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著作:アーリーハッチ 著者: 社団法人 日本DIY協会認定 DIYアドバイザー 首藤浩昭 著作開始日 2003.12.16
著作掲載対象:アーリーハッチホームページ http://www.hatchan.com/subtop.htm
2003.12掲載分 2004.1掲載分 2004.2掲載分 2004.3掲載分 2004.4掲載分 2004.5掲載分 2004.6掲載分 2004.7掲載分 2004.8掲載分 2004.9掲載分 2004.10掲載分 2004.11掲載分(本ページ) 2004.12掲載分
■ご存知?裏技的墨付け法 その3 2004.11.1 (第322回)(あと44回)
本日は、「現場合わせ」という職人用語でいうところの墨付け法についてお話します。「現場合わせ」とは、机上の作業だけで、数値を含めた作業すべてを決定しようとするのではなく、実際の作業工程の中で、現物を確認しながら作業進行していくことです。解りやすく言ってしまえば、「机の上であれこれ考えるよりも、現場ぶっつけでやったほうが、むしろ正確」という意味があります。基本的に「箱物」と呼ばれる家具では、左右の「側板」や、複数の「棚板」、「枠材」など、同じ寸法となる部材が多々あります。基本的な木取り作業としては、「木取り図」に記載された数値に基づいて、サシガネなどの定規を使用しながら墨付けをして、切断工具で切り出します。ここにひとつの「現場合わせ」と言える手法の登場です。同じ寸法の部材が多々あるということは、前述の「基本的な木取り作業」では、同じ墨付けを複数回行っていることになります。例えば、幅200mm、長さ800mmの「側板」を切り出すための墨付けをするとします。側板は2枚あるので、この墨付け作業を2回することになりますが、いわゆる「現場合わせ」の作業では、墨付けは「1枚分」だけ行い、もう1枚は、切り出した最初の1枚を重ね切りします。つまり、同寸法の部材は、連続して切り出すことを基本とします。もちろん基となる1枚目が、直角も含め正確である必要がありますが、1枚ごとに正確さが必要となる墨付けや切断を考えれば、少なくとも、複写による「現場合わせ」の作業のほうが、同寸法の部材出しには適しています。これは、切断のための治具設定にも言えることで、丸ノコ盤やスライド丸ノコ、切断ガイド使用の工具なども含め、ゲージやガイドを設定して切断する場合には、いったんセットしたゲージを使用し、連続して同寸法を切り出すころで、その効率性を発揮します。つまり、いちいち一枚ごとに墨付けやゲージセットはせず、同寸法のものを選びだし、連続切断していくという方法です。「現場合わせ」の手法をもっと解りやすく例えれば、目の前にある「板材」と同じ寸法のものを用意しなければならない時、現場合わせをしらない人は、まず定規を使って、その「板材」の寸法を測り、次に、その寸法に基づいて板をカットします。現場合わせを知る人は、目の前にある板材を、切り出すための板の上に乗せ、なぞって線を引きカットします。つまりそうした差があります。
■ご存知?裏技的墨付け法 その4 2004.11.2 (第323回)(あと43回)
墨付けに使用する定規といえば、やはり「サシガネ」。それでも、学生時代からまっすぐな平行定規や三角定規しか使ってこなかった人にとって、この直角に折れ曲がったサシガネは、慣れないとかえって使いづらく感じてしまうものですが、逆になれてしまうと、「サシガネがないと何も出来ない」くらい、重要な道具となります。さて、サシガネによる基本的な計測法は、「材の基点にサシガネの角を合わせ、指定位置を計測し墨付けすること」となります。つまり、「材の端」をゼロとして、指定の寸法値に墨を付けることが正しい計測法なのですが、よく見かけるのは、その逆のやり方です。例えば、450mmという長さに板を切断するため、そのラインを墨付けする際に、正しいやり方では、材の端にサシガネの角(つまり目盛の基点0mm)をあて、目盛の450mmのところに墨を付けますが、間違ったやり方では、サシガネをその逆にあて、材の端にサシガネの目盛450mmを合わせてしるしを付けているようです。理屈的には同じことのように思えますが、正確性と効率性を考えた場合に、この方法は邪道と言えます。「450の位置出しと同時に、垂直線が引けるじゃないか」という人もいるでしょうが、垂直線(つまり木端または木口に対しての直角線)を出すためには、サシガネの長手(折れ曲がった長い側。一般式では500mmまで計測可能)側を、計測方向となる材の木端(または木口)に誤差なく合わせるか、または、木端(または木口)に長手を平行に引っ掛ける必要があります。この場合、計測値であるサシガネの450目盛は、サシガネそのものが邪魔となって死角ができ、材の基点部分に誤差なく合わせることが出来ません。垂直線を引くのであれば、やはり、正規のやり方で450部分にしるしを付けた後、そのしるしに合わせサシガネを返して引くこととが基本となります。「材の端」と「サシガネの角」を指先の触感覚によって合わせることができるため、目視による基点合わせが不要となり、効率的にも有効となります。なんだか、裏技がちっとも登場しませんが、最後に私がよく使う方法として「サシガネの幅利用」を紹介します。標準的サシガネの幅は、「15mm」と決まっています。また、当店でも使っている「鉄工用」などは「20mm」となっています。この幅を利用して、よく平行線を引きます。目の前にサシガネが置かれ、「15mm間隔の平行線をひけ」という試験問題がでたら、たぶん2秒で出来ます。測ることだけがサシガネ利用法ではないということです。
■アマチュアに学ぶ木取り法 2004.11.3 (第324回)(あと42回)
木材を購入して目的の作品を木取りする場合、妙に無駄な端材が出てしまったり、ちょっとの部材のために、大きな木材を買わざるを得ない場合があります。そうした場合、「余った木材でも、そのうち何かに使えるだろう」と考えるものですが、往々にしてそうした端材は、結局のところ日の目を見ることなく、ホコリをかぶるか、そのうち反りや変色などがひどくなり、捨てざるを得ないといった運命をたどるケースが多いようです。そのためお勧めしたいのが、最初の木取りの段階で、余る部分の木材も、何かしらの具体的な作品として木取りするということです。つまり、「そのうち・・・」といって、ため込むのではなく、最初から作品として利用するということです。目的のない部材というものは、やはり「残り物」でしかなく、それが、何かしらの目的があれば、同じ物でも価値観がまったく異なってきます。「何かに使えるだろう」は、たいてい「何にも使えなかった」になることは、他にも、押し入れや物置の中にたくさんある例ではないでしょうか。「毎日作品を作るプロの人は、残った部材でも無駄なく利用する機会があるからうらやましい」とお思いの方もいらっしゃるでしょう。基本的にプロは、「目的のない部材」は即座に廃棄します。つまり、そうした端材は毎日山のように出る訳ですので、「そのうち使えるだろう」などと考えていると、作業場が端材の山になってしまうからです。そのため、やはり木取りの段階で、出来うる限り端材部分は「他の作品のための木取り」をします。ただし、ここで「アマチュア」と「プロ」の大きな違いは、アマチュアが「目的の作品の木取りの結果で出る端材」であるのに対し、プロは「端材の少ない作品の設計をしている」ということにあります。つまり、プロは無駄の少ない木取りを優先した設計をし、アマチュアは使用目的やデザインを優先した設計をしているということです。自分で言うのもなんですが、コスト意識が優先したプロの設計は、そうした制約が影響し、ある意味窮屈で打算的なものです。材の規格寸法や木取りの効率性にとらわれず、あくまで「必要なサイズ・デザイン」を考えたアマチュア設計は、本当の意味での、自由な創造となり、プロ連中の欠けている部分でもあります。結果的に、非効率な産物である余った端材を使って、コスト意識というプロの領域を試して見るのも、アマチュアならではの遊び心にもなります。プロはお金を払って、余った端材を廃棄しています。
■100ミクロンを意識する 2004.11.4 (第325回)(あと41回)
朝に夕に、また天候の良し悪しで、その寸法が伸縮する木材相手の木工屋が、「ミクロン」などと言う神経質な単位をタイトルにすると、「何をバカなことを・・・」という人もおられるだろう。「100ミクロン」、つまり「0.1mm」の世界のことだ。ミクロンへの展開の前に、あらかじめ理解していただきたいのは、いかに、素材が伸縮を繰り返す「木材」であるからといって、その「木取り」や「墨付け」がいい加減であってよい訳がないということ。伸縮するがゆえに、一層のこと正確でなくてはいけない。いい加減に墨付けしたものが、いい加減に伸縮したのでは、まさに落しどころがない。「いい加減」×「いい加減」=「どうしようもない」という答えが出る。つまり、期待すべき答えは、「いい加減」×「正確性」=「まずまず正確」となる訳だ。ということで、本日は、やや堅苦しい内容で始まったが、がんばって通読願いたい。本当の答えは、末章にある。さて、たいてい木工関連誌の「木取り図」や「展開図」などを見ても、やはり「ミリ単位」での表示が当たり前のように掲載されている。まるで、小数点以下は未知の領域か、もしくは切って捨てられるような印象を与える。真面目に図面を引いて木工をしている人は、とっくに気付いていると思うが、例えば部材「397mm」のセンターに墨を付ける場合、その位置はいったい何ミリだろうか。そこは「199mm」でもなく「198mm」でもなく、「198.5mm」なのである。3分割するラインを引くなら、やはり「132mm」でも「133mm」でもなく、「132.33・・・mm」なはずである。木工の世界では、ミリは最大単位であって、最小単位ではない。そう思って「サシガネ」などの目盛を凝視すると、ミリの刻みと刻みの間隔が、とても広く感じるはずだ。作品を機能的にする金物として広く利用される「スライドレール」など、その取り付けのための隙間を「12.7mm」と指定している。もちろんその数値はメーカーや機種によりことなるが、つまり「12mm」でもなく「13mm」でもなく、「12.7mm」なのである。ゆえに末章に至るが、狂うべくして狂う木材をそのもととして、導きたい答えが「正確性」であるなら、「いい加減」に何を掛ければいいのかが解るはず。つまり材の特性を踏まえることと、100ミクロンを知ることである。
■座ぐりについて 2004.11.5 (第326回)(あと40回)
ネジを使用した作品の組み立て方式の場合、そのネジ頭を隠すために「ダボ仕上」(木栓仕上)がされます。「木材の厚み」「ダボ穴の深さ」「ネジの長さ」の関係は、木材厚19mmとした場合、ダボ穴深さは5mm、ネジの長さは35mmが適当とされます。この場合、ダボ穴の深さを5mmとしているのは、あくまで使用するダボ(木栓)が、衝撃や摩擦によって剥離しないであろう最低値です。また、それを超す深さだと、残った木材厚が薄くなるため、接合強度が著しく低下します。19mm厚の木材に対して、5mmの深さを座ぐると、残りの厚みが14mmとなります。つまり、単純に言えば、19mmの木材を使用した作品であっても、14mm厚の板材のネジ止め強度と同等になります。これは、中型実用家具の限界構造強度と言えます。接着剤を併用した接合における使用ネジの長さの基準は「板厚の2倍から2.5倍」で、釘による接合時は「板厚の2.5倍から3倍」です。そのため、ダボ穴により19mm厚が14mmとなった板に対しては、「14x2.5=35」となり、35mmのネジを使用します。ダボ穴をあけない場合は「40mm」のネジを使用することになります。「大は小を兼ねる」とも言えますが、兼ねる分だけ無駄が生じることになります。つまり強度的に無意味ということです。さて、こうした「ダボ処理」のための座ぐりですが、例えば板厚が「40mm」だとか、またはネジを通したい板の長さが60mmなどといった場合、このダボ穴の深さはどうするでしょう。単にネジ頭を隠す目的でのダボ穴として、5mm程度の深さであけると、板厚40mmであれば「35x2.5=87.5」となり、88mmのネジを使用することになり、60厚であれば138mmなどという異常な答えが出てきます。ここで当店の言う「座ぐりの基準」が出てきます。「主に30mm厚を超える板材、またはネジ貫通厚の場合、基の厚みの半分までを座ぐる」としています。板厚40mmであれば、ダボ穴(木栓穴)の深さは20mmとなり、貫通厚60mmであれば30mmとなります。前者の使用ネジは40mm以上となり、後者は60mm以上(共に板厚x2倍)になる訳です。つまり、ネジ頭を隠す目的と合わせ、「板厚」「接合強度」「現実的なネジ長さ」を考慮することにより、こうした「座ぐり」の深さが決まるのです。
■アメリカナイズを卒業したい日本人的作風のすすめ 2004.11.6 (第327回)(あと39回)
「派手こそ美徳」を心情とするアメリカ文化。日本語と比べ極端に文章や言語表現のための単語も少なく、ために身振り手振りや表情によって意を伝えようとする。なにもかにもストレートな異文化構造。今を賑わすイラクの統治は、まさに「悪の枢軸、日本」の戦後統治を手本としているという。テロリストは間違いなく除外して、それ以外での「アメリカ統治に不安を抱くイラク国民」の多くは、「統治によるアメリカ化」に対する自文化の侵害を恐れている。潔しを心情とし、長いものに巻かれる日本人は、戦後のアメリカ的洗脳を抵抗なく受け入れ、しっかりとアメリカ化した。そうした戦後の歴史的経緯に感心のない世代は、己が使うカタカナ語に「国際的」な自負を抱いているだろうが、間違いなく敗戦国民の「Subject
to」(隷属する・制限下におかれる)の結果である。さて、和タンスしか知らなかった日本人が、いきなり「ハート」のくりぬきや、波打つ曲線デザインのカントリー風家具を目の当たりにした時の驚きはいかほどだったろう。なにせ「ストレート」で「派手こそ美徳」である訳だから、思わず赤面するか、または呆れるか、または唖然としただろう。ただし元来、世界的に手先が器用で、吸収の得意な日本人は、ただ単に弱者的義務として受け入れるのではなく、「使用者本位の手作り家具のおもしろさ」として、その興味をしめした。独創の苦手な国民性のため、現在でもそのほとんどが、いまだアメリカナイズされた作風に甘んじているが、「精度」や「品質」の面では、本国をもおどろかす拘りを表しているものが多い。日本の伝統的家具は、海を渡ってもその価値評価はアメリカ的カントリー家具より数十段高い。高度な技術を問うものでなく、その作風から醸し出される文化的表情が尊ばれているのである。もっと正直な「日本人的作風」を、異文化で育ったカントリー風家具として作りだそう。日章旗を作品に活かせとは言わないが、せめて「星条旗」をシンボルにするのはやめて欲しい。もう統治は終わったのだから。
■トリマー応用編 その1「U溝ビット」 2004.11.7 (第328回)(あと38回)
「トリマー」は、その先端ビットを取りかえることによって、色々な加工が出来ます。とはいうものの、実際には「コロ付きボーズ」を装着した「面取り加工」にしか利用していないという人が多いようです。そこで今回は、このトリマーの様々な利用法についてお話しします。第1回目は、「U溝ビット」を使った溝装飾について紹介します。この加工は、最近当教室でも、「扉の装飾」として急激に人気が高まっています。扉板の縁から四方約5cm内側に溝を入れる装飾です。これは、高度な扉構造である「鏡板の框組み式」(額の中に板をはめ込んだ方式)を模したもので、実際には1枚の板なのですが、その溝の縁取りによって、より高級感を出すことが出来るといったものです。使用する「U溝ビット」は、面取りに使うボーズビット類とは違い、「コロ」が付いていません。「コロ付き」であれば、そのコロが木材の「木端」や「木口」にそって転がってくれるので、削り過ぎるということはないのですが、コロのないこうしたビットは、そのままでは「自由曲線切削」、つまり動かすままに進んでしまい、まっすぐに進むことが出来ません。例えれば、フリーハンドで直線を描くよりも、もっと難しくなります。そのため、この様なコロのないビットでは、トリマー本体に付属品として同梱されている「平行ガイド」を装着します。T字型をした金具で、木材の端に引っ掛けることで、それに沿ってトリマーを進めることが出来ます。ただし、このガイドは、木材の端から、約5cm程が最長距離ですので、それを超える距離での平行切削の場合には、ガイドを外し、直線の出ている板材などを使い、トリマーのベースをそれに沿わせて彫り進むといった方法を取ります。さて、実際に彫り進む場合の注意ですが、試し彫りをしながら、ビットの出具合(彫る深さ=ベースの木材接地面からの出っ張り)を確認し、好みの深さ(=深さが決まれば、溝幅も比例して決まる)を調整します。おすすめは「出が3mm程度」です。ビット自体のU溝部分は1cm以上の深さがあるため、ついつい出を深くしてしまいがちですが、溝が深くなると、その部分が妙に強調され、見た目にもおかしなバランスとなります。ガイドを使用する場合は、その「ガイドの高さ(厚み)」に注意します。面取り用のビットでは、コロ部分を含め、ビットの出が15mm程度なので、19mmパイン材などでは、そのまま台の上で作業できますが、多くのガイドは、引っ掛け部分が25mm程度の高さ(厚み)となっているため、そのまま台の上で作業すると、ガイドの方が木材より高い(厚い)ため、トリマーのベースが板に密着せずに浮き上がってしまいます。そのため、ガイドのあたる木材の端は、作業台から逃がす(台の端から出す)ようにしなければなりません。また、扉の四方溝の場合は、板の端から端までの貫通直線ではなく、溝の4辺がそれぞれ出会う(直角にぶつかる)必要がありますので、あらかじめ板にラインを引くか、または、四方をそれぞれ短めに彫って、最終的に調整彫りをしていくかになります。また、もっとも注意しなければならないのは、「すべての溝作業が終了してからビットを外す」ことです。ビットの出は目視によるもの(数値としての測定は困難)ですので、もしビットを外したあとで、彫り残し部分を調整するためサ再度作業しようとしても、ビットの出を最初の通りにセットすることは不可能といってよいほどです。「0.01mm」の出の違いでも、明らかな段差が出来ます。溝装飾の途中でビットを取り替え、別の作業をしたりしないようにします。
■トリマー応用編 その2「ストレートビット」 2004.11.8 (第329回)(あと37回)
トリマー本体を購入すると、その付属品として、まるでオマケのように付いていることの多い、このストレートビット。昨日説明の「U溝ビット」と同様の使い方となりますが、その違いは、「U溝ビット」は装飾的な切削に用いるのに対して、「ストレートビット」は、合板のはめ込みのための溝や、継ぎ(木材同士の接合)のための加工など、主に機能性・構造性に関係する部分での使用となります。「ストレート」とは、まっすぐに切り進めるという意味ではなく、切削断面が「Uの字」である「U溝ビット」などに対し、湾曲や傾斜がなく、ビットの太さに合わせたストレートな切削断面であるという意味です。さて、他のビット同様、この「ストレートビット」にも様々な太さがあります。もっとも使用頻度の高いものとして「4mm径」が挙げられます。これは、引出しの底板など、2.5〜3mm厚程度の合板をはめ込むための溝加工に多く使用します。板厚との関係では、必ず「板厚より若干太い径を使用する」ことが原則です。よく木工関連誌などで、「4mm厚のシナベニヤをはめ込むために、4mm径のストレートビットを使用」などと紹介しているものがありますが、板厚とビット径が同じだと、「溝同士をまったくの誤差なく接合」する必要があります。つまり少しの段差も許されず、仮に接合の際、ズレが出れば、合板をはめ込むことが出来ませんし、はめ込みの際に合板が湿気により膨張などしている場合には、きつくて入らないことがあります。特に変形や狂いの多い木材である「パイン材」では、必ず余裕のある太さのビットを選択しましょう。加工方法では、「U溝ビット」と同様で、「平行ガイド」や「あて木」を使用します。当店では、トリマーを逆さに装着してビット先端部を作業面から突出させる自作の治具を制作し使用しています。市販品では「トリマースタンド」を使用することにより、効率的な作業が可能となります。また、この「ストレートビット」は、ウェルカムボードなどに代表される「浮き彫り」にも使用されます。この場合は、ガイドなどの治具は使用せず、フリーハンドで切削する高度な作業となります。一部「味」のない大量生産品などでは、コンピュータ制御による「機械彫り」など、特殊工作機械を使用していますが、トリマーによる自由切削のものほど、自然味があり、また親しみが持てる作品となります。
■トリマー応用編 その3「V溝ビット」 2004.11.9 (第330回)(あと36回)
その名の通り先端がV字型をした「V溝ビット」は、前々回の「U溝ビット」同様、基本的には装飾的意味合いの強いものです。「平行ガイド」を利用して、材の端を進むことにより、ボーズビットを使った丸みのある「ボーズ面」とは異なる、「サジ面」と呼ばれる傾斜角の面取りも可能となります。とはいうものの、他のビットと比べ、あまり作品への利用価値は少ないとされています。木工愛好家の中には、この「V溝ビット」を装着したトリマーを、書道の筆の如く扱い、文字を彫る人もいます。つまりこのビットは、先端が鋭角で、根元に行くほど、その切削幅が広くなる訳ですから、トリマーベースの一辺をその基準として材に密着させながら、ビットを浮き沈みさせ切削することで、立体感のある筆文字になります。もちろん高度な「技術」と「字心」が必要となることは言うまでもありません。こうしたビットを使った装飾的切削。カントリー系家具の世界には無縁のように思われてきましたが、今年5月放映の「テレビチャンピオン カントリー家具職人選手権」に出場し、見事優勝した吉田知加子さんが、同放送内で紹介した「トリマーを使った麦の穂の加工」により、この「V溝ビット」が注目されました。ご本人への問い合わせもさぞかし多かっただろうと思いますが、なぜか、審査員として出演した私のところにも、多くの問い合わせがあったほどです。これまで一般的には、「麦の穂」を扉板に彫る装飾は、なかなか素人には真似できない特殊技法とされ、やたら高額なカントリー家具メーカーのオリジナル商標的扱いをされてきましたが、番組内での、いかにもたやすく加工できるような印象から興味を持った方も多いように思えます。ところが、そうそう簡単にいくものではなく、彼女にしても、おそらく数百回という場数をこなし、現在の技術を身につけたものと思います。ビットは高速回転をしているため、刃を入れた時点から、進みたい方向とは違った方向に刃が取られます。また、木材繊維の堅さや向きによっても、微妙な操作加減が必要となり、さらには、面取り時のような、ベースを密着させて行うものではなく、不安定に浮き沈みをさせながら立体的な穂を描くため、高度な技術が要求される訳です。「それでも道具さえあれば、なんとか形になるのでは?」という人もいますが、まずは少なくとも、「鉛筆を使って、自分で綺麗な麦の穂を描くことが出来ること」が前提となるでしょう。
■墨付け・切断の基準辺について 2004.11.10 (第331回)(あと35回)
本日の講座で331回目、つまり331日目を迎えました。タイトル末尾に(あとxx日)と書いてある意味は、この講座を開始する際の、「1年間休まず続ける」という勝手な決意によるものです。残り回数を書くたびに、我ながら寂しい気分と、「ゴールまでもう少しだ」という、相反する気持ちで、本日も講座を続けます。さて、「墨付け」や「切断」をする際に基本となるのが、「木材の基準辺」です。市販の木材は、サイズ表示もさることながら、「辺の直線」も「辺の平行」も均一ではありません。木材特性としての伸縮性に加え、製材時点での不正確さもあります。例えば、「19t x285x1820」(t=厚み)というサイズ表示の木材も、実際に測ってみると、厚みが20mmだったり、幅が282だったり、長さが1830だったりします。さらに、測る位置によってその数値が数ミリ違っていたりもします。木材を知っている人にとっては当たり前のことですが、そうでない人は、「不良品だ」といってクレームをつけたりしているようです。生産提供する側にとって、市販木材はあくまで「素材の提供」であって、それを購入するひとは、自らが裁断加工するものという考え方が根底にあります。つまり電化製品の規格表示や家庭用品の品質表示とは異質のものと言えます。木材のサイズ表示は、あくまで「約」であって、しかも完璧な直線や均一な平行が出ていることを約束するものではないということです。かといって、我々ビギナーが木工を楽しむにおいて、その「木取り」や「墨付け」「切断」と言った作業をする際、木材の「4辺」すべてを切り捨て、あらたな「正確辺」を切り出すということは、容易なことではありません。そこで、効率的な意味合いからポイントとなるのが、「基準辺を決める」ということです。4辺の中で、もっとも直線の出ていて、切り口のきれいな「辺」を1辺決め、すべての墨付けラインを、その辺からの「直角」や「平行」で引いていくものです。現実的には、長手方向(一般には木端側)の2辺のうちのどちらかになり、妻手方向(木口側)は信用しないことです。こうした墨付けや切断を行うことは、特に正確な直角さが大切な据置型箱物家具を作る上でのポイントとなります。
■賢いオイル塗布法 2004.11.11(第332回)(あと34回)
塗装前の木材は、仮に均一的な色合いの白木状態であったとしても、オイル塗装をすることによって、部分的に極端な色の差が出たり、また同色のオイルを使ったはずなのに、過去の作品の色と違っていたりなど、なかなか思い通りにいかないといったケースが多いものです。下地を潰すペンキ類と違い、こうした「浸透による下地を生かした着色」というものは、塗布工程が容易な反面、ある程度「仕上がり具合は自然に任せる」といった大らかさも必要です。とはいうものの、なるべく均一な色合いを望む場合での塗布方法というものもあります。「部分的な色の差」は、「オイルの吸い込み具合」により起こります。これは「オイルの量」ではなく、木材自身の「浸透許容量」によるもので、つまり、繊維の詰まった堅い部分は浸透性が悪く、そのため着色成分が入り難いため、色が薄くなります。逆に柔らかい部分は浸透性が良く、着色成分をたっぷり吸い込んでくれるため、比較的濃い色になります。木材部位で言えば、前者は年輪に近い「心材」と呼ばれる赤みがかった部分に多く、後者は「辺材」と呼ばれる樹木の外側に近い部分に見られます。「それなら、柔らかい部分に塗るオイルの量を少なくすればいいのでは」ということになりそうですが、そうすると今度は、その「柔らかい部分の範囲内」で人為的な塗布加減による濃淡が出てしまいます。つまり「これ以上塗っても吸い込まない」というところまで塗布しないと、「塗りムラ」が生じる訳です。着色の常識として、「塗布量によって色合いを調整することはしない」ということになります。木材の吸い込み特性とは別に、単に「薄めの色にしたい」という場合には、そのオイルが指定する「薄め液」で希薄し、同様の方法で塗布することになります。均一的な色合いにするための初歩的工程は、「塗布前の表面研磨」です。手が真っ白になるくらい徹底的な研磨(ヤスリがけ)をすることによって、その木粉がオイルと混じり合うことで「目止め効果」を発揮し、浸透差を少なくしてくれます。当然、表面の汚れや傷、樹液等によるムラの原因も除去出来ます。浸透性の良いオイル(粘度のない水っぽいもの)ほど、木材部位による浸透差が、その着色度に表れるわけで、逆に粘度を持ったオイルは、その粘りにより表層に止まるため、濃淡の差を少なくします。木粉と混じることの意味は、ここにあります。(明日へ続く)
■続 賢いオイル塗装法 2004.11.12(第333回)(あと33回)
(昨日より続き)浸透差を少なくすることが、見た目の色合いの均一化につながるため、こうした目止め効果がもっとも効果的といえます。オイルステインを使って仕上げをしている(とパンフレットに書いてあるが、おそらくオイルフィニッシュの間違いと思う。わざわざ安価で効能のない合成樹脂の泥水を使っていることなど、なんの自慢にもならない筈だから。)らしい某有名カントリー家具ブランドの商品などは、下地は見えるものの、妙にのっぺりとして、ぼやけた印象を与えてくれますが、これは明らかに、トノコ系統の目止め処理を施した後、着色塗布をしています。さらに、そのままだと表層のみの浸透凝固のため、目止め剤といっしょに色落ちや剥離してしまうため、表面のワックス処理でコーティングしているようです。数多いユーザーの要望を平均化した結果、本来の意味での「自然な濃淡」と「木材の主張」を殺したものに落ち着いたといってよいでしょう。もちろん仕上がりの好みは、人それぞれですので、決して否定するものではありません。極端な濃淡を抑える効率的な方法として行われる塗布法に、「オイルの下塗り方式」があります。基本的には「目止め」と同じですが、下塗りに、上塗りと同じオイルフィニッシュを使用するという点で、木材保護効果を遜色しない優位点があります。下塗りには、オイルフィニッシュの「ナチュラル色」を使用します。塗布後10分から20分のインターバルをおいて、上塗りとして同系統のオイルフィニッシュの好みの色のものを塗布します。つまり、下塗りとなるナチュラル色は、オイルフィニッシュの「浸透凝固による木材保護」の役割を担い、上塗りとなるオイルフィニッシュは、先客である浸透済みのナチュラル色により、その吸い込みを抑えられ、結果として極表層部分にしか着色されないため、均一的で、しかも薄めの色合いに納まるとった具合です。(さらに明日へ続く)
■賢いオイル塗装法 完結編 2004.11.13(第334回)(あと32回)
(昨日より続き)いずれにせよ、自然材の特性によって起こる色調を、自分の好みでコントロールすることは、それなりに工夫と労力が必要となります。また、数年数十年経過すると、木材は「焼け」によって変色し、さらにその木目部分はより一層際立つようになり、人為的にコントロールした色調バランスは完璧に否定され、何も意識せずに塗布した場合と同様の色調バランスに落ち付きます。このことは、何も塗布しない白木状態でもまったく同様の結果が表れます。つまり、当初は均一的な色合いの白木状態であったとしても、年月の経過とともに、塗った場合と同様、色調の濃淡が表れてくるのです。今回のテーマである「賢いオイル塗装法」の結論は、自然に対してあれこれと自分好みを要求せず、自然な濃淡を受け入れ楽しむべきということです。いろんなカントリー系雑誌を眺めても、「ナチュラルを楽しむ」とか「より自然であれ」など、ことさら「自然」を強調してはいるものの、どうもその内容は、「雑木林」より「植林地」を好んでいるようです。木工趣味が、どの分野よりも永く継続すると言われる意味は、相手が自然の特性をもっともあらわす「木材」だからです。それを理解しコントロールしようとしても、結果は自然のなすがままに納まります。人間もまた自然のなかのひとつと考えれば、その対話は飽きることなく永遠に続けられます。
「オイルフィニッシュ」=天然油を用い、木材に浸透凝固させ、内部より保護する効果を持つ。自然な艶とウエット感が出る。元来は無色透明で、主に色彩豊かな広葉樹への塗装に使用される。最近はパイン材等、色味のない針葉樹への需要のため、広葉樹に模した着色剤を配合した有色のものが多い。その結果、材の吸い込み特性による「色出」の違いにより、経験の浅いビギナーから「色が違う」というクレームが多いとされる。
■アクリル板のすすめ 2004.11.14(第335回)(あと31回)
木工ビギナーの間では、ガラスの代用として、透明のアクリル板を使った扉が急増しています。アクリル板の長所は、ガラスに比べ「割れない」「手に入りやすい」「自分でカットや穴あけが可能」などがあります。当店木工教室でも、お客様持ち込みに限定したオリジナル品を除き、基本的にはアクリル板の使用をおすすめしています。現在も一部住民の避難生活が続く「新潟中越地震」の災害などを例にとっても、家具の転倒や落下時におけるガラス製品のもろさは、大きな怪我に結びつく危険性をはらんでいます。「アクリル板は安っぽい」というイメージもあるようですが、実際のところ、ガラスの方がアクリル板より安価です。アクリル板の短所といえば、ガラスに比べ「傷が付きやすい」「静電気によるホコリの吸い付け」があります。それでも前述の長所を考えれば、手作り愛好家にとっては充分ガラスに変わり得るものと言えます。多くの幼稚園や保育園などのサッシには、アクリル板が採用されています。つまり「割れない」という安全面を配慮したものです。もうひとつの長所は、その「軽さ」にもあります。扉への採用は、丁番や枠材への加重を軽減してくれます。自身が手作りであるがゆえの不安感ではありませんが、少なくとも、自分の作ったもので自分が怪我をすることほどつまらぬものはありません。これからは、特に安全面に配慮した作品作りというものが注目されます。アクリル板は「糸ノコ」でも切れます。
■作品設計のポイント(怒りの主張編) 2004.11.15(第336回)(あと30回)
作品設計にあたってもっとも重要なのは、その目的意識です。単に「木工を楽しみたい」とか「なんでもいいから作りたい」という、漠然とした物作りに対する欲求はよくわかりますが、生活に根ざしたものでなければ、それは一時の「欲求解消のための産物」になってしまいます。つまり近い将来、その物に対し、必ず飽きが来てしまうということです。作り出す作品に具体的価値を求めたものは、確実に生活の中でその役割を主張し発揮します。もちろんガチガチの実用作品を推奨しているのではありません。木工を楽しみ、そのデザインに遊び心を取り入れ、尚且つ実用性のあるものであれば、自作という愛おしさもあり、永く生活のなかで重宝するものと考えます。リサイクルが叫ばれるほど、世の中は「不必要になった物」であふれかえっており、、その主たる原因は、消費者の「飽き」にあります。それは、「物」の利便性を放棄するものでなく、次から次へと「別の物」へと乗り換えるという、「物を短命にする行為」が成す、人間の身勝手さに起因するものと思います。「作ったはいいけど、今はホコリをかぶっている」と言った作品ほど可愛そうなものはありません。ましてや、市販品であればリサイクルも出来ようものが、なまじ自作品であるがゆえ処分に困っているなどといった話を聞くと、思わず涙が出てきます。仮に、これを我が子に置きかえれば、「何となく付き合いで作ったけれど、今は飽きたから放ってある」ということになります。現にそうした結末が引き起こす惨事は、昨今あきらかに急増しています。処分されたくない「子」が、必死になって自らの「利便性」を主張している姿など想像すると、断を下す製造者の身勝手さに怒りを覚えます。話が飛躍していますが、「殺す(捨てる)なら、買い手(引き取り手)を探す」といった程度に止まる低俗な時代背景は、こうした物作りの根底にも、その意識が確実に表れてます。(明日へ続く)
■作品設計のポイント(サイズ設定編) 2004.11.16(第337回)(あと29回)
目的収納の場合、その収納物に合わせたサイズ設定が基本となりますが、隙間なくきっちりと収納するといったケースは、まず考えられません。オーディオ機器にしても、電子レンジやオーブンにしても、放熱スペースとしてのゆとりが必要ですし、書物やソフト類についても、指を掛け引出すための隙間も必要です。そうした意味、ある程度の余裕を考慮さえすれば、収納物に合わせミリ単位で必要寸法をはじき出す必要はなく、むしろ注意すべきは、作品の「外寸」となります。つまり、その作品を置くためのスペースに合わせたサイズ設定ということです。これは、室内の他の家具やインテリアとのサイズバランスにも係るため、そのデザインも含め「センス」の表れるところとなります。もちろん、この外寸においても、設置場所に合わせた「ミリ単位」のはめ込み設定は愚の骨頂です。潰しのきかない作り付け家具とは異なり、「生きたひとつの作品」としての完成度を引出す演出をするためにも、ジグソーパネルの駒一枚のような配列よりは、やはり収納物のそれ同様に、余裕をもったサイズ設定が重要となります。木工関連誌に掲載されている、木工作家の作品の外寸表示を見ると参考になるのですが、例えば「w450 d280 h800」などと、とても切りの良い数字になっているものがほとんどです。これは、その作品に対して「独立した完成体」としての視点が表れています。「切りの良い寸法の方が作りやすいからじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、そんなことはなく、逆に、それを構成する各部材は、ものすごく切りの悪い寸法(つまり、392とか791など)となります。また、中には、例えば「w438 d279 h799」などのように、妙に外寸が切りの悪い寸法の作品を発表している作家もいます。むしろこちらのほうが「製品として作りやすいサイズ設定」の表れで、つまり、木取りする各部材を「切りの良い寸法」(1の位が0になるような寸法」としているため、結果的に組み上げられて完成する外寸が、「切りの悪い寸法」となっているのです。後者タイプが悪いとは言いませんが、前述のように、「余裕をもったサイズ設定」の観点を基とし、インテリアに活きる完成体として捉えるならば、あくまで「外寸」を基準としたサイズ設定をすべきと思います。
■作品設計のポイント(技術的観念編) 2004.11.17(第338回)(あと28回)
現在某出版社と、来年発売となる木工専門誌への掲載作品選定や、そのデザイン等について検討をしています。その大きな要素となっているのが、「初心者にも作れる」「特殊工具を使用しない」「シンプルで実用的」「自分サイズへの変更がしやすい」「素材はホームセンターで購入できる」などです。実はこうした要素こそ、作品制作においての重要なポイントとなります。つまり本職の作り出す作品には、必ずと言って良いほど「こだわり」の主張が表れるもので、意識せずともその本音には、本職であるがゆえのプライドがにじみ出た「素人には真似できない出来栄え」を求めるものです。そういう私自身も、初心者向け作品プロセスを、木工関連誌の誌面上で紹介し続けながらも、どこかにそうしたプライドが潜んでいることを否定出来ません。家具制作を生業にしている我々にとって、「初心者にも作れるシンプルな家具」というものほど難しいものはなく、プロであればその経験や手法、道具等によって、常識として容易に解決できる構造やデザインも、はたして初心者にとっては技術的、道具的に不可能である場合も多く、つまりそうしたことが「足かせ」となって、「こだわり」を作品に活かすことができなくなります。しかし逆の意味、そうした「初心者にやさしい作品」を模索するうちに、本当の意味での「手作り家具」のあり方が見えてきます。作り手となる初心者側において作品のデザイン・設計をする場合、「知識」として理解出来る部分については、木工誌を見るなり読むなりすれば、それなりに身につくものですが、実際に作業する場合での「技術」や、それに付随する「経験」というものは、いわば「場数」によって培われるものです。「場数」を踏むことによって得られる「技術的経験の回想」が、デザイン・設計に大きな影響を与えます。つまり、「こういうデザインにするためには、こういう作業が必要」ということが見えてきます。逆の意味では、「こういうデザインにしたいが、今の自分の技術では出来ない」という部分がはっきりと理解出来るようになります。そうしたことがハードルとなって、足踏みしながら木工に対する興味をなくしてしまうというビギナーが多いことも事実です。つまり、簡素な作品制作の積み重ねが重要で、木工に慣れ親しみながら、技術的にも向上し、「こうするためには、どうすればいいのだろう」という疑問と欲求をもつことが、より高度な作品制作への足がかりともなります。つまるところ、自身が制作している姿や、その具体的工程を思い描くことが出来ない限り、実現性のある設計やデザインは不可能と言えます。
■作品設計のポイント(効果的配置編) 2004.11.18(第339回)(あと27回)
作品の分類というものを考えた場合、その「形状」で言えば、「床置きタイプ」「卓上タイプ」「壁掛けタイプ」の3分類があります。。また設置場所で見ると、「玄関用」「リビング用」「キッチン用」「寝室用」「子供部屋用」「トイレ用」等の演出スペースに合わせた作品というものがあります。はなから「家の中の家具類は100%手作り品」という人は、今の世の中には存在しないと思います。家電製品もあれば、手作りに興味を持っていなかったころの調度品もあれば、生活雑貨もあれば、家具屋で購入したものもあればで、そうした中に手作り品がまぎれ込んでいたりで、実際のところ、様々な家具類に囲まれた、非常にアンバランスなインテリア演出のお宅が大半を占めているようです。もちろん、違和感のない配置で、おしゃれな演出をしているお宅も多くあることは事実です。既存の家具類との調和を考えた演出は、いわばインテリアセンスの表れと言えます。カントリー雑誌やインテリア雑誌でセンスを培うのが一般的なのでしょうが、なかなか実際には、我が家の室内のありさまを振り返ると、そのギャップに「ため息が先行するばかり」という人が多いのではないでしょうか。そこで「手作り家具」の専門家としてのお勧めは、既存の物との調和については、それぞれのセンスに任せるとして、まずは「偏った配置をしない」ということです。冒頭の分類でいうところの、各演出スペースのそれぞれに、満遍なく自作品を配置し増やしていくということです。「キッチンだけ」とか「リビングだけ」といった配置では、妙に浮いてしまうものです。「今回はリビング用のものを作ったから、次回はキッチン用のものを作ろう」と言ったように、演出場面を都度変えることで、結果としてバランスのよい屋内演出が行われます。手作り品とはつまり、既成家具の中にあって一際目立つものであり、また目を引くものです。逆にやたら手作り品が並べ立てたれた演出では、そうした新鮮味もなく、やぼったい印象を与えるものです。さらには「キッチンだけは手作り品だらけ」などとなると、むしろ「偏った趣味嗜好」か、もしくは「家庭内で虐げられた世界」といったように受け止められるものです。数は少なくとも、各スペースに点在した設置が、効果的配置の理想と思います。
■ビスケットジョイントのすすめ 2004.11.19(第340回)(あと26回)
過去の講座でも解説しましたが、今回は、もう少し具体的にお話します。本日の「今週の注目作」に掲載されている、三芳町の湯澤さん制作「オリジナルベンチ」をご覧下さい。格子状の背もたれ部に注目すると、複数の縦格子を、上下から挟んだ構造をしています。これを「ネジ」のみによる組み立てで考えると、まず、下側の横桟は、幅60mm程度ですので、深さ30mm程度の座ぐり(ダボ穴)をあけた後、長さ60mm程度のネジで、格子に対し止めることが出来ます。もちろん穴はダボ埋めします。問題は、上側の「飾り板」から格子に対してどうやって止めるかです。この飾り板は、幅のあることろで140mm程度ありますし、起伏のある曲線カットが施してあるため、下側のようにネジで固定することには無理があります。仮に、極端に深い座ぐりを行い、無理やり長いネジで止めたとしても、当然飾り板上部の木端(コバ)には、ダボ埋めした形跡がはっきりと表れ、見た目にもおなしな仕上がりになります。そこで登場するのが、この「ビスケットジョイント」です。旧来の工法では、丸棒を使用した「ダボ継ぎ」、または「ホゾ継ぎ」が正攻法となりますが、加工の難しさの点で言えば、欧米で一般的な継ぎの手法であるビスケットジョイントによるもののほうが、はるかに容易な作業で、しかも正確に作業を行うことが出来ます。その名の通り、楕円形をしたビスケット形状の薄い木片を、専用工具を使って掘った溝に、嵌め込み接着することで、ネジを使用せずにジョイントが出来ます。こうした「継ぎ加工」というものは、完成した作品からは見えない部分ですので、こだわりを持つ職人にとっては聖域とされ、その技を入れ込む恰好の工程とされています。技に酔って時間を費やすよりも、思い通りの作品を作って楽しみたい私達にとって、この「ビスケットジョイント」は、容易でしかも短時間で実現するジョイント法ですので、ぜひ身に付けてほしいと思います。
■効果的なキャスター取り付け法 2004.11.20(第341回)(あと25回)
床置きタイプの作品を、より機能的にするキャスター。取り付け方法自体は、作品の底板に木ネジで止めるだけなので、いたって簡単です。もちろん数十キロもの耐荷重が必要な作品に関しては、充分にその選択に注意しなければなりませんが、小型中型作品における機能性目的での場合には、さほど神経質になる必要はありません。キャスター式作品で要望の多いものとして、「キャスターをなるべく見えないようにしたい」ということが挙げられます。ナチュラルな木製品に対し、無機質なキャスターは、たしかに見栄えが良くありません。そうした場合での一般的な取り付けのための構造が「底上げ方式」です。「今週の注目作」の所沢市 河井さん制作の「ゲームボックス」がその一例です。はた目には、キャスターが付いているようには見えませんが、可動式キャスターが4個取り付けてあります。この「底上げ方式」での留意点は、「キャスターの取付高」をあらかじめ確認することです。例えば、作品に使用する板を、すべて19mm厚とした場合、「取付高42mm」のキャスター使用では、「側板」への「底板ライン」(墨線は常に板の上側とする)を、作品本体の下端から「51mm」とします。つまり、作品本体からのキャスターの出を「10mm」とし、キャスター高の残り32mm+板厚19mmを足して「51mm」が底板ラインとなる訳です。これによって、側板方向から見ると、キャスターの出が、わずか10mmのため、ほとんどそれと解らない仕上がりとなります。正面側には「下飾板」を取りつけることで、同様にキャスターを隠すことが出来ます。基本的に、車輪が荷重によって沈み込まない限り、その接地部分のみを確保すれば機能しますので、わざわざ全体を露出させる必要はありません。当店のキャスター式作品は、この「キャスター出10mm」の取付法で設計されています。
■引出し関連のおさらい「その1」 2004.11.21(第342回)(あと24回)
回も押し迫り、言い残したことはないかと、日々遺言をしたためるが如くの心境です。さて、実用的で、しかも見栄えのする「引出し付き作品」は、当木工教室でも、毎日必ず制作されているくらいの人気です。引出し制作についてのポイントをおさらいすると、「木裏を外側にする」「底板(ベニヤ)はめこみ用の溝深さは5mmにする」「底板(ベニヤ)は、縦横それぞれ内寸+8mmにする」「正面板にダボ穴を嫌う場合は、2枚重ねにする」などがありました。「溝深さ」対「ベニヤ寸法」にもう一度触れますが、底板(ベニヤ)は、「正面板」「向う板」「側板2枚」に掘られた溝にはめ込む方式となります。底板をベニヤにする意味は、引出しそのものの軽量化が一番の目的です。次には、ベニヤ使用による、引出し変形の防止があります。つまり、四方及び底板を、同質木材で作った場合、木材の伸縮特性によって、狂いが生じてきます。数ミリの遊びを利用して出し入れされるもののため、こうした狂いは大敵となります。木目交差による構造をもったベニヤは、伸縮比率が各段に少ないために底板として利用されます。さらに、他部材からの変形影響を受けにくくするために、あえて接着などの固定をせず、遊びをもったはめ込み構造としています。ここでポイントとなるのが、前述の「溝」です。「溝深さ5mm」ということは、引出し内寸に対し、縦横ともに10mm大きいはめ込み板のためのスペースが確保されるということです。そして、そこにはめ込まれるベニヤサイズは、同内寸に対して8mmプラスしたサイズです。つまり、2mmの遊びをもったはめ込みとなる訳です。(明日へ続く)
■引出し関連のおさらい「その2」 2004.11.22(第343回)(あと23回)
引出しの基本形は、2枚の「側板」を「正面板」と「向う板」で挟み込む構造です。つまり、枠となる4枚の板とはめ込み式の底板で構成されます。接合方法を「ネジ止め」とした場合、当然「正面板」には「ダボ埋め」(木栓)処理をすることになりますが、そうしたネジ止めの痕跡を残したくない場合には、この基本形の構造に対して、もう一枚「正面板」をかぶせる方法を取ります。追加する正面板は、表側からのネジ止めではなく、既存の正面板側、つまり内側からのネジ止めを行います。これにより、正面側にはネジ跡がまったくない仕上がりとなります。さらに気のきいた構造では、内部4枚の構成は、側板を挟み込むのではなく、「側板で、正面板と向う板を挟む」ようにします。こうした「正面板かぶせ式」で注意しなければならないのが、「ツマミの取り付け」です。正面から木ネジ方式で取り付けられるタイプについては何ら問題はないのですが、内側からの貫通穴で取りつけるタイプの場合、一般的にツマミの付属ネジというものは、正面板を20mm程度の板厚でしか想定されていませんので、板が2枚重なる引出しでは、ネジが短くてツマミまで届きません。そのため、付属ネジと同規格の長いネジを別に購入する必要があります。ここでやっかいなのが、「ネジの規格」と、「ちょうど良い長さ」の確認です。ネジの規格には様々あり、現在主流なのが「ISOネジ」という世界標準化機構の定めるものですが、実際には、「旧JIS規格」や「インチ規格」、その他メーカー独自品などが存在し、完全な統一化がされていない現状です。ですから、最悪の場合、取り付けたいツマミに使用出来るネジが販売されていないこともあります。規格の合わないネジは、当然、ツマミのネジ穴に対し、ねじ込むことが出来ません。また、同規格のネジが販売されていた場合でも、ちょうど良い長さのものがないということもあります。長すぎても短すぎても使用出来ません。このように、目的のネジが手に入らない場合には、「座ぐり」をすることになります。つまり、内側となる正面板に対し、ネジの頭が通る程度の太さで掘り込み、板厚を薄くするという方法です。これにより、付属のネジをそのまま使用することが出来ます。
■ネジの締め加減について「その1」 2004.11.23(第344回)(あと22回)
ネジを使用しての組み立てが多いカントリー家具。手回しのドライバーで作業する人はまずいないと思います。当然「ドリルドライバー」による作業が必要となる訳ですが、決して「手回しより作業が楽」という意味からではなく、「締付強度」に関係しています。つまり、手回しでは、最終的な締め込みがあまくなり、しっかりとした接合が出来ないためです。ところで、作品には、「構造」を担う部分の接合のため使用する「ネジ」以外にも、「丁番のネジ」や「ツマミ・取手のネジ」、その他必要金物(例えばキャスターやスライドレール、吊り金具、他)等の取り付けにも、様々なネジを使用します。そこで注意しなければならないのが、ドリルドライバーを使用する場合の「締め加減」です。部材の組み立てに使用される、いわゆる「木ネジ」の場合、締め込む相手が木材であるため、締めれば締めるほど、ネジは木材に対し、めり込むように沈みます。必要強度を得るためには、一般的に「軽くめり込む程度」が良しとされます。ドリルドライバーの操作に慣れてくると、目視による確認をするまでもなく、モーター音の変化(モーターにかかる負荷)で判断出来ます。ほとんどのドリルドライバーには、一定以上の負荷がかかると空回りをする「クラッチ機能」が付いていますが、その部位ごとに固さが異なる木工作業では、あまりあてにしてはいけない機能と言えます。締め込みがあまいと、接合強度が不充分となり、ぐらつきの原因となりますが、逆に締め過ぎると、沈み込んだ分だけ、板厚が薄くなる訳ですから、それだけ強度が落ちることになります。ネジの中で特に注意しなければならないのが、「装飾ネジ」と呼ばれるものです。カントリー系やアンティーク系に使用される「面付け丁番用」がそれにあたります。このネジは、一般の木ネジとは異なり、主に鋳物による精製が行われています。決して機能的に弱いということではありませんが、特に「ドリルドライバーを使用しての締め過ぎ」の場合、ネジ頭の付け根部分から折れてしまうことがあります。ネジ頭の到着部分が「木材」であれば、締め過ぎても沈み込んでいくだけですが、この場合の到着点は金属である丁番ですので、締め過ぎて沈み込むということが出来ずに、頭が引き千切られるように欠落するという惨事に至ります。また、折れないまでも、きつ過ぎることによって、後の木材膨張時(特に雨天時)に、丁番が持ち上げれ、ネジ頭が欠落する場合もあります。丁番ネジの締め込み加減の基本は、あくまで丁番がふらつかずに固定されていればいい訳で、念を入れた必要以上の締め込みは、不幸な結果を生むだけです。
■ネジの締め加減について「その2」 2004.11.24(第345回)(あと21回)
昨日は、組み立てに使用される「木ネジ」と、装飾系丁番に使用される「付属ネジ」の留意点について説明しましたが、本日は、それ以外の多目的に使用されるネジについて総括します。作品に使用される「それ以外のネジ」と言えば、「吊金具用」「キャスター用」「スライドレール用」「補助金具用」などとなりますが、共通して言えることが2つあります。まずひとつは、「付属ネジではない」ということです。そうした金物類には、専用品としての付属ネジがついていないものがほとんどで、別にネジを購入する必要があるということ。「不親切」と思われる人もいるかもしれませんが、これは、「その金物を取りつける相手側の環境」が特定出来ないため、あえて付属されていないと考えるべきでしょう。ふたつめは、ほとんどが「板厚未満の長さ」のネジを使用する場合が多いということです。つまり、板面に対し取りつけるものがほとんどで、板厚を越えると、ネジが突き出してしまうためです。前述の金物類は、すべてそれに当てはまります。こうした金物類のネジ取り付けに言えることは、丁番と同様に「締め過ぎ」への注意です。装飾系以外のネジの場合、締め過ぎによる欠落(折れ)はありませんが、締め過ぎることによって、木材内部でネジが空回りをして、ネジの食いつきがなくなり、「引っ張ると取れてしまう」という結果になります。もうひとつ注意すべき点は、ネジの十字穴とドライバー先端の噛み合わせがうまくいかない場合に起きる十字穴の損傷です。これを「ネジがなめる」と言います。ネジは、ある程度木材に食いつき安定すると、あとは、その角度を維持した状態で、入り込もうとしますが、その場合、ドライバー側の角度にズレが生じると、その噛み合わせがあまくなり、ドライバーが空回りをして、ネジ頭(十字穴)を損傷させます。また、押し込む力が不足しても、同様の結果が起きます。ネジには、その十字穴の切れ込み幅の違いによって、「NO.1」と「NO.2」がありますが、切れ込み幅の小さい「NO.1」に、そうした症状が多く発生するようです。つまり、より薄口であるNO.1のほうが、ネジの金属強度の保持力が弱く、損傷しやすいためと思われます。見分けが付き難いと思いますが、ドライバー側で言えば、より先端の尖ったものが、「NO.1」となります。一般的な木ネジ(JIS規格品)で言えば、太さ2.4mmは「NO.1」で、3.1mm以上は「NO.2」となります。もちろん特殊ネジでは例外もあります。
■ネジの締め加減について「その3」 2004.11.25(第346回)(あと20回)
そもそも「木ネジ」とは、「木材同士を接合するため」のネジです。その構造は、木ネジの全長に対し、先端部側の約2/3にネジ山が切られ、頭部側の残り1/3にはネジが切られていません。なぜすべてにネジが切られていないかというと、木材同士を接合する場合、2枚の木材をより強く引きつける作用を働かせるために、手前側(ネジ頭部側)となる木材にはあえてネジを効かせずに、奥側となる木材のみにネジを食いつかせ、締め込みによって、手前に引き寄せるという目的があるためです。これが、根元までネジが切れていると、手前側・奥側ともにネジが食いつき、いくら締め込んでも、互いを引き寄せる作用は働かずに、「平行的な螺旋の進行」となってしまうからです。そのため、昨日説明の「吊金具」や「キャスター」他の金物類を止めるネジは、正しくは「木ネジ」ではなく、根元までネジが切られている「タッピングネジ」を使用します。基本的に、こうした金物類のネジ穴部分は、「薄い鉄板」であるものが多く、しかもそれ自体にネジを効かせる意味はありません。つまり、こうした金物に「木ネジ」を使用すると、金物の奥側となる肝心の木材部分に効かせるためのネジ山部分が少なくなります。そのため接合強度的には、すべてにネジ山のある「タッピングネジ」を使用することが望ましいのです。ところが、木工解説本や、関連する説明書を見ても、「木ネジで止める」という表現がされているものがほとんどで、「タッピングネジを使用する」と書かれているものはあまりありません。これは、慣習的に「木にとめるネジは木ネジ」という名称認識が一般的となっているためで、他の名称を用いても理解され難いと考えられているからではないかと思います。もちろん、既述の金物類に木ネジを使用しても、目的強度保持に問題があるわけではありませんが、木ネジ構造と、その目的について、知っておく価値はあります。
■怪我をしたい人のための作業法 2004.11.26(第347回)(あと19回)
木工作業中における「怪我をするための方法」は、数え切れないほどあります。「たかが木工」と侮っていると、取り返しのつかない事故となる場合もあります。今回は、あえて「怪我をしたい人」向けにお話しますが、言いたいことは、その反面であることをご承知おきください。さて、木工作業の怪我として、もっともターゲットとなり得るのは「指先」です。しかもそれは、利き腕とは逆の側、つまり多くは「左指」に集中します。というのも、道具の操作は利き腕でおこなうため、それをサポートする左側の手が、とばっちりを受けます。もっとも最悪なのは「切断事故」です。しかしながら、当店がすすめるような一般的な木工作業においては、指を切断するほどの効果ある工具類はありません。怪我の症状として長引く重症となる怪我は、「トリマー」を使用した事故に代表される「裂傷」です。しかも、鋭い刃物で切った程度であれば、回復も早いのですが、本来木材への加工である「面取り」や「溝彫り」を、そのまま肉体に行う訳ですから、えぐれて損失した部分を再生させるには、かなりの期間が必要となります。初心者がついやってしまうトリマー操作では、「小さな材料への面取り」です。たとえば、くりぬきで出た「ハートの端材」を捨てるのがもったいなくて、トリマーで面取りをしたがります。おおよそ手ごろな「手の甲サイズ」であれば、まず事故が起こると思ってよいでしょう。つまり、そうした「小さいサイズの木材」は、左手での支えが確実に不充分となり、トリマーのビットが触れた瞬間に、刃物の回転方向に合わせ、材が前方へと押しやられます。それをサポートしている左手は、材の瞬間的な移動に引きずられ、やはり前方、しかもトリマービットに近い方向へと寄せられ、材自身がトリマーベースからすり抜けるのと同時に、左手親指外側付け根部分、もしくは親指先端、または人差し指先端が、ベース下のビットに触れます。この場合の「ビットに触れる」ことが意味するのは、部分的に無くなるということです。そして不思議にも、さほどの痛さを感じません。むしろ、見てはいけないものを見てしまったことへの後悔の念が、その一瞬に凝縮されたような熱い衝撃を感じます。そして、その5分後あたりから、猛烈な痛みを覚えます。(明日へ続く)
おことわり:この文面は、あくまで「間違った作業方法をした場合の危険性の認識」を求めるもので、怪我を薦めるものではありません。当店木工教室参加者で、そうした怪我をした人は、ひとりも存在しません。なお、怪我の説明や症状、発生時の感覚は、すべて筆者の若かりし頃の実体験に基づいています。
■怪我をしたい人のための作業法 その2 2004.11.27(第348回)(あと18回)
昨日はトリマーによる事故の「重症例」をお話しましたが、トリマー以外にも「身障者認定」を受け得る程度の事故発生確立の高い道具はたくさんあります。本格工作機械では「昇降盤」と呼ばれるものが代表的です。これは主に「手押しプレーナー」「自動プレーナー」「丸ノコ盤」が一体化された工作機械で、基本的には動力電源200V駆動であるため、まさに本職用です。ずいぶん古くから存在する機械であり、事故発生数も多く、おそらく労基局のBKリストにも載っているのではないかと思われるくらいです。事故例としては、手押しプレーナー作業中に、材がカンナ刃の回転方向にはじき戻され、材を押さえていた支え手だけが刃の上に取り残されて、手の平をえぐってしまうもの。また、丸ノコ盤での作業中に、材といっしょに送り手もスライスしてしまうケース。この場合、確実に数本の指が損失します。本職用機械であるがゆえ、一般のDIY作業では起き得ないかというと、そうではありません。昇降盤のみならず、簡易型(普及型)の「丸ノコ」や「スライド丸ノコ」「丸ノコ盤」「手押しカンナ」でも、同じ事故の発生する可能性はあります。そのため、そうした普及型については、ほとんどのものが事故防止策として、「安全カバー」の装着や、「ブレーキ機能」等を充実させています。とはいえ、いかに工具側の安全機能が充実していても、使用する本人に、事故防止に対する認識と正しい作業方法の知識が欠けていれば、いかようにも事故は起き得ます。作業に熟練した人がこうした怪我をする場合、たいてい「ちょっと危ないかもしれない」という予感を持つそうです。つまり、認識や知識に欠けているわけではなく、「急いでいた」とか、あるいは「案外平気だろう」という過信的要素が起因する場合が多いようです。また、ビギナーがこうむる事故は、ある程度作業に慣れ始めた頃に多く発生します。応用的作業、つまり「自己流」での使用法による事故です。工具に対する支配的意識が起こすものですが、あなどった結果の事故に、あらためて道具の持つパワーと怖さ、そして自らの至らなさを実感することとなります。一度そうした怪我を身をもって経験することにより、人は賢く学習します。常に「道具の怖さ」を知っていてこそ、道具の持つ効果をいかんなく発揮出来るというものです。明日は、さらに細かな怪我の仕方についてご案内します。
■怪我をしたい人のための作業法 その3 2004.11.28(第349回)(あと17回)
作業中における細かな怪我をあげればきりがありませんが、怪我の程度は違いこそすれ、その原因は主に「不注意」であるとか、「間違った作業」によるものなどが圧倒的です。ものすごく解りやすい例を挙げると、木材を扱う本職(職人もどきは別として)は、その運搬の際「手袋」を着用します。これは「トゲや切り傷」などの「つまらぬ怪我」をしないがためです。逆に素人はというと、わざわざ着用するような人は少ないでしょう。ここに「玄人」と「素人」の根本的な差があるといってよいと思います。「つまらぬ怪我」を防ぐ姿勢が、「大きな怪我」をも未然に防げる心構えとなって表れるからです。そうした意味、細かな怪我の可能性であっても、事前に知っておくのが好ましいと思います。電動工具類についての作業姿勢や使用法、その他怪我のもととなる要素については、かなり以前の講座で詳しく解説済みですので今回は割愛しますが、基本は「回転するビットやブレードに触れない」ということに尽きます。「当たり前じゃないか」と思われるかもしれませんが、そうした当たり前の事故が絶えないのです。手工具類の代表的凶器は、「カナヅチ」と「ノコギリ」ですが、比較すれば、後者での怪我は少ないようです。現に人的犯罪に使用されるものとしては、圧倒的に「殴打する道具」に人気があるようで、カナヅチは好んで利用されています。さて、作業中の被害者はというと、やはり支え手となる「左手」で、熟練大工の左手親指、もしくは人差し指を見ると、たいてい内出血の痕で黒くなっています。「上手なら怪我をしない」ということはなく、むしろ彼らの場合、故意とはいわないまでも、「釘頭を外して、指を叩くかもしれない」という、ある程度の確信的な度胸による結果といえます。つまり、指を叩いても大騒ぎすることなく、冷静に使命である作業を続行するでしょう。これが素人の場合、およそ小一時間は、苦痛と反省に耐え続け、なかには、怒り心頭カナヅチを放り投げて、制作を放棄するという人もいます。(おもしろいので明日も続く)
■怪我をしたい人のための作業法 終章 2004.11.29(第350回)(あと16回)
(昨日より続き)そうした意味、ハードワークを伴う木工作業というものは、ある程度の「痛さ」を伴う覚悟というものが必要で、同時に、作業屑や粉塵等による作業環境についても、それなりの準備と後始末が必要です。つまり、それだけ「ワイルド」な心構えが肝要ということです。さて、特に電動工具を使用する際に、手袋を着用することはご法度であることも覚えておきましょう。なぜなら、まず「滑る」ということが挙げられます。次に「回転部に繊維ごと巻きこまれる」という危険性があります。昨日説明の「木材の扱い時」とは異なるので、誤解なきよう注意して下さい。そうした危険性もさることながら、「道具は指先の延長」という観念のもと、その中間に「軍手」が介入していたのでは、技術が鈍るというものです。基本電動工具である「ジグソー」「糸ノコ」「トリマー」「ドリルドライバー」では、トリマーを除き、その危険性は少ないものとされています。特にジグソーについては、その作動音の迫力から、怖さを感じる人も多いようですが、実際には、作業中ブレードは材の下にあって、表面に露出しませんし、万が一の破断時にも、ブレードが飛ぶことはありません。もしどうしても怪我がしたければ、材を膝の上に置いて、いっしょに切るという方法もあります。ドリルドライバーでも、怪我の可能性とすれば、刃物部分の切れ味鋭い「木工用穴あけビット」の回転中に、ビットを素手で握るか、または、直接手のひらにビットで穴をあけようとするかといった程度で、なかなか本懐をとげることは難しいでしょう。おおよそ無意味な解説を続けてきましたが、知っておいて欲しいのは、「木工作業に怪我はつきもの」であり、「もしかすると、怪我をするかもしれない」といった覚悟と同時に、「緊張感」と「集中力」を持って作業にあたってほしいということです。また逆に、正しい使い方や作業法をしていさえすれば、決してするはずのない怪我をしてしまうということは、いかにでたらめな使用法であるかが解ります。怪我の可能性をおってみることも、知識と技術の向上に寄与するはずです。
■夫婦で楽しむ家具作りのすすめ 2004.11.30(第351回)(あと15回)
アーリーハッチの木工教室に参加されたお客様の感想として、皆一様に「手伝ってくれるので、とても楽」というお話が聞かれます。参加経験のない方のために説明すると、当教室では、基本的にマンツーマンで作業が行われます。その中でも、参加者から見る最大の利点は、組み立ての際に材を支えてくれるというサポート作業だと思います。当店は、いろいろなカントリー雑誌や木工雑誌のなかで、作品制作のプロセス等を紹介していますが、その大前提とされているのは「一人で制作している場面を想定する」ということです。これは当店の考えからではなく、雑誌編集側の意図するところです。もちろん、ほとんどの作業工程は「ひとりでやれる部分」ですが、組み立て作業に至っては、確実に一人よりも二人の方が効率的であり、また正確性もアップします。特に大型作品などは、サポートする側の役割が重要性を増します。「ひとりで作った達成感」という素晴らしさも否定はしませんが、そこには「見返し」や「自慢」と言った意識が先行しているように感じます。ひとつの作品を作り出すおもしろさや素晴らしさは、むしろ分かち合ってこそ何倍にも膨らむものであって、ひとりで作ったことの価値とは、まったく次元の違う喜びが生まれます。とは言え、現実的には、「ふたりでやると、ああでもない、こうでもないと口を出される」とか、「相手が手作りに興味がない」とか、「不器用であてにならない」などと言った、相手方への不満が多いものです。それでも「手作りのおもしろさを教えてあげる」といった肝要さと、なにより出来あがる作品の価値を高める」といったためにも、特にご夫婦での共同作業をこころよりお勧めします。どうか「せっかくの自分のテリトリーを侵害される」などといった狭い考えは捨て、ぜひ協力しあって欲しいと思います。おかしな言い方ですが、基本的に「夫婦」とは、共同で物作りをするために結ばれるものです。子がカスガイであるように、手作り家具もそうであって欲しいと願います。