とうに合理化されている。
「逆目」(さかめ)=板面の切削方向に対し、木目が下向きになっていること。分かりやすくいうと、なでればトゲが刺さる方向。もっと分かりやすく言えば、猫や犬を、お尻から頭方向になでること。つまり毛並みを逆になでると、毛が逆立つ。木工では、主にカンナがけの際に意識される言葉。逆目方向にカンナをかけると、木目が逆立ち、綺麗に削れない。正しい方向、つまりトゲの刺さらない方向を「順目」(ならいめ)という。「さか撫で」という言葉があるように、人の性格や機嫌、行動にも「順目」「逆目」があるらしい。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その6」 2004.7.31 (第229回)
「縦挽き・横挽き」(たてびき・よこびき)=のこぎりで木材を切る方向の意。「縦挽き」とは、木目方向(繊維方向)に切ることで、「横挽き」はそれと直行する方向。本来のこぎりの刃は、「縦挽き」か「横挽き」かによって、その形状が異なる。「縦挽き」では繊維にそって切り進むため、比較的目が粗く、「横挽き」は細かな繊維を断ち切りながらきり進むために、目が細かい。よく大工が使う「両刃ノコ」という、両側にノコ刃の付いたのこぎりがある。両側が同じ刃になっているのではなく、この「縦挽き用」と「横挽き用」に分かれているものだ。とはいうものの、現在では刃物構造も進化し、ほとんどが「縦横兼用型」のノコが主流となっており、「両刃ノコ」はあまりみかけなくなった。繊維が柔らかく、油身の少ない木材(杉材他)は別として、パイン材などの切断では、横挽きより縦挽きの方が抵抗が大きく切りづらい。基本的に木材の硬さを構成しているのは「木目」(繊維)である。そしてこの繊維と繊維の間にある部分は比較的柔らかい。そのため、繊維と同方向に切り進む「縦挽き」の場合、柔らかい中間部となる場合もあるが、ほとんどの場合、この硬い部分の上を進むこととなるので、切削抵抗が大きい。一方「横挽き」の場合は、一本一本の繊維を切断しながら切り進むため、硬い木目とはいうものの、それは瞬間的な連続動作であり、硬い繊維と柔らかい中間部を交互に切断していくために、縦挽きに比べ一定した切断速度により、縦挽きに比べ格段に切りやすく感じる。こうした木材の繊維構造は、細いパイプを束ねたものと想像すれば理解しやすいと思う。ただ誤解してならないのは、これはあくまでノコを使った場合の切断抵抗であり、「ナタ」で割る場合や、「蹴り」や「空手」で割って見せる場合とは意味が異なるので念の為。割れはあくまで繊維方向に対してもろい。