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著作:アーリーハッチ 著者: 社団法人 日本DIY協会認定 DIYアドバイザー 首藤浩昭 著作開始日 2003.12.16
著作掲載対象:アーリーハッチホームページ http://www.hatchan.com/subtop.htm
2003.12掲載分 2004.1掲載分 2004.2掲載分 2004.3掲載分 2004.4掲載分 2004.5掲載分 2004.6掲載分 2004.7掲載分 2004.8掲載分 2004.9掲載分 2004.10掲載分(本ページ) 2004.11掲載分 2004.12掲載分
■続、オイル塗装について 2004.10.1 (第291回)
(昨日より続き)一般的に材質が堅いということは、その表面からの水分やオイルの浸透性は悪い。つまり、広葉樹を対象としてきたオイル仕上げは、比較的浅い浸透に留まるため、浸透硬化による材の保護というよりも、表層内や表面部に残った塗幕が硬化して、表面から保護していると言って良い。広葉樹におけるオイルフィニッシュは、どちらかというと、材の保護効果よりも、「材が濡れた時のような仕上がり」、つまりウエット的な印象効果を求めるものであるため、オイルの浸透具合はあまり意識されにくい。ところが、パイン材など「針葉樹」の構造は、仮導管と呼ばれる中空細胞が束ねられたような作りであるため、材質も柔らかく、同時に軽い。そのためご想像の通り、オイルの浸透は、広葉樹に比べ明らかに優れ、その分逆に、「ウエットな仕上がり感」というよりも、吸い込み過ぎて表層にあまり残らないため、乾燥後はカサついたイメージとなってしまう。現在オイルフィニッシュで人気の「ワトコオイル」などは、浸透性が良過ぎる代表。そのため、よりウエット感を出すためには、乾燥後に再塗布し、拭きあげるのが好ましい。つまり、最初に塗ったオイルが、材内部で凝固すれば、2回目以降の塗装分は浸透し難く、結果、比較的表層に残ることとなり、それを拭きあげることで、ウエット感と艶が生まれる。粘度がワトコオイルよりも堅く、浸透性が悪るそうに見える「ワシン社ウッドオイル」などは、1回の塗装でウエット感が出るようだ(筆者経験による独断)。つまり、針葉樹へのオイルフィニッシュは、元祖である広葉樹に比べ、ウエット感を求めるというよりも、浸透分による材の保護効果に優れると言って良い。逆の意味、広葉樹の表面仕上げを求めたオイルフィニッシュが、柔らかく割れやすく、しかも反りやすいという弱点を持つ針葉樹にもマッチしたと言ってよい。
■続・続、オイル塗装について 2004.10.2 (第292回)(あと74回)
冒頭をお借りして、本日より同講座終了までのカウントダウンを始めた。「1年間休ます講座を続ける」と勝手に約束して開始したこの講座。各項短い文章ではあるが、何事にものろまな私は、こんな文章でも1時間以上をようしている。有言実行を是としている関係上、自らにプレッシャーをかける意味もあり、残り回数を惜しみながら、今日も瞼をこすりつつキーボードと語る。さて、しつこいくらい「オイル塗装」についての解説を続けるが、オイルフィニッシュの効能として、「ウエットな仕上がり感」「内部よりの保護」「自然な艶」などが上げられるが、ニスやラッカー等の表面塗幕形成型塗料とは異なり、材表面での硬質なコーティングは行われないため、はっきり言って衝撃や傷には断然弱い。広葉樹を対象としか見ていなかった頃には、材自体に堅さがあったがために、そうしたことは、さほど関係なかったが、パイン材等の針葉樹を対象とした場合には、その柔らかさにより、表層よりのオイル凝固は、材そのものの自然変形を予防する程度の効果しか持たない。つまり、前項よりの説明と合わせれば、針葉樹の場合、吸い込み過ぎによる「ウエット感の欠如」、「艶の欠如」「表層での保護効果の欠如」という弱点が挙げられ、それを克服するためには、凝固後の再塗布や、ワックス塗布が必要となる。ただし、ワックス塗布に関して言えば、過去の講座でも解説のとおり、あきらかに不自然な手触り感(通称スケートリンク)と、その継続したメンテナンスの必要性から、個人的にはお勧めしない。とはいうものの、オイルフィニッシュの欠点でもある「水分への弱さ」から、テーブルや台所関係の作品では、コップ類の「輪染み」や「水滴」が、そのまま染みとなって一時的に残るため、長期的に見れば消え去るものではあるのだが、時間に余裕の少ない人や比較的思考サイクルの短い人(つまり短気なひと。あまり長生きを望まない人)の場合には、ただちにワックス塗布をお勧めする。(明日へさらに続く)
■続、続続、オイル塗装について 2004.10.3 (第293回)(あと73回)
「いい加減に終わりにしたらどうだ」という声が聞こえてきそうだが、言い残しては成仏できないので、徹底的に論説したい。昨日までの解説で、オイルフィニッシュのたどってきた歴史的経緯やその特徴、材質による効能の差異、効果的な塗布法などについてはご理解いただけたと思う。さて今回は、その色調について。オイルフィニッシュは、メーカー各社ともに、様々な色の種類がある。素材の色調をそのままに、ウエット感の維持を強調してきたものであるため、元来のクリアー(透明)から、現在ではより高価な広葉樹の仕上がり色に似せるために、あえて「広葉樹色」をラインナップしている。これを「擬似色」というが、なんであれ広葉樹ほどの木目の複雑さや種類のない、しかも材そのものの色合いが短調な針葉樹でのオイル塗装では、着色剤が配合されていないクリアーの場合、良く言えば軽く見え、悪く言えば安っぽく見えてしまう。当店利用者の選ぶ、その色調比率では、ミディアム系が80%、ダーク系が19%、ナチュラル(透明)系が1%程度となる。つまり、クリアー(透明)を選ぶ人は、100人のうち1人で、大多数がミディアム色を選んでいる。みな無意識のうちに選択しているが、実はれっきとした根拠がある。木材は、無塗装のままでも、時間とともにやけてくる。つまり白木状態のまま放置しておいても、次第にあめ色へと変わる。もちろん、今日明日という短時間ではなく、5年10年という年単位でいう時間の経過である。材内部の樹液成分が、徐々に表層へと浮き出すためと、大気に触れ光を浴びることで、徐々に変色していく。特に松系針葉樹では、この変色具合が、「ミディアム色」に近い。そのため、放っておいてもミディアム色になるところを、先回りしてオイル着色していることになる。逆にダーク色の場合では、さらに長期の時間経過(数十年)の時を経たものに近い色合いと言える。そしてナチュラル色(透明)の場合は、その時間経過による変色を、無着色の状態から体感出来るものと言えよう。広葉樹のもつ色調に似せるためという、動機が不純な発想も、実際には自然のもつ壮大なサイクルの中では、すべて包みこまれているといったところだろうか。
■ロングビットのすすめ 2004.10.4 (第294回)(あと72回)
この場合で言う「ロングビット」とは、ドライバードリルに装着するビット、つまり「ねじ回し」のこと。ドライバードリル本体を購入すると、必ずビットが付属品として同梱されているはず。ただしこれは、長さがせいぜい5cm程度の、短いノーマルタイプだ。当店木工教室でも、通常時はこの短いノーマルビットを使用している。さて「ロングビット」とは、長さが10cm以上もある、長いものを言う。一般的に考えれば、長さを必要とするビット使用時とは、例えばネジそのものが奥深いところにあって、短いビットでは届かない場合に使用する。また、ネジ位置のすぐ隣に「壁」が出来ていて、ドリルドライバーが垂直に立ちにくい場合、短いビットよりも長いビットの方が、垂直に近い角度を維持出来るという利点がある。そうした意味で、ロングビットの出番は結構多いのだが、実はそれ以上に、このロングビットの「使いやすさ」がある。それは、作業姿勢からくる「ドリル本体の垂直性の維持」ということ。材に対し、ドリル本来を垂直に構える姿勢というのは、プロであっても難しい。必ず人によって傾きの癖がある。なぜそんなに難しいかというと、人体的・神経的な平行水平感覚はもちろんだが、なにより、ドリルドライバー本体の形状にある。それが一本のまっすぐな棒状であれば、さほどではなかろうが、なにしろ、ふところにも収まりきれない、出来そこないの大型拳銃のような代物であるため、進行方向に対する垂直的照準は困難を極める。そこで登場が、この「ロングビット」となる。ライフル銃の照準精度が高いのは、その長い銃口であるように、ドリルドライバーの先端部に装着さえるビットを長くすることで、それが短い場合と比べ、確実に垂直度が実感しやすくなる。建築系の職人や、精密機械系の技師たちが使うドリルドライバーには、ほとんどと言ってよいほど、このロングビットが装着されている。「大は小を兼ねる」という利便性の意味もあろうが、間違いなく、短い場合より安定する。もちろんこうした事例は、工具の扱いに慣れた人が、さらなる効率性を求める場合に有効であるといえる。つまり、カナヅチの柄を短く持った方が打ちやすく、長く持つと、とんでもない所を打つのではないかと不安がる人と同様で、利き腕の手元から、対象となる先端部までの距離が長ければ長いほど、「不正確さ」への不安がつのるのが当たり前。これが払拭出来れば、一気に作業性が上達する訳だ。重心が高いほどに安定する理屈は、物理的にも「当たり前のこと」なのだが。なお、当店木工教室が、ノーマルタイプの短いビットを使用しているのは、あくまでビギナーを想定しているためである。慣れが必要な作業とは、実はそうでない人にとって、疲労度は数倍にもなるためだ。
■サンディングの重要性 2004.10.5 (第295回)(あと71回)
手作り木工では、材料の加工や組み立て、塗装といった完成までの工程をたどることが、何よりの面白さ。そうした中、意外と省かれてしまうのが「サンディング作業」、つまりヤスリがけだ。市販の木材は、プレーナー加工(カンナ掛け)済みであるため、その見た目からも、あらためて自分でサンディングする必要はないように思える。そこで今回は、このサンディングの意味を紹介したい。白木状態(無塗装状態のこと)の木材は、濡れると毛羽立つ習性がある。特に柔らかい木材(針葉樹等)ほど、その度合いが強い。プレーナー加工済みの木材とはいえ、その加工が行われてから、かなりの日数を経過しており、その表面には、目では確認し難い不純物が多く付着していたり、傷が付いていたりするもの。塗装前のサンディングには、そうしたものを取り除いたり修正したりする目的がある。そして同時に、「毛羽立ち予備軍」を、塗装直前に取り除く効果もある。また、塗装前の白木状態から「水拭き」をすることで、表面を毛羽立たせ、乾燥後にサンディングをする。こうすることで、塗料の吸い込み時に起きる毛羽立ちを、事前に取り除くと言った方法もある。ただしこの場合、木材によっては「水拭きによる染み」が残ることもあるため注意が必要。塗装前のサンディングが、いかに完璧であったとしても、やはり塗料の水分やオイル分の吸収による毛羽立ちは少なからず起こる。そのため、特にオイルフィニッシュでは、「ウエット研磨」が効果的。オイル塗装後、木材表面が濡れている状態のまま、耐水ペーパー(#400以上)で、細かな円を描くように、まんべんなく研磨することで、オイル成分と研磨された木材粉が合わさって粘りを持った状態となり、木材表面繊維内にすり込まれていく。これにより、毛羽立ちのない、つるっとした手触り感に仕上がる。このように、サンディングには、塗装前の作業と、塗装後の作業とがある。地味で時間と手間がかかる作業だけに、それを行うか否かにより、仕上がりに大きな差が出る。
■ホームセンターについて 2004.10.6 (第296回)(あと70回)
木工に必要な材料の購入先として、もっともその利用度の高いのはホームセンターであろう。日本で始めて本格的な大型ホームセンターを開いたのは、関東の「ドイト」であることは有名。本来ホームセンターとは、DIY(ドゥイットユアセルフ)の理念を基としたものであるが、ホームセンターとはいうものの、実際には「日用雑貨の量販」を主力とし、本来メイン商材であるべきDIY関連商品は申し訳程度という店舗も多々ある。DIYというからには、その品物選びは、まさに顧客自身が、必要と感じるものを、あれこれと購入する訳であって、つまりそうした商材を顧客ニーズに対応できる程の「充分な品揃え」が充実しているかどうかに店選びの基準がある。そうした意味、我々Diyerが満足できる、要望に耐えうるホームセンターというのは、実際のところ少ないのが実情。つまり「必要なものが手に入らない」ような店舗ではしょうがないし、逆に「必要でないものばかりが目立つ店舗」というのも、足が遠のく要因となる。木工に必要となる様々な部材というのは、ある程度決まっている。ちょっと遠出をしてでも、必要なものが不満なく手に入るような店舗というものを、自分なりに「お得意店舗」としてマークしている人がほとんどと思う。口に入ることで、一瞬にして消費される食材の購入と違い、物によっては何十年と使用出来る自作品。当然そうした部材は、つまらぬ価格差での天秤選択よりも、常に要望に応えてくれる、充実した品揃えが、その店舗選択の基準となろう。いつの間にか、こうしたホームセンターが「スーパー」に成り下がり、DIYに関する適切なアドバイス知識も持たず、いるのは商品補充のパート従業員ばかりという店舗は、いずれホームセンターではなく、本物の「スーパー」になろう。「自分自身でやろう」という顧客は、我流がゆえに、本当は専門家の知識を参考にしたいと考えている。顧客が求めるのは「商材」ばかりでなく、そうした「知識享受への要望」も同じだけ存在することを自覚して欲しいと願う。特に、来店客数の比較的少ない地方店舗には、強く要望したい。
■木取り設計における遊びについて 2004.10.7 (第297回)(あと69回)
いわゆる「食う・寝る・遊ぶ」の遊びではなく、この場合は「隙間」と「融通性」の意味。木取り設計での「隙間」が必要な部分は、「扉」対「扉枠」や、「引出し」対「引出し口」等が代表的。さらに「融通性」、つまり木材の伸縮特性を考える意味で、その接合方法として配慮しなければならない部分が、「テーブル天板」や「椅子座面」など。まず、「隙間」を確保する上で基準となるポイントは、想定される木材の伸縮方向と変形方向。伸縮は、ほとんどが繊維(木目)と直行する方向に対して起こり、変形(反り)は、木表側の両端がせりあがるように発生する(いずれも過去の講座で解説済み)。また、繊維直行方向の長さを一定とした場合、繊維方向の長さが短ければ短いほどに、その直行方向への伸縮度合いは大きくなる傾向がある。またパイン材等針葉樹系木材の場合、板目板より柾目板の方が、同方向への伸縮幅が大きい。そうした点を考慮し、隙間の確保を行うわけだが、その伸縮幅、180mm幅で2mm、230mm幅で3mm、280幅で4mm(扉の場合、背面への反り止め板なし。いずれも繊維直行方向)を目安として決定する。繊維方向への伸縮は「0」として考えて良く、開け閉めに支障のない隙間確保をすればよい。ただしこの場合、一枚板である「扉」は問題ないが、「引出し」の場合には、おもに繊維方向が横向きとなるため、縦方向の伸縮ばかりに目がいきがちであるが、伸縮のない横方向にも「木表・木裏」が影響する変形に注意が必要。つまり、「引出し側板」が、木裏を外側としてしまうと、正面から見た場合での「引出し側板」が太鼓状に変形し、結果隙間が小さくなる。この場合、一般には木表を外側に向けることで影響を防げる。さらに注意しなければならないのは、木取り切断時での天候。湿気を含んだ木材は、伸びた状態のため、この時点で寸法取りをすると、乾燥時には前述程度の縮みが起きる。木取り作業はあくまで乾燥状態であることが絶対条件となる。テーブル天板や座面などは、絶対寸法ではないため、その伸縮影響は受けにくい。ただし、それを接合する方法として、幕板や台輪に対し接着剤を使用すると、自由な伸縮の妨げとなる。つまり接着接合された部分は伸縮が出来ず、逆に接合面のない比較的広い部分で伸縮が起こることで歪みが発生し、割裂やうねりのもととなる。そのため、「面による接着接合」ではなく、ネジや金具を使用した「点による接合」が好ましい。本格木工では、継ぎ手構造(蟻溝)などを用いる。「遊びがなければ歪む」という原理。子を持つ親には、たいへん良く理解出来よう。
■道具の手入れについて 2004.10.8 (第298回)(あと68回)
刃物やビット類も含め、木工に使用する道具類は多い。道具とは、己が手先の延長であり、技術の一部と言える。そうした意味、道具を粗末に扱う人からは、決して良い作品は生まれないと言われる。さて、「刃物類」の手入れについてはご存知の通り、その天敵は「錆び」となり、比較的長期で使用しない場合は、防錆スプレー等による手入れが欠かせない。電動工具用のブレード類「ジグソー刃」「糸ノコ刃」「トリマービット」などは、その本体より外し、防錆の手入れをした後保管する。特にトリマービットやドリルビットは、木材の樹脂が粘りついている場合があるので、ペイント薄め液を使い、こそぎ落とすようにすると良い。電動工具本体では、そのコード類の収納にも気をくばる。一概に、束ねることが良しとは言えないのだが、無造作に絡まった状態で放置するよりは、きちんと束ねて収納すべきだ。充電式電動工具の場合、バッテリーが長期で未使用状態となると、充電能力が低下する場合がある。そのため、理想的には、残存電量を使いきり、バッテリーが空の状態で保管すると良い。同時に、バッテリーは水分に弱い。弱いというよりも、水分を含むと発火する場合もある。屋外放置する人はいないと思うが、知識として知っておいて欲しい。糸ノコ盤では、特にベース板下の切削屑を丹念に除去する。粉のようなものだからといって長期で放置すると、水分を吸収し、凝固して取れ難くなる場合もある。また、注油位置(通常2箇所)には必ずミシン油をさす。これを怠ると、いわゆるピストン動作部分に錆びが出て、駆動音の増大にもつながる。決して過去形ではならないのだが、手作業をよしとしたころの木工作の世界では、作品制作にかける時間と同じくらい、その道具の手入れにも時間をかけた。つまり、手入れそのものも、作品制作の一部と考えられたからだ。なぜなら道具は手先の一部だからである。より効率的で能率的な機械的道具が普及し始めると、手先の完成形である「道具」への認識が衰退し、指先とは無縁の、下手に丈夫な「機械」が台頭し、故に携え成長すべき思想と技術が低下した。「機械」が「道具」であることの証明は、まさに本人の手入れに表れる。
■ペットブームに思う 2004.10.9 (第299回)(あと67回)
折りからのペットブーム。アーリーハッチの木工教室でも、ペット用の作品を制作するお客様が増えている。「作品に使用する素材は、ペットがかじったりなめたりしても安全なものか」という問い合わせもある。根がひねくれている私は、「家具は食べ物ではありませんので」と言いたいところだが、そこは我慢して「大丈夫です」と答える。家具をまるごと平らげるような、食欲旺盛なペットの場合は別の問題が生じるだろうが、一般的には「無垢の木材」と「植物成分の塗料」を使用しているため、少なくとも床をなめるより安全だろう。そうした心配をする保護者が飼うペットは、ほぼ100%室内犬だ。雨がしのげる程度の、あばら家のような犬小屋で、それでも群れたる一家を守るべく、はちきれんばかりの鎖の張りの中、ワンワンと声高らかに、たくましい生活を送ってきた犬も、いつの間にか買主と同じ敷居を跨ぎ、なかには数着の服やアクセサリーまで所持しているものもいる。たいした出世と思う。そのうち、預貯金もするのではなかろうか。幸いにも、これまで当店で制作されたペット用家具で、食あたりになったとか、歯槽膿漏になったという話ないので、自身をもって説明できるが、パイン材はぶつけてもへこむくらい比較的やわらかな材質のため、そこいら中かじる癖のあるペットの場合にはあまり適さないとも言える。広葉樹系の堅木ならよさそうなものだが、今度は「歯が欠けた」というクレームもありそうなので(冗談ではなく、最近は育児同様、それほどエスカレートしている)、むしろ適当なのかも知れない。幼児用の木材玩具の素材として「ヒノキ」なども多いが、やはり柔らかい。さて、近頃発売50号を迎えた某カントリー雑誌に、「カントリーファンには、なぜか犬好きが多い」という内容のコーナーがあったが、出来ればその数値的根拠が知りたいものだ。ブームを意識するのも販売戦略上たいへん結構なことだが、犬嫌いのカントリーファンの立場がないし、猫の立場もない。大御所雑誌も、50回もやっていれば、軽くなるものと感想を持つ。こんなことを書いている私は、さぞ「犬嫌い」と思われるだろう。お察しの通り。今、我が傍らには、聡明で且つ容姿端麗、そこいらの洟垂れとは違う、出身地フランスの「ビションフリーゼ」、その名も愛犬「ラン女史」が、まだ書き終わらぬかとばかり、熱いまなざしを私に向けている。今日は台風で散歩にも行けぬが勘弁してくれ。
■連載300回を迎えて 2004.10.10 (第300回)(あと66回)
連載300回を勝手に祝いたい。さること300日前、つまり去年の12月16日より、思いつきの如く始めたこのワンポイント講座。木工木工とは言うものの、ビギナーにもわかりやすく、しかも正確であって、さらには教科書にはない裏業的なことまで教えてくれるような、いわゆる痒いところに手が届くアドバイスをしてくれるような読み物を探すうち、そんなものはどこにもないことに気付き、それなら自分で書こうということで始まった訳だ。木工を取り上げるカントリー雑誌もあるが、ビギナーがそれを見ながら同じように作品を完成できるような内容かというと、少なくともそうした雑誌は皆無だ。手作りカントリーをテーマに据える大御所「カントリークラフト」でさえ、遠く及ばない。誌面量の制限等、ネックとなる要素が多分にあるのは重々承知しているが、既売の自社誌面を参考にしながら次号の編集をしているようでは、成長は望めない。カスタマーサティスファクションの重要性は、一般小売店の方が、とっくの昔に気付き、その運営を認識し取り組んでいる。専門書たる出版各社は、売上低迷に苦しんでいると言われるが、周囲の媒体要素における構造環境の変化云々を説くよりも、顧客の求める内容が、いかに誌面に反映されているか、またそれを誘導出来るかについて、真剣に考えるべきであろう。個人的に言って「〇〇〇のカントリー」は2分あれば背表紙が閉じられ、「カントリー〇〇〇〇」は10分を要する。見方を変えれば、前者は眺めて終わり、後者は考えて読む。読者の求めるジャンルにもよるだろうが、相変わらず自我自賛の記事でページを割くような殿様意識は、オタク相手の水商売と同様だと、私自身反省する。さて、いよいよ約束の最終章まで、あと66回。なるべく過去の記述と重複しないよう努力しているが、これまでもずいぶんダブった。あと200くらいの候補はあるが、なるべく「読む人が求めるもの」をお届けしたい。本日この文章を読んだ方だけにお教えしよう。第1回目からの、このワンポイント講座を蓄積しているアドレスは http://www.hatchan.com/one-point.htm
である。知っているのは、アーリーハッチスタッフチームと、主要カントリー雑誌編集部のみだ。
■ドリルドライバー購入のポイント その1 2004.10.11 (第301回)(あと65回)
手作り木工に欠かせない電動工具類の中で、もっとも使用頻度が高く、また木工以外のあらゆる場面で重宝するのが「ドリルドライバー」だ。これから木工を始めたいとお考えの方は、まず最初に準備すべき工具となる。木工関連誌面上でも、何回か紹介してきたが、ここでおさらいしたい。購入の際一番のポイントとなるのは、その「パワー」となる。これを「締め付けトルク」で表すが、「異常に安い無名メーカー品」以外で言えば、その数値による比較はさほど必要ない。トルク数値よりも、バッテリーの「ボルト」で判断できる。一般的な家具制作などの木工作業や、ウッドデッキ制作等であえば、「9.6V」で充分なパワーを備えるが、この5〜6年、ビギナー向けの主流は、「12V」となっている。パワーに余力があるだけ、その応用範囲は広がると言える。また価格的にも、「12V」タイプの量産にシフトしているので、お買い得とも言える訳だ。さで国内電動工具メーカーでは、そのマーケットを「プロ用」と「ビギナー用」に分けている。そして同時に製品についても区分けされており、その違いは「価格」「性能」「耐久性」に表れる。中でも特に耐久性が重視されているが、「本物を選ぶ職人層の減少」や、「ビギナー向け製品の性能的充実」から、力の入れ具合が旧来とは逆転している。簡単に言えば、職人であっても、大衆受けする外見のデザインや、その価格の安さから、ハードな使用によるランニングコストをあまり考えない製品選びをする人が多く、差別化された2系統の開発体制よりも、ビギナー向け製品をベースに、プロ仕様にある程度耐えうる製品の開発をしている訳だ。余談だが、こうした「プロ用」と「ビギナー用」の製品は、ほとんどの有名メーカー各社とも、そのボディー色で色分けされている場合が多い。つまり、色を見ることで、プロ用かそうでないかが判別できるようになっている。また、おもしろい違いは「箱」にもある。「プロ用」は、飾りっ気のない簡素なボール箱で、「ビギナー用」は、やたら性能アピールや写真が印刷されていて、見た目がカラフル。話が飛んだが、次のポイントは「充電時間」。ビギナー向け製品では「30分充電」や「1時間充電」が主流。充電時間が短いものほど価格は高くなる。作業中にバッテリーが無くなれば、充電中は作業がストップすることになる。こうしたことから、予備バッテリーを同梱したタイプ(バッテリー2個付き)、または、別売でバッテリーを購入しておくことをお勧めする。価格差に表れる機能として見逃せないのが「無段変速機能」だ。ドリルドライバーには、基本的に「低速」「高速」の切り替えスイッチがある。「低速」はトルク(力)があり、主にネジを回す場合や、負荷のかかる穴あけ時に効果的で、「高速」は、一般的な穴あけ時に使用する。そこに追加される機能が、この「無段変速機能」で、車のアクセル同様、トリガースイッチの引き具合により、その速度が自在に変わるというもの。特に慎重さが要求されるネジ締め作業時には重宝する機能だ。価格的には5千円程度高い。家具作りなどでは、丁番のネジ締めなど、回転の勢いだけでは失敗する作業が多いため、「無段変速機能付き」は使いやすいと言える。(明日へ続く)
■ドリルドライバー購入のポイント その2 2004.10.12 (第302回)(あと64回)
(昨日より続き)ただし、あくまで「無段変速機能」は、付加価値的機能のひとつで、ある程度締め付け作業になれてくると、むしろ「おっかなびっくり」の無段変速よりも、一定速度での回転による動作の方が使いやすくなってくる。「高速・低速」の切り替えにしてもしかりで、よりスピーディな締め付け作業を求めると、構造部の締め付け作業でも「高速」のポジションが欠かせなくなる。ビギナー向け製品では、「予備バッテリー付き」が多く販売されている。車のバッテリーとは異なり、使えば使うほどに電力を消耗する。また、いったん満タンに充電されていれば、数日後に使用する際にも満タンであるかというとそうではない。いわゆる「放電」が行われる。バッテリーそのものには「寿命」があり、ビギナー向け製品で、約250回〜300回程度の充電を行うと寿命となる。この寿命とは、充電しても復活しない、あるいは短時間で消耗する、または弱弱しいほどの回転しか得られない、といった現象が起きる。私自身、販売代理商社や、販売代理小売店勤務の経験を持つが、どこから見てもバリバリの職人が「充電出来なくなったから不良品だ」と言って、あきらかに数百回は充電をして使い込んだと思われるバッテリーを持ってクレームを付けてくる場面に遭遇した。つまり「バッテリー」は確実な消耗品であり、まめに毎日充電を行う人の場合、そのバッテリーは1年と持たないことになる。さらには、その蓄積容量を完全消化しない状態での連続充電を行うと、バッテリー自身が、自分の容量を少なく認識してしまうという、厄介な現象もある。難しいことはさておき、バッテリー自身の長寿を期待する理想的な使い方とは、完全にその容量を使い果たすまで使用し、保存の際にはカラの状態として、使用を開始する際には充分な時間をかけ充電を行うことの繰り返しとなる。もちろんそうした使い方の出来る人は、よほどの暇つぶしで工具を使用しているような、うらやましい「DIYer」に限られるだろう。そうした意味、ある程度の犠牲は承知しながらも、そうしたバッテリー特性を認識した上での使用が求められることになる。バッテリーそのものの価格は比較的高額で、ビギナー向け製品で5千円程度から、プロ向けで1万円程度となる。ドリルドライバーが「バッテリー2個付き」で1万円を切るような製品もあるが、差し引きを考慮しても、いかなる部分でコストダウンをはかっているかということを考えると、おのずと価格帯で見る選択幅が決まってくるはずだ。「プロ用」と「ビギナー用」に区分けされた製品ラインナップについては昨日触れたが、その根本的概念の違いとして、プロ用であれば「仕事にならない」というクレームを第一に挙げる。つまり、故障や破損により操作不能になると、製品アフターはもとより、それにより生じた「作業遅れ」や中断」など、おまけとなって付随する支障が多過ぎるためだ。そのため、ある程度乱暴に扱っても損傷しない「外装ボディの材質強度」や「耐衝撃を考えた配線・回転パーツ構造」、「連続動作や消耗に対応した駆動系構造」、「充電時間の短いバッテリー」等があげられ、当然のことその価格も立派なものとなる。一方ビギナー向けの場合では、そうしたプロ用機種をベースとして、いかにコストダウンをはかり、より「目を引く製品」にできるかがポイントとなるわけで、幸いにも、故障がおきれば「仕事にならない」プロ用」と異なり、ある意味「趣味的道具」としての位置付けから、仮に故障しても、事前にその症状部分を予測していれば、迅速な対応をすることで対処できるとしているきらいがある。いわゆる「家電メーカー」の得意とする分野だ。外装ボディ強度は、扱いになれ作業を急ぐ職人層だと、平気で放り投げたりするが、ビギナーであれば、本体に傷が付かないよう丁寧に扱うことを想定する。(いいところだが、明日へ続ける)
■ドリルドライバー購入のポイント その3 2004.10.13 (第303回)(あと63回)
(昨日より続き)また、回転パーツ等駆動部分についても、その耐久性は、明らかにプロ用が勝っている。さらにこうした機械系工具に言えることには、「たまにしか使わない」場合に想定される不具合がある。つまり「錆び」や「グリス(潤滑)欠如」等による弊害だ。オーバーワークは別として、ある程度の頻度で使用し続けることで、その能力を発揮できるものだ。刃物工具と同様で、工具箱の中から数カ月に一度引っ張り出すような具合では、使わずとも見る見るうちに老いぼれる。必要性を感じて購入するからには、積極的な使用を望む。またそれが、工具自体の寿命を延ばすことともなる。さて、ドリルドライバーの消耗品としての「バッテリー」は一定回数充電を行うと寿命となることは説明済みだが、本体に付随する「ビット」類もまた消耗品といってよい。ドリルドライバーが、基本的にネジ締め作業が主な目的の「インパクトドライバー」と異なるのは、そのあらゆる応用性にある。ドリルチャックの無段な締め付け機能により、あらゆる径のものが装着出来る訳だが、ドライバービット以外の「穴あけ」に使用するビットは、基本的に「刃物」である。切れ味が落ちれば、その切り口は汚くなり、同時に簡単にあくはずのものが、なかなかあかなくなったりする。結果、それだけモーターに無駄な負荷をかけることになり、その分だけ寿命も短くなる。特に家具制作などでは、作品表面に表れる部分の仕上がりに差となって表れ、「丁寧か否か」で玄人か素人かの判別にもなる。またドライバービットにしてもしかりで、思ったよりも、その先端部の磨耗は激しい。ホームセンターや工具店で、ドライバービットの売り場を見ればわかるが、まったく同じドライバービットが数本パックとなって販売されていることからも、それだけ、磨耗による寿命が短いことがお分かりだろう。明日は、ドリルドライバーに装着する、いろんなビット類について紹介したい。
■ドリルドライバー用アクセサリーについて 2004.10.14 (第304回)(あと62回)
「ドリルドライバーがあると、いったいどんな作業が出来るのか?」「ドリルドライバーは買ったけれど、どんなビットを用意すれば良いのか?」。パソコンの世界と同様、「ハードとソフトの関係」として、「宝の持ち腐れ」になるか、あるいは効果的に活用できるかは、使う人本人にかかる。ご存知の通りドリルドライバーは、それだけあっても、何の役にも立たない。先端に「ビット」を取りつけることによって、始めて能力を発揮する。基本的作業能力は、その名の通り、穴をあけるための「ドリル」作業と、ネジを締めるための「ドライバー」作業となる。ドライバー用ビットについては、これまでにも幾度となく触れてきたので割愛する。さて、この「穴あけ」のためのビットは数多い。販売店の売り場で、もっとも種類の多いのが「鉄工用ドリルビット」だ。「自分は木材に穴をあけるのだから、鉄工用は関係ない」と思う方は間違い。鉄にあけられるということは、間違いなく木材にもあけられる。少なくとも、「6mm径未満」の穴であれば、木工であっても「鉄工用」を使用する。木工用のビットは、掘り進みながら、その切削屑をビットの回転の妨げにならないよう、入り口付近に押し上げる構造になっている。つまり、穴径が太ければ太いほど、その切削屑の量が多いため、木工用ビット特有の形状が効果的となるのだが、6mm未満の穴径の場合は、鉄工用ビットの構造(木工用ほどではないが、微量の切削屑を吸い上げる構造をもつ)で、充分まかなえる。そのため、主な木工用ビットは、6mm以上のサイズでラインナップされているケースが多い。(明日へ続く)
■ドリルドライバー用アクセサリーについて その2 2004.10.15 (第305回)(あと61回)
ドリルドライバーのドリルチャック部(ビットをくわえる部分)の最大径は、ほとんどの機種が「12mm」となっている。つまり、それ以上の太さの軸を持つビットは装着出来ない。誤解してならないのは、それはあくまで「軸」の太さであって、「穴の太さ」ではないということ。鉄工用ビットの場合、そのほとんどが、「穴の太さ」と「軸径」が同じになっている。つまり、ビットの根元から刃の先端まで、同じ太さと言うことだ。逆に木工用ビットの場合、「穴の太さ」にかかわらず、その軸は、おなじ「六角軸」になっているものがほとんどだ。鉄工用としての穴あけでは、大穴よりも、むしろ細穴が多い。逆に木工用の場合には、細穴よりも大穴が多い。木工での下穴あけでは、2〜3mm径程度の太さとなるため、迷わず「鉄工用」を使用する。さて、木工用ビットでは、その先端部の形状から、「先ネジタイプ」と「先三角タイプ」に分類される。「先ネジタイプ」とは、先端数ミリ部分がネジのような渦巻き状となっているため、それが誘導となり、かるく押し込む程度で、ぐいぐいと木材に入り込んでいくという特徴がある。貫通穴の場合にはとても作業しやすいが、反面、穴を途中で止めるような加工の場合には、その止め具合が非常に難しい。そのため、特に「ボール盤」(穴あけ用の据置工具)への使用は厳禁となる。「先三角タイプ」とは、その先端がネジ状ではなく、錐のように尖っているもの。回転を加えるだけで入り込んでいく「先ネジタイプ」と異なり、押し込む度合いによって掘り進むもの。つまり、回転を続けていても、押し込む力を加えなければ、先へは進まない。貫通をさせない止め穴加工に使用する。ダボ穴用として代表的だ。また「ボール盤」には、この「先三角タイプ」を使用することになる。通常のビットにはない、大きな円の穴あけ(くりぬき)に重宝なのが「自在錐」(円きりカッター)だ。くわえ軸に対し、横方向にバーが突き出ていて、その両端に刃が装着されている。刃の位置は移動できるようになっていて、好みの円が抜ける。一般のドリルビットほどの切削能力はない(薄板が主)が、木材表裏からの切削により、ある程度の厚みにも使用出来る。ただし、バーの両端2箇所の刃によって回転切削する構造のため、垂直が維持できないと上手に切れないので、慣れが必要となる。
■隙間収納家具について 2004.10.16 (第306回)(あと60回)
巷は収納ブーム。狭く小さい住環境に暮らす上で、市販の家具やら電化製品やらを並べ立てた結果、必需品の収納スペースが押しやられる。デットスペースはあるにはあるものの、狭く、しかも分散してしまっているケースがほとんどだろう。流行のリホームでは、壁の中やら椅子の下やらベットの下、はたまた廊下の下まで収納スペースがもてはやされている。納屋や倉を持っている人は別だが、狭小に暮らす身の上を自覚すれば、しまう場所を工夫する前に、持ち物を減らす努力をすべきだろう。本日はそんな否定的な話ではなかった。隙間を活かした収納家具は人気である。これこそ「自家製オリジナル」の原点であると思う。なぜなら、すべての家の「隙間」が同じ訳はなく、またその収納目的も異なるはず。既成の隙間家具を購入すれば、やはりそこには新たな「隙間」が発生する。「隙間に入れたものの隙間」ほど、悲しくそしてこっけいなものはない。そこで、我が家の隙間に合わせた自家製手作り家具へと発展する。何事も「ピッタリ」は気持ちいいものだ。隙間家具内部への棚位置についても、収納物に合わせ制作できる。狭小であるがこそ、無駄な隙間は見逃せないものだ。こうした隙間家具に有効なのが「キャスター」。隙間の多くは「間口が狭く、奥行きが深い」場合が多い。稼動の出来る隙間家具であれば、それを引出すことで、奥行き寸法となるサイドからの利用ができる。キャスター利用の際に注意すべき点は、「固定式」「自在式」の選択。固定式キャスターは、前後のみの平行的移動に適し、自在式キャスターは、自由な移動方向が確保出来る。「どうせなら自由な方向に動かせる自在式のほうがいい」という人もいると思うが、自在式の特性として、「平行移動時切り替えでの固定軸の回転による左右への振れ」がある。簡単に言えば、前進・後退をするような隙間利用の家具に取り付けた場合、その度にキャスターの付け根部分が180度反転し、家具が横ブレをする。言葉で言うと難しいので、どうかご家庭にあるキャスターで試してもらいたい。横ブレすることで支障がでるのは、「隙間にピッタリの家具」での場合である。もともと隙間なくぴったりだと、その横ブレが出来ず、結果キャスターの反転が中途半端状態で身動き不能となり、散歩の際にあらぬ方向に向かおうとする愛犬を引きずるがごとく、ちっともスムーズでない移動となる。元来隙間というからには間口の狭いものであるはずで、そこに収納される家具もおのずと薄いもの。あちこち連れ回すよりも、前後の引出しのみで有効活用することが無難といえる。また基本的にキャスター仕様の場合、4個で家具を支えることとなる。自在式キャスターの取り付けベースは、固定式キャスターに比べ大きい台座を持つ。そのため、支点は固定式キャスターに比べ、「家具中央によっている」ことにも注意が必要。例えば幅14cm程度の薄型家具に固定式キャスターを取り付けると、その接地支点の間隔は12cm程度(キャスターサイズにより異なる)。しかし自在式キャスターだと、これが10cm以下となる。つまり、限りなく倒れやすくなるということだ。そうしたことも考えに入れる必要がある。
■タイルの接着 2004.10.17 (第307回)(あと59回)
浴室のメンテナンスのことではなく、この場合、木製家具にワンポイントとしてタイルを貼りつけること。近年おしゃれなタイルが増え、水回り用としての目的以外にも、ダイニングテーブルの天板や、キャビネットの扉面など、木製家具への利用が目立つ。広範囲への防水目的とは異なり、その接着法は意外と簡単。ただ、それをやろうとしてホームセンターなどのタイル売り場で、タイル用の接着剤を探すと、案の定、浴室など比較的広範囲のための接着剤が主で、いったい何を買ったらよいか迷ってしまう方も多いようだ。一般にそうした浴室等の広範囲接着の場合は、そのほとんどが「水練りタイプ」で、壁面とタイル裏面の双方に塗り込み圧着するというもの。1枚や2枚のタイルをポイント的に貼りつけるために、わざわざそうした水練りタイプを使用する必要もないし、逆に調合具合や、はみ出しによる失敗、また、家具側が接着剤に含まれる水分を吸収することにより、無塗装の場合では、周辺への染みや灰汁などの問題で作業が難しいため、早まって購入しないこと。もっとも一般的な接着剤は、「酢ビ溶液系接着剤」で、メーカー品名をあげれば、「コンクリメント」や「コンクリボンド」などが代表的。水っぽくないので、液ダレすることもなく、タイル裏面の4〜5箇所に「点付け」(塗り広げるのではなく、数カ所に少々盛るように付ける)し、圧着して接着する。完全硬化は24時間程度なので、その間タイルの自重でずれてしまうと、曲がったまま貼りついてしまうため、寝かせておくか、またはテープなどで固定するのが無難。比較的少量での製品もあるので重宝。また、やたら強度と耐水性に富む、2種類を混ぜるタイプの「エポキシ系接着剤」では、硬化時間の短いものもあり、短気な人向きだ。この「エポキシ」は、2液(主剤と硬化剤)を混合することで硬化するものだが、その際へたをするとやけどするほど熱を発生させる。もちろん硬化反応を起こす時だけだが、何だか面白い。「酢ビ溶液系」には耐水性はないが、「エポキシ系」には完璧な耐水性があるので、浴室等のメンテナンス時にも利用出来る。なお「酢ビ溶液系」には、禁断の「トルエン」類の溶剤が含まれているものもあるので、おかしな意味で気持ち良くなりたい人以外は、その作業環境に注意すること。
■木工は難しくない! 2004.10.18 (第308回)(あと58回)
唐突なタイトルで我ながら躊躇している。年齢を重ねる毎に、最近どうも物思いにふけることが多くなった。また時折、何を考えるために思いふけっていたかを思い出すために、物思いをするようにもなった。なにげなく開いた4〜5年前の某木工雑誌に、私のインタビュー記事が載っており、そこには「木工は決して難しいものではないということを伝えたいから木工教室を始めた」」という風な内容が書かれてあった。自分が言った言葉だそうだが、なるほどその通りであると感心してしまった。カントリースタイルの家具制作における、その構造や使用工具は、制作技術も含めて、プロでなければ出来ないようなものではない。逆にプロでなければ作れないものはカントリースタイルではないと考える。ネジ釘をその接合手段とする簡素な構造によるカントリー家具制作に対し、「あんなものは木工ではない」という、つまらぬ親父たちも多いことは良く知っている。同時に「クラシック以外は音楽ではない」という音楽家は、数百年前に死に絶えたことも知っている。技をもってして集約されたらしき完成品を、神棚に供え奉り拝むか、あるいは志を同じゅうする愛好家同士で慰め合うかのようなスタイルも木工であり、日曜大工の延長のような家具作りもまた木工であることに間違いない。ようは、木を相手に、また人を相手に、その加工を通じて楽しめるものこそが木工であると言いたい。技術と知識をもった限られた者だけが立ち入れる世界であってはならないと思う。ただし、文明の利器を多用する作業には、いろんな危険が伴い、同時に製造技術の躍進とともに様々な道具や用具類があふれてきている。そこには正しい知識をもったアドバイザー的存在が必要不可欠であり、アーリーハッチはこれからも、木工を楽しむビギナーのための、便利な知恵袋でありえるよう勉強と努力を重ねたいと思う。木工は難しいものではない。そしてすべてを覚える必要などない。知りたいときに聞けばいいのだから。第〇〇回目の我が生誕を期して。
■木材の伸縮特性 おさらい編 2004.10.19 (第309回)(あと57回)
非常に硬質な素材を除き、ほとんどの物質は伸縮特性がある。こと木材については、その使用環境、気候等により、正直なほど伸縮や変形を繰り返す。もっとも影響を与えるのが「湿度」となるが、一般的な市販木材での水分含有率は「15%〜20%」程度であり、表面コーティング(ニスやペンキ等による塗装)していない木製家具の室内使用環境から言えば、理想的な率といえる。つまり、木材の反りや変形は、「木材内部からの水分放出」により発生するため、エアーコントロールされた室内環境における一般的な湿度は、やはり「15%〜20%」で、木材の水分含有率と等しいためだ。木材の特性として、周辺環境における湿度が、自身の水分含有率を超えると水分を吸収し、逆に湿度が含有率を下回ると、水分を放出する。この作用により、気候変化による室内湿度の差が少なくなくなるという効能を醸し出すわけであるが、それだけ生活環境に寄与する特性と同時に、木材自身の変化となって現れる。つまり、水分放出の際には、「反りや変形・縮み・ひび割れ」の原因となり、水分吸収の際には「伸び」の原因となる。こうした現象を抑えるための手段としては、「表面コーティング」により木材の呼吸を止める方法と、「湿度の維持」になるが、後者は現実的に難しい。カントリー系以外の一般的な市販家具では、安定した品質が条件となり、前者による仕上方法が主となっているが、前述の木材特性による効能は遮断される結果となる。つまり「生きた家具」ではないと言える。そうした意味、よりナチュラルさを求めるカントリー系家具は、木材特性を活かし、その効能も受けながら、同時にその変化変形についても「生きた証」として受け入れている訳だ。(明日へ続く)
■木材の伸縮特性 おさらい編 その2 2004.10.20 (第310回)(あと56回)
(昨日より続き)そうした意味、伸縮や変形をあらかじめ想定した設計が重要となるわけであるが、もっとも初歩的な部分が「扉」となる。今回はあくまで「おさらい編」であるので、細かな説明は省くが、まず反りの影響を考慮し「木裏を正面にする」こと。木表を正面にすると、その両端が浮き上がる方向に反るためだ。次は膨張(伸び)を考慮した「隙間の確保」(遊び)。いかに膨張するといっても、その伸縮は一定比率ではない。繊維方向(木目方向)を「1」とした場合、それと直行する方向は「5〜10」が一般的と言われる。繊維方向への伸縮はほとんど起きないことを考えると、一般的な「木目を縦にした扉」の場合、その上下の隙間は、あくまで開閉の際に、枠との接触を防ぐ程度として良く、逆に木端(コバ)側の隙間確保が重要となる。当然固定される「吊元側」(丁番が付く側)への伸びはないため、その逆側への伸びとなる訳だ。充分な隙間確保がなされていないと、雨の日には扉が開かなくなる、あるいは閉まらなくなるといった現象が起きる。ただし注意しなければならないのは、その木取り加工をする日の「天候」となる。当然雨の続くような日は、木材が膨張しているため、その状態から採寸すると、乾燥時期には収縮するため、思った以上の隙間が出来てしまうこととなる。木取り加工は、あくまで木材の状態が安定する「晴れた日」に行うのが理想だ。縮み過ぎて寸足らずになるとどうしようもないが、理想寸法よりも大きい場合は切ればよい。DIYでいうところの「カット&トライ」の思想が大切だ。
■上塗り塗装について 前編 2004.10.21 (第311回)(あと55回)
「既存の家具の色を変えるための塗装法は?」という質問は多い。好みの色合いにより、その手段は異なるが、もっとも容易なのが「ペンキ」による塗りつぶしの塗装法。つまり「白色にしたい」とか「黒色にしたい」といった場合のこと。当然のこと「木目」も含めた下地は、完全に塗りつぶされる。既存の家具の表面に光沢のある場合、そのままペンキを上塗りすると、その塗着効率は非常に悪く、早期の剥離を起こす。つまり、塗料が下地にしっかりと食いつくことが出来ず、剥がれやすいということだ。そのため、下地をサンドペーパーなどで丹念に粗し、細かな傷を付けることで、塗料の食いつきをよくする。基本的には「水性」でも「油性」でも大差はない。「1回塗り塗料」であっても、下地の滑りがあり、また塗料の吸い込みもほとんどないため、1回の塗装だけでは、下地が透けたり、ハケ目が残る。そのため、2度塗り以上が良い。「好みの色合いにして、尚且つ木目を出したい」という要望も多いが、これは非常に難しい。作業方法が難しいというよりも、既存の家具そのものの仕上げ法が何であるかを特定することが困難ということ。まず「木目を出す」ということは、下地の透ける塗料、つまり「ステイン」「オイルフィニッシュ」などを使用することになるが、着色成分を浸透させなければならないため、既存の家具表面のコーティング(塗幕)を除去しなければならない。もちろんそれが「化粧板」(表面のみをプリント処理したもの)の場合では不可能であるし、基本的にサンディング程度で完全な除去が出来るケースはまずない。ウレタン系ニスで仕上げられたものにサンダーをかけても、剥離するどころか、その摩擦熱で粘りが戻り、ヤスリが目詰まりするばかりか、逆に削りカスなどの付着物が粘った塗幕に混じり込み、そのまま凝固し、恐ろしく汚くなる。その他、表面強度を上げるため、特殊加工されたものなども多く、その表面塗幕を完全薄利することは難しい。「塗料剥離剤」も市販されているが、既存のすべての表面仕上げに100%適するかは保証出来ず、むしろ中途半端な剥離に終わる場合が多い。均一的な完全薄利でなければ、その後の着色工程での色むらの原因となる。(明日へ続く)
■上塗り塗装について 中編 2004.10.22 (第312回)(あと54回)
(昨日より続き)仮に表面を被う塗幕を除去出来た場合、次に問題となるのが、木材内部の着色浸透の有無、つまり、その家具が、あらかじめステイン等によって着色されているか、あるいは塗幕自体に色付けされているものかどうかの違いである。前者の場合であれば、塗幕を除去した段階で、下地木材の色具合は、基本的に除去前と大差ないはずであり、次工程である「好みの着色」は、「現状より濃い色」以外では非常に難しくなる。後者の場合は、塗幕除去後は「白木状態」であるため、好みの着色が可能となる。そうした意味で、塗幕除去以前に、その仕上げ法を特定しなければならず、それを出来ずに除去作業を行うと、悲惨な結末を迎える羽目となる。判断材料として一般的なのが、目立たぬ部分の塗幕をナイフ等で軽くえぐってみる方法だ。それにより、下地木材の色合いで判断出来る。「タンス」等の化粧直しでは、基本的にカンナがけによる塗幕除去の方法が一般的。もちろん高等な技術が必要なことは確かである。ステインやオイルフィニッシュのみでの仕上げ家具は、基本的に「木目の見える薄い色」への塗り替えは不可能と言って良い。つまり、浸透により着色されたものは白木に戻すことが出来ない。もちろん上塗りによる「濃い色」への塗り替えは容易い。同系統のステインやオイルを重ね塗りすれば済む。ただし、浸透凝固しているため、白木に着色するほど染まりはよくない。つまり、着色成分があまり浸透出来ないため、比較的浅い積層部分のみへの塗着となり、思ったよりも色は薄くなることに注意。また、ワックス仕上げを併用しているものの場合は、そうしたステインやオイルを弾くため、あらかじめワックス剥離剤で、ワックスを完全除去しなければならない。また自然ワックスとも言える、日常の使用環境による「手油」や「汚れ」により、表面が自然コーティングされている場合もあるため、塗装前のサンディングが欠かせない。このサンディングが、着色成分や樹脂成分を効率よく塗着させてくれる。(明日へ続く)
■上塗り塗装について 後編 2004.10.23 (第313回)(あと53回)
(昨日より続き)カントリー家具の塗装法としてもっとも一般的な「オイルフィニッシュ」の木材保護効果については、過去の講座でも解説してきた。つまり「内部凝固による木材保護」であるが、この効果は「半永久的」と言われて来た。表面塗幕の場合であれば、磨耗や劣化等による剥離の可能性があるが、内部浸透しているものは劣化や風化の可能性はほとんどないがためだ。ただし、その「色調」については、塗った当初の色がそのまま持続することはありえない。木材自身の「やけ」による変色はもとより、オイルに含まれる着色成分の「抜け」もある。つまり、半永久的なのは、あくまで浸透凝固している成分による保護効果であって、その色調の維持にはない。元来手作り品の延長としてきたカントリー系家具は、制作工程もさることながら、そのメンテナンスも自身が継続して行う、言わば「手のかかるもの」で、言いかえれば、それだけ愛着を持って生活をともにするものと言える。本場といわれる国の、本物といわれるカントリー家具(各々が作り出し、各々が大切にする形に、本物という言葉はおかしいが)は、メンテナンスとして何度もその色を塗り替え、いわゆる「味」の感じられるものが多い。ところが、古来よりやたらテリトリーを重んじる我が日本人は、「本来家具は職人が作るもの」という概念から脱し得ず、自らが作ったものであるにもかかわらず、必要なメンテナンスをしたがらない。「傷がついた」「へこんだ」「変色した」といっては、価値の下がった粗悪品のごとく扱う。そうした変化変形のひとつひとつを「利用の結果」や「味わい」として受け取り、さらなる愛着を持って必要なメンテナンスを繰り返す人々の「家具への愛着心」と比べれば、そうした扱いが、いかに心の貧しいものかが理解出来よう。オイルフィニッシュで仕上げられた作品では、2〜3年に一度は同色の上塗りをお勧めする。極端に色合いが変わる訳ではないが、新鮮な色調が戻ることは確かで、そうしたメンテナンスを重ねるごとに、その色合いは深みを増す。「めんどうくさい」という人もいるとは思うが、自分の人生の残り年数から割り算して、あと何回愛情をかけられるかを思えば、決して徒労ではないと思う。アンティークとして価値あるものは、すべてそうした「愛情の回数」で評価されるほどだ。作りっぱなしではいけない。多分、厚生労働省と文部科学省も同意見と思う。
■具体的メンテナンス法について 前編 2004.10.24 (第314回)(あと52回)
「前編」やら「後編」やらと、まるで「名探偵コナン」ばりの乗りであるが、一度に書ききれないのでご了承いただきたい。さて、表面を特殊加工しているものや、硬度のある仕上げをしている家具の場合、異物の浸透を遮断するため、さほどメンテナンスの必要がない。しかし、オイルフィニッシュ等の浸透性塗料で仕上げられたカントリー家具においては、汚れや染み、傷などが付きやすく、しかも基本的にコーティングされていないため、非常にその使用とメンテナンスに気を使う。キャビネットやラック、シェルフなど、水回り以外の作品については、汚れと言ってもホコリ程度であるため、乾拭きによる拭き掃除で済むが、テーブルや机、キッチン回りや洗面所関連品などについては、様々な付着物がある。そのための対策とメンテナンスについてお話したい。ダイニングテーブルなどは、その最たるもので、オイルフィニッシュのみで仕上げられた作品については、コップや茶碗などの「輪染み」「水滴痕」などが確実に付く。つまり、水分が木材内部に浸透する結果、こうした染みとなって残るためだ。数年という長期的な見方をすれば、そうした染みもほとんど消え去るのだが、やはり気になるもの。オイルフィニッシュ後にワックス仕上げをすれば、こうした染みはつかず、汚れも付きにくい。ワックス仕上げをしない場合での染みは、基本的に即効性のある除去は不可能。「オイルフィニッシュの家具は水拭きしてはいけない」という定説もあるが、信じる必要はない。水分ダラダラの布巾でテーブルを拭く人はいないと思うが、普通にテーブルを拭くのと同じように、堅く絞った布巾で拭いて良い。そして、普通の人は、おそらく食前食後にテーブルを拭くだろうと思うが、これを毎日繰り返すうちに、「いつ染みが消えたろう?」という日が必ず来る。実はそうした日々の拭き掃除が、自然のサンディング効果とワックス効果を醸し出すことになり、以後の染みをつきにくくする。染み以外では「へこみ」や「傷」がある。どうしても「生涯の不覚」と思えるような後を引く場合にのみ、その対処をする。つまり「傷もへこみも味わいのうち」と済ますことが肝要ということだ。大きな「へこみ」の場合は、やはりパテ類が妥当。実用家具の場合、強度と耐水性があり、肉痩せのしない「エポキシパテ」(ウッドエポキシ等)がお勧め。えぐれのない「傷」には、色の豊富なフローリング用の傷消しが使える。オイルの再塗布をすると、傷の部分に浸透するため、逆に目立つ。無塗装の木材であれば、へこみの場合は、水を垂らして一昼夜放置すると多くの場合復元してくれる。また、アイロンで加熱する方法もある。ただし、オイル塗布したものを加熱すると、ほとんどの場合変色するので注意。
■具体的メンテナンス法について 後編 2004.10.25 (第315回)(あと51回)
(昨日より続き)付け加えて、オイルフィニッシュで塗装した作品に水滴痕が付いた場合の対処法として、オイルによる「ウエット研磨」がある。もちろん完璧に消せるものではないが、かなりの効果がある。まず、水滴痕の付いた面に対し、仕上げに使用したものと同じオイルを充分に塗布する。部分的な塗布だと、色調に差が出る可能性があるため、なるべく広い面に塗布する。塗布後10分程度のインターバルで、耐水ペーパー(#400程度)を使用し、オイルに粘りが出るまで、小さな円を描くように全体を丹念にサンディングしていく。つまり、水滴痕自体は、かなり浅い積層部分での浸透。そのため、材表面の繊維部分にオイル浸透させ、微量に膨らんだ繊維をサンディング除去するもの。かなりの割合で痕跡が薄まる。同時に、すり込み作用も働き、滑らかな仕上がりとなる。このすり込みと似ている方法に、サンディングで出た粉を取っておき、オイルに浸したサンドペーパーで、材のヒビや傷に詰めることで目立たなくする補修がある。市販のパテと同じだが、同じ材の削り粉を使用出来ることから、気持ち的にも違和感の少ない仕上がりとなるだろう。クレヨンやマジックによる、「子供のいたずら書き」(普通の大人はあまりやらない)も頭が痛いところ。こうしたものを除去する市販製品も多いが、ほとんどの場合、溶剤等を含んでいる場合が多いため、使用する際は、その家具のなるべく目立たない部分で、変色が起こらないかを試すことが肝心。一般的なクレヨンの場合は、オイルフィニッシュの塗料を塗布し、ウエット研磨することで消えるが、マジックの場合はあまり効果がない。特に浸透が深い場合は絶望的となる。水回りや実用系作品以外でも、日々の乾拭きは、やっているのとやっていないのとでは、その手触り感に大きな差が出る。つまり、乾拭きもサンディング同様、「磨き効果」があり、繰り返すことで、木材表面の荒れた繊維を滑らかにしていく。木材表面に浮き上がる微量な樹液成分を表面に引き伸ばす効果もあいまって、年月を重ねる毎に深い光沢を増す。特に塗布後3日から1週間程度は、浸透したオイル成分が表面に浮き上がってくるので、丹念に乾拭きで磨くこと。これをやらないと、浮き上がったオイルがそのまま凝固するため、不自然なざらつき感と、かさつき感が残る。
■引出し構造とその作り方 前編 2004.10.26 (第316回)(あと50回)
「引出しを作るのは難しそう」という言葉をよく聞く。手作りカントリー系雑誌や初級的木工関連誌の「作ってみよう」と言うようなコーナーでも、引出しの付いた作品はあまり見うけられない。おそらく、「引出しは難しくて、初級者には無理」という固定観念からではないかと思う。より愛着をもって、しかも長期に渡って愛用出来るのは、「飾り物」よりも実用性のあるものだ。引出しなどは、その最たるもので、家具の中ではもっとも重宝するもの。嘘だと思ったら、家の中にある引出しの数と、その中に納められているものの価値と必要性をご確認頂きたい。さて、引出し制作は、決して難しいものではないということを解ってもらいたく、今回のタイトルとした。初級的作品と言いながらも、必要工具として、トリマーやドリルドライバーを紹介している誌がほとんど。引出しの制作に使用する工具に特殊なものはない。つまり、そうした初級的作品に使用する工具で作れてしまう訳だ。基本的な引出しの部材は、「正面板」「向こう板」「側板2枚」「底板」の以上5枚から構成される。「正面板」とはその名の通り正面となる板。「向こう板」とは、正面板のいわゆる対面、つまり後ろ側の板。「側板」は両脇の板。「底板」は一般的に薄いベニヤ等を使用する。簡単に言えば、四方を板で囲われ、底にベニヤがはめ込んであるというもの。もっとも簡素で一般的な構造は、正面板と向こう板を同サイズとして、側板を挟み込むもの。つまり、ネジや釘は、正面板と向こう板から、それぞれ側板に向かって打つことになる。この部材配置は、正面から引出しを見たとき、側板の木口が見えないようにするためだ。ところが、この方法だと、正面板にネジや釘の頭が見えてしまう。釘の場合はさほど気にならないが、ネジの場合はそうはいかない。そのために必ず「ダボ仕上げ」(木栓仕上)とするのだが、それでもやはり、ダボ処理部分が目立つもの。そのため、引出しの正面板に、接合のための何の痕跡も残さない構造として、前述の基本構造に、さらに正面板をプラスする方法もある。つまり、四方を囲んだ引出しに、さらに正面板を取りつけるもの。この正面板は、表側から止めつけるのではなく、既存の正面板の内側から、新規の正面板に向かってネジ止めされるもの。これにより、引出し正面からは、ネジや釘、ダボ処理跡等を行わないため、すっきりとした仕上がりとなる。簡単に言ってしまえば、正面板が二重になっているだけのこと。不利な点と言えば、二重になっているだけ、材料コストがかかることと、引出し前方の重量が増すことだ。また見逃してならないのは、貫通穴が必要なツマミや取手を付ける場合、一般的にその付属ネジは「板1枚分の厚み」をカバー出来る程度の長さのため、板2枚を重ねた引出しには寸足らずになるということ。同規格の長いネジを別に購入するか、または、正面板内側から座ぐる(ネジ頭が通る穴を、既存のネジ長が使用出来る程度まで掘る)こととなる。そうなると、10〜12径ほどのビットも必要となり、一言で「簡単」とは言い難くなる。とは言え、眉間にシワをよせながら行うような高尚な作業でもなく、その構造と方法さえ理解できれば、鍛錬など必要のない容易なものであることに違いない。(明日へ展開)
■引出し構造とその作り方 後編 2004.10.27 (第317回)(あと49回)
その制作法でポイントとなるのは、ベニヤを使った「底板」のはめ込み。つまり「正面板」「側板」「向こう板」の内側下部それぞれに溝を彫り込むわけだが、決して難しいものではない。活躍するのは「トリマー」。「面取り」に使用する電動工具なので、カントリー系家具の制作には欠かせない道具である。ビットは「ストレートビット」(4mmタイプが一般的)を装着し、平行ガイド(通常、付属品として本体に同梱されている)を使用する。平行ガイドのない場合は、直線の出ている板材や角材をガイド代わりに渡し、それにトリマーベースを沿わせるように彫り進む。彫り込み深さは5mmとする。つまり、引出し内寸に対し、4辺ともそれぞれ5mmずつプラスされた底板スペースが出来るわけだ。実際にはめ込むベニヤは、内寸に対し、4辺それぞれ4mmずつプラスすしたものとする。そうすることで、各辺ともに1mmずつの遊びを確保する。これは、木材伸縮を考慮したもので、彫り込み内寸と同寸法にすると、はめ込む際にきつかったり、あるいは伸縮に対応出来ず、引出しが変形したりする場合があるので注意。引出しと、引出しを収納する本体スペースとの遊びは4mm程度が一般的。1〜2mmの遊びでは、木材の伸縮により、確実に不具合が起きる。伸縮は、本体よりも引出しに発生する。伸縮特性については、過去にもお話したが、木目直行方向に起きる。つまり一般的な引出し構造においては、「横方向」よりも「縦方向」に伸縮をする。深さのある引出しほど、縦への伸縮幅が大きくなることがポイント。「隙間があくとかっこ悪い」という人もいるが、窮屈で身動きできないでいるほうが、もっとかっこ悪い。伸縮のほとんどない「横方向」での遊びも必要。これは、伸縮対策というよりも、引出しの反りや変形作用によって、出し入れがきつくなることへの対策だ。接着接合された本体構造部と異なり、それひとつで単独の家具とも言える引出しを、本体に収納しているという形のもの。遊びや余裕についての重要性を認識することが大切で、またそれがどういう方向に現れるのかを想定するのが、引出し付き家具を制作するうえで大きなポイントとなる。
■扉ストッパーについて 2004.10.28 (第318回)(あと48回)
扉付きのカントリー家具の多くは、木片を使った「扉ストッパー」を使用しています。逆の言い方をすれば、このストッパーがカントリー家具らしさを醸し出しているとも言えます。「マグネットキャッチ」や「ローラーキャッチ」「バネ式スライド丁番」など、こうした木片によるストッパーを使わない一般的な家具と比べ、より素朴感があります。ではなぜカントリー家具が木片のストッパーを使用しているかというと、「風情」と「実用面」での理由があります。カントリー家具に多く使用されるパイン材は、木材の呼吸を妨げないオイルフィニッシュによる仕上げがほとんど。そのため、湿気の吸収や排出によって、伸縮や反りを繰り返します。材に狂いがあると、「マグネットキャッチ」など、前述の器具が正常に機能しないケースが発生します。そのため、単純に木片で押さえつける木片のストッパーが確実ということです。また、「商用でなく、使う人本人が、身の回りの素材を持ってして作り出す」という概念から、必要最小限の部材でまかなえる作品であれという考え方があり、そのため、いわば特殊とも言えるキャッチ類などの金物を、あえて使用しないという姿勢があります。さて、この木片によるストッパー。アーリーハッチでは、そのサイズを揃えています。素材は、作品と同じものを使用するため19mm、幅は24mm、長さは50mmになっています。ただし、正面材としての扉枠を使用せず、木端がそのまま枠となる作品は、幅19mmとしています。このサイズに大きな意味はありません。見た目のバランスで決められたもの。お部屋の中を、いろんなカントリー家具で演出する場合、こうしたストッパーのサイズも揃っていると、統一感が出るものです。
■背板について 2004.10.29 (第319回)(あと47回)
木材用語でいうところの「背板」とは、皮付きの厚板のことですが、私達木工愛好家では、その字面から、「作品の背中にあたる板」のことを指します。一般に、扉付きのキャビネットやチェストなどでは、扉や収納物によって「背板」は見えなくなるため、あえて上等な木材を使用せずに、ベニヤ等の合板を張り付けます。ごくまれに、「背板に合板を使うと安っぽい」というご意見も頂戴しますが、見えない部分にお金をかけることで悦を感じる人は別として、コスト的にもいかに無駄なく、逆を言えば、個々の部材の特徴を理解した上での選択として、合板使用は立派な「適材適所」と言えます。さて本日は、そうした合板の話ではなく、シェルフなどの「背板が見える作品」に使用する背板について少々。合板のなかでも、上等なものとされる「シナベニヤ」は、表面に肌の美白な「シナ材」を張り付けたもの。これを「見える背板」に使用する人も多いようです。しかし、トールペイント等での装飾を除き、単純にオイルフィニッシュする仕上法では、それほど綺麗なものでもなく、さほどの味もありません。パイン材との色調バランスの面で言えば、少々赤みがかるラワンベニヤ系に比べれば、多少は釣り合いが取れるといった程度です。縦方向9cm程度の板材を並べたような背板を使用した作品は多く見られます。もともとは、2x4ログでの壁面仕上げから影響されたもので、いわゆる2x4材(38x90mm)の縦並べと同様なバランスとなります。つまり、あからさまとなる背板を、壁材風にしたものが、シェルフ等に見られる背板のデザインとなります。手間をかけることで木工を楽しむ人では、そうした背板も、本体部材と同等のもの(19mmパイン材等)を使用しています。ただ、単純に縦並べすると、材の歪みや反りなどの変形により、隙間が出来てしまうため、双方をL字に欠いて接合する「相欠き剥ぎ」の加工をします。これは「トリマー」によって加工しますが、非常に手間のかかる作業とはいえ、寸法計算さえ間違えなければ、単純作業で容易なものです。その欠点をあえて言えば、厚みがあり過ぎて重いということです。そのため、ほとんどの場合、市販のパネル材を使用します。これは、室内壁用の壁材で、あらかじめその両木端にはサネ加工が施してあり、はめ込むだけで良いようになっています。またその厚みも、9〜12程度と薄く、松科の素材がほとんどのため、作品本体との違和感もありません。「背板に壁材を使うなんて邪道だ」という、自称「カントリー家具の本職」という方もいらっしゃるようですが、その背板そのものが、壁材を模したものであるということを知った上で、我流に酔っていただきたい。
■ご存知?裏技的墨付け法 その1 2004.10.30 (第320回)(あと46回)
裏技というよりも、木工に慣れた人たちからみれば、当たり前のことかも知れませんが、ここではあえてビギナー向けに、その墨付けの応用編についてお話します。まず、引出しの正面板などで、ツマミを取りつけるための「中心点」を墨付けするとします。方法は色々ありますが、基本的には、横幅は計り、そのセンターを出し、さらに縦寸法の中心を出し、その交点を中心点とします。計測には「サシガネ」を用いて、その直角を利用しながら行うのが一般的です。ここで裏技となるのが、サシガネ等の正確な寸法を出す定規がなくても、その中心点を出す方法です。杓子定規という言葉がありますが、なんでもかんでもミリ単位の定規と計算機を片手に、数学者のような顔をしながら作業するのは、おおらかに木工を楽しむ上で、少々堅苦しいものです。定規なしに、その中心点を出すには、「対角線の交点」という簡単な方法があります。つまり、対角同士を、直線の出ている板材や角材を使って線を引き、そのバッテンとなる交わったところが中心となる訳です。もちろん、サシガネ等があれば、それを使うにこしたことはありませんが、元々中心点とは、そうした簡単な方法で出せるものだということを知った上で作業すれば、ミリ単位の刻みで眉間にシワを寄せる頻度も少なくなる筈です。
■ご存知?裏技的墨付け法 その2 2004.10.31 (第321回)(あと45回)
昨日は、サシガネ等の定規を使わないで、板材の中心点を出す「当たり前の方法」でした。本日は、「定規はあるけど長さが足りない場合」でのセンターの出し方についてお話します。例えば、長さ1mmを超える板材、もしくは角材があり、その全体の正確な長さは解らないとします。手元にあるのは最長50cmまでしか計測できないサシガネのみ。基本的には、そのサシガネを使って、つなぎ合わせるよう数回に渡って尺取することで、全体の長さが計測でき、それを割ればセンターが出せます。これは当たり前のように思えますが、いわばテクニックを楽しむ本職がやる方法は、それぞれの両端(木口)から、手持ちのサシガネ(定規)の最大値部分に墨を付け、その墨同士のセンターを出すという作業をします。さほど変わらないように思えますが、「センターを出す」という作業は、全体長からの割り算という、数学的なものではなく、あくまで、その両端から均等に迫った位置という概念があるためです。手持ち定規が寸足らずのため、足し算の繰り返しをした後、それを割り算することで答えを出すという正規の理屈よりも、同じ長さ同士が交わるところを正しいとする、言わば職人気質的なこだわりからくる墨付け法と言えます。