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著作:アーリーハッチ 著者: 社団法人 日本DIY協会認定 DIYアドバイザー 首藤浩昭 著作開始日 2003.12.16
著作掲載対象:アーリーハッチホームページ http://www.hatchan.com/subtop.htm
2003.12掲載分 2004.1掲載分 2004.2掲載分 2004.3掲載分 2004.4掲載分 2004.5掲載分 2004.6掲載分 2004.7掲載分 2004.8掲載分 2004.9掲載分 2004.10掲載分 2004.11掲載分 2004.12掲載分(本ページ)
■90度の重要性について 2004.12.1(第352回)(あと14回)
市販の板材といえども、自然木である以上、完璧な平面や切断角度を持っているものはありません。木材は呼吸をしているもので、厳密に言えば、常に変化しています。製材された時点では機械的に完璧な加工が施されていても、その瞬間からも変化をしています。ですから、市販品の寸法規格表示は、あくまで「約」であって、数ミリのプラスマイナスがあります。ところで問題は、そうした板材の木取り作業においての注意点ですが、切り出すための寸法はよしとして、重要なのは「切断角度」です。つまり、カットの際の垂直性の維持です。ホームセンターなどのカットサービス利用の際は、まず問題ないとして、自身で「丸ノコ」や「ジグソー」「糸ノコ」「手ノコ」で切断する場合、木材の板面に対し、いかに垂直を保つかに配慮します。前3者のような電動工具の場合は、そのベース面とブレードが、確実に垂直となっているかどうかを、あらかじめ確認します。というのは、まずこれら電動工具は、任意角度での切断を可能にするため、ベース面の角度調整が出来る構造になっています。そのため、本人は「垂直設定になっている」と思っていても、衝撃や振動の作用により、微妙に角度がずれていたりすることが往々にしてあります。また、設定角度が90度(垂直)であっても、「機械的な癖」により、実際の切断角度にずれがある場合もあります。また、「ジグソー」や「糸ノコ」などは、その切断構造から、工具側に問題がなくとも、使用者側の技術や、ブレードの選び方によっては、切断角度にゆがみが発生します。木取りされた部材は、ほぼすべてが「直角」を前提として接合されるはずです。この場合、切り口の垂直が正確でないと、出来あがる作品自体も、結果的に接地面に対し垂直でないものとなります。木工誌などでは、「仮組み後、さしがねなどを使用して、直角を確認しながら本組みをする」などと解説されていますが、接合される部材の切り口に直角性がなければ、本組みした途端に角度が崩れます。もちろん、ここで述べた90度の重要性というものは、限りなく正確な作品作りを前提としているものですが、自身の手作り木工を発展させていく上において、必ずや必要となるポイントです。
■再び作業姿勢について「ドリルドライバー編」 2004.12.2(第353回)(あと13回)
正しい作業方法を知ることは、安全で楽しい木工を行う上での重要なポイントとなります。切る、接着する、削る、締める、埋める、彫る、塗る、取りつける、などという作業工程の「動詞名」ばかり羅列されたプロセス解説本は多く目に出来るものの、「どのように」という部分、特に電動工具を使用する場面での具体的な作業姿勢については、あまり触れられていないものがほとんどのようです。という訳で、来年発売の某誌編集部より、この部分にやや踏み込んだテーマについての誌面構成の協力を打診されていますので、過去の講座のおさらいの意味も含めてお話します。まずは、基本電動工具の代表「ドリルドライバー」から。どうしても、その形状から誤解の多いのが、「片手で操作する」ということです。ドリル操作の基本は、「両手で操作する」ということ。これは「ピストル」をうつ場合でも同様です。もちろんトリガーは利き手側で行うものですが、もう一方の手で本体を支えることによって、その反動を抑え、より正確にヒットさせることが可能となります。対象物(この場合、人ではなく工作物のこと)が比較的小さく、なおかつドリルの回転作用によって動いてしまうような場合については、片手で行うこともありますが、やはり基本は両手での操作となります。具体的には、ドリル駆動をブレなく安定した状態で作業するため、補助となる側の手は、ドリルのモーター収納部を包み込むように押さえます。つまり、この部分がドリルの重量的支点となり、力学的にもここを支えることによって、装着ビットへの直線的な押し込み力を確保することが出来ます。こうした作業姿勢の際、よく見られる失敗例は、ドライバーとしてネジ締めを行う時です。ネジ先端を木材に当てただけの不安定な状態から、本体を両手で支え回転を始めると、ネジが転び、その反動でドライバービットの先端が木材に当たってしまい、へこみ傷がついてしまうことがあります。熟練してくると、そうした「転び」を起こさずに作業出来るようになりますが、基本としては、「ネジが材に食いつき安定する程度」までは、片手でネジを支えるようにします。この場合、あらかじめ下穴(案内穴ともいう)があいていれば、せいぜい2回転ほどでネジは安定して立ってくれます。場合によっては、下穴のない状態からネジを打つ場合もありますが、その際重要となるのが、「垂直性」です。ドリルを材に対し垂直に構えるのは結構難しいものです。下穴があいていれば、ドリル角度が少々ずれていても、ネジ自体はその穴の通りに進みますが、下穴のない場合には、ドリル角度に従って進みます。ネジが曲がって困ることは、「材からのはみ出し」です。そうした場合でのポイントは、「下側となる材の長手延長上を立ち位置とする」ということです。つまり、ドリルが垂直に構えられているかどうかでは、比較的「左右への傾き」は認識できますが、「手前側・奥側」への傾きは確認しづらいものとされています。そのため、仮に「手前・奥側」への角度ずれがあっても、ネジが突き出す恐れのない方向での立ち位置が基本となるのです。
■再び作業姿勢について「ジグソー編」 2004.12.3(第354回)(あと12回)
ご承知のとおり「ジグソー」は、ブレード(刃)が材の下に突出するため、当然のこと、材の下にはブレード突出しのためのスペースを確保しなければなりません。一般的に大きな材の場合は、作業台の端から逃がす(はみ出す)ような配置でカットし、材料が比較的小さい場合には、馬(2本の角材など)に渡して、作業台の上でカットします。直線カットは別として、大きなカーブを伴う加工の場合などでは、その立ち位置を緩やかに移動しながら作業を行う必要があるため、作業台のコーナー部分にセットするとよいでしょう。本来は、「材をクランプ等で固定して作業を行うこと」が基本とされていますが、支え手による押さえに無理がなければ、個人的にはクランプ固定の必要性はないと考えます。つまり、そうした器具に頼った作業では、得てして「確実に固定されているだろう」という過信によって、ジグソーへ必要以上の「押さえる力」をかけてしまい、器具による固定が不充分な場合には、材ごと落下してしまいます。これは、器具によって固定されている「力具合」が実感として認識しづらいことによって起きるものです。そのため、器具固定よりも、むしろ支え手による押さえのほうが、より全体の「力の作用」が実感でき、「力の配分」が可能となります。曲線を含む正確なカットのための作業姿勢のポイントは、「カットラインをジグソーの真上から追う」ということです。本体の側面から覗き込むような姿勢では、正確にラインを切り進めませんし、「ブレードの垂直性の維持」にも狂いが生じやすくなります。カット中は、常に本体の真上に顔が来るような姿勢を保てる立ち位置に心がけるようにします。
■再び作業姿勢について「トリマー編」 2004.12.4(第355回)(あと11回)
手作り家具の基本工具のなかで、その取り扱いにもっとも注意しなければならないのが、この「トリマー」です。その使用方法や万が一の危険性については、過去の講座で度々触れてきました。その作業姿勢で、昨日の「ジグソー」と大きく異なる点は、ほとんどのビット使用で「作業台上での加工が可能」ということです。つまり、板厚よりビットの出が短ければ、あえてジグソーのように作業台からはみ出させる必要がないため、その分、安定した加工が可能となる訳です。安全面から見た作業姿勢では、まず「支え手はビットに近づけない」ということです。超高速回転の刃物ですので、触れた瞬間に全治数週間が確定します。また、面取り等でのトリマーの送り方向は、「手前から奥に向かって」が基本となります。ビットの回転方向(右回転)に対し、抵抗を感じる向きが正しい切削方向となる訳です。つまり、材の外周の加工は「反時計回り」(左回り)で、くりぬき等の内側の場合は「時計回り」(右回り)となります。作業の際、往々にして切削部分を覗き込む姿勢になりがちですが、切削屑の飛散も多く、また必要以上に覗き込むほど「目視による加減」は必要ないはずですので、一定距離(理想は約30cm以上)を確保するようにします。またトリマーは、ドリルやジグソーのような「トリガースイッチ」(握っている時だけ作動する)ではないため、仮にスイッチがONの位置のままACコードを差すと、猛烈に転がり出し、思わぬ怪我をする場合があるため注意が必要です。またビットの取替え時にも、必ずコードを抜いて行うようにします。
■再び作業姿勢について「糸ノコ編」 2004.12.5(第356回)(あと10回)
曲線を多用するカントリー系作品には欠かせない「糸ノコ」。一般市販品の正式名称は「卓上糸ノコ盤」となります。よく木工関連誌などの制作プロセス写真では、ひざまずいて作業をしている様子が載っていたりましますが、あくまで撮影上の都合のためです。糸ノコでの作業姿勢は、切断ラインを注視する関係上、どうしても猫背になりがちです。それだけ集中力を要するわけですが、これがなれてくると、以外と背筋が伸びます。背筋が伸びるということは、送り手である両腕の力が抜け、長時間の作業も楽にこなせるようになります。糸ノコの上手下手は、実はこの姿勢から来る「力配分」に関係しています。これは車の運転によく例えられるのですが、猫背でハンドルにしがみつくようにして運転する人と、背筋が伸びてハンドルを支える腕もリラックスしている人との差を想像してください。前者のハンドル操作は「切り過ぎ・切り遅れ」の蛇行運転のもととなり、後者はスムーズな運転操作が想像出来ます。糸ノコ作業も同様で、なるべく背筋を伸ばすことにより、切断中のブレード支点のみならず、さらに前方にある「これから進むべきライン」も余裕を持って見れるようになります。すべては「慣れ」の問題ですが、早期上達には欠かせないポイントとなります。
■総集編「オイル塗装」 2004.12.6(第357回)(あと9回)
残す講座も一桁となりました。本日からは「総集編」と題しまして、記憶にとどめていただきたいポイントを簡単に解説していきます。まずは「オイル塗装」について。上手なオイル塗装のポイントは3つあります。ひとつは、塗装前の「木材下地調整」です。表面の傷や汚れ、木材繊維の毛羽立ち等を除去するために、#240程度のサンドペーパーで木目に沿って丹念に磨きます。これによって、色調でいうところの、より均一的なオイルの塗着と、材そのものの美しさを現します。ふたつめは、「塗布量」についてです。オイル塗装は、結果的に「材内部への浸透」を目的としているため、塗布量が「吸い込み許容量」に満たなければ、吸い込みムラが発生します。そのため、塗布直後に、木材表面が濡れて光っている状態であればOKで、そうでない場合は、まだ塗布量が足りないということです。また、塗り面におおよそ1分以上のタイムラグがあると、塗り継ぎムラが発生します。そのため特に、「液ダレ」した面への塗布が遅れると、塗り重ねをしても、タレ痕が残ってしまうので注意します。三つ目は、「ふき取り・乾拭きのタイミング」です。ご存知のとおり、オイル塗装の場合、塗布後数分で、木材表面に残ったオイルをふき取ります。この際、オイルが完全に浸透しきっていない状態でふき取ると、後の吸い込み作用で、材表面の色調ムラが起こります。ベストなタイミングは、塗布後表面に残ったオイルが、やや硬化を始めた頃合に、木目方向に均すようにふき取ることで、均一的な微光沢と色調を実現出来ます。また、塗布後3日間程度は、表面を軽く乾拭きするようにします。つまり、オイル成分は、いったんは浸透し、その後数十時間をかけて材表面に浮き上がってくる性質があるため、それを放置したままだと、浮き上がった成分が材の立ち上がった毛羽立ちと共に、ざらつきを残したまま硬化するため、手触り感が悪くなるばかりか、光沢を失わせ、同時にその仕上がり感を「白っぽく」させます。乾拭きを続けることで、浮き上がってくる成分を材表面に均し、コーティング効果と艶が生まれます。
■総集編「図面とデザイン」 2004.12.7(第358回)(あと8回)
木材から、必要な部材を切り出す作業、またその切り出す配列を図とする作業も含め「木取り」と表します。こうした「木取り」は、「妥協の積み重ね」とも言え、つまり、思い描いた最初の理想形を基として、それを「ラフスケッチ化」し、置く場所や収納物等による「具体的サイズ」、他のインテリアとの「バランス」、既成木材サイズとの「折り合い」、「コスト」などと言った現実的な問題を取り入れた結果が、最終的な「木取り」に反映される訳です。言いかえれば、欲と都合を正直に取り入れた結果として出来あがる物体は、当初の理想像が鮮明であればあるほど、その形状からは、どんどんかけ離れていくものです。簡単に言えば、人選びでの「理想のタイプ」と同様で、要求する事柄が多ければ多いほど、それをクリアする実物というものは、ひどくアンバランスで醜いのと似ています。要は、「優先するポイントは何か」ということであり、要求の」優先順位」と「妥協点」を明らかにしながら、全体のデザインバランスを見極めるということがポイントとなります。ということは、縮尺による「正面図」や「側面図」、つまり方眼紙等を使用した作図が必要となるわけです。「図面なんて書けない」という人も多いようですが、少なくとも、方眼紙のマス目が読めて線を引くことができれば、必ず書くことが出来ます。当店の木工教室でも、たくさんの「お客様オリジナル作品」が制作されていますが、お客様が準備した、必要寸法が書き込まれたラフスケッチを方眼紙に落し込むと、あまりにもラフスケッチとのデザインバランスが違い、「こんなイメージじゃなかった」ということが時々あります。それだけ、「イメージしている形」と、数値としての「サイズ」が、具体的に結びつかないことを表しています。自慢しますが、我々のように毎日「図面」と「現物」に触れている人間は、「木取り図」を見た瞬間に、全体の「具体的バランス」と、作品的な「長所・短所」が解りますし、逆に、大まかな寸法が書き込まれた「ラフスケッチ」を見た瞬間にも、その要求寸法を反映して出来あがる作品が、どの程度そのスケッチと離れるかが解ります。そして「どこで折り合いをつけるか」を探るのも、我々の役割としています。「思っていたのと同じものが出来た」という感想を聞くのを楽しみに教室を行っていますが、「思っていた以上の作品が出来た」というのは、不思議にうれしくありません。「想いを実現すること」に重きを置いているためでしょうか。少なくとも確実に言えることは、「想像は図に出来る」ということです。
■総集編「木材 その1」 2004.12.8(第359回)(あと7回)
カントリー家具作りに使用される板材は、「無垢材」と「集成材」に大別されます。前者は貼り合わせや繋ぎのない一枚板を言い、後者は複数の小片を貼り合わせて幅を持たせたものを言います。「人工的な貼り合わせをした集成材は自然味を損なう」として毛嫌いする人も多いようですが、無垢材にくらべ幅広サイズも豊富で、木目や節の美しいものもあります。また何より無垢材に比べ、「反りにくい」「強度がある」「品質が安定している」といった長所も見逃せません。逆に無垢材の短所には、「反りやすい」「ヒビ割れが起こりやすい」「品質が安定していない」などが挙げられます。よりナチュラルを言うのであれば、そうした自然の変化・変形・劣化を当たり前のこととして受け入れる肝要さが必要となります。さて無垢材には、その原木のどこの部分から製材されたものかによっての呼称があります。木目幅が狭く、しかも平行に流れているものを「柾目板」と呼び、逆に木目が不規則に図柄を成すようなものを「板目板」と呼びます。一般には、前者のほうが反りや狂いが少なく、1本の原木から取れる量も少ないことから、良質なものとして重宝されます。ただ、木目の美しさを楽しむカントリー家具においては、反りや狂いといった変化変形をよしとするため、むしろ板目板による作品のほうが人気と言えます。板材には「木表」「木裏」といった表裏があります。原木において年輪の中心に近い側が「木裏」で、樹皮に近い側を「木表」と言います。一般的には「木表」側のほうが、手触りや地肌がよいとされますが、現実的には、見た目での木目の美しさや、反りの方向などを読み、作品における表裏の位置関係を決めることになります。購入の際のポイントとして、木工本などには「特に乾燥した軽めのものを選ぶ」とありますが、カントリー家具に使用される「針葉樹」、特にパイン材などの松科の木材は、「軽め」というよりも、適度の重みの感じられるもののほうが、オイルフィニッシュ時の仕上がり色調が美しく現れます。つまり、「乾燥した軽めのもの」とは、樹脂を完全に取り去り、含まれる水分を極力抜き去ったもので、無垢材の特性である乾燥時での変形は少ないものの、作品としての色調に表れる「粘り」がなく、悪く言えば「ミイラ」のような乾燥体といえます。(続く)
■総集編「木材 その2」 2004.12.9(第360回)(あと6回)
木材の湿気による伸縮特性については幾度となく解説してきました。つまり湿気の多い日には膨張し、乾燥した日には収縮します。「反り」や「ひび割れ」などの変化変形は、一般に乾燥時に発生します。逆にいえば、そうした乾燥時期に変化のないものは、ほとんどそうした狂いの心配はないということにもなります。木材の伸縮は、主に「木目と直行した方向」に現れます。扉板でいえば、横方向の幅に影響します。そのため、オイルフィニッシュなどの、表面をコーティングしない仕上げの場合には、よりその傾向が表れやすいといえます。そのため、そうしたカントリー家具での「扉の遊び」は、他の一般家具にくらべ、広めにすることにより、膨張時でのぶつかりを防いでいます。木材の伸縮比率は、当然のこと、そn幅に対して比例しますので、幅の広いものほど、伸縮幅も大きくなります。木取り作業時には、その日の天候も考慮に入れ、木材の伸縮度合いを読むことが必要となります。また一般に堅い木ほど伸縮差が少なく、柔らかい木ほど伸縮差が大きくなると言われます。つまり、水分吸収率が影響している訳です。
■総集編「金物 その1」 2004.12.10(第361回)(あと5回)
当店では、作品制作に使用される「木材」と「塗料」以外の材料を総称して「金物」と表現します。丁番・ツマミ・キャッチ・ネジ・釘・キャスター・スライドレール等々がそれに当たります。一般にカントリー系家具で言えることは、簡素な作りであり、なるべく文明の利器や装飾系金物類を使用しないという点です。つまり、永く生活を共にする愛着ある作品に「小細工」は似合わないといったところでしょうか。手の込んだものよりも、より素朴であるほうが、「飽き」がこないものです。また不具合が生じた場合でも、自身でのメンテナンスが容易という理由もあります。必要不可欠な金物類であっても、やたら種類を増やさないことも肝要です。限られた金物類を複数の作品に使用することで、より統一性も表現でき、またコスト・管理面でも有効となります。ただし、そうした中でも「見えないこだわり」として、「ネジ・釘の長さ」は重要なポイントです。素材となる板厚や構造により、必要な長さが決まっていることは、これまでの講座で説明してきました。作品強度にも大きく影響することですので、大が小を兼ねたり、小が大を兼ねたりしないよう、心がけて下さい。また、キャスターやスライドレールといった機能型金物についても、「耐荷重」の表記に注意し、選択することが重要となります。
■総集編「金物 その2」 2004.12.11(第362回)(あと4回)
木工作品においては、「ボルト・ナット」等、その規格によって影響されるような金物はあまり使用する機会がありませんが、テーブル制作時での「ハンガーボルト」や、貫通取付式のツマミや取手などでは、こうした「規格」に注意が必要です。現在、国際標準化機構によるネジの規格は、「ISOネジ」として一般化してきましたが、それでも旧来の「インチネジ」(職人用語では分ネジと言う)や、「旧JISネジ」など、「旧来品のメンテ」を理由として販売されていますし、一部輸入商品などにも存在しています。木ネジなどと違い、ネジ山が対となって使用されるため、そのどちらかのみを交換する際には、それが同一規格であるかどうかの確認が必要となります。「なぜ規格が統一化されないんだ」という声もありますが、国際標準化に強制力はなく、仮に統一化により旧規格品が入手出来なくなると、「対」になって使用する以上、旧来品であるその片方がなくなれば、双方が使用不可能になるわけで、やはり消費者利益を考えれば、現状のような入り混じった規格存在となるのは致し方ないといえるでしょう。余談ですが、「インチネジ」と「ISOネジ」の規格の違いは、前者が「規定間隔の間に、ネジ山が何山あれば良い」とするのに対し、後者は「ネジ山の間隔自体を指定」しています。それだけ後者のほうが、よりシビアな規格と言えます。なお、前者は、主に土木・建築業界に古くから普及しており、所轄官庁の強制力がいまいち発揮されない理由もご想像に違いません。
■総集編「電動工具」 2004.12.12(第363回)(あと3回)
木工関連誌上でも幾度か解説してきましたように、手作り木工での基本電動工具は、「ドリルドライバー」「糸ノコ盤」「ジグソー」「トリマー」の4機種です。カントリー家具では、曲線ラインが多用されるため、その切断工具の充実が不可欠となる訳ですが、人には得手不得手がある通り、この「糸ノコ盤」対「ジグソー」の好き嫌いも、悲しいほど歴然としています。つまり、「糸ノコ盤は得意だけれど、ジグソーはちょっと」とか、「ジグソーは好きだけど、糸ノコは苦手」というすみ分けがはっきりしています。ともにその人の技術がはっきりと表れる工具ですので、えり好みも否めませんが、やはり道具の基本は「適材適所」であることを認識しなければなりません。果物ナイフで魚をおろす人や、出刃包丁でリンゴの皮をむく人の姿を想像すれば、出来あがる結果には関係なく、それがいかに「こっけい」であるかがお分かりと思います。某木工関連誌に「糸ノコ盤でもここまで出来る。音が気になる人にはお勧め」と題して、果物ナイフでも大魚をさばけるような、ふざけた特集を掲載していましたが、そうした間違った制作作業が、それのみに止まらず「錯誤の応用」として、工具を凶器に変え、また相対的技術も上達しないということを知っておかなければなりません。道具は、己が指先の延長であり、同時に意思を持たない機械でもあります。目的に合った正しい選択と使い方によってのみ、その性能を発揮するものです。それは道具へのいたわりともなります。
■総集編「手工具」 2004.12.13(第364回)(あと2回)
一言に手工具といっても様々あります。代表的なところでは「ノコギリ」「カナヅチ」「サシガネ」「ドライバー」「カンナ」「ノミ」「ナイフ」「ペンチ」「研磨ブロック」等々ありますが、作品によっては、それ以外にも多数の手工具が必要となります。比較的にカントリー系作品では、そうした必要とされる道具類は少ないのが特徴です。誤った道具の使用は厳禁ですが、必要以上に物が溢れている状況は、こうした道具類にも言えることで、必ずしも市販されているすべての道具が必要な訳でないことは、言うまでもありません。少なくとも「あれば便利」という程度の道具は、言いかえれば「なくても影響なし」ということです。技術が上達するにつれて必要がなくなるような道具は、出来れば最初からないほうが良いと思います。つまり道具とは、あくまで「それがなければ出来ない作業」だからこそ必要なのであって、「あれば効率的」な道具の使用は、「なくても出来る人」に向いているものです。そうした意味、その道具が有効的か否かの判断は、初心者には出来ないということです。「中身」より「形」から入る傾向の強い昨今ですが、大人の商魂に踊らされて、中身の衰退著しい現代の子供たちを見れば解るとおり、つまらぬ道具によって振りまわされないためにも、正しい道具の選択と、その使用法、そして技術を身に付け知ることが、木工を長く楽しむために必要となります。
■総集編「情報」 2004.12.14(第365回)(あと1回)
手作り木工そのものが、いかに不変的なものと言えども、使用する道具類や金物類の開発進歩、流行情報、またこれから木工を始めたいという人々のためにも、常に新しい情報の入手は必要です。いつの時代に編集されたものかわからないような古びた写真と文章で綴ったような木工本など、アンティーク趣味以外の人にとっては、新鮮味に欠けた流行遅れの印象を持つものです。お堅い解説本なら、探せばいくらでも出版されていますが、それがいかに難解で、しかも初心者をあざ笑うかの如き「おたく書」であるかはご想像の通りです。カントリー系の木工関連誌では、ほとんどと言って良いほど「はじめての」とか「初心者のための」とか「簡単」というタイトルが付されています。それほどに、「木工」というジャンルは、いかに「専門的で難しいもの」という固定観念が強いかということが解ります。「木工とは素人に手だし出来ない玄人の世界」として威張り腐る連中は抜きにして、そもそも小学校の授業から、こうした手作り木工の楽しさと必要性は、教育的観点からも取り入れられているのが事実で、それを職人気取りの一部連中のみの世界に閉じ込めてしまうのは、あまりにももったいないと思います。そうした悪い傾向の原因には、仕上がりに完璧を求める志向と、安全性を含めた専門工具類の取り扱い知識、作業工程全般での制作知識や技術の不足に対する恐れに起因しています。つまり、木工の醍醐味とは、自由な創作意欲を阻害せずに、その仕上がり具合よりも自身で作る工程自体に楽しさを覚えることが大切で、そのための知識や技術を解りやすく解説した情報を見つけることが必要です。木工を含めた手作り全般をテーマとしているカントリー誌で代表的なのが「カントリークラフト」(日本ヴォーグ社)で、当店においても編集部とは数年来のお付き合いをしています。そうした情報元となる愛読書を見つけることが、より木工を身近にするポイントとなります。
■総終章「手作りを愛する人々へ」 2004.12.15(第366回)
お金を出せば何不自由なく欲しいものを手に入れることが出来る時代にあって、今ことさら「手作り」が注目されています。供給過剰な時代背景だからこその現象でしょう。つまり、お金を出して手に入れられる「物」は、それらがいずれも「商品」であり、「カネ」対「物」の取引結果であるという「つまらなさ」に気付き始めた所以と思います。「自分で作り出す」ことは、いわば人間本来の営みであって、さらに「木工」には、自然回帰という壮大な意味が込められています。「手作り」の価値とは、単に「物を手に入れる」という物欲に止まらず、「作り出す感動」を付加します。しかるに、商品である「物」に対し、「込められた愛情」の有無が絶対的に違います。「木工」は決して難しいものではありません。いかに「職人」や「工作機械」が、抜群の精度と技術と経験により生産した立派な「物」であっても、それを使用するのは私たち自身です。せっかく傍らにあって、永く生活を共にする「物」であるなら、そこに「愛情と感動」が込められたものであった方が、より贅沢と言えるのではないでしょうか。「自分のために自分で作る」というこの贅沢は、味わったものでなければ解らない醍醐味です。さあ、限りある人生、本当の贅沢を味わいましょう! −終ー
あとがき
一念発起してこのワンポイント講座を始めたのが、ちょうど昨年の今日。はじめは2〜3カ月の連載のつもりが、各方面からの「おだて」もあり、「1年間休まず連載する」という大見得をきったのが、そもそもの間違い。嘘は付くが約束は守る私は、その後プレッシャーと意地の狭間でもがきながら、なんとか1年間続けてきた。商社やホームセンター勤務の経験から、商取引の実態と、必要素材や工具類についての知識や技術は、人が「どらえもん」というくらいつめ込んできたつもりだ。とは言え、この程度のショートフレーズの連載でも、自分が嘘を書いていないか、毎日専門書でチェックしながら書き進んできた。山のように積まれた木工誌やカントリー誌、DIY教本に囲まれながら、必死でこの講座を書いている姿は、じぶんで言うのもはばかられるが、実にいじらしい。とにかくも、毎日「木工教室」を開きながら、多くの木工ビギナーと接している関係上、そうした人たちの「求めるもの」は誰よりも理解しているつもりだ。だからこそ、的外れで参考にならない「木工本」ばかりの実情に、この講座の意味を見出したというわけだ。さすがに1年も書いていると、ホコリ高い人々からの怖い励ましもあったが、夜道を歩くこともないので、自由な主張を続けてこられた。なお、この講座のすべてを掲載したページは www.hatchan.com/one-point.htm に掲載してあるので、見逃した方はぜひご覧いただきたい。もちろん一度に読もうとすると、私の1年分の疲労がのしかかるので、少しずつ楽しんでお読みいただければ幸いだ。最後にこれまで応援して下さった当店木工教室のお客様、ご遠方のファンの皆様、CC編集部S女史、ならびに各編集部ご担当者、スタッフ一同に深くお礼申し上げ、晴れて自由の身になる。
2004年12月15日 アーリーハッチ店長 DIYアドバイザー 首藤浩昭