著作:アーリーハッチ 著者: 社団法人 日本DIY協会認定 DIYアドバイザー 首藤浩昭  著作開始日 2003.12.16

著作掲載対象:アーリーハッチホームページ http://www.hatchan.com/subtop.htm

2003.12掲載分 2004.1掲載分  2004.2掲載分  2004.3掲載分  2004.4掲載分   2004.5掲載分  2004.6掲載分  2004.7掲載分  2004.8掲載分(本ページ)  2004.9掲載分  2004.10掲載分  2004.11掲載分  2004.12掲載分


■知っておきたい木工用語シリーズ 「その7」 2004.8.1 (第230回)
「オイルフィニッシュ」=塗装法のひとつ。カントリー系家具に好まれる仕上げ。浸透性のため木材内部で凝固し、半永久的に木材を内部より保護する効果がある。表面に塗幕を形成しないため、木材本来の手触り感を損なわずウエットな仕上がりとなる。ただし、表面を樹脂コーティングする他の塗装法と異なり、木材の呼吸を維持させているため、湿度等の環境によって、木材の伸縮作用が起こる。色も豊富だが、木目や吸い込み具合により、白木状態に比べ、着色時の濃淡が強く表れるため、人工的な同一色調に慣らされた人の中には、こうしたナチュラルさを理解出来ない場合もある。この濃淡は、人工的なムラとは異なり、あくまで木材の持つ自然な許容性の表れであり、虚偽の仮面で装うことをたしなみと考える人間界からすれば、さらけ出すことの美しさを、醜さと誤解して疑わないのも致し方ない。とは言え、この絶対的人気度から、こうした仕上がりが、一時の安息を醸し出すものとして認められていることに間違いはない。自然回帰を求め感じる人間本来の姿に、もっとも合った仕上げであろう。
「オイルステイン」=前述オイルフィニッシュと混同される。「汚す」という意のステインから想像されると思うが、油性着色剤のこと。一般にオイルフィニッシュが植物系オイルを使用しているのに対し、オイルステインは合成樹脂を使用している。基本的に木材を保護する効果はない。そのため塗布後は表面にニスやラッカーなどを上塗りする。塗布直後は、オイルフィニッシュと見分けがつかないが、安価な反面、上塗りをしないと、極端な色抜けや木材自体の変形作用が抑えられない。有名メーカー品の中にも、このオイルステインにワックスを上塗りした製品が多く見られるが、木材保護効果を寿命の短いワックスのみに頼っているため、こまめなメンテナンスを怠ると、早期のムラや変形が現れる。
(明日に続く)

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その8」 2004.8.2 (第231回)
(昨日より関連)
「ニス」=木材表面に塗幕を形成し、木材を湿気や摩擦から保護する。主に「油性」と「水性」がある。「油性」はウレタンニスが代表的で、塗幕が固く、耐衝撃性や耐薬品性、耐熱性がある。「油性」は、石油系シンナーを溶剤としているため、作業時や乾燥時での匂いが強く、吸引による直接的な有害性はないものの、慣れない人には結構つらい。もちろん溶剤が揮発すれば匂いは残らない。一方耐候性に劣るとされてきた「水性」だが、現在では、油性に劣らない性能のものが多い。特徴としては、水を使用しているため溶剤臭がなく、手軽に塗れること。また厚塗りもでき、透明色のものは、乾燥後無色となる。というのは、油性ウレタン系のものは、透明色のものであっても「アメ色」(やや黄色味がある)となるが、水性系はそうした癖がない。「水性ウレタンニス」などは、特にお勧めだ。ただし、「とのこ」(目止め剤=木材の導管をふさぎ、フラットな状態にする。また塗料の吸い込みムラを防ぐ効果や、着色効果もあり、塗着効果を高めることが出来る)を使用する場合は、水性系の上塗りだと、その水分で「とのこ」を溶かしてしまう。もっとも、カントリー系家具では、とのこ自体は使用しないのが通例だ。「ニス」と「オイルフィニッシュ」は、一見まったく異なるものだが、「木材を保護する」という点で共通している。前者が木材を表面から保護するのに対し、後者は内部より保護する。相違では、前者は表面コーティングのため、木材の質感や手触りをなくし光沢を作るが、後者の場合は、内部凝固のため、表面はその質感を保つ。なお、質問の多いことだが、両者を併用することは、基本的に無意味。両者併用で保護効果を増すことは事実であるが、、表面コーティングの「ニス」は、その寿命により、剥がれ始めると薄汚くなるため、全剥離による再塗布、または継続的な塗布をすることとなるため、メンテナンス放棄による既存オイルフィニッシュに頼る意味はない。つまり、木材保護の観点からすれば、両者ともに、相いれない主役的存在なのだ。オイルフィニッシュの場合、表面コーティングはあくまで「湿気対策」における付加価値的目的とされ、その手段は、より手軽な作業となる「ワックス塗布」が用いられる。「ニス」が「表面を着飾ることに生きがいを感じる人」に対し、「オイルフィニッシュ」は「内面を磨き上げる人」ということで、おそらくポリシーとして、話しが合わない人同士ということになる。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その9」 2004.8.3 (第232回)
(昨日より関連)
「ラッカー」=木工系では上塗り用として「クリアラッカー」の呼称。光沢に優れ無色透明。塗幕が薄く、しかも抜群の強度を誇る。ただし、乾燥時間が極端に短いため、一般に家具類の塗装には、かなりの慣れがないと難しい。逆の意味、その仕上がり感が自然味を損なうとして、カントリー系家具類では敬遠される。また、ラッカーの名称でなくとも、溶剤に「ラッカーシンナー」を使用しているものは、やはり乾燥時間が短いので、特にハケ塗りは難しい。なぜかと言うと、通常塗料のハケ塗りの場合、初めは「配り塗り」と言われる荒塗りをして、次に「撫で塗り」、いわゆるハケ目を均す仕上げ塗りをする。簡単に言えば、最初は大雑把に塗り、その後再度表面のハケムラを均すように丁寧に仕上げるもの。ところが、ラッカー系の塗料は、大げさに言えば、塗ってるそばから乾いてしまうため、本来なら大雑把に塗るところを、最初からムラなく丁寧に一筋一筋塗らなくてはいけないのだ。ラッカー塗料の代表としては自動車類の塗装。エアーを使った吹き付けによる塗装が一般的。
「スプレー塗料」=ハケや塗料容器を必要とせず、またハケ塗りの際の「ハケムラ」もない。ペンキ類はもちろんのこと、ニスやラッカー類も、このスプレー式が販売されている。一見ハケ塗りよりも便利に見えるが、短所はたくさんある。まず「塗着効率」の低さ。つまり、ハケ塗りであれば塗料を無駄なく塗装(塗着効率100%)できるが、スプレー式では、噴射された塗料のうち、実際に対象物に着くのは約60%とされる。つまり、残りの40%は空気中に拡散されている。そのため、念入りな養生(塗料が付着すると困るところを被うこと)が必要となる。また塗り具合を手の感触でつかめるハケ塗りと異なり、スプレー式の場合は、一定した移動速度を保たないと、一点に集中してしまったり、薄い部分を補おうとするあまり、逆に噴きすぎてしまったりなど、いわゆる「噴きムラ」が起こる。ただ、速乾系(ラッカー・速乾ニス類)を塗布するものであれば、ハケムラがない分、逆にスプレー式が重宝される。もちろん、浸るくらいたっぷりとした塗装が必要な、浸透性塗料であるオイルフィニッシュやステイン類では、こうしたスプレー式はない。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その10」 2004.8.4 (第233回)
(昨日より関連)
「ワックス」=表面保護剤。元来ワックスは、光沢を出す目的で使用されていたが、現在ではその品質も改良され、「撥水効果」「傷防止効果」「下地保護効果」を付加したものが多い。加えて最近では色のついた「着色ワックス」も販売されている。基本的に「樹脂成分系」と「蝋成分系」に分かれ、前者は耐久性のある皮膜と光沢を特徴とし、主に「床用ワックス」などに代表される。後者は撥水性と手触り感を持ち味として、家具用に使用される。表面皮膜を形成し、下地を保護するという観点からは、既述の「ニス」類と似ているが、その考え方の違いとして、「ニス」そのものは、塗布された作品を含めて、ひとつの完成体として扱われ、「ワックス」は、その作品を使う人がメンテナンスとして使用するものとされる。簡単に言えば、「ニス塗り」は作品製造の一過程として行われるもので、「ワックス塗り」は、既にニス等の下地保護のための仕上げが施されている作品に対し、使用者の好みで塗るとされる。具体的な両者の違いは、その寿命にある。基本的に「ニス」の寿命は長く耐久性に富む。とはいうものの、その表面は、少しずつではあるが磨耗による目に見えない傷や、衝撃による傷、ヘコミ等、日々劣化が進む。つまり作品としての価値が下がってくる。それを防止、あるいはそうした劣化を遅らせる目的で、使用者本人がメンテナンスの目的としてワックス塗布を行う。ただし、ワックス自体の寿命は短く、使用環境にもよるが、せいぜい3カ月から6カ月程度とされる。こうした補助的役割である「ワックス」を、作品の製造過程で、白木状態(=何も塗っていない裸状態の木材)に直接塗布し、販売しているものも見うけられる。特に「着色ニス」の場合は、一見して下地に木材保護効果のある塗料を塗布しているかどうかが判別しにくい。木材保護の主役である「オイルフィニッシュ」や「ニス」類を使わずに、脇役のみで仕上げられた家具の末路は明らかだ。早期の色落ちや変色ムラ、歪み等に悩まされる。こうした「ニス」「オイルフィニッシュ」対、「ワックス」の役割の相違については、非常に分かりにくいかと思うが、愛車にワックスを塗る作業の意味を考えてみれば、多少は理解出来るのではないだろうか。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その11」 2004.8.5 (第234回)
「框」(かまち)=枠となる部材の名称。タンス類の部材に発す。枠組み構造となる「フレーム」類や「扉」で多く使われる名称だ。枠組み式の扉の場合、その枠内に入る板のことを「鏡板」と呼ぶ。これは、鏡家具が框によって枠組みされていることから、木材を使用した扉にも、同じ呼び方をしているものだ。枠の縦となる部材を「縦框」(または側框)、上のつなぎを「上框」、下のつなぎを「下框」と呼ぶ。框組みは本来、縦框(側框)にホゾ穴(凹)をあけ、つなぎとなる上框や下框の両端にホゾ(凸)加工を施したり、「トメ」と呼ばれる、4つの角を45度でつなぐ加工を基本とするが、より手軽に手作りを楽しむカントリー家具においては、主にビス止めによるものが主流となる。框組みの中に入る「鏡板」については、薄板の場合、框4辺の内側に溝を入れて差し込んだり、トリマーやルーターを使用して「欠き」を作ってはめこみ、裏側から止める方法や、枠内寸と同じ薄板を入れこみ、表裏から飾りモール(飾り彫りを施した細い角材)で挟み込む方法がある。また、枠組み式の扉等、框材と同じ厚さの鏡板の場合、框側にメスザネ、鏡板側にオスザネの加工を行い、無接着での遊びを作る工法が上級とされる。(「サネ加工」=2枚の板それぞれに凹凸の溝を作り.、はめ込み式にする加工)手作りカントリー木工では、単に枠の内寸に合った板を入れ、裏側から角材等でネジ止めする方式が多い。ビスケットジョイント方式も多用される。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その12」 2004.8.6 (第235回)
「アサリ」=シジミの仲間のことではない。ノコ刃を上から見たとき、交互に開いていること。このアサリの開きが大きいほど、「ノコ身」(ノコギリの平たい鉄板部)と木材の接触が少なくなるため、比較的楽でスピーディーにひけるが、アサリの少ないものと比べ、多少粗くなり、また「切りシロ」(切断時に切り屑となってなくなる部分)も大きい。精密な切断を目的として、あえてアサリをなくし、ノコ身を超薄にしたノコもある。話はノコびきに飛ぶが、ノコはひく時に切れるものであり、押すときには切れない。それを理解しているかどうかは、その人のノコびきの音を聞くと分かる。知らない人の音は「キゴキゴ」であり、知っている人は「シャッ、シャッ」となる。つまり、ひく時のみ勢いをつけ、押す動作は、単にひき始めに戻すようにする。「ギコギコ」の人は、ひく際にも押す際にも同じ力を入れているため、「
シャッ、シャッ」の人に比べ、倍の力を入れていることになる。また、ノコビキの際の力の入れ方についても、下方向に押しつけるような力は少なくてよい。ノコの自重のみでスムーズな切断が出来る。むしろ押しつける力が強いと、切れ味が鈍ったり、墨線通り切れなかったりする。頼るべきはノコ刃の切れ味のみであり、不器用な力加減ではないということだ。なお、金属を切るための「カナノコ」は、押すことによって切れる。これは、華麗な切れ味で余計な力を必要としない「木工ノコ」に対し、人の体重をノコに乗せ、押しつけることによって切断するためだ。つまり、体重をかけながら切るという動作を考えると、引く時よりも押す時の方が都合よい。そのため、刃の向きが、木工ノコとは逆になっており、またその作業姿勢も、両手でノコを押さえるようにする。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その13」 2004.8.7 (第236回)
「堅木」(かたぎ)=その道の人から見た「一般人」の意味ではない。読んで字の如く、堅い木のこと。木工では主に広葉樹を指す。木材には「広葉樹」と「針葉樹」がある。広葉樹は針葉樹に比べ成長が遅く、つまりじっくりと成長し、その構成組織は堅い繊維部分が大半を占める。逆に針葉樹は成長が早く、細身でまっすぐと伸びるため、建築構造用材として利用される。構成組織はというと、水分や養分を送るためのパイプ(仮道管という細胞組織の集合体)がほとんど。つまり中空のパイプを束ねたような組織であるため、柔らかく切断しやすい。広葉樹は、その複雑な内部組織により、それぞれ独特の木目や風合いがあるため、「銘木」(めいぼく)という、一種芸術作品素材的な扱いをされ、価格も高い。反面針葉樹の場合は、建築需要からくる植林での大量栽培により、広葉樹に比べ悲しいくらい安い。カントリー系家具類では、逆にそうした安価な点や、込み入った芸術性よりも安定した品質、そしてなにより簡単に手に入るといった利便性や加工の手軽さから、針葉樹が選ばれている。
「SPF」(スプルス・パイン・ファー)=最近は豚肉にもSPFというものがあるが、あれは「Specific Pathogen Free pig」という、なにやら優秀な豚だそうなので、当然木材のそれとは無関係である。木材のSPFとは、関係者から怒られるかもしれないが、おもいっきり簡単に言えば「安い松材」のこと。もう少し配慮して言えば「品質が安定した松材」のこと。身の危険を回避するために言えば「非常に優秀な松材」ということ。「スプルス」「パイン」「ファー」ともに松科の輸入木材。アメリカ北部・カナダ産が大半。その耐久性や安定品質、安定供給から、安価な建築用材として販売される。「スプルス」は白肌、「パイン」は赤系、「ファー」は赤黄白など多彩。この3種を総称してSPFという。主に「1x4」(ワンバイフォー:19x90mm)、「2x4」(ツーバイフォー:38x90mm)サイズを中心として、ツーバイフォー工法の構造材などに使用される。構造材としては問題ないが、割れや反りなどから、一般的に家具類への使用は不向きとされる。
(と言いながら、先日SPF材を使った作品を某誌で発表してしまったが・・・)

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その14」 2004.8.8 (第237回)
「プレーナー加工」=市販木材などで「プレーナー加工済み」という表示がされているものがある。「プレーナー」とは「カンナ」のことなので、つまり「カンナがかけてある」という意味。一般に伐採された原木は、野積みや水に浮かべたりして、樹液を放出させ、板状にひいたものを天然乾燥や人工乾燥させる。後に必要寸法に裁断される訳だが、これを「荒材」(粗材)と呼び、表面はざらつきがある。建築下地材や構造材などはこのまま使用できるのだが、目に触れる部分に使用する場合については、プレーナーをかけ、表面をつるつるに仕上げる必要がある。こうしたプレーナー加工されたものは、当然「荒材」に比べ手間の分だけ価格も高い。なお、プレーナー加工の有無については「無垢材」(一枚板や角材)に言えることで、「集成材」はすべてプレーナー加工されている。パイン材やSPF材は、ほとんどがプレーナー加工されたものとして販売されている。注意しなければならないことは、その表面の仕上がり状態。プレーナー加工時での刃物の切れ味によっては、筋が入っていたり、表面にカンナムラがあったりする。プレーナーをかける機械は、仕上がり寸法の厚みにゲージ(目盛)をセットして木材を通すため、当然プレーナー前の木材は、その仕上がり寸法厚より数ミリ厚いものでなければならないが、場合によっては、必要厚より薄いものがあり、それを機械にかけても素通りしてしまう。そうした木材はカンナがかかっていない荒材状態となる。いかんせん天然無垢材であるため、厚みのバランスが悪かったりすると、部分的にカンナのかかっていない薄い部分があったりするので、購入時には注意が必要だ。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その15」 2004.8.9 (第238回)
「下穴」(したあな)=木材に釘やネジを打つ前に、あらかしめあけておく貫通の穴。「案内穴」とも言う。この下穴をあける意味は2つある。ネジ釘を直接打つと、その分のスペースが、回りに押しやられることによって、木目にそってヒビ割れが起きてしまう。そのためあらかじめドリルや錐によって、空洞の穴を作っておくということ。もうひとつは、垂直な下穴によって、ネジ釘の曲がりを防ぐという効果。下穴なしで直接打つと、思わぬ方向に曲がってしまうことが多々ある。そのため、ボール盤やドリルスタンド等を使用して、垂直な下穴をあけることが望ましい。また、この下穴の太さは、必ず使用するネジや釘の太さ以下とすること。特に堅い木材の場合は同径が好ましく、比較的柔らかい木材については、細くても構わない。また、こうしたヒビ割れは、「木口」(既述済み)に近ければ近いほど起きやすく、「木端」(同)に対する位置関係には影響しない。
「釘シメ」=釘を打つ際での最後の仕上げ法。木材表面に釘やネジの頭が出っ張っていると、引っ掛けの恐れがある。装飾的な意味で、あえて出っ張りを作るネジ釘(丸頭の釘やナベネジ等)もあるが、通常は、木材表面とツライチ(=平らなこと)、または若干入り込ませる。ネジの場合であれば、ドライバーを回すことで締められるが、釘の場合は、カナヅチで叩くと、木材の表面に傷を付けてしまう。そのため同名の「釘シメ」(=ポンチ)という金属性の棒を釘の頭にあて、それを介してカナヅチで叩く。それにより、木材に傷を付けず綺麗に打ち込める。この「釘シメ」先端は、釘頭に合わせ平らになっているが、先端に突起となっているものを「センターポンチ」という。これは、釘頭の中央にくぼみのある「フロア釘」(フローリング材に使用する釘。カントリー小物家具等にも多用される)等に使用する。
既述関連補足「パイン材」=マツ科マツ属の総称。ポンデロッサパイン材、ラジアタパイン材、ヒメコマツ、クロマツ、アカマツなどがある。名称に「松」の文字があっても、マツ属に属さないものはパイン材とは呼称しない(ベイマツ・エゾマツ他)。また同様に、マツ科であっても、属が異なるものはパイン材とは呼ばない(スプルス・ベイツガ・サワラ他)。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その16」 2004.8.10 (第239回)
<図面編>
「木取図」(きどりず)=切断前の既成サイズの板材から、必要部材をどのような切り出し配置にするかを書いた図面。作品制作の準備として必ず必要なもの。方眼紙を使用する。いかに無駄なく切り出せるかが大きなポイントとなる。品質が全面的に安定した集成材の場合は、机上作図でなんら支障はないが、パイン材など、癖のある無垢材の場合、節の位置や木目具合など、板材の現物を確認しながら作図する必要がある。こと大型作品については、「いいとこ取り」(品質の良い部分のみ使用すること)の傾向が強い(作品に対する歪みや反りの影響が大きく出る)ため、必然的に集成材に比べコストも高くなる。
「正面図」(しょうめんず)、「側面図」(そくめんず)=デザイン・制作にかかわる本職は必ず書く図面。木取図よりも先攻する。その名の通り、作品を正面から見た場合と、側面から見た場合の図面。方眼紙に書くことによって、正確な作品バランスを確認でき、またそれぞれの部材の接合位置を数値で記入する。正面・側面以外にも、作品を上から見た「平面図」や、複雑な構造作品では「断面図」などもあるが、比較的構造がシンプルなカントリー家具系では必要ない。なお、正面・側面・平面の、3種図面を「三面図」とも言う。
「ラフスケッチ」=木工用語とは言えないが、すべての図面に優先する「描きもの」なので、あえて取り上げる。作りたい作品を、漠然とイメージのまま、自由に描いたものをいう。具体的数値や必要強度等の制限を一切考えず、楽しんで描くことがもっとも大切。方眼紙などは出来る限り使用しない。つまり、そうした各種制限とは、本当に欲しいものに対する妥協の連続に他ならず、最初に思い描いたイメージをイラスト化しておかないと、最終的に出来あがった作品が、まったく別物に遠のいてしまう結果となる場合がある。オーダー制作のプロに言わせれば、依頼顧客のもつ、数値や構造に影響されないイメージが具体化されたこうしたラフスケッチが、なにより貴重な制作資料となるそうだ。
「展開図」(てんかいず)=組みたて図ともいう。作品を立体的にばらした状態のイラスト図面。プロはあまり使用しない。自分で書くには、かなりの絵心が必要。各部材の位置関係が把握出来る長所があるため、初心者における制作時にはかなり有効な図面となる。
<図面の流れ>「ラフスケッチ」→「正面図」「側面図」→「木取図」

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その17」 2004.8.11 (第240回)
「治具」(じぐ)=連続した同じ作業、または同じものを加工する際に使用する補助用具。代表的なものに「テンプレート」(なぞることによって同じ加工作業が出来る、型の一種)などがある。職人用語で「仕掛け」とも言う。基本的括りとしては、「定規」「案内」「型」「位置決め」「固定」などに使用する道具類は、すべて治具となる。いかにこうした治具を効果的に使うかによって、作業能率は格段に上がる。多くの木工愛好家たちは、自分自身の作業に見合った治具類を自己制作している。冶具の使用は、その人の工夫と応用のあらわれとも言える。そのため、冶具制作そのものが、既に木工の世界の一部と言われている。つまり、木工という創造分野を楽しむにおいて、道具・用具・工具類は既成のものに甘んじるということ自体に抵抗を感じるのであろう。「作れるものならつくってやろう」という姿勢が、本来の目的である「作品制作」を越え、道具・用具作りにまで及ぶ。逆を言えば、自作の冶具を持たない人は、まだまだ木工愛好家とは言えない。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その18」 2004.8.12 (第241回)
「木殺し」(きごろし」=物騒な意味ではない。木材は、叩いて圧縮させることにより、その後短時間で元に戻ろうとする膨張効果があらわれる。この性質を利用し、「ホゾ」や「継ぎ」(いずれも解説済み)などの接合時に、その凸側をカナヅチ等で叩き、組み付ける。これにより接合部が密着するようになる。他にも木殺しをすることにより、ホゾ穴に入りやすくなり、またホゾが痩せてきてゆるくなるのを防ぐ効果もある。解りやすく言うと、ホゾ組みとは、もともと叩かなければ入らないくらいのきつさを必要とする。そこで凸側の出っ張り部分を叩いて圧縮させれば、入れ込む際に楽になる。しかも時間がたつと、叩いた部分が復元してくるので、本来のきつさが得られるというわけだ。なお、ホゾ組みの際、仕上がりに隙間が出来てしまったり、ゆるくなってしまうことを、職人用語で「ホゾが笑う」とか「胴付きが笑う」という。膝がガクガクすることを「膝が笑う」というのに等しい。また、この「木殺し」であるが、叩く以前から既にゆるい場合には効果を発揮しない。いずれにしても、組み手加工において、木殺しは基本中の基本。「木」が「人」に入れ替わると、重大な犯罪となるので注意。
「カネを出す」(かねをだす)=カツアゲの類や出費の意味ではない。職人用語で「カネ」とは直角のことで、つまり「直角にする」ということ。主に「正確な直角」を要求する場合に使われる言葉。大工作業中の見習いが、親方から「おいお前、カネが出てねーぞ!」と言われ、慌てて財布を取り出したという笑い話がある。「カネ」と「直角」が同意語となる由来は「サシガネ」(L字型の定規)から来ている。サシガネは「カネ尺」、または略して「カネ」とも言い、つまり金属で出来ている。直角の確認にも使用するため、いつからか知らないが、直角のことをカネと呼ぶようになったらしい。私も職業柄、財布に入らないほどの「カネ」をたくさん所有している。もちろんそれは「L字型」をしたカネではあるが・・・。また同じく職業柄、「カネを出す」ことは大得意であるが、なぜか「カネが入る」方は、さっぱりである。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その19」 2004.8.13 (第242回)
天板(てんばん)=「てんいた」とも読まれる。箱物で一番上に乗せられる状態で接合される板材のこと。基本的に、両側の板材に挟まれる状態で接合されるものは「棚板」(たないた)と呼び、それが一番上の板であっても天板とは言わない。一般にカントリー系家具の天板は、手前と左右を下部分より大きめにして、デザイン的バランスを醸し出す。つまり、テーブルの天板(トップという)と同じ理屈で、見た目の安定感もさることながら、面積を大きく取ることで、実用的な使い勝手も意識している。特に左右の出については、家具を部屋のイリスミ(入り込んだ角のこと)に置いた場合、壁面下の幅木(床と壁に接する部分にある、高さ10cm程度の渡し木)の厚みとイコールになるのが好ましく、それにより、本体は幅木にぴったりおさまり、天板は壁面に隙間なくおさまることになる。解りやすく言えば、天板に左右の出がない場合に、こうしたイリスミに家具を置くと、本体は幅木ぴったりに置けても、天板部分は幅木の厚み分だけ、壁面から離れてしまうことになるわけだ。逆に天板の出が大き過ぎると、天板を壁面に合わせても、本体部分と幅木との間があいてしまうことになる。こうした設置場所を意識したデザイン構造にも、製作者の熟練度があらわれる。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その20」 2004.8.14 (第243回)
「側板」(がわいた)=箱物でいう、両サイドの板材。下方向への荷重を支える重要な部材。木材強度を表す比強度(比重で強度を割った数値)では、繊維方向での圧縮の強さはコンクリートの9倍と言われる。比重が絡む強度値のため、つまり「軽くて丈夫」ということになる。側板が支える荷重は、一般に繊維方向を縦としているため、こうした抜群の強度を保持出来るわけだ。この側板には、基本的に他のすべての部材が接合されてくる。建築物にたとえれば、「柱」と同じ構造材である。
「底板」(そこいた)=箱物でいう、一番下に位置する棚板の意。床面に密着接する構造の場合では、「地板」(じいた)と呼び区別する場合もある。室内土足が一般的である欧米において、物を収納するための家具の底板というものは、あえて床面から充分距離をあけた「底上げ形状」のデザインが一般的。これにより掃除がしやすくなる。床面に「ほお擦り」さえする日本の生活様式に入り込んだこうしたカントリー系家具は、両様式を折半する形で、その底板を床面スレスレに位置する構造となった。地板形式である床面ぴったりとなっていない中途半端なデザインには、こうした経緯がある訳だ。そのため、逆に床板と底板のわずかな隙間のお陰で、ゴミやホコリが入り込むため、掃除が出来ないといった不便さも残している。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その21」 2004.8.15 (第244回)
「棚板」(たないた)=そのままの意であるが、構造材の観点からは、非常に重要な部材でもある。この棚板は、必ず「側板」と接合されることになる。棚板とは「柱」である側板をつなぐ構造材であり、全体荷重を支える側板の唯一の弱点となる「荷重負荷による左右への変形」(タイコとよばれる現象)をも抑える役割を果たす。つまり、収納物の都合により単純に位置決めされるだけのものではなく、場合によっては、収納目的から見て不要な場合でも、構造強度の面から棚板を必要とすることもある。時折、「雑誌収納用の大型キャビネットを作りたいが、内部をすべて稼動式の棚にできるか」との質問がある。稼動式の棚とは、つまり側板も含めどの部材にも接合されない、単なる「渡し木」であるため、全体強度には何ら役割を果たさない部材。しかも収納物は重量の大きいものであるため、明らかに「タイコ」状態や「左右への揺れ」が想像されるわけだ。こうした場合、やはり主要位置に、接合固定される棚板が必要となる。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その22」 2004.8.16 (第245回)
「枠材」(わくざい)=正面材ともいう。「天板」「側板」「棚板」「底板」(すべて既述)で構成された箱物に対し、その作品正面に配置される枠となる部材の総称。この枠材は、「上つなぎ」「たて枠(2本)」「下飾り」で構成され、内部が扉式となる場合には、「框」(かまち)(既述)とも呼ばれる。枠材を使用する意味は、それを取り付けない場合、作品の基本構造材である「側板」や「底板」などの木端が丸出しとなり、いたって貧弱なイメージとなるばかりか、丁番を取り付ける場合では、一般に木端の薄い厚みのみでは、その取り付けバランスにも苦慮することになる。つまり枠材を取り付けることによって、正面から見た場合での安定感を演出することが出来、また床面に接することになる「下飾り」には、曲線カットを施すなどして、デザイン演出が楽しめる。一般に、「たて枠」の幅を大きくすることによって、作品の安定感を増し、「下飾り」の高さにより重量感が出せると言われる。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その23」 2004.8.17 (第246回)
「中天板」(なかてんばん)=箱物最上部に位置する板材が「天板」であるのに対し、作品中段部に主要となる棚板を配している場合、その板材を「中天板」と呼ぶ。ライティングデスクや、上下一体型カップボードの扉上の板材などの構造がそれにあたる。つまり「天板」「中天板」ともに、その作品において、最も実用的に使用出来るスペースとして、配置バランスに留意すべき板材となる。
「上飾り板」(うえかざりいた)=据置き作品におけるシェルフ形式での、最上部背面に取り付けられる曲線カットを施した板材、または箱物作品における天板下前面に位置する同板材を言う。カントリー系を強調する作品の場合、いかにデザインカットされた装飾板が効果的に配置されているかがそのポイントとなるが、「下飾り」(既述)とともに、個性ある作品を演出するのが、この飾り板となる。また、作品中段部に位置する飾り板は、「中飾り板」(なかかざりいた)と総称する。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その24」 2004.8.18 (第247回)
「仕切板」(しきりいた)=箱物構造における基本的構造として、両側を支える「側板」、それをつなぐ「棚板」「底板」、上部より側板に対し接合される「天板」により構成されることは、これまでに解説してきた。これに対し付加される構造材として、上下棚板同士をつなぐ形で、縦方向に配置される板を「仕切板」という。作品全体への補強効果は薄いものの、幅のある作品における棚板のしなりを防ぐ目的や、実用面での使いやすさなどから、多くの作品に使用される。
「引出し用部材」=基本的に「引出し」は5つの材で構成される。正面に来る板を「前板」(まえいた)と呼び、後ろ側となる板を「向板」(むこういた)という。両サイドが「側板」(がわいた)で、ベニヤなどをはめ込みにした「底板」(そこいた)の、以上5つの材となる。「前板」と「側板」の接合部(ダボ処理部分等)を嫌う場合は、四方を組んだ後に、あらためて前板を重ねる方法もある。この場合は、内側となる前板側からネジ接合することによって、正面となる前板側に、ネジ痕を出さないようにする。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その25」 2004.8.19 (第248回)
「キャスター」=作品の床接地面に取り付けることにより、移動可能とする車輪。首振りをするタイプを「自在式」と言い、首振りしないものを「固定式」と言う。つまり前者が自動車で言うところの「前輪」と同じ動きをし、後者が「後輪」にあたる。主に4つをワンセットと考え、そのすべてを「自在式」にすることで、前後左右はもとより、複雑な移動配置が可能となる。また、すべてを「固定式」にすることにより、左右への振れがない一定方向での前後移動が出来る。また「2対2」の配置をすることにより、自動車と同様、安定した曲線移動が可能となる。販売品におけるその規格表示、また品番表示では、主に「車輪の直径」の数値を表しているものがほとんどであるが、これは使用する我々にとって、まったくもって意味のない数値であることに注意。数値として参考にしなければならないものは、車輪直径などではなく、キャスター全体の高さ、つまり「取り付け高さ」である。例えば、正面から作品を見た時に、キャスターを見えなくしたいと言った場合や、キャスターを含めた作品全体の高さを決める場合等に、キャスター自体の「取り付け高さ」がわからないと、作品自体の木取り寸法が定まらないためだ。信用あるメーカー品の場合、そのほとんどに「取り付け高さ」のデータが記載されているが、なかには不明なものも多いので注意。車輪の素材は「プラスチック製」や「ゴム製」などがあり、前者は硬質であるがゆえ、荷重による変形はない反面、床面への傷に注意が必要。また後者は、床面への傷はつかず、移動の際の音も静かという特徴はあるものの、長期での静止状態により、荷重による変形が起こり得ることに注意。比較的重量物を乗せ、しかも移動頻度の少ない場合については前者を、逆に軽いもので、移動頻度の高いものについては後者を使用するのが一般的となる。また、それぞれのキャスターには、「耐荷重」の品質表示がある。ただしこの数値は、あくまでキャスター自体の強度(主に車軸の破断限界強度)であるため、その数値内なら確実に稼動するというものではない。家具を移動させる際には、複雑な荷重が想定されることと、キャスターを取り付けるためのネジ等が適正なものであるかなど、いろんな要素が関わっている。例えばひとつのキャスターの耐荷重表示が30kgだからといって、4つ使用するから4倍の120kgでスムーズに稼動することを保証するものではないことに理解が必要。確実な取り付けが施され、静止状態であれば「耐120kg」となるが、それをスムーズに移動させるための目安は、一般に「1/4」(4分の1)=30kgであることを参考にしていただきたい。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その26」 2004.8.20 (第249回)
「サンドペーパー」=つまり「紙やすり」のことであるが、素材として3つに分類される。裏地が「紙」であるものを「紙やすり」と言い、通常木工に使用されるもの。価格も数十円と安く、指でちぎることも可能。すべてのサンドペーパーに言えることだが、切断にハサミを使用すると、ヤスリ部分により刃物を痛めてしまうので、定規などをあて、ヤスリを持ち上げるように切り取ることが基本。裏地が「布」になっているものを「布やすり」と言う。紙と違い丈夫なため、指でちぎることは難しい。金属系の研磨に向いている。価格は若干高め。研磨面が黒っぽい色をしているものを「耐水ペーパー」と言う。乾燥面にしか使用出来ない「紙やすり」と異なり、水分やオイルなどで塗れている面に使用することが出来るため、特にオイルフィニッシュ(既述)などでの塗幕研磨(次項解説)に使用される。
「塗幕研磨」(とまくけんま)=塗装した表面をなだらかにするためにヤスリ等で研磨することを言う。主にカントリー系作品では、オイルフィニッシュ時に行われる作業。木材は濡れることによって、その表面が毛羽立つという特性がある。そのため、オイルフィニッシュ時は、必要におうじて、オイルフィニッシュ後の表面が濡れている状態から、「耐水ペーパー」を使って、小さな円を描くように丹念に研磨する。それにより毛羽立ちが取れ、さらには研磨で落とされた木材粉がオイル成分と混じり合って、粘りを含んだ状態となり、木材の繊維間に入り込み、目止め効果をも発揮する。なお耐水ペーパーの番手は「#400」(数値が大きいほど、目が細かい)以上を使用する。また、ニスの重ね塗り時に行う、塗幕乾燥面への研磨も、同様に「塗幕研磨」という。この場合は通常の「紙やすり」を使用する。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その27」 2004.8.21 (第250回)
「捨て板」(すていた)=読んで字の如く、不用な板の意味であるが、木工では、加工する材を保護するため、または加工に伴う作業台や床などへの傷や破損を防ぐ目的で使用される板を指す。例えば、クランプやハタガネ等で木材を挟む際、それら工具を直接材にあてると、傷やへこみが付いてしまうため、不要な板材を挟み介すことによって、それを防ぐ。また、板材にドリル等で貫通穴をあけるといった場合も、その板材の下に不要な板材を敷くことによって、作業台を保護する。また、あまり知られていないが、熟練者の行う作業方法では、丸ノコで材をカットする際、刃の出を「板厚+1〜2mm」にセットし、カットライン下に捨て板を敷きカットすることによって、本来であれば作業台から逃がして行うところを、作業台の上で行うことが出来る。これにより、作業台から逃がして行う通常のカット方法では、カット終了時に端材が床に落下して傷が付いたり、端材が切り離れる直前に、その重みで必要な側の木材の端が剥ぎ取られるという悲しい結末が往々にして起こるが、そうしたことを防ぐことも出来る。なにより、死角となる材の裏側に、剥き出しの刃が回転していることで起きる不慮の事故を防ぐことが出来る。また塗装時などでも、こうした捨て板を工夫することにより、作業台や敷物の上にベタ置きすることなく塗装が出来る。つまり、木工に使用する木材というものは、組み立てに必要な木取り部材のみでなく、こうした捨て板もまた重要な役割を果たす。作品材料にならない端材だからといって、廃棄焼却してしまえばそれまでだが、それを生かす方法はいくらでもある。棄焼却してしまえばそれまでだが、それを生かす方法はいくらでもある。「リストラ」などと言う、くだらない言葉がもてはやされている昨今ではあるが、「物」でも「人」でも同じこと。「もったいない」のは、端材そのもののことではなく、生かし方を知らない人のことである。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その28」 2004.8.22 (第251回)
「棚ダボ」=「思わずラッキー!」という意味ではない。それは「棚ボタ」である。ダボとは本来「ダボつなぎ」(既述)と言う木材同士を継ぐ場合に使用する丸棒を指すが、この場合の「棚ダボ」は、可動式棚板を支え受けるための器具を言う。初期のころは、やはり木製の丸棒を側板内側より差し込むことで行っていたが、現在では多様な素材・形状のものが市販されている。簡易家具等で一般的なのが、金属製の指し込み式タイプ。差し込み位置の可変が楽という利点はあるが、強度面では難あり。推奨は金属製のねじ込みタイプ。ナットとなるメス側を側板に打ち込み、オス側をねじ込む。つまり数カ所の可変位置に、メスダボを打ち込んでおくことで、自由にオスダボを可変できるもの。ねじ込み式であるがゆえに、誤って抜け落ちる心配はない。メスダボの打ち込み方法は、例えば「9mm」(直径)という表示のものであれば、−0.5〜1mmの下穴を側板にあける。パイン材であれば、−1mmで8mm径のダボ用ビットであける。深さはメスダ実寸より1〜2mm程度深めにする。なぜなら、ちょっとでも浅いと、打ち込んだ際のメスダボが、側板と面イチ(ツライチ)(既述)にならず、出っ張ってしまうからだ。しかもいったん打ち込むと、抜くことが出来ないので注意。また、メスダボを打ち込む際は、なるべく少ない回数で叩き終えるようにする。通称「キツツキ」と呼ばれる、めったやたらと回数を叩く打ちかただと、メスダボの頭が変形し、オスダボがねじ込めなくなってしまう場合があるためだ。打ち込みのコツはこんしんの一発目。この最初の打ち込みにより、メスダボは側板に食いつく。あとは釘を打つ如くだ。キツツキの場合には、なかなかメスダボが食いつかず、最悪の場合は弾け飛ぶ。棚ダボには他に、プラスチック製や、スチール棚用などたくさんある。基本的に統一規格は存在しないので、オスダボ紛失の際は要注意。


■知っておきたい木工用語シリーズ 「その29」 2004.8.23 (第252回)
「アール」=木工では、木材の角を丸めること、または丸まっている状態を指す。トリマー等を使って行う「面取り」(既述)部とは区別するのが一般的。つまり、角を丸めるのが「R加工」で、辺を丸めるのが「面取り加工」となる。「R」は「Radius」(半径)の略で、例えば「R50」とは、木材の角から縦横それぞれ「50mm」のところから、その交点を出し、それを中心とした半径50mmの円を描く。そのラインをカットすれば、「R50」の丸みとなる訳だ。一般の手作り木工では、こうした数値によるアール指定はまずないと思うが、その意味だけは知っておく価値がある。こうしたR加工をする場合、コンパス等を使って行う人は非常にまめな人と言える。手っ取り早いのは、そのへんにある「丸いもの」を利用することだ。いちいちコンパスをいじるより、はるかに作業しやすく、なにより、具体的な丸みが描く前に一瞬にして確認できる。コンパスは支点に針を使用するため、木材に針痕がつく。Rのイメージが違っていた場合など、何度も描き直したりすると、針の痕だらけになったりする。アーリーハッチの制作図面では、こうした「R指示」には、「ステインのキャップ」だとか、「オイル缶の底」、「ガムテープの芯」と言った、具体的な「R代用品」の名前が書き込んである。ただし、同じ物をいくつも制作する場合、数値ではなくそうした代用品だと、その紛失時にはおおいに慌てる。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その30」 2004.8.24 (第253回)
「坊主面」(ぼうずめん)=お経をあげる人の顔ではない。木工用語では、比較的小さな面取りをすることを指す。旧来からカンナやヤスリで行ってきた作業であるが、現在では、トリマー等を使用して行うのが一般的。そのためのトリマービットも「ボーズ」という名称を使っている。このビットには、その丸みの度合い(R)により、3〜4種類ほど販売されている。カントリー系作品には欠かせない加工であるため、その使用頻度は高い。価格は2〜3千円と高額で、しかも砥ぎが出来ない消耗品であるため、ヘビーユーザーには頭の痛いところ。なお、種類があるからといって、複数を揃える必要はない。作品の統一感からも、こうした面取り用ビットは、1種類に限定したほうがよい。購入時には、加工見本等を参考にすることが肝要。また最近では、こうした機械による均一的な切削仕上がりを嫌う傾向があり、旧来のカンナやヤスリを使用しての、より自然な面取りが多くなってきている。そうした変化には個人的に賛成であるが、必ずしもすべての機械加工を否定する訳ではない。機械でなければ出来ない仕上がり感もまた、それを似せる手作業に比べれば、より自然であると言える。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その31」 2004.8.25 (第254回)
「倣い加工」(ならい加工)=型にそって切削する作業を言う。あらかじめ用意した型板を木材にあて、それに倣ってルーターやトリマーで切断作業をする場合に多く使われる言葉。「ルーターやトリマーで切断」というと、ピンとこない方も多いかと思うが、手作り先進国の欧米では、電動工具といえば、まず「ルーター」と言われるくらい、木工での使用頻度は高い。「ルーターやトリマーとは何をする道具」と聞けば、欧米では「木を切断するもの」と答え、日本では多分「面取りする道具」と答えるだろう。つまりは、数あるルータービットを駆使することにより、切断から溝彫り、面取り等々、あらゆる木工作業に応用出来る能力を兼ね備えているのが、こうした「ルーター」であり「トリマー」なわけだ。「倣い加工」の特徴は、型板にそって切削をすることから、同じラインデザインがいくつでも正確に切り出せるということ。しかもこうした電動工具は、ジグソー加工で見られるようなブレード(のこ刃)のズレや切断面の傾斜もつかず、確実に垂直カットが出切る。逆にいえば、都度同じものが出来ない自由な創造性を楽しむ人にとっては、嫌われる加工でもある。とはいうものの、組み手や継ぎ、剥ぎ加工等でも、こうした型板や治具、テンプレートを利用して、倣い加工が行われる。そうした自由曲線以外では、精度を求める意味からも、倣い加工は重要な作業のひとつだ。


■知っておきたい木工用語シリーズ 「その32」 2004.8.26 (第255回)
「W・D・H」=いまさらという方もいらっしゃるだろう。w=幅、d=奥行き、h=高さの略称である。「b・w・h」と似た感もあるので、何となく親しみ深い記号だ。基本的に完成作品の外寸を表す場合に使用される。外寸というのは、その作品のもっとも出っ張っている部分」を基準にしているので、時には誤解もあるようだ。さて問題は、この略称の並び順だ。当店作品でもそうだが、このアルファベットを省略しているケースが多い。例えば「w450 d280 h900」を「450x280x900」という具合に表す。その数字から、作品と見比べ、どれが幅だとか高さだとかを想像出来るものであればよいが、中には紛らわしいものもある。推奨配列は、まさに「w・d・h」なのだが、決して統一されたものではない。「bwh」のように、上から順番という類いのものではないため、略している身ではあるが、本来ならしっかり表示すべきであろうと反省する。なお、これに加え、厚みを表す「t」という記号もある。完成作品には使用しないが、板の厚みを表す場合等に使用する。また作図上の観点から、これら数値はすべて「mm単位」で表すことが望ましい。編集関係各位は、ぜひ統一して欲しい。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その33」 2004.8.27 (第256回)
「ハンガーボルト」=聞きなれない名称だが、洋服を掛けるハンガーの類ではない。主にテーブル脚の取り付けに使用するボルト。頭のない棒状のボルトで、片側半分が尖った木ネジ状で、もう半分がボルト状にネジが切ってある。脚取り付け時は、木ねじ形状側を脚にねじ込み、ボルト側が専用金具へナットで取り付けられる。このハンガーボルトは、木ネジ部をねじ込む際での引っ掛け部分(頭)が存在しないため、一見そのねじ込み方法に迷うことになる。その方法とは「ダブルナット」という方法で行う(次項解説)。ハンガーボルトの使用については、興味のない方も多いかと思うが、4脚式のテーブル制作には欠かせない工法となる。これをマスターしているかどうかで、木工レベルが格段に違ってくると言える。
「ダブルナット」=主に「ハンガーボルト」(前項解説)や、「全ネジ」(六角頭のないボルト)等のねじ込み時に行われる、締め込みのための工法。ボルトでも木ネジでもそうだが、それをねじ込むためには、ドライバーやレンチ、スパナといった締め付け工具が必要になる。同時にボルトやネジ側には、十字の切り込みや六角頭等がなければ、そうした工具が使用出来ないのはお分かりだろう。ハンガーボルトや全ネジには、こうした「頭」がない。そのため、そのままでは、締め付け工具が使用できないことになる。まさか手で回せる訳もない。そこで、この「ダブルナット」の工法が登場する。まずボルト部分(ハンガーボルトでは、木ネジ部でない側)に、同型のナット2個をはめ込み、レンチやスパナを使い、相互を引き合う方向(互いが逆方向に締め合う)で締め付ける。これにより、2個のナットが完全固定され、ボルトの頭のような状態となる。あとは、ボルトを締め込むのと同様に、レンチやスパナを使って、脚部等に締め込むことが可能となる。なお、この際、レンチを掛ける側は、2個のナットの「上側」となる。下側や、2個両方に掛けると、ハンガーボルトに対し、カラ回りしてしまうので注意。締め込み後は、2個のナットを締めつけた際とは逆の方向で互いを回し、ナットを取り外す。言葉で言うと難しそうだが、やって見ると意外に簡単なので、ぜひチャレンジして欲しい。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その34」 2004.8.28 (第257回)
「キックバック」=サッカー用語ではない。回転工具、主にノコ刃を使用する電動工具で起きる、跳ね返り現象を言う。例えば、丸ノコで木材を切断中に、ノコ刃が硬い節に当たったり、または何らかの現象で木材に食い付き、強い力でノコ刃の回転が押さえ込まれると、その反動で電動工具本体が強く押し返される。この現象により何が発生するかというと、モーター回転の反作用により、丸ノコ本体の手前側が浮き上がる状態となり、衝撃力が強い場合には、その反動で作業者の身体にノコ刃が当たり、大きな怪我をすることとなる。同様の事故で特に多いのは、チェーンソーによるもの。野外作業による足場の悪さも関係して、こうした事故は後を絶えない。そのため各電動工具メーカーともに、その構造的対策を行っている。丸ノコでは、トリガースイッチを離した瞬間に、ノコ刃の回転が瞬間的に止まる「ブレーキ式」や、切断時以外にはバネ式でノコ刃を隠す「ノコ刃カバー」を採用、チェーンソーでは、本体前方が跳ね上がった際、ガード型のブレーキスイッチが手首に当たり、回転が急止するものなど、その安全対策を施している。とは言え、すべては正しい使い方をしていると仮定した上でのものであり、安易な応用がたやすい電動工具においては、「まさか」と思われる使用法による事故が絶えない。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その35」 2004.8.29 (第258回)
「合板」(ごうばん)=「ベニヤ板」と言ったほうが馴染み深いだろう。その名前から、安物という印象もあるが、パイン材をメイン材料とするカントリー系家具制作においても、背板であるとか、引出しの底板等に必要となる重要な素材である。そうした家具部材としては、表面には見えない部分での、いわば裏方的な役割となるため、数ある合板の中でも、主に「ラワン合板」がその中心となる。合板とは、単板(たんぱん:超薄板状態に矧いだ木材)を、木目に対し直行させて奇数枚貼り合わせたものを言う。厚みの割りに強度があるのは、この直行による貼り合わせのためだ。よく空手か何かの腕自慢で、板材を蹴りや手刀で割って見せるシーンがあるが、板材は木目に沿っての強度に関しては著しく弱いため、多少の痛みを我慢すれば、子供でも出来る。これを木目を直行させて貼り合わせたものとなると、おそらく厚さがたった10mm程度でも、割ることは出来まい。ところで、合板規格では、その品質規定を「外気、及び湿潤露出に耐えうる接着性を有するもの」として、耐水性能を求めているため、その接着成分に、揮発性有機化合物を使用しているものが多かったが、ホルムアルデヒド等によるシックハウス症候群などが表面化し、現在では、アレルギー性のみとめられない接着成分を使用したものが大半となっている。なお価格は高いが、こうした合板の表裏に木肌のうつくしい「シナ材」の単板を貼った「シナ合板」も、カントリー系家具やトールペインティングの素材として多く使用されている。


■知っておきたい木工用語シリーズ 「その36」 2004.8.30 (第259回)
「幕板」(まくいた)=4脚式構造のテーブルや机の天板下で、脚を繋ぐように回された板を言う。一般に「幕板」を使用したテーブルの場合、その脚は、直接天板に固定されるのではなく、幕板に取り付けられたコーナー式の専用金具へ「ハンガーボルト」(既述)により接合される。また、この方式の構造的特徴として、脚部と幕板部の直線的なぶつかり部分が必要となるため、脚上部の幕板接触部分は「角」となる。つまり、すべてが丸棒状の脚は、基本的に取り付けが出来ないことになる。また、この幕板式構造の利点は、脚の取り外しが可能なこと。たとえば、生活シーンに合わせ、脚を短いものに取り替えたりすることが出来るわけだ。また、この幕板があることで「引出し」の取り付けが出来ることも特徴のひとつだ。
「袴板」(はかまいた)=箱物家具での床接地部に回された板材。曲線カットを施すことにより、カントリー系家具において多用されている。安定感のある印象を与えることが出来る。

■知っておきたい木工用語シリーズ 「その37」 2004.8.31 (第260回)
「玄能」(げんのう)=カナヅチと言ったほうが馴染み深い。正式名称は「両口玄能」。鉄で出来た筒状の頭と、木製の柄で構成される。また傷の付き難いプラスチック製など、その素材も多様化している。頭の平らな部分で釘を叩き、もう一方のややふくらみのある丸面(木殺し面と呼ぶ)を使い、釘を打ちしめることで、木面の打ち跡を防ぐ。実はこの玄能、本来は「ノミ」を叩く道具。平らな面でノミを叩き、丸面でホゾの木殺しなどをするためのもの。釘を叩くための「カナヅチ」は、正式名称「片口玄能」とよばれ、片方が尖った形状をしている。いつの頃からか、「両側で釘が叩ける」という、一種の誤解からか、釘打ち専用の片口玄能は影を潜め、両口玄能がその主流となった。さて、玄能での打ち方についてだが、その頭の重さを利用し、手首のスナップをきかせ、合わせて肘、肩を上手に使い打ち込むことになる。釘が斜めになったり、また折れ曲がったりすることへの恐怖から、玄能を短く持って、振り上げも小さくする光景を目にするが、逆にそうすることで、「打撃力が弱まる」「打ち込み回数が増える」「打ち下ろし方向が狂う」「垂直な振り下ろしが出来ない」という悪循環により、かえって失敗することになる。たしかに、細い釘頭を狙い、打ち間違えば作品に傷を付けてしまったり、手を叩いてしまったり、釘が折れ曲がったりする光景が頭をよぎりながら打ち下ろすことは、一種の度胸がいる。「この人は、木工に向いているかどうか」は、その釘打ちを一見すれば、すぐわかる。